その裏で動く八幡とキャプテンの座と雪乃の話。
「オイ雪乃、俺が甲子園行けたら付き合えよ」
ニキビが目立つ細身だが背が高い男子高校生、
「甲子園に行けたら考えてはあげるわ」
総武高校野球部はどちらかと言えば弱小で、これまでに甲子園に行けた事はない。
だから雪乃もサラッと流したのだと八幡も理解した。
「よっしゃ!! 約束だかんなっ!!」
球飛虎は語気を強めて満面の笑みで帰っていった。
八幡はそれを見なかった事にして、その場を去った。
八幡は雪乃が球飛虎に靡くわけがないと思いながらも、何処かモヤモヤするものを感じていた。
二ヶ月後、地区優勝を果たして、総武高校野球部は甲子園出場の切符を手にした。
八幡自体は野球部の盛り上がりはあくまで他人事であり、巻き込まれたく無かったが、奉仕部として応援に駆け付けなくてはならなかった。
厭々ながらのやる気のない応援ではあったが、もうこれ以上続いてくれるなという八幡の応援が功を期したのか、総武高校は二戦目で敗退した。
それで野球部の盛り上がりは終わったと思っていたのだが、八幡は見てしまった。
球飛虎が雪乃の手を引いて歩いているのを。
とはいえ雪乃は乗り気そうな様子はなく、すぐにでも振りほどきそうな雰囲気ではあった。
八幡は、どうせこの後球飛虎は雪乃にフラれるだろうと結論付けた。
それから一ヶ月後、球飛虎に彼女が出来たという噂が流れた。
八幡は雪乃ではないと考えていたかったし、球飛虎は顔に品は無いが、甲子園出場を果たしたキャプテンとして、ちょっとしてモテの波は来ているし、誰かと付き合っていてもおかしくはないと考えることにした。
しかし、八幡は気にならない訳では無かった。
雪ノ下家の近くを通っていると、その付近から球飛虎が歩いているのを見かけた。
球飛虎は一人だった。
八幡はモヤモヤしないわけでは無いが、ホッとしたところもあった。
その次の週の月曜日、クラスの男子集団の中で、球飛虎が彼女と何処までヤったかという話になっていた。
ハッキリとは聞こえなかったが、ヤる事はヤっていたようだった。
平塚静に呼ばれて遅くなった八幡は、教室に忘れ物を取りに行くと教室には球飛虎と雪乃だけがいた。
何を話しているのかは分からないが、球飛虎は雪乃のシャツを引っ張って笑っていた。
八幡は気まずくて、荷物をとって帰ろうとしたが、暫くしてまた教室を覗きにいった。
教室にはもう誰もいなかった。
その週の土曜日、八幡はカフェにいる雪乃と球飛虎を見付けた。
わざわざ二人でカフェにいるとしても、その関係が何なのかは八幡は確認しにいく勇気も無かった。
そして高校卒業後、八幡は雪乃と疎遠になったが、八幡は時折SNSで『雪ノ下雪乃』と検索している。
元々更新は殆どされていないが、ある時からピタリと更新が止まった。
それでも八幡は定期的に『雪ノ下雪乃』とか、『神奈川県 雪乃』とか検索をする。
そして検索に無関係なものばかりが並び続けるようになっても、八幡はそれをやめなかった。
今年35歳になる独身男性の比企谷八幡は、今も雪ノ下雪乃が何をしているかを気にし続けている。
感想や評価どんどん下さ〜い。