ザレゴトリコイル 金色アランと戯言遣い   作:角刈りツインテール

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よろしくお願いします!


嵐の前の静けさ。

春も終わりを迎え、いよいよ夏が始まる予感にこれから始まる虫と蒸し暑さに満ち溢れた世界への絶望を無視できなくなり始めたこの頃、ぼくら一行———すなわち千束さん、たきなさん、ぼく———はマクドナルドでシェイクの季節限定に風流を味わいながら(飲み物だけに)、これから行うことについての説明を受けていた。

「それで健康診断って、どこでやるんですか」

そう、健康診断。皆様が学校や職場で受けている、あの健康診断。とはいえリコリスなるもの、やはり身体は資本なのだろう。普通のそれとは一線を画す技術をふんだんに駆使しているらしい施設に、ぼくは珍しくワクワクしていた。何歳になろうとも、男の子はロボットやメカが好きなのさ。

「……ねぇいーちゃん。本当にワクワクしてる?」

「してますよ。うわぁーい楽しみだなぁ」

「うわっ棒読みじゃんか!白々しいな!」

「場所はDAの本部です」たきなさんはフライドポテトを摘んで答えた。そんな、なんてことない動作なのに、不思議と様になっている。顔だけはいいんだよなぁ、と改めて感じた。僕もいつか、こういうオシャンティーな大人になりたいと思う。……と、たきなさんは年下だったか。

本当、戯言だね。

「あぁぁぁあぁぁ嫌だぁぁぁぁん……」

たきなさんの横で、千束さんががくりと項垂れている。疑問だ。一体、健康診断の何がそんなに嫌なのだろうか、この人は。実は彼女、朝から随分と駄々をこねて行きなくないと騒いでいるのだけれど、何も教えてくれずにいるのだ。

健康診断で、やりたくないこと、といえば。僕は考察してみる。

「注射ですか」

「はっ!?」

ガバっと千束さんが起き上がった。

あ。

これ、図星だ。

「ち、ちちちっち違いますしー!そんな訳ないじゃん実力派エリートだよ私ーへへへ」

「どこのボーダーですか。嘘が下手すぎるでしょう千束さん。今までの人生よくそれでやってこれましたね」

「え?まー、ね?うん、何とかなってるよ」

千束さんは目を逸らした———おや。今のは地雷か。どうやら過去には触れられてほしくないタイプと見た。そう上手くいっている人生でもないらしく、ぼくとしても面倒ごとは避けたいところなので今後は気をつけることとしよう。

「10時からなので、そろそろ向かいましょう」

ちなちに、運転はぼくである。別にそれ自体に関してぼく自身どうでも良かったのだが、問題は彼女らについて———特に、たきなさんについて。

どうして疑っていながら、ぼくに運転を任せることができるのだろうか。

「? なんですか」

「なんでも」

今気がついたが、この人、実は抜けているのかもしれない。

ギャップ萌え———は、別にないか。

ギャップなんてものに、意味はない。ただそいつはそういう人間だった、それだけの話でしかない。どう捉えるかは我々の問題であって、要するに、そんなものはただの戯言なのだ。

閑話休題。

愛車のベスパ———では勿論なく(スクーターでどうやって4人運べというのだろうか)、ミズキさんから借りた小洒落た自動車を運転しておよそ20分、ぼくたちはDAの本部に到着した。

初めて訪れたこの建物だが、何やら思っていたよりも大きいような気がする。

京都の駅ビルよりも大きいぞ、この建物。

敷地で言ったらかの国民的テーマパークより広そうだ。

…そういえば、今更ながらだけれど、本当に今更だけれど、ぼくの正体はバレないのだろうか。哀川さん直伝の女装術を得ているとはいえ、今回それを行ったのは哀川さんではなく、この世にただ一人のぼく自身だ。であれば、どこか抜けがあってもおかしくない。というか、確実にある。何せぼくだ。友に「このディスクをコピーして」と頼まれて10円片手にコンビニへ走った経験のある、あの戯言遣いのぼくなのだ。心配で仕方がない。

人殺し、とも揶揄される少女たちをまとめる組織だ。もしもぼくがスパイだとバレれば、殺されてもおかしくないのかもしれない。この場合、楽観にさして意味があるようには思えないので、危機感を持った方が良さそうだ。

なら、行かなければ良い———という話だが、どうもそうは問屋が卸さないらしく、電話が来た既に時点でゲームオーバーらしい。全てが機械によって支配されている最先端の組織なら、友の協力でなんとかなりそうだけれど、電話をしたという事実と記憶は改竄できない。故に仕方なく、こうして出向いているのだ。

「では中へ。———ぜっっっったいにバレないでくださいね」

そんなの、言われなくても分かっている。

が、それはそれ。ぼくの正体がバレることは、彼女らにもスパイの容疑がかかるということでもある。一言言っておかなければ気が済まなかったのだろう。さて、可愛い少女のお願いだ。ここは彼女らの明るい未来のために、精々頑張るとするかな。

戯言だけど。




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