妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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いよいよ戦闘です。


妖精女王と水竜

 

「こっちは妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームよ。覚悟しなさい!!」

 

 

指を指して得意げに叫んだルーシィ。

相対するのは悪い顔をした者がほとんどの闇ギルド、鉄の森(アイゼンヴァルト)

 

 

「後はまかせたぞ。オレは笛を吹きに行く」

 

 

そう言っていまだに不敵な笑みを浮かべているエリゴールは自身が乗る風を巧みに操って身を翻す。

 

 

「身のほど知らずの妖精(ハエ)どもに……鉄の森(アイゼンヴァルト)の…闇の力を思い知らせてやれぃ」

 

 

空中を踊るように舞うエリゴールはそのまま後ろの窓に一直線に飛び、ガシャアン!とガラスをぶち破ってその場から姿を消した。

 

 

「逃げるのか! エリゴール!!」

 

 

エルザが叫ぶも返事は無く、残ったのは降り注ぐガラスの破片と残り風だけだった。

 

 

「ナツ!グレイ! 二人で奴を追うんだ!!」

 

 

すぐさまエルザは二人にそう言って視線を送る。

呼ばれた二人は揃って「む」と答えた。

 

 

「おまえたち二人が力を合わせれば、エリゴールにだって負けるハズがない。ここは私とレア、ルーシィでなんとかする」

 

「なんとか…って、あの数を女子三人で?」

 

 

エルザはそう言うが、ルーシィは目の前の鉄の森(アイゼンヴァルト)の軍勢を信じられないものを見るかの様な目で見た。

一方ナツとグレイはというと、「なんでコイツと…」というかの如く互いに互いを睨み合っていた。

 

 

「エリゴールは呪歌(ララバイ)をこの駅で使うつもりだ。それだけはなんとしても阻止せねばならない。

 

聞いているのかっ!!!」

 

「「も……もちろん!!」」

 

 

エルザの言葉が炸裂した。

こうかはばつぐんだ!

 

 

「行け!!」

 

「「あいさー!」」

 

 

エルザの号令。

ナツとグレイは肩を組んだままさっさとその場を離れていった。

そんな中、ルーシィは一人「最強チーム解散」とボヤいていた。

 

 

「オレが仕留めてくる!!」

 

「こっちも!! あの桜頭だけは許せねえ!!! アイツを仕留めたら今度はてめえだからな青髪女!!!」

 

 

そう言って鉄の森(アイゼンヴァルト)のレイユールは指に巻きついているリボンを伸ばして立体機動に移り、カゲヤマはレアに向かって一度吠えると自身の影の中に潜って行った。

 

 

「…オマエじゃあナツに勝てないの」

 

 

吠えられたレアは返す相手の居なくなった鉄の森(アイゼンヴァルト)に静かにそう答えた。

 

 

「あらあら。レイユールとカゲは好戦的だのう。あんなの放っといてお姉ちゃんと遊んだほうが楽しいだろうに」

 

「作戦の為だよ。オマエよりずぅーっとエライ」

 

 

残されたレイユールとカゲヤマのチームメンバーであるビアードとカラッカはそれぞれそう言った。

 

 

「こいつ等片づけたら、私たちもすぐに追うぞ」

 

「うん」

 

 

エルザがそう言うも、ビアード含め鉄の森(アイゼンヴァルト)数人が鼻で笑い、厭らしい視線を三人に向ける。

 

 

「女三人で何ができるやら……。それにしても三人ともいい女だなァ」

 

「殺すにはおしいぜ」

 

「とっつかまえて売っちまおう」

 

「待て待て、妖精の脱衣ショー見てからだ!」

 

 

ルーシィはそれらのは言葉に酔い、トリップしていた。

そこからなんとか呼び戻そうとする猫2匹。

レアは何も言わず、足に水流を纏った。

そしてエルザは卑猥な発言の数々に眉を顰めた。

拳を前に突き出せば、彼女の手の中に魔力が集まっていく。

 

 

「下劣な。これ以上妖精の尻尾(フェアリーテイル)を侮辱してみろ。貴様等の明日は約束できんぞ」

 

 

すると集まった魔力は形となり、エルザの手元には一本の剣が現れた。

 

 

「剣が出てきた! 魔法剣!!」

 

「めずらしくもねえ!!」

 

「こっちにも魔法剣士はぞろぞろいるぜぇ」

 

「その鎧ひんむいてやるわぁ!!」

 

 

ルーシィが驚く中、鉄の森(アイゼンヴァルト)も戦闘態勢に入る。

エルザ同様魔法剣を手に取った大量の魔導士が襲いかかる。

エルザは一度彼らを一瞥すると、真正面から飛び込んだ。

そのまま彼女は有象無象の間に滑り込み、彼らを縫うように通り抜け、通り抜けると同時に斬りつけて次々と戦闘不能にしていく。

斬りつけられた者からは血が吹き出し、バッタバッタと倒れていく。

そんな様子に味方であるルーシィも目を見開き、その場で硬直していた。

 

 

「チィッ、遠距離魔法(とびどうぐ)でもくらえ!!」

 

 

近接戦闘では分が悪いと判断した鉄の森(アイゼンヴァルト)の面々は手に魔力を収束させて魔力弾を放とうとする。

が……。

 

 

「なっ…おごっ!?」バキィッ

 

「槍!!!」

 

 

気づいた時にはエルザが手に持っていたのはさっきの魔法剣ではなく、槍であった。

槍の長距離射程によって空中から遠距離攻撃持ちを一蹴し、地面に着地する。

と……。

 

 

「今度は双剣!!?」

 

 

エルザが着地していた時にはさっきまでの槍は無く、双剣を手に周りを斬り刻み着地の隙を見せない。

かと思えば……。

 

 

「斧!!?」

 

 

再び彼女の手元からは先の武器は消え、新たな武器を持って鉄の森(アイゼンヴァルト)を蹂躙していた。

 

 

「こ……この女……なんて速さで "換装" するんだ!!?」

 

「換装?」

 

 

聞き慣れない言葉に、ルーシィがキョトンとする。

 

エルザが戦闘で用いる魔法剣の理屈はルーシィの星霊とよく似たものである。

別空間にストックされている武器を呼び出すというメカニズムであり、その武器を持ち換えることを換装という。

 

 

「エルザのすごいトコはここからだよ」

 

 

ルーシィに換装の一通りの説明を終えたハッピーが、不敵に笑った。

鉄の森(アイゼンヴァルト)陣営はただ一人、丸い体のたらこ唇、カラッカのみがエルザの名前にピクリと反応した。

 

 

「まだこんなにいるのか…。面倒だ。一掃する」

 

 

エルザがそう言うと、彼女の鎧はみるみる剥がれていく。

その様子に鉄の森(アイゼンヴァルト)は目を釘付けにされ手が止まり、ルーシィも思わずエロいと零した。

煙が立つ。

しかしその煙はゆっくりと晴れ、完全に別の姿になったエルザが彼らの目に映った。

 

 

「魔法剣士は普通、 "武器" を換装しながら戦うのよ。けどエルザは、自分の能力を高める "魔法の鎧" にも換装しながら戦う事ができるかしら」

 

 

ハッピーに続いてフリーシャが説明に入った。

そのフリーシャも笑みを顔に貼り付けている。

 

 

「それがエルザの魔法…『騎士(ザ・ナイト)』!!!」

 

 

煙が完全に晴れ全員の目に入ったのは、四枚の翼が特徴の銀色のドレスのような鎧。

名を天輪の鎧。

この鎧を着用すると、同時にいくつもの武器を使用することが可能となり、背後には何本もの剣が宙を舞っている。

 

 

「エルザ…!? こいつまさか…」

 

「舞え、剣たちよ」

 

「ま…間違いねえっ!! コイツぁ妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女、妖精女王(ティターニア)のエルザだっ!!!」

 

 

カラッカが思い出したかのように叫ぶが、そんなもの鉄の森(アイゼンヴァルト)に届いていなかった。

円を描いた剣はエルザの周囲の者共に向き……。

 

 

循環の剣(サークルソード)!!」

 

 

一斉に放たれた。

勢いよく飛ばされた剣は有象無象を一瞬で戦闘不能にした。

しかし……。

 

 

スゥッ……

 

 

「「「……は?」」」

 

 

エルザは自身の天輪の鎧を通常の鎧に戻した。

しかし彼女の周りにはまだ数十人の鉄の森(アイゼンヴァルト)メンバーがいた。

突然解除された魔法に、鉄の森(アイゼンヴァルト)の面々は素っ頓狂な声を漏らす。

 

 

「く……やはり魔動四輪をとばしすぎたか」

 

 

とうとう彼女は膝をついた。

そう、彼女の現在の魔力量はカラッカラな状態であり、立って、ましてや戦闘をしているのも不思議なくらいだった。

 

 

「なんだか知らねえが今だー!!」

 

「ひゃははははっ!!! もう一度その素肌ご開帳してやらァ!!」

 

 

一斉に飛びかかる鉄の森(アイゼンヴァルト)

だがその魔の手は彼女には届かない。

なぜなら……。

 

 

「うごぉ!!」

 

「ぐあっ!」

 

「ぎゃあ!!」

 

 

荒ぶる水流がエルザの周囲を包み、襲いかかる者を派手に吹き飛ばしたからだ。

こんな事ができるのはただ一人。

 

 

「水竜の抱擁……おまえたちのような下っ端では、女王様の首には届かないの」

 

「レアーッ!!」

 

「レ…レア?」

 

 

ルーシィの叫びに、またもやカラッカが反応したのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

「二人で力を合わせればだぁ? 冗談じゃねえ」

 

「レアはともかく、火と氷じゃ力は一つになんねーしな。無理」

 

 

レアがエルザからバトンタッチされた頃、エリゴールを追うように言われたナツとグレイは通路を走りながらいがみ合っていた。

 

 

「「だいたいエルザは勝手すぎるんだよっ!! なんでもかんでも自分一人で決めやがって!!

エリゴールなんかオレ一人で十分だっての!!!

マネすんなっ!!!」」

 

 

見事なシンクロ率である。

どこかでリハーサルでもしたのでは無いだろうか。

走りながら器用に喧嘩していると、二人は別れ道に差し掛かった。

 

 

「どっちだ?」

 

「二手に分かれりゃいいだろーが。……いいかナツ」

 

 

互いに背を向けた所で、グレイが声を掛けた。

 

 

「相手は危ねえ魔法ぶっ放そうとしてるバカヤロウだ。見つけたら叩き潰せ」

 

「それだけじゃねえだろ? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)にケンカ売ってきた大バカヤロウだ。黒コゲにしてやるよ」

 

 

グレイの言葉にナツは当然だと返した。

思いは同じという事を確認した二人はにいっと笑ってみた。

しかしそんな事をするのが恥ずかしかったのかバカらしかったのか、二人仲良く頬を膨らませて「ふん!」とそっぽを向いた。

 

 

「……死ぬんじゃねーぞ」

 

「ん?」

 

「なんでもねえよ!!! さっさと行きやがれっ!!!」

 

 

ボソッと言ったグレイの言葉はナツに聞こえてない事をいい事に胸の奥へ仕舞い込み、さっさとその場を離れていった。

 

 

「チィ。呪殺の音色をあんなモンで流されたらたまったモンじゃねえぞ!!」

 

 

ナツと離れてしばらくして、グレイは通路のスピーカーを見ながらそう悪態着く。

だが、自分の言葉に動きがピタッと止まった。

 

 

「流す!?」

 

 

そう呟いた時には、グレイは踵を返していた。

 

 

「そうかっ!!呪歌(ララバイ)を放送するつもりなら、エリゴールは拡声装置のある部屋にいるハズじゃねえかっ!!!」

 

 

気づいたグレイは、急いで放送室に向かっていった。

 

 

〜〜〜

 

 

「今度は嬢ちゃんが相手してくれんのかぁ?」

 

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)視点、今まで無双していた女が急にリタイアした事により、完全に調子づいて相対するもう一人の女、レアにジリジリと距離を詰める。

そんな中、レアは静かに足に水流を纏う。

 

 

「さっき吹き飛ばしたばかりなのに……学習能力無いの?」

 

 

かなり辛辣な言葉を投げかけ、戦闘が始まった。

いや、戦闘というには、余りにレアが一方的すぎた。

 

 

「水竜の鉤爪!」

 

「「「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!」」」

 

 

蹂躙。

レアの放つ水流は荒れ狂う海が如し。

人間が大自然の力に適うはずもなく、ただただ押し流される。

 

 

「こんのヤロォ! 俺様が相手じゃあ!!」

 

 

ここまで傍観を決め込んでいたビアードも両手に光を纏いながらレアに襲いかかる。

しかしレアは慌てる様子も無く、深く息を吸い込む。

そのちょっとした動作に、ビアードの隣にいたカラッカがハッと気づいてエルザの時と同様……いや、それ以上に声を荒らげた。

 

 

「こ、コイツ…! 絶対そうだ!! コイツは双竜の片割れ……水竜(リヴァイアサン)のレアだぁ!!!」

 

「水竜の咆哮!!!」

 

 

答え合わせかのように解き放たれた水流のブレス。

轟々と駅のホームに渦巻く水の音が反響する。

ブレスは一直線にビアードの方向へと向かい……。

 

 

ズギャアァァァアアアン!!!

 

 

カラッカを残した他の鉄の森(アイゼンヴァルト)の面々をも巻き込み、後方にあった列車に叩きつける。

バキバキバキと鉄の軋む音や木材が剥がれる音が鉄の森(アイゼンヴァルト)の者たちの耳を劈き、その意識を刈り取った。

文字通りの瞬殺。

ブレスが止む頃には水浸しになったボロボロのメンバーの姿がカラッカの目に映り、ひいっ!!と声を上げて逃走しだした。

 

 

「エリゴールの所に向かうかもしれん! ルーシィ、追うんだ!!」

 

「えーっ!? あたしがっ!!?」

 

「頼む!!」

 

「はいいっ!!!」

 

 

エルザからの唐突な頼みに混乱、動揺するルーシィだったが、エルザの有無を言わせない形相で睨み、二つ返事でルーシィは駆け出した。

同時に、ひと仕事終えたレアはエルザの元に寄り、エルザを纏っていた水流のバリアを解除した。

 

 

「済まない、レア。助かった」

 

「ん、別に大丈夫なの。じゃ、レアはナツを追いかけるの」

 

 

レアの頭の中では、ナツを追いかければエリゴールを追いかける事になる。

エリゴールを追いかければ、あの男カラッカをも追いかける事になる。

さらに長年チームを組んでいた事で連携も取りやすいナツと合流出来るという事で、一石三鳥の得があると考えていた。

ナツの居場所なら、レアであらばにおいですぐに探知、合流できるという点もエルザは考え、二つ返事で了承した。

一人残されたエルザは、何とかその重い体を持ち上げ、駅の前に集まっている群衆を離れさせるため、外へ向かった。

 

 

〜〜〜

 

 

タッタッタッ……

バギィッ!!

 

 

レアがナツのにおいを追って駆け出した頃、グレイは放送室の扉を蹴破った。

入って辺りを見渡すグレイだが、すぐさま疑問符を浮かべた。

理由は単純明快、そこがもぬけの殻だったからだ。

 

 

「なぜ居ねぇ? 放送するならココからしかできねえだろ?」

 

 

その天井に怪しく笑みを浮かべる男が一人。

十本の指に巻きついているリボンを天井裏に突き刺しながら逆さまになってグレイを観察している。

 

 

「待てよ……ココに居ねぇのはおかしい……。放送が目的じゃないのか?」

 

 

次の瞬間、男……レイユールは片方のリボンを天井から剥がし、グレイの方に向ける。

頭を狙ったリボンは真っ直ぐ飛んでゆき……。

 

 

ズババババッ!!

 

 

先程までグレイが立っていた場所を激しく斬り裂いた。

その当の本人は間一髪で避けており、攻撃を仕掛けたレイユールと対面する。

そしてレイユール本人も天井に刺したままのリボンを伸ばしながらゆっくりと地面に降り立つ。

 

 

「オマエ…勘が良すぎるよ。この計画には邪魔だな」

 

「やっぱり何か裏があるって事か? まったく……仕事もしねーでなーにしてんだか……」

 

 

土煙が舞う放送室の中、徐々に……感知できない程だが、気温が下がり始めた。

 

その直後……オシバナ駅を渦巻くように風が巻き起こり、妖精たちを捕らえる事になることを……彼らはまだ気づいていない……。




…戦闘ってよりもう一方的な蹂躙でした。
一応レアのオリジナルの技について補足。

水竜の抱擁
自分、または対象に水流のバリアを纏わせる。並大抵の攻撃なら簡単に弾く事ができ、物理で突破しようものならカウンターを食らう。
さらに、応用として水流の向きを変えれば対象を閉じ込めることも可能。
ただし、上級魔法のような高度で威力が桁違いの魔法は防ぎきれず、破られてしまう。

使い勝手が良いので今後ちょくちょく出るかもしれない技です。
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