女ヶ島を追い出されたので外海でハーレム王に私はなる   作:覚醒サイダー

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第9話 雷

「下がってな、スモーカー。お前にゃまだこのステージは早すぎる」

 

「……アンタ、なんでこんなところにいる」

 

「見物……のつもりだったんだが、どうやらそうじゃないらしい」

 

額にアイマスク。天然なのか独特のパーマがかかった黒髪の背の高い男。気怠げに立っているのに掴まれたおもちゃ剣はピクリとも動かず、それどころが先端から凍っていく。明らかに氷系統の自然系能力。このままこっちまで凍ってしまっては堪らないので、おもちゃ剣を手放す。

 

私が戦闘を止めたのを感じたのか、スモーカー大佐を下がらせて、その雰囲気通りのゆっくりとした口調で話し始めた。

 

「あー、嬢ちゃん。俺ぁ海軍で大将やらせてもらってる青キジってもんなんだが」

 

「大将!それって海軍の最高戦力ってやつですよね!」

 

「そういうことになってるなぁ」

 

噂に聞く海軍本部最高戦力『三大将』の名声に恥じない凄い覇気だ。能力も極限まで極められている。これだけの能力なら天候すら変えてしまえるだろう。

 

「ガープさんに言われてこんなところまで来ちゃみたが……こりゃ確かに一目見ておく価値のあるもんだ」

 

「ガープ中将の差金でしたか」

 

これはガープ中将に一杯食わされたかな。最初からスモーカー大佐と戦わせることじゃなくて、この青キジさんと戦わせようと企んでたっぽい。ボガードさんの件と言い、なんでかあの人は私の力を測ろうとしてるんだよね。今度は大将まで引っ張り出してきたのか。

 

「億超えが率いる海賊団を一人で壊滅させちまったと聞いたが――聞いてたよりずっとやべぇ」

 

凍ったおもちゃ剣を握り潰しながら青キジさんはため息混じりに言う。この人、ずっとやる気なさそうな態度だけど、覇気と能力は常に臨戦態勢だ。だらけているようで隙の無い、自然体の構え。ああ、この感覚は随分と久しぶりに感じる。

 

「たぶん、ガープ中将は私達に戦ってほしいんだと思いますよ」

 

「まあ〜そうだろうな。俺はあまり乗り気じゃねーんだが……そっちは随分とやる気に満ちてる」

 

こんなに強い人は初めて見る。私の中の九蛇の血が沸騰している様に熱い。戦いたい。目の前のこの人に私の力がどれだけ通じるのか、試したい。

戦いは楽しくないことが多い。でもそれは皆が私より弱いからだ。手加減したり、全力を出さなくても余裕な戦いばかりではそれは作業。そこに楽しさを見出すのは私には無理だった。だから私の興味関心は、女・知・食だったわけで、戦いなんてものは女をナンパするための技くらいに思っていたりしたけど、こうして強者を前にすると――最高にワクワクする。

 

まるで、これから女の子をベッドに誘うときのような、そんな高揚感。つまりとても楽しそうってこと。

それをより楽しいものにするためには、この乗り気じゃ無い人を本気にさせたい。こういうときにはコツがある。

 

「そういえば、三大将で誰が一番強いんですか?」

 

「「「絶対訊いちゃいけなそうな質問したぁあああ!!?」」」

 

周囲の全海兵さんがぶっ飛んだりしてオーバーリアクションを見せる。抜群のコンビネーションだけど、海軍ってそういう訓練もあるのかな。

 

「いやぁ、そりゃあおまえ、あれだ。あー……俺だわな」

 

予想通り、自分が一番だと答える。これだけ力があって、地位もある人が自信がないわけない。

 

「じゃあ、私みたいな可愛い女の子には負けないですよね?」

 

「あー、まいった、ハメられた。そう言われちゃ――戦わんわけにはいかないわなぁ」

 

青キジさんの目つきが変わった。いいね、ビリビリする覇気。高まってきた!

 

コートから取り出すのはお気に入りの槍。普段は適当に気分で武器を使い分けるけど今日は違う。私と青キジさんとでは、現段階(・・・)(セラギネラさん17歳成長期中!!)では凄く身長差がある。それはそのままリーチ差に直結し、ただでさえ広範囲の高火力攻撃が強い自然系を相手にするには致命的だ。それを補うために最適なのが槍。この槍は私が使うにはかなり長く3メートル近い長さがあり、リーチの差を埋めるには十分な代物。

 

「あらら、ドデケェ覇気じゃないの。戦争でも始める気かぁ?」

 

「いいえ、楽しいお遊戯会の始まりですよ!」

 

「こりゃおっかねぇもんが始まっちまった」

 

剃の動きを応用し、青キジさんに突進する。

ボガードさんが使っていた移動法、“剃”を含む体術は『六式』といい、世界政府に属するような組織で使われているらしく、ローグタウンに来るまでの間に見せてもらったけど、これは中々使える技術なのだ。これを自分なりに取り込むことで、これまで無意識にやっていたことをより効率化出来た。移動はより早く、空中での方向転換はスムーズに、足技・殴打は鋭く、回避は軽快に、防御は強固に。たったの数日で私はさらに強くなった自覚がある。それをここで存分に試させてもらおう。

 

「簡単に近づかれるわけにはいかねぇなぁ――“アイス(ブロック)”『両棘矛(パルチザン)』!」

 

十数本の矛の形になった氷塊が凄い速さで飛んでくる。結構な出力なのに、生成、成形、射出までの操作が異常に速い!能力を発動される前に私の間合いまで近づこうなんて全然甘かった!

私は氷の矛を槍で砕きつつ、その強度と冷気に警戒を強めた。氷で出来ているとはいえ、覇気で強化された矛。まともに食らえば、私でも怪我をするレベル。それにこの冷気。さっきから周囲の温度がグッと下がって、もう吐く息が白く冷たい。身体能力が化物と称される私だって人間であることは間違いなく、そうであれば寒さは肉体のパフォーマンスを落とす。恐らく本気になれば周辺を一瞬で氷点下にまで下げられるところを、加減しているはず。自然系とはいえ、出力も速さも馬鹿げてるよ!

 

「とにかくまずは近づきたい!」

 

「悪ぃが俺はスーパーボインが好みでなぁ、子供に迫られるのは勘弁だ」

 

「私もおっぱいは大きいのが好きですよっ!」

 

軽口を叩きつつも、全然距離が縮められない。あの氷の矛と、たまに飛んでくるヤバそうな冷気の玉。それを避けつつ近づこうとすると、どうしても追いつけない!

 

「ああ!もういいです!手の内を隠したまま勝とうとした私が馬鹿でした!」

 

「へぇ……そりゃ嬢ちゃんも能力を使うってことかい?」

 

悪魔の実の能力。さっき戦ったスモーカー大佐なら煙、青キジさんなら氷、ヒナさんなら檻、というように多彩な種類があるこれらは、その系統によって3種類に分かれる。自然物を操り、自身もそれに変化できる自然系、動物への変身を可能にし飛躍的に身体能力が向上する動物系、それ以外の特殊な力を得る超人系。私の能力は超人系、ガープ中将から話を聞いているのなら私が能力者だってことは知っているだろうし、ここまでの戦いで青キジさんもそれは察しているだろう。

 

「命がかかってるわけでもないのに使いませんよ。奥の手は常に秘めておくのが乙女の戦い方って奴です」

 

「えげつねぇ乙女もいたもんだ。そんなら――どんな手札を見せてくれるんだぁ?」

 

能力はそれと分かる形では発動しない。能力の全容を知られることは自身の不利が圧倒的に大きくなるということ。どんな能力にも弱点や攻略法は存在するものだが、そうした情報を与えなければ常に有利に戦える。私は、抑止力のために力を誇示する必要がある海兵や、力を自慢して暴れ回りたい海賊でもない。だから、能力は極力隠す。ヒナさんと初めて戦った時にも感じたけど、能力者相手に『知らない』ということは致命的な不利を生み出す。どうなるか分からない外海、切札は多いほうがいい。

実際、青キジさんが終始、距離を詰めさせずに戦っているのも私の能力が分からないからだ。私がハンコックに負けたように、悪魔の実の力は無慈悲にその力量差を覆すことがある。特に超人系は能力によっては当てれば勝ち、というようなものも存在するため青キジさんは警戒を緩めはしないだろう。つまり、近づくのはかなり難しい。

 

「槍は投げるためにもあるってことですよ!」

 

「おいおい、この距離で避けれねぇ程、大将ってのは甘くねぇのよ」

 

近づけないなら遠くから攻撃すればいい。

そりゃ、普通に私が投げたら避けられちゃうだろうけどね。手元の槍にはたっぷりと充電(・・)が完了している。

――白雷は、私の能力と体質(・・)が合わさることで本来の力を発揮する。ボガードさんに放った時はかなり加減していたけど、この人相手ならそれも必要ないでしょ。

ただ槍を投げるだけの技。但し、帯電した槍は、私の能力によって加速し、一筋の白い雷となる。

 

「“白雷・閃式”」

 

それは、速さ故に無音で放たれる。音が鳴り響く頃にはこの槍は標的を貫いている。雷鳴すら置き去りにする白い閃光。

 

「ッ!!まじかっ!」

 

青キジさんは見聞色によって察知したのか、咄嗟に氷の盾を自身の前に展開するが、槍はそれを全て砕き直撃する。いや、どうにか防いだっぽいな。かなり本気の一撃だったんだけど、あれに反応するとかちょっと予想外過ぎて引いてるよ。正直、死んだらごめんくらいの気持ちで打ったのに落ち込むなぁ。

 

「――ガープさん、洒落にならねぇもん相手させてくれちゃったじゃないの」

 

五体満足どころが外見的にはほぼ無傷。土埃を払いながらゆっくり歩いてくる青キジさんであるが、やはり無傷に見えるのは外見だけ。少なからずダメージは通っていそうだ。それでもしっかり防御が成立しているのだから、称賛するしかない。

 

「乙女の秘密を一つ教えてあげましょう。超絶可愛くて格好いいセラギネラさんは――体から電気を発することが出来ます」

 

この力は悪魔の実の能力――ではない。子供の頃から当たり前に使えていた私の体質。

九蛇の誰もこんなことは出来なかった。だからこれは私だけの特殊な体質なのか、もしくは親から受け継がれたものなのかって話になるわけだけど、私は両親の顔も見たことがない。物心付いた頃には九蛇にいたし、両親はいなかったけど国の皆が私を育ててくれた。分かっているのは国の年寄り達曰く、私の母親は凄く強い戦士だったってことだけ。まあ、つまり、私がなんで電気を生み出して操れるのか全くの不明なんだけども便利だから使わせてもらっている。使えるんだからそれでいいよね。

 

「……今どきの嬢ちゃんはそうなってんのかぁ」

 

「そうなっているのです」

 

あんまり電気を使い過ぎると意識が飛ぶってことが経験上分かっているので、基本的には武器を通したり、相手に触れたときに流すとかそういう使い方をしている。意識が飛ぶって言ってもすぐに気絶するわけじゃなくて、気絶するまで周囲を破壊しだすらしいので人がいるところでやったら本当に危ない。いやー、改めて思うけど私の体って不思議だなぁ。

どうやら外海でも、私のこの体質は珍しいみたいで、改めてその不思議さを実感していると、青キジさんが……こうやって今考えなくても良いようなことを考えて現実逃避していた事実を突きつけてきた。

 

「あー、ところで嬢ちゃん、こいつはどうする?」

 

青キジさんの後方。そこにあった(・・・)はずの海軍基地が、うん、まあ、その控えめに言って……崩壊していた。青キジさんが凍らせてくれたおかげで瓦礫が散っていないけど、もうとても建物と言えるような状態ではない。

 

私はその瓦礫の一部へと近づいてそこへ寝転がる。

 

「くっ、なんて強さ!まさか海軍基地を粉砕する程の威力とはっ!これは流石のセラギネラさんも……ガクッ!」

 

息も絶え絶えに痛そうな演技をしながら台詞を言い、最後には意識を失ったかのように顔を傾けて目を瞑った。全く凄い攻撃だったぜ。熱くなり過ぎて周囲のことを何も考えていなかったかのような惨状だからね、私がやられてしまったのは仕方ないよ。あー、全身が痛い。特に胸が痛い。締め付けられるようだ。ざいあくか……負傷によってとても痛いなぁー!これは暫く起き上がれないなぁー!

 

 

「「「いくらなんでも誤魔化せないだろ!!!??」」」

 

 

――ですよね!!分かってるんで、総出でツッコむの止めてください!!

あああああ!!私、戦う度にこんなんばっかじゃん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ガープ中将の軍艦1隻(ローグタウンにて修理不可と判断)

・ローグタウン海軍基地壊滅(基地内の備品含む)

・青キジ愛用チャリ(海軍基地に停めてあったが消し飛んだ)

 

白雷のセラギネラによって破壊された、これらの被害総額は、東の海における海軍の被害として今年最高額となった!!

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