妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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プロローグ
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「……ゼルネール? ねぇ、どこ行ったの?かくれんぼなの?」

 

 

とある島の森の中。

少女が言葉を紡ぐ。

しかし帰ってくるのは……何も無い

 

 

「……ねぇ、返事してよ、ゼルネール。どこなの?

レアの負けなの、早く出てきてよゼルネール」

 

 

いつもなら帰ってくるはずの親の声。

しかし、少女がいくら待っても返事は無く、紡がれた少女の言葉は空しく森の中に消え去る。

 

 

「……なんで? なんで何も言わないの?ゼルネール……怒ったの? 何か言ってよゼルネールぅ…」

 

 

グスっと鼻の啜る音が聞こえる。

それに呼応するかのように、空はモクモクと雲がかかっていき、あっという間に薄暗い曇天の空が出来上がった。

 

 

ピチョン……

 

 

雫が地面を叩きつける。

一つ…また一つと、滴る雫の数は増えていく。

そうして気づいた頃には、雫は滝のように天から降り注ぐ。

 

しかし、少女は全身を濡らしながらも、その場を動かなかった。

否、動けないが正しいだろう。

そんな少女はその場で蹲り、頭を抱え、頬を濡らした。

 

 

「ヒック……ヤダ……ヤダよゼルネール!

お願い!! もうワガママ言わないの! いい子にするの!

だから一人にしないでッ!! おいてかないでよゼルネール!!!」

 

 

叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。

しかし、天は少女を嘲笑うかのように雨足を強め、ゴロゴロと(いかづち)が空を斬り裂く。

絶望に打ちひしがれる少女。

親に置き去りにされ、小さな島でたった一人。

この世界で生きていくには、現実は厳しく、あまりにも酷だろう。

 

だが、運命は少女を見離さなかった。

心にポッカリと空いてしまった空白を埋めるかのように、少女には命よりも大切と言える場所ができた。

少女は、小さな事で老人に手を引かれ、その場所へ一歩……足を踏み入れた。

 

 

〜〜〜

 

 

舞台はフィオーレ王国……人口1700万人の永世中立国。

そこは『魔法』が当たり前に溢れた世界。

 

魔法は普通に売り買いされ、人々の生活に根付いていた。

その魔法を駆使して、生業としている者たちがいる。

人々は彼らを『魔導士』と呼んだ。

 

魔導士たちは様々なギルドに所属し、依頼に応じて仕事をする。

そのギルド、国内に多数。

 

そして、とある街に、とある魔導士ギルドがある。

かつて……いや、後々に至るまで数々の伝説を残してきたギルド。

そのギルドの名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

マグノリア……フィオーレ王国内にある大きな街の一つ。

この街に、とある巨大なギルドある。

 

名を妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

数多の魔導士を抱え、数々の雑誌にもその者の活躍は載っており、今ではその名を知らない方が珍しいくらいにはビッグネームのギルドだ。

 

そんなギルドの一階の酒場を覗いてみると、男たちが昼間から酒を飲んだくれており、仲間たちとドンチャン騒いでいた。

そんな酒場のカウンターに、むさ苦しい男たちとはどうも反りが合わないであろう水色の髪の少女がいた。

特徴的な水色の髪はサイドテールに纏め、表情の読めないジト目の瞳は鮮やかな蒲公英色である少女……名を『レア・ギルティ』は手元の新聞に視線を落とし、頬を緩ませていた。

 

 

「(ナツ……ドラゴン探しならレアも混ぜて欲しかったの…)」

 

 

そう心の中で文句垂れるレアだが、表情は変わらず頬を緩ませた微笑を浮かべている。

レアが心の中で向けた件の少年、ナツはハルジオンに火竜(サラマンダー)が出たという噂を聞きつけ、相棒猫のハッピーを連れてさっさとギルドを飛び出してしまったのだ。

普段のレアであらばなぜ自分も連れて行かなかったのかと不貞腐れるところだが、今回ばかりはレアもナツの突拍子もない行動を許していた。

 

 

「(気持ちはわかるの…。………ゼルネール…)」

 

 

レアとて、消えた自分の母、『ゼルネール』の手がかりが見つかったとなればじっとできる自信は無いと断言できた。

その過程で、今の相棒と出会えたのだから。

そんな過去の思い出を思い出していたレアの元に、羽のある金の毛色の猫が降り立った。

 

 

「どうしたのかしら? そんな物思いに耽ったような顔して」

 

「……別に物思いに耽っていた訳ではないの」

 

 

どこかキツい言動の金色の猫……名を『フリーシャ』は赤色のワンピースを靡かせながら着地し、紫色のツンとした瞳をレアに向けた。

いつもと変わらないジト目を向けられたフリーシャだが、そんなことは意に介さず言葉を連ねる。

 

 

「ふーん……。であれば、リーシャ達の最初の出会いの時でも思い出していたかしら?」

 

 

当たらずとも遠からずという事で、レアは表情を変えずに小さく頷いた。

ちなみに『リーシャ』とはフリーシャの一人称である。

 

とある雪山の中、当時11歳だったレアは自身の背丈ほどもある巨大な卵を見つけたのだ。

ひょんなことからレアはその卵を洞窟に匿い、2週間かけて温めたのだ。

そうして卵から孵ったのがフリーシャである。

フリーシャ自身、レアに与えられた名前を大層気に入っており、最初は常に自分の名前を周りに自慢していたのだ。

彼女の一人称はその名残からくるものだ。

 

レアはフリーシャとの会話に一区切りつけ、再び手元の新聞に視線を落とす。

気になったフリーシャは再び羽を出し、レアの手元を覗き込む。

その次の瞬間、あぁと納得したように頷いた。

 

 

「またナツかしら? 相変わらず派手にやってるのよ」

 

「ん。けど、それがナツなの」

 

「これが昨日の夜の事だから、そろそろ帰ってくるはずなのよ」

 

 

レアとフリーシャは一人の少年の話題で会話を弾ませる。

すると、レアは周囲の気温が若干高くなり、()()()()()()()がギルドの門のすぐ外まで来ていることに気づいた。

レアが門の方へ振り向いたタイミングと門が開いたタイミングはほぼ同時だった。

 

 

「ただいまぁ!!」

 

「ただー」

 

 

レアが視界に捉えたのは、桜色の髪に竜の鱗のようなマフラーを巻いた見慣れた少年……名を『ナツ』と、フリーシャと同等の身長の青い猫……名を『ハッピー』

そして、金髪のセミロングの見慣れない美少女だった。




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