Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~ 作:元ジャミトフの狗
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第19話
ハンナバル。元は海賊だった者たちが興したとされる港町である。
海賊による海賊のための街と言う意味で言えば、ジャヤのモックタウンや新世界にあるというハチノスとそう変わりない。違いがあるとすれば、総人口と規模ぐらいのものだろう。ただ喧騒の絶えない、陽気で残酷な海賊たちの日常がそこにある。
さて、そんな島のとある酒場にて。
より正確に表現すると、通路と言うよりも洞窟だ。単に土を刳り貫いただけで、最低限の整備しか為されていないと分かる。薄暗く、どことなく不衛生な空間だった。
「こういう事を何年も?」
「ああ。馬鹿共の相手をする身にもなれってんだ」
ここまで案内してくれた店主は、ため息交じりに吐露した。こちらとしても返す言葉を持たず。慰めにもならないだろうが、もう少し酒かそのアテくらいは頼むべきだったか。
「このまま進め。合図は変わらん」
「恩に着る」
「これも仕事だ」
その言葉を最後に、酒場の店主は戸を閉めた。入口から漏れ出ていた明かりが唯一の照明だったため、洞穴は暗黒が支配する。
「えっと、確かライターがポケットにあったような」
「大丈夫だ」
「……副キャプテン?」
慌ただしくツナギのポケットを探っているペンギンを余所に。俺の人差し指に火が灯った。己が内に宿る悪魔の力である。
もう十年以上前の話だ。当時奴隷だった己は、余興として天竜人に悪魔の実を食べさせられた経験を持つ。
その実の名をトリトリの実、モデル朱雀という。
朱雀。前世のとある大国では、四象を司る神鳥だったか。炎の象徴と称されることだけあって、この身は鉄を溶かすほどの熱と火を操る事が可能である。故に、こうして蝋燭の如き明かりを用意する事も、決して難しい話ではない。
「ツバメさんが能力を使うの。何か珍しいっすね」
「そうかな」
「ええ。俺もあまり見た事ないです」
洞窟の先を進む道中、シャチとペンギンの従兄弟コンビが詰め寄ってくる。二人そろって興奮している様子だ。火が当たりそうで恐いからさ、ちょっと離れてくれ。
「……まぁ、何であれ手の内は明かさない方がいいからな」
「なるほど!! 流石副キャプテン!!」
「そんな深い考えが! やっぱりかっこいいっす!!」
うん、手放しに賞賛する二人に調子が狂う。
基本的にウチのクルー、特にベポ、シャチ、ペンギンの初期メンバーは己とローの全肯定BOTである。何をするにしても褒めてくれるし、喜んでくれる。無償の好意は嬉しく思うが、それはそれとして照れくさい。
曖昧な顔つきになっている事を自覚しつつ、無言で歩を進めた。二人も後をついてくるが、黄色い歓声が止まらない。断言しておくと、嫌という訳ではないのだ。単に己が慣れてないだけである。ぶっちゃけ羞恥が勝る。
さて、そんなやり取りを経て暫く。洞窟の出口らしきドアが見えてくる。番兵だろうか、その扉の前で大柄な男が立っていた。背中に隠したナイフを今にも抜かんとしているあたり、荒事には長けているようだが。
「副キャプテン」
「ああ、これで良いか」
酒場の店主の言に従い、再度100ベリー硬貨を2枚提示する。それでこちらの意向は伝わったようで、番兵の男は道を開けてくれた。
扉を開くと同時に、眩い光に当てられた。暗闇に慣れた目には少々刺激が強く、普通に目が眩む。洞窟の中にあって、この尋常ではない光量。夜目が切り替わり、周囲を見渡せるまでに回復すると――
「こんなに海賊が」
「ジャヤの比じゃねぇな」
シャチとペンギンが感嘆の声を漏らす。
視界に広がるは、さながら坩堝をひっくり返したような空間。恐らくは自然によって形成された広大な地下空洞を、そのまま海賊たちの盛り場としたのだろう。
鼻腔をくすぐる魚介系料理の香り、絶えない男たちの喧騒。正しく海賊の街と呼ぶにふさわしい。海賊島ハンナバル、その全てがこの場に集結していた。
「――気を引き締めていこう」
「「うっす」」
親愛なる我らが船長が言い渡した仕事は、あくまでもデッドエンドレース出場の手続きのみ。主目的に交戦は含まれていない。しかし、ソレはこちらの都合である。他の海賊が喧嘩を装って、襲撃を仕掛けてこないとも限らない。
故に慎重に情報を集める。まずは、レース主催者とされる
「もし、少し宜しいか」
トランプで賭博を興じている中年の男たち、その中でも特に温和そうな男に声を掛ける。恐らくは現地の民だ。
「あん? 見ない顔だな兄ちゃん。賭けに来たのかい?」
「いや、出走しに」
「おいおいマジかよ。知らねぇのか兄ちゃん、今回のレースは――」
「大丈夫だ。分かっている」
四皇幹部の出走。どうやら命知らずの男たちと言えど、やはり四皇の肩書は重いと見える。
「……そうかい。なら何も言わねぇよ。胴元は上の階だ。目立つ場所だから行けば分かる」
「有難う。あともう一つ良いか」
「おう何だ?」
「出走する者達の人気順とか分かるだろうか」
「ん、ちょっと待ってくれよ。確か――」
出走表らしき代物を見ながら、男は言葉を続ける。曰く1番人気は例の四皇幹部の『侍』。2番人気は懸賞額6200万ベリーの
前者は兎も角、後者の人物には見覚えがあった。シルクハットを被った金髪の少年、後に炎帝と呼ばれる革命の徒であった筈だ。そうか、彼はこの頃から活動していたのか。
「――そうか。情報提供、感謝する」
「良いって事よ。ところで兄ちゃん、もしかして
「そうだ」
「成程な。今回のレースは随分とレベルが高い。気ぃ付けろよ」
「ご配慮痛み入る」
賭博中の男たちと別れた。情報の整理は後に回そう。特に件の侍について、己は知らない。
「――ツバメさん」
階段を上りながら、シャチが小声で告げる。
「何だ?」
「……少し前からつけられてます」
「ん。そう、みたいだな」
「どうしますか」
「今のところ、強い敵意は感じられない。恐らくは斥候、中々用心深い連中だ」
雑多に人が入り乱れて分かりづらいが、確かにこちらに向けられた気配を感じる。数は三人、その内の一人はかなりの実力者である。何より、シャチに言われるまで確信が持てなかった。気配遮断の能力は相当なものだ。
「では」
「ああ、
「はいっ!」
気乗りはしない。が、やられる前にやるべきだ。こちらの数も三人、条件は平等。一瞥でもすれば勘付かれる。スピードが命だ。
「――
階段の手すりから身を乗り出し、そのまま空中へと跳躍した。
そして俺の標的は、最も強い覇気を感じる
重力による落下に身を委ね、踵落としを見舞う。左腕で防がれた。だが手応えは悪くない。こちらの攻撃が通る、その事実を認む。故に、勝機は存在する。
一度、魚人の男性から距離を取る。シャチとペンギンの方を見やるが、心配の必要もなかったようだ。既に二人は取り巻きを片付けていた。
「――してやられたな」
「降参を推奨する」
「ハナから……我々はそちらに危害を加えるつもりはなかったのだがな」
「説得力に欠ける。ならば何故尾行を?」
胴着を身に纏う魚人に問いかける。しかし妙だ。己に魚人の知り合いは存在しないため、この男と既知である筈がない。だというのに、何故か見覚えがある。
「貴殿の船長と話がしたい」
「ローと?」
「ああ、トラファルガー・ロー。フレバンスの遺児、我々は彼女と話がしたい」
「……貴様」
悲劇の街フレバンス。ローの出生を知る者は、ハートの海賊団でもごく僅かだ。
己とベポ、シャチにペンギンの四人。加えてその全員が有するローへの忠誠心は、己が死すら凌ぐだろう。故に、彼女の出生に関する情報が洩れる事はあり得ない。
だが、それだけの諜報を可能とする組織もまた、この世界には確かに存在する。
「貴様、革命軍の者だな」
「……如何にも。良く分かったな」
「悲しい現実だが、魚人で
「ふむ、舐めてかかったのはこちらの方だったか」
魚人の男性は両手を上げた。降参、のつもりらしい。
「私は革命の闘士、ハックだ」
何と言うか。原作にも存在する舞台の中で、原作キャラとオリ主を絡めるのすごく楽しいですね。
今回のレース編では件のオリジナル四皇幹部だけでなく、原作の主要キャラもちょっとだけ登場させます。
-追記-
誠に勝手ながら、休載します。
詳しくは活動報告にて。