彼女の名前は(おもて)まどか。

彼氏の名前は針生精元(せいげん)

ごく普通のふたりは、ごく普通に出会い、ごく普通に付き合い始めました。

でもただひとつ違っていたのは、二人はニチアサヒーロー、ヒロインだったのです!

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リハビリを兼ねた一発ネタ。


ニチアサで二足のわらじは正直きつい

 彼女の名前は(おもて)まどか。

 

 彼氏の名前は針生精元(せいげん)

 

 ごく普通のふたりは、ごく普通に出会い、ごく普通に付き合い始めました。

 

 でもただひとつ違っていたのは、二人はニチアサヒーロー、ヒロインだったのです!

 

 

 

 そんなナレーションがなんとなく脳裏に浮かんだ。

 もちろんほぼ全て事実である。

 

 俺たちは何一つ超常的なことに関わらずに生まれ育ち、入学した地元の中高一貫校で同じ部活になったことをきっかけに交流を深め、進級を目前にした春休みに俺から告白して付き合い出した。

 そこまでちょっと青春風味は強いがそれでも普通の範疇だった。

 

 そう、始業式のあの日、あの()()に出会うまでは。

 

「さあ、やってしまえナカセール!」

「……いこう、せい君」

 

 目の前には、学校のテスト用紙を子供の落書きで擬人化したみたいな巨大な怪物、ナカセール。

 背後には、ナカセールを生み出すために嘆きの感情をむりやり引き出され、そして奪われて気絶している同じ学校の生徒たち。

 彼女が守らなくてはならない。彼女にしか守れない。彼女が守りたい日常だ。

 

 だから、俺も覚悟を決める。

 

「……ああ、やろうまどか!」

 

 覚悟を口にすると同時、俺の体が変化する。

 高校生にしてはタッパのある身体がみるみるうちに縮んで、手のひらサイズに変わってゆく。

 

「さあ、変身する()()、まどか!」

 

 そして、()()となった俺の体が、更に針と糸の意匠が刻まれた可愛らしい宝石製の鍵へと変化。そのまま彼女の手のひらに収まる。

 

「うん! キュアロック、リリース!」

 

 まどかはその鍵を、胸元のペンダントの鍵穴に差し込み、その封印を解除。

 

 直後、虹色の傘がナカセールと彼女との間に発生し、彼女の身を守る。

 

 それまで着ていた服は、赤みの強い桃色の服へと置き換わり、スカートはビーチパラソルのようにボリューミーかつカラフルに。

 

 ポニーテールにしていた茶髪の髪も、服と同系統の色に変わり、ボリュームもアップ。増えた毛量に合わせ、髪型もツインテールに変化した。

 

 最後にそれまでペンダントに刺さっていた鍵が腰元のポーチに収まり、

 

「涙の雨を受け止める盾! キュアパラソル!」

 

()()は完了した。

 

「みんなが笑顔で明日を逢えるためにも、アタナたちは逃さない!」

 

 

 

 ********

 

 

 

「ナゼジャマスル()()、ドウホウ!」

 

 そんな騒動があったのが、ちょうど30分前。

 

 今私達の前には、この世のものとは思えないほどメルヘンチックな光景が広がっている。

 

 まるでちょっと怖い童話の世界がそのまま現実になったかのような戯画的な夜の景色に塗りつぶされた住宅街。

 

 街路樹や電灯にくくりつけられた、ここの住人と思われる人々。

 

 そして、まるで()()のような、あるいは妖怪のような特徴を持った、巨大な人型のコウモリ。

 

「あいにく、俺()()はお前らの仲間じゃねえ」

「! ソウカ、レイノウラギリモノ!」

「やるぞ! まどか!」

「うん!」

 

『フェアリードライバー』

 

 せい君が腰にみょうにごてごてしたバックルを装着すると同時、私の体がパラソルを象った錠前へと変化する。

 

パラソル!』

 

 その錠前を、バックルの中央に装填。同時に流れる、メルヘンチックな呪文のような音楽。

 

ハベトロット!』

 

 そして、彼が取り出した針と糸の意匠が刻まれた()()()()()()鍵。

 

 その鍵を、錠前の右側面の鍵穴に差し込み、

 

「変身!」

 

 一気にひねる!

 

『UNISON!』

 

A handful of good intentions spin the shield of healing(一握りの善意が癒しの盾を紡ぎ上げる)

 

パラソルハベトロット!』

 

 せい君の全身を覆う、妖精の編み上げた布による複合スーツ。さらにその上には妖精郷の世界樹の樹皮から削り出された赤みの強い桃色の装甲が組み上がり、それを魔力が実体化した糸で強固に固定する。

 

 最後に頭部を、まるでパラソルのような複眼を備えた仮面が覆い、

 

「仮面ライダーフェアリー。……何故邪魔するか聞いたな?」

 

()()が完了した。

 

「俺の寝覚めが悪い。だから、てめえは妖精郷(ねぐら)に叩き返す!」

 

 

 

 ********

 

 

 

「「つっかれたー!」」

 

 その日の夜。()()()()帰宅した俺たちは、それぞれソファーとクッションに倒れ込んだ。

 

 だってしょうがないだろう。

 

 毎回毎回、週一の頻度で、よりにもよって同じ日に別々の勢力と戦闘してるんだから!

 

「もう今日は何もする気になれねー」

「作っててよかった作り置きだねー」

 

 とは言え人は適応するもの。こんな生活にもなれたもので、つねに冷蔵庫には温めるだけで食べられる料理を常備する習慣がついてしまった。

 

(いつもいつも、迷惑かけてごめん()()

 

 そんな俺達に、テレパシーで語りかける子供っぽい声。

 

 俺たちが今の3重生活を送る羽目になったある意味での元凶である、ハベハベの声だ。

 

「だから、いつも言ってんだろ。こういうときは『ありがとう』だ」

「そうそう。最初はともかく、今は好きでやってるんだから!」

(ふ、ふたりともーっぱ)

 

 ハベハベがわざわざテレパシーで会話しているのには理由がある。こいつは肉体を持たないからだ。

 

 何故かといえば……。

 

(この世界で最初に出会ったのが二人で本当に良かったっぱ!)

「まあ、お陰で俺は死なずに済んだし、おあいこだ」

 

 妖精郷からの侵略者、過激派の妖精である「アンシーリーコート」に致命傷を負わされた俺の命を助けるために、俺の肉体に融合したからだ。

 

 俺が妖精になった姿から分かる通り、妖精郷の妖精は、非常に貧弱な肉体しか持たない。よって、「アンシーリーコート」は侵略先の現住生物の肉体に憑依・融合することで、屈強な肉体と特殊能力、そして社会的な立場を得る。

 ハベハベがやったことはその応用だ。「アンシーリーコート」も、「アンシーリーコート」と敵対する、ハベハベの属する「シーリーコート」も、組織が違うだけで種族的な違いはない。よって、致命傷を負った俺の魂と肉体に憑依・融合することで肉体を修復・強化したのだ。

 

 まあ、基本この融合は分離不可なので、おれがこいつの代理として「アンシーリーコート」と戦う羽目になっているわけだが。

 

 さて、ここまでならニチアサによくある男の子向けの変身ヒーローの導入なのだが、ここでややこしい点が一つ。

 

 

 

 ハベハベ及び「アンシーリーコート」の故郷の妖精郷、第三勢力に滅ぼされてる。

 

 

 

 なんか侵略者が勝手に滅んで、「シーリーコート」はともかく人間界側にとっては万々歳に見えるが、そうは問屋が卸さない。というか、時系列が逆だ。

 

 妖精郷を滅ぼした第三勢力、名を「ティアドロップ冷血国」という。名前に反して本人たちは血も涙もない代わり、他人には盛大に流させるのを生きがいとするキチガイ集団だ。 

 

 こいつらに故郷の妖精郷を滅ぼされた妖精たちは主に3つの集団に分かれた。

 

 妖精の女王を筆頭に、滅ぼされた祖国を直接復興させるため、別次元に隔離した王都で避難及び逃亡生活を送りつつ、祖国奪還の機を虎視眈々と狙う「クイーンズ」。

 

 妖精軍を中心に、外敵である「ティアドロップ冷血国」に逆襲すべく、そして「ティアドロップ冷血国」の破壊活動から様々な世界を守るため、そして何よりティアドロップの連中が血なまこになって出現を阻止しようとしている伝説の戦士プリキュアを目覚めさせるべく旅立った「シーリーコート」。

 

 元犯罪者やはぐれもの、野心家な軍人などがより集まり、新天地と見定めた人間界を新たな妖精郷にすることを企み、現地の生物との融合を繰り返す「アンシーリーコート」。

 

 つまり、先に「ティアドロップ冷血国」による妖精郷への破壊活動があり、俺たち人間はそのとばっちりをうけた形になる。

 

 しかも「アンシーリーコート」の侵略と「ティアドロップ冷血国」の破壊活動が示し合わせたかのように同時に、この街から開始されたという嬉しくない偶然。

 

 

 

 結果、ハベハベと融合したことで「仮面ライダーフェアリー」となった俺と、どうも伝説の戦士「キュアパラソル」だったらしいまどかは、人知れず侵略者たちと戦うこととなった。

 

 

 

 ……ここまでなら、まだましだった。

 

 それぞれが戦う敵は実質別だったが、一人で戦うより二人で戦うほうが楽だ。……二人で、戦えればな!

 

 なんでお互いがお互いの変身アイテムなんだよ! これ実質一人で二勢力を同時に相手取ってるじゃん!

 しかもなんでいつもいつも同じ日に時間差で暴れるんだよ! まさか裏で示し合わせてやがんのか!?

 

「ところでさ、せい君……」

「ん?」

 

 と、そこでまどかがチラチラこちらを見ながら話しかけてくる。

 

「今日、お父さんもお母さんもいないじゃない?」

「ああ、今頃学会で福岡だな」

 

 まどかのご両親は天候学者と気象予報士だ。

 昨今の大雨などの災害対策のために日本各地に出張することは珍しくなくなってきた。

 

「だから、その……」

「……」

 

 うん、何を言いたいのかはわかる。

 ラノベの鈍感系主人公じゃないんだ。自分の彼女が言いたいことくらいわかる。

 

 わかるが……。

 

(あ、おかまいなくっぱ)

 

 こいつがいるせいでいちゃつけねえんだよ!

 

 常時脳内に妖精さんがいるせいで青少年の健全なあれこれが全部できずに強制禁欲生活なんだよ!

 

 質悪いことにこいつと俺の精神活動がリンクしているから、俺が寝るとこいつも寝るし、俺が起きるとこいつも起きる。結果こいつが寝ている間に発散することすらできん。

 

 ハベハベ自身はちゃんと理解しているのかなんか生暖かいテレパシー送ってくるし。新手の拷問か!?

 

「……すまない」

「! う、ううん、いいの。わ、私先にお風呂入ってくる! ご飯の用意お願い!」

 

 そう言って、部屋の外へとかけてゆくまどか。

 

「……なあ、やっぱお前だけ寝られる方法ないの?」

(あと半年もあれば治癒と補強に回してる分のリソースを他に回せるようになるから、それまで我慢っぱ)

 

 あと半年、俺はまどかを襲わずにいられるだろうか……。

 




(おもて)まどか

新番組 サニースカイプリキュアの主人公。

天候学者と気象予報士の両親の元、優しくのびのびと育てられた。

なお、彼氏ができたことをきっかけに少々耳年増になった。

中学生として、まだ非常に健全なお付き合いをしているが、度々一線を越えようとする。


・キュアパラソル

まどかが精元が変身したフェアリーキーで変身した姿。

全部で三人いるプリキュアの一人目。赤キュア。

絶大な防御力を誇るシールドと生み出すことを得意とし、そのシールドを叩きつけることで結果的に攻撃力が高い、攻防一体のバランス型。

一方で少々鈍足気味のため、機動力のある相手には攻撃を当てられずに不利になる。同様の理由で、遠距離から一方的にハメ殺すタイプにはお互いに決定打がないため千日手になる。


・針生精元(せいげん)

新番組 仮面ライダーフェアリーの主人公。

妖精郷からやってきた妖精の戦士ハベハベと融合することで一命をとりとめた少年。

両親とは高校進学から少しして死別しており、遠縁の親戚だった面家に引き取られた。精元自身が針生の性を残したいと願ったため、養子縁組はしておらず。あくまで保護者。

その頃はたいそう荒れていたが、部活の後輩のまどかの支えで立ち直る。このことが彼女に対して単なる仲の良い後輩以上の好意を抱くきっかけとなった。

脳内に妖精さんがいるため、基本まどかに対しては受け身。

彼女が一線を越えようとしていることには気づいているが、社会的にも倫理的にも良心的にも肉体的にも相手の負担が大きいため、鋼の意思で耐えている。


・仮面ライダーフェアリー

妖精郷が、伝説の戦士プリキュアの伝承をもとに独自開発した戦闘スーツの一つ及びそれをまとった戦士の称号。

種族特性として肉体的に脆弱な妖精の戦士が外敵と戦うための戦鎧。

ただ、肝心の完成が妖精郷の滅亡とほぼ同時期になってしまったため本来の目的で使われることはなかった。

妖精の戦士ハベハベがシーリーコートとして活動開始する際に、プリキュアを見つけるまでのつなぎとして持ち出した。

長年外敵がいなかった妖精郷で開発された(敵として想定すべき生物・兵器がなかった)ため、暫定的に同じ妖精、特にアンシーリーコートのような他の世界の生物と融合した妖精を仮想敵として開発された経緯がある。

結果的に人間界への侵略を企てるアンシーリーコートと戦うのに最適な装備となったのは皮肉である。

武装生成のコアとして妖精の特殊能力を魔力パターンとして記録した「フェアリーキー」、防具生成のコアとして、妖精よりも強靭な肉体を持つ生物の同意によって魂が結晶化する「ロックソウル」をフェアリードライバーに装填することで、妖精としての特殊能力と他生物の肉体性能の双方を高めることを可能にしている。

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