誕生日には海に行きたい、家のクーラーと扇風機のダブルコンボを浴びながら涼んでいた俺に対して彼女は唐突にそう言ってあっという間に俺を無人島なのかリゾート地なのかわからないけど、他に人の気配がないような小さな島に半ば拉致してしまった。
無邪気な鼻歌が降り注ぐ黄金の太陽光とマリンブルーの波の音とのコーラスを奏でる。最高気温は40℃に近く、湿度と熱気がうだるような暑さを醸し出す。そんな不快感すらあるその炎天下の中で、彼女の声は涼し気な風を呼んでいた。彼女のように気まぐれで、遊び心に満ちた風は堤防に座る彼女の白いハットを攫っていったことで、彼女の鼻歌は止まった。
「あ……!」
「あーあ、飛んでちゃったよ」
「ふふ、海で涼みたくなってしまったのかしら」
「その前に熱中症になりますよ」
「そうね、それじゃあ探しに行くわよ!」
「日傘をしてほしいって意味だったんだけど」
彼女、弦巻こころはまさに太陽のような女の子だった。笑顔の煌めきも、他人を巻き込んで、そしてその全てを笑顔に変えるような力も、そしてそれまでは「花女の異空間」なんて呼ばれて一人ぼっちだったはずなのにバンドを組んでからというもの、いつの間にか人が周囲に集まるようなカリスマというか、引力も身に着けたんじゃないかと感じる。
「ない……」
「きっと海水浴をしていて、そのままお魚さんになってしまったんだわ!」
「言ってる場合か? あのハット、お気に入りだったろ?」
「そうだけれど、帽子さんがあたしの頭の上よりも海にいた方がいいなら、それでいいのよ」
「……それは、こころとしてはそれでいいのか?」
「あたしは……そうね、残念だけれど」
「なら、もうちょっと探す」
「……ええ、そうね」
こんな独特で、少しだけ他とは違って、どこかで世界を一歩外から眺めている彼女をただの少女にしたい。俺が彼女と一緒にいる理由はたったそれだけのことだった。パーティで初めて会った頃、自分の立場と家柄をフルに利用して打算的に──そして今では、こうして自分から望んで弦巻こころという太陽に振り回されている惑星の一つとして傍にいた。
「はぁ……見つからないもんだな」
「そうね、はい、とっても冷たいわよ」
「ありがと……んく、はぁ……」
「ため息を吐くと幸せが逃げてしまうって、花音が言っていたわ」
「幸せが逃げるって?」
「ええ、違うの?」
「ため息一つで逃げるんだったらとっくにいなくなってるのに、未だにニコニコ顔で隣にいるんだよな」
「……ふふ、ならきっと一万回ため息吐いても幸せが逃げちゃうことはないわね!」
「知ってるよ……はぁ」
どのくらい探したのか、汗と日焼け止めすらも焼いてしまうような紫外線をしばらく浴び、海の家と書かれた、確かに少し前にはなかったはずの店でラムネとかき氷を手に二人揃って日陰で休憩をしていた。吹き込む浜風が少しだけ涼しげで、夏の風物詩たちの力も相まって体温がゆるやかに落ち着いていく。
「なんだよ」
「クーラーで冷えたお部屋もいいけれど、お出かけすると楽しいわね」
「無理やり連れ出したクセにな」
「嫌だったかしら?」
「……そんな顔しなくても、嫌だって思ったら嫌だって言ってるよ」
「なら、楽しいって言ってほしいわ」
「こころと一緒にいて楽しくないって思ったことないね、残念ながら」
「あたしもよ!」
暑いはずなのに自然と隣合っていた距離が近くなる。肩がぶつかる頃には繋がれていた手が解けて彼女の細い腰がちょうどいい場所にあった。抱き寄せるとまるで期待通りで嬉しいと言いたげに瞳の中で金色の光が溢れ出していく。
そんな熱い砂浜にも裸足で駆け出せそうな時間を過ごし、彼女の海から流れる風を気持ちよさそうに浴びる姿に見惚れていた。身体をほぐすように背筋を伸ばすと、靡く風を黄金の髪で受け止める姿はまるで一枚の絵画のようだった。
「ん〜っ! 」
「こころ」
「なぁに?」
「もう忘れてるだろ」
「帽子のことなら忘れてはいないわよ!」
「ないならいいんだけど」
「けれど、今は探すよりも待っていたい気分だったの」
「なんだそれ」
振り返るそのはにかみ笑顔は、そして彼女の頬を伝う汗の一滴すらも芸術のようで。美術館に飾られる絵と鑑賞する客の距離も相まって、より強く、そしてその距離が普通だった時のことを思い出していた。
──こころはいつだって、大人たちの中心にいた。弦巻家の令嬢だからという以上に当時から太陽のように、笑顔とその天真爛漫さ、そして賢さは老若男女を問わず惹きつけてやまなかった。
「……眩しいな」
「どうしたの?」
「いいや、よくもまぁここまで健全に付き合っていられるなぁと思って」
「あたしの力が欲しかっただけ……そう言っていたわね」
少しだけ悲しそうな顔をするこころに手を伸ばそうとするが届かない場所にいる。立ち上がればもちろん届くんだけど。よくもまぁこんなやつを手に入れられるなんて驕ったなと呆れてしまう。だが、こころは俺の前までやってきて手を差し出してくる。そうだ、こいつは、弦巻こころは俺の打算も暗い欲望も笑顔で全て吹き飛ばした。
「……まだ騙されてるかもな、こころは」
「そうだったら、もうあたしはあなたの言葉をなんにも信じられないかもしれないわね」
「なんで嬉しそうに言うんだよ」
「あなたが笑っているからよ」
「そっか」
手を握って立ち上がり、踵を上げる彼女の腰を支えるようにして抱き寄せ、こちらからも僅かに背を丸めて迎え入れ、受け止める。
天真爛漫でありながら怜悧、利発という印象もあるこころのことだ。俺が理性と打算で傍にいるだけでは絶対にこの表情を見せることはないだろう。それは冬の終わり、生き物たちが地中からその日を待っていたような、そして桜の花が一斉に咲き誇るような、あるいは銀河が一つ生み出されたような光に溢れる絶対なる感情を込めた笑顔だから。
「すきよ、世界で一番」
「いいのか? 世界を笑顔にするって豪語してるくせに、一番なんて作って」
「ハロハピと一緒にいて気付いたのよ。あたしにだって、特別なものはたくさんあるわ……世界を笑顔にしたい、そのためにあたしは歌っているのだから、それは変えられない──でも」
「でも?」
「あたしはそれを一緒に叶えたい人がいるの。一緒に笑顔を届けてくれる最高の仲間が、そしてそんなあたしの傍にいてくれるあなたが悲しむくらいなら、あたしのやりたいことなんて、ちっぽけなものよ」
「それは、言い過ぎだな」
「どうして?」
「俺は、こころと同じ夢が見たい。同じ願いを語りたいって気持ちで傍にいるからな」
「──っ! ええ、ええ! そう思ってくれるあなたが大好きよ!」
星の煌めきが瞳の奥で明滅する感覚。弦巻こころの感情を俺は真正面から受け止めた。太陽に手を伸ばして、蝋で固められた鳥の羽で近づいても溶けて落ちるだけ。そうやって俺は愚かにも弦巻こころに近づき、そして焼かれた。
だがそのおかげで失敗したと思った打算は感情というエラーを組み込み、見事に当初の目的を達成してしまった。こころがほしいと思った時には思いもしなかった感情で彼女の後頭部に手を添え、さらりと風をつかむような髪をなでつけているとふと金色の向こう側に見慣れた白色が波に揺れているのを発見した。
「……あ」
「どうしたの?」
「波打ち際……あれ」
「なにかしら……あ! ふふ、海水浴を楽しんだのかしら?」
「徒労か」
「そんなことないわ、一緒に探したから見つかったのだもの」
「言うほど探してないけどな」
砂浜に降りた目的だったはずのハットを拾い上げ砂を払う。そこまでぐっしょり濡れているわけじゃないのはこの太陽を浴びたせいか。それを乾かすように海の家の日が当たる場所に起き、俺はこころの手を引き再び涼しい日陰へと戻っていく。
気兼ねがなくなったことでこころが言うことなんて予想ができる。
「なんだか海に入りたい気分になってきたわ!」
「だろうね」
「下は水着……ってそんなのあなたも知ってるわね」
「知ってるわよ」
俺がそう返事をするとこころが嬉しそうに笑ってからワンピースを脱ぎ捨てた。こころにしては珍しいワンピース、白で統一されており幅の広い肩紐のついたノースリーブのワンピースは元々それほどガードを感じなかったが腰についたリボンのベルトを解くことであっという間にその意味をなさなくなった。
「俺も着替えてすぐ行くよ」
「ええ、待ってるわ!」
「ええっと……まぁそうだよな」
海の家の裏を見るとカバンが二つ置いてあった。中身は俺の水着、後はこころと俺のラッシュガード、ヘアゴム、またこころの方のカバンの中には一回り小さな袋が入っており、その中身がなんなのかは容易に想像できる。俺は着替え終わり日向へと出るとこころはパラソルのついたテーブルに座ってキラキラした顔で海を眺めていた。
「行くか」
「ええ!」
キラキラと煌めいて、こころの素敵な笑顔は間近に目が焼かれそうになってしまう。ただその手はしっかりと握って離さないようにと力を込めると、優しい力が握り返ってきた。それだけ、たったそれだけで「花女の異空間」と呼ばれた彼女の気持ちがダイレクトに伝わってくるような感覚がした。
「どうかしら!」
「芸術だな、つかミッシェルの顔めっちゃうまいな」
こころの思いつくまま、海での時間を過ごしていく。砂で作ったミッシェルの顔を褒めるとふふふと自慢げに笑い、ビーチボールは非常にパワフルな彼女が大笑いするような、まぁ砂浜に足を取られて顔から海水に入って少し恥ずかしい目に遭い、水鉄砲を使った撃ち合いもこころはキラキラと輝く太陽を絶やすことはなかった。
──俺だって最初はこころのことは変なやつだなと考えていた。やることなすこと全部突飛で、わけがわからなくて。でも、関わっていくうちに彼女の自分の願いを実現する力という人間離れしたものに驚かされ、そして触れ合うたびに彼女はただの無垢な一人の女の子なんだということに気付かされた。
「こころ」
「なにかしら?」
「ん……いいや、楽しいかなんて訊いても野暮だってことがよくわかった」
「そうね、とっても楽しいわ!」
「顔見ればわかるよ」
なんの変哲もない会話、何も特別なこともないやり取り。それこそが彼女がただの人間だという証明でしかなかった。光り輝き、地上を照らし、見るものに畏怖と崇拝を与えた太陽の核にいたのは、抱きしめれば身体を覆ってしまえるような少女だった。
もちろん、彼女が太陽のような輝きを有しているって認識に変わりはない。ただ、人間には理解できないブラックボックスやその内側に人間の精神ではないものが潜り込んでいるとかそういう類のものではないってことは何度だって伝えていきたい。
「なぁこころ」
「なにかしら?」
「誕生日、おめでとう」
「……まだ今日じゃないわよ?」
「けど明日は忙しいだろうし、日付変わるまで起きてられないだろこころは」
「今日はたくさん遊んだから、きっとぐっすり寝てしまうわね!」
「嬉しそうに言うなよな、全く」
「だって……それもとっても、とーっても、幸せだもの」
パラソルの下に戻る頃には流石に日も傾き始めており、気温も多少は過ごしやすくなっているようだった。俺の足の間にいるこころにパーカーを羽織らせ、身体に手を回すとこころは安心したようにもたれかかってくる。この状態ならもう泊まるはずの別荘に戻ってもいいんだろうが、俺もこころも戻ろうとは口に出来ずにいた。
「こんなんが誕生日プレゼントでいいのか?」
「いいわよ! お祝いしてくれてることが大事なのだから!」
「そっか……ん、わかった」
「何がわかったのかしら?」
「いや、今日は頑張って起きといてくれると嬉しいって思っただけだ。無理強いはしないけどな」
「いいわよ、なるべく頑張るわ!」
「おう」
笑顔で小指を出してきた彼女に自分の小指を絡める。あまり期待はしてないけどなと小さく呟くと笑顔がトレードマークみたいなこころがちょっとだけむっとした顔で見上げてくる。こういうところもまた、弦巻こころは一人の人間であるってことの証拠であるような気がして、ちょっと優越感なんだよな。
「約束したわ」
「そうだな」
「破ったら笑顔にできないわ」
「俺のことを?」
「当たり前じゃない! それにそうなったらあたしも悲しいもの」
「……そういうことなら、ちょっとは期待してるよ」
俺を笑顔にするため、それはこころの嘘偽りのない言葉たちの中にあって、最も信頼できるほどに強い言葉でもあった。とにかく笑顔にすると言ったら何がなんでも笑顔にする、それが彼女の信念だから。
──その言葉を小指以上の誓いにして、俺たちは海の家にあったシャワーを浴びて塩分を軽く落としてから別荘へと戻っていく。元々は昼前に向かう予定だった宿泊場所だがとんだ遠回りだったな。でもそれを心配されることはないというのは、常に彼女の周囲には彼女の笑顔にするという願いを叶える影がいるからだ。
「お風呂の準備はできております」
「ありがとう! それじゃあまた後で」
「だな」
「それとも一緒に入ってもいいわね」
「長風呂になるからパス」
それだけ言うと俺はとっとと別荘の管理人さんに別の浴室を案内してもらう。長風呂になったら余計にこころの就寝時間が早くなるんだよな。風呂の後はご飯を食べて、俺とこころは再び外へと出る。
──空を見上げて、こころはそれをそのまま映し出したように、瞳の中で星を瞬かせた。
「わぁ……すごいわ!」
「そうだろうと思って誘ったんだよ」
「お昼に遊んだ所まで行きましょう!」
「おっけー」
興奮気味に海の家があるところまで移動するとそこには色々なものが用意されていた。温度が多少低いこともあるのか、夜に身体を冷やさないようにという気遣いからかポッドとマグカップ、そしてインスタントのカフェオレやミルクティー、寝転がって見れるようにという配慮だろうテーブルを挟んだ二つのビーチチェア。どうやらあの黒服たちには俺の狙いなんてお見通しのようで。
「山で見る天体観測もいいけど、海ってのもいいな」
「そうね、綺麗だわ……!」
「だな」
タイミングよく暗くならないように着いていたランタンが消えて、星だけが俺たちの視界を埋め尽くす。ブラックコーヒーに口を付け、美しい景色と程よい潮風の心地よさに息を吐き出した。波の音も相まって、昼の疲れもあるせいか、穏やかすぎる時間がそうさせるのか、少し眠くなって欠伸をした。
「って、こころ、寝てないよな……なにしてんだ?」
「なにって、やっぱり机は邪魔だわ」
「いや俺、コーヒー飲んでる……」
横を見ると黒服が新しいビーチチェア、どうやら二人で座る用のものを用意していた。俺はため息をついて、右側にコーヒーおけるようにとだけ伝えておく。
まぁちょっとは予想していたよ。こころって案外寂しがりなところあるし。
「ん〜、やっぱりこれが一番だわ!」
「満足そうで」
「誕生日プレゼントなのに、本人が傍にいないなんてダメに決まってるじゃない!」
「……まぁそれは、確かにな」
傍にはいたんだが、どうやらこころにとっては手の届くところにいなければ傍にいるって判定にはならないらしい。なんて範囲の狭さだろうか。肩に頭を乗せて甘えてくる沈みきった太陽の金色の髪を撫でると星ではなく俺を視界に収めてくる。星だけじゃ誕生日プレゼントに不足してるらしく、なんて強欲なんだと呆れてしまいそうになる。
「……苦いわ」
「大人の味ってことだな、まだまだ子どもだしなこころの舌は」
「年は同じじゃない」
「けど俺はブラックコーヒーを飲める。こころは飲めない」
「別に、ブラックコーヒーを飲めることだけが大人じゃないわ!」
「そりゃそうだな」
「それに……嫌いとは言ってないわよ」
「それは、お嬢様も大人になったってことかな?」
「ふふ、大人にしてくれた素敵な人が傍にいるのだもの」
──地平線に沈んだ太陽は、大地の裏側にいても魅惑の微笑みで俺を捉えて離さないでいるんだから、本当に弦巻こころというのは知れば知るほど、一筋縄ではいかない女なんだなって思わされる。普段の少女のような無垢さとは裏腹に、女性としての魅力まで持っていたらもう、どうしようもなく彼女しか見れなくなってしまいそうだ。
「打算だったはずなんだけどな」
「あたしと恋仲になれれば──婚約できれば全部思うまま、って言っていたわね」
「そうそう、けど……今は絶対、こころがこのまま無一文になったら全力で守るんだろうなって思ってな」
権力とか、富とか、そんなものよりも大事な宝物ができてしまった。彼女に好かれようと関わっていくうちに、俺はいつの間にか真正面にいる太陽に笑顔を届けてもらうことに我慢できなくなった。再び星を見上げた彼女の視界を今度は強引にこちらに引き寄せる。あと一年、その言葉が現実になるまでもうあとこころの誕生日一回になっていたのだから。
「俺にも、世界を笑顔にする手伝い……傍でさせてくれ」
「もちろんよ、あたしと一緒に世界を笑顔にしてもらうんだから!」
「それから、こころのこともな」
「……ふふ、それはいつもたくさん、もらっているわ!」
笑顔のヒーローは決して弦巻こころだけじゃない。ハロハピのメンバーたち、こころを支える黒服たち。そして俺もそんなヒーローの一人になりたい。なっていたい。
欲張りな俺は、それが彼女の真横でないと気がすまなくなってしまっているけれど。それはこころも同じなんだと確信できるのだった。
「やっぱりキスも苦かったわ」
「カフェオレの方がよかったか?」
「嫌いとは、言ってないわよ?」
「そうだったな」
こころは俺の打算も、わがままも、こころは全て飲み干して笑顔をくれる。部屋に戻って窓から星を見上げる彼女の腰に手を回してそんな雑談をしていると、俺のスマホから日付が変わったことを知らせるアラームが鳴り響いた。
散々祝ってきたけど、これで本当にこころの誕生日がやってきたわけだ。
「誕生日おめでとう、こころ」
「ええ、ありがとう」
「プレゼントは──って」
「後でいいわ」
「後でって、もう寝るだろ」
抱きつかれて首を横に振られる。本来こころは九時には既に眠くなるようなやつだ。それが日付変わるまで起きているという時点でもう異常なんだ。無理せずに寝ればいいという意味で訊ねるが、こころは僅かな月明かりに顔を照らしたまま俺を見上げて甘えるような声音で返してきた。
「今日は……もっと夜ふかししてしまいたいわ」
「こころ」
「いいでしょう? 」
その問いかけに俺が否定できるはずがなかった。こころのわがままにダメと言えるのはきっとハロハピの役目だろう。俺はここまでおねだりをされてしまったらもう彼女の言葉に全力で応えることしかできない。だからきっとまたあいつらに苦言を呈されるのだろう。俺はこころに甘すぎるってな。けど、まぁ……誕生日くらい、甘くても許してくれるだろう。東の空が明るくなるくらいの時間にようやく眠りについた太陽を抱きしめながら、俺は大きな大きなため息を吐いた。
こころん誕生日おめでとう(違)