ザレゴトリコイル 金色アランと戯言遣い   作:角刈りツインテール

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そういえば、一つ決まっていることがありまして、健康診断が終わった後は一旦オリジナルストーリーに移ります!!いぇい!

いーちゃんが、全ての始まりの地、鴉の濡れ羽島へと、千束・たきなとともに戻ってきてしまう話です。ただし今度は首切り死体でなく———?
といった感じになる予定。いわば『クビキリコイル』といったところでしょうか。まぁ何はともあれ、ひとまずは今回の話をよろしくお願いします。


健康で軒昂な彼女らの反抗期。

DA———Direct Attackという正式名称のこの組織は、いわば現代的、もしくは近未来的な建造物を本部としており、あらゆるセキュリティをコンピュータで管理しているという。

そして、そんなものは、友の前では戯言ほどにも意味も持たない。

どころかむしろ好都合とも言える———奇を衒い昔ながらの紙媒体で管理していたとすれば、それこそわざわざ忍び込むしかない。しかし全てを管理しているということは、全てを預け切っているということとと同義。なんなくハッキングし、ぼく、もとい『伊井遥奈』のデータを作り出した。そのおかげでぼくは、難なくゲートを通過できたのだった。

まぁ、着替え等の問題はあるが……というか、それしかないと言っても過言ではない。

胸は盛ればどうにでもなるけれど。

流石に局部は隠せない。

 

「うにー、だけどねいーちゃん。どうも最後のとこだけ突破できないんだよねー。だからこそ、いーちゃんに頼むしか無いわけなんだよ」

 

これは友の言葉。彼女は天才ハッカーであり、自ら行動を起こすタイプではない。そもそも階段を登れず日常生活でさえぼくがいなければ何もできないのだから本当にどうしようもない。

 

だからこそ、ぼくに頼むしかない。

 

うん、良い言葉。

そこまで言われちゃ、足で挟んででもして、なんとかして隠す他ない。ベストは尽くさせてもらおう。

 

「ねぇすごいねぇ友ちゃんって人!どんな人なの!?」

「まぁ、見た目はクルミさんと大差ないですね…どちらのほうが技術が上かといえば…まぁ、友だと思います」

そもそも、所持しているコンピュータの性能からして違う。何せあいつが持っているものは確か軍事用だったはずで、市販、もしくは一般人が作ったもので対抗できるはずがない。そして、それを難なく使いこなせる才能を、友は持っている。

 

才能。

 

青色———サヴァン症候群。

 

「へぇ、やるなぁ」

千束さんはふんふんと純粋無垢な笑顔で関心の眼差しを向けてくれてたのだが、一方、たきなさんに至ってはこんな感想だった。

「つまり、DAを転覆させようとすればいつでも可能な訳ですよね」

まるっきりの危険思想である。

何かいいことでもあったのかい?とでも言いたくなるほどに野蛮で物騒だった。

「大丈夫です、無意味にそんなことをやるような奴じゃありませんよ」

「信用できません」

「でしょうね。では、こんな話をしましょう。例えばですよ、たきなさん。ある凶悪殺人鬼がいました。その男は京都で何人も何十人も刃物で切り裂いた恐ろしい人間です。しかしそんな殺戮劇も終わりを迎え、彼はとうとう捕まってしまいます。そしてその時、彼はこう自白しました—————『悪ぃ、意味はねぇんだ』」

「……それが何か?」

「あなたはそれを信用しますか」

「まぁ……それは難しいでしょうね。いや、だから貴方、さっきから何を」

「まーまー二人とも落ち着きなってぇ!ほら、やるからにはさっさと行く行く!」

先程までの嫌々ながらの態度とは一転、手のひら返しも甚だしく、早く終わらせたい一心の千束が前方を指差し怒鳴った。

あぁ、ついうっかり、この人の存在を忘れていた。忘却はぼくと今日子さんのアイデンティティだったはずだが、流石にこれはどうしようもないし言い訳のしようもない。精々、言えるのは戯言くらいだ。正直に言って、ヤバいと、自分でも思う。

「はーーやーーくーー!」

「………はい」

とりあえず、今はこの少女に振り回されることに専念した方が良さそうである。

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

—————出た、相棒殺し。

 

 

「んぉ?」

「っ!」

受付中、聞こえてきたその言葉に、ぴくり、とたきなさんの肩が震えた。

クスクスと笑う卑しい声。服の色から考察するに、彼女らは恐らくたきなさんの同僚。そして、その中心で蹲っている可愛らしい女の子が———名前までは知らないが———千束さんが言っていた、たきなさんがテロリストもろとも銃をぶっ放した相手だろう。その表情は、周囲とは異なり、しかし恐怖、という訳でもなく———罪悪感に満ちているようだった。面倒だ。面倒で邪悪でで険悪で最悪だ。どうして本人が怒ってもいないのに、周りの人間はこうも騒ぎ立てるのだろう。

本当に、ぼくには意味が分からない。

分かりたくもない。

「……えっと」

「心配なさらないでください」

「そうは言ってもですね」

「心配なさらないでください」

「ですけど」

「心配なさらないでください」

「………はい」

あまり聞かれたくないのだろうか。いや、そもそも、たきなさんは僕が千束さんから全て聞いていることを知っているのか……知らないそうだ。聞いたこと自体さっきの出来事なのだ。知るはずがない。

……バレたら殺されそうだなぁ。

それこそ機関銃で、一思いに。

 

♦︎♦︎♦︎

 

健康診断もついに佳境を迎えた。ようやく帰宅できる、と思っていたのだが、千束さんがたきなさんの元相棒に喧嘩を売ってしまい、果たし合いをすることになってしまった。

………なんで?

しかしまぁ改めて考えれば、これはなんとも千束さんらしい結果だ、とも言えよう。感情おばけの彼女が、自分の相棒を貶されて黙っていられるはずがないのだ。それに最初から気がついていれば。ぼくは彼女の耳に入らないように善処したというのに。後悔先に立たずとはまさにこのことだ。折角、帰れると思っていたのに……。

「い〜ちゃんっ!」

「嫌です」

「サポートよろしくねっ?」

まぁそんな訳で、安心院なじみ風に言うならば無意味で無価値な勝負が始まった。当然ぼくは無関心だ、なんて韻を踏んでも(韻は文字の最後だったか?)もうどうしようもない。それこそ無意味な抵抗になってしまう。ここは古典部の少年を見習って、省エネでいくとしよう。

こちら側は千束さんとぼく。たきなさんが決意を固め参戦すれば、ぼくは退場。

相手は、たきなさんの元相棒と彼女の現相棒。

なんだかドロドロした因縁のようなものを感じるメンバー構成だった。ぼくがあまりにも部外者で、視線を合わせる場所が見当たらない———のはいつも通りだが、なんとなく居づらい気がした。

 

ルールは、こうだ。

ペンキを撃つことができる水鉄砲で三発、相手にお見舞いすれば勝利。客観的にその光景を伝えるとするならば、ぼく自身はやったことがないので詳しくは不明だが、恐らくスプラトゥーンのように見えるはずだ。

……やりたくない。

「あの、たきなさんは」

「ん?えーっとねぇ……大丈夫、すぐ来るよ」

冗談めかした口調。されど、確信を持った目をしていた。

 

『ねぇいーちゃん。ちょっと先行っててよ』

『了解です、えっと、たきなさん』

『私は千束だまだ覚えてなかったのかよ。……あーあと。一応言っておくがいーちゃん———帰んなよ?』

『……分かりました』

 

そんなこんなでぼくは先にこの場所に来ることになってしまい、千束さんがたきなさんに何を言ったのか、ぼくは知らない。その間、相手チームの二人に怪訝な目で見られ続けていたことも、ぼくの努力の証としてここに記しておこう。

ぼくの代役は彼女しかいないのだ。千束さん思いが届いて、どうか早く戻ってきて欲しいと思う。そんな思いを込めて、ぼくはこっそりため息を吐く。

 

『ピーーーーーーーーーー!!!』

 

開始の合図が鳴った。

 

♦︎♦︎♦︎

 

後日談。というか、今回のオチ。というのはまた別の『物語』で、しかしながら今回はそうとしか言いようもないのでこの言葉を借りることにした。

先日ぼくたちが行った勝負は、我々のチームの勝利で幕を閉じた。勿論、僕の戦果ではなく、途中で参戦したたきなさんによるもの、そして彼女が来るまで一度も弾に当たらなかった千束さんによるものだ。ぼくは当然、物陰に隠れてボーッとしていた。

 

ちなみに、その日の帰路の電車では、こんな会話もあった。

 

「いやぁ見事にやっちゃったねぇ!」

「えぇ、これはぼくら三人の協力によるものだ」

「アンタは何もやってなかっただろうが」

「……あれで良かったんでしょうか」

「でも、スカッとしたじゃろ?」

 

 

「————えぇ」

 

 

あれから数日、喫茶店リコリコでのたきなさんの表情は以前より明るくなったような気がする。千束さんの言葉のおかげで吹っ切れたのだろうか。そうであれば、意外にも彼女は相談に乗るのが得意なのか。いや、本当に意外だ。

「で、何言ったんですか、千束さん」

「んー、特に良いことは言ってつもりだけどなぁ、ただの愛情表現?みたいな?あとさん付けやめろ」

「すみません、千束さ———千束」

「よろしい」

気づけば顔の横に拳があり、目視できない速度で殴られたと判断するよりも先にぼくの防衛反応が働いていた。

この人、怒らせたらたきなさんより怖そうだ。笑顔で怒ってくるタイプ。

あぁ、そういえば、怖いといえば。

「どうして千束さんってあんなに強いんですか」

そう、それこそあれは勝負の時。彼女は何故か綺麗に全ての弾を回避していた———それも命中する寸前というわけでもなく、余裕そうな表情を見せつつのプレイであり、ボーッとしつつも凄いなぁと感心していたのを覚えている。

流石に、あれは人間技ではないと思う。

哀川さんのような人間でなければの話だけれど。

「私ねー、目がいいんだよ」

「はぁ、目が」

「どったら信じてくれるかな?」

「……では、連続じゃんけん十回勝負で行きましょう」

「おっいいねいいねぇ!じゃあいくよー!」

「「さいしょはぐー」!」

そして。

ぼくは見事に十連敗した。

「………?」

どれだけ目が良くても一回くらいは勝てると思っていたのに———おいおい、嘘だろ。どれだけ視力が良ければここまでの領域にたどり着けるんだ?

さっぱり意味がわからない。

「戯言めいてるよ、ほんと……」

「ふっふーん、どーだ、凄いだろー!」

 

「千束さん宛に手紙だそうだ…どうしたお前ら」

絶望していたぼくと、自慢げな千束さんのもとへ、ミカさんが現れた。

「あ、どーも」

さ、と気分に任せて踊るようにその手紙を受け取り、中身を見る———そして。

「………な、なんじゃこら」

「あれ、どうしました、千束?」たまたま通りかかったたきなさんが尋ねる。

 

 

「なんか、招待されてるんだけど」

 

———鴉の濡れ羽島ってところから。

 

「え」

えっと、うん、なんだろう。

一難去ってまた一難。

すごく、嫌な予感がする。

 




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