妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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ごめんなさい、一話抜けてました


妖精達は風の中

 

ここは、地方ギルドマスター連盟の定例会会場。

 

 

「マカロフちゃん、あんたんトコの魔導士ちゃんは元気があっていいわぁ〜〜〜♡ 聞いたわよ。どっかの権力者コテンパンにしちゃったとかぁ!」

 

「おー! 新入りのルーシィじゃあ!あいつはいいぞぉっ!! モチモチ、ボヨヨンじゃあ!!!」

 

 

マカロフに話しかけるこの男(女性のような話し方だが男)ボブはフィオーレ王国の大きな魔導士ギルドの一つ、青い天馬(ブルーペガサス)総長(マスター)である。

そんな二人の話に乗っかる総長(マスター)がまた一人。

 

 

「元気があるのはいいが、てめェんトコはちぃとやりすぎなんじゃないかい?」

 

 

四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)総長(マスター)であるゴールドマインである。

 

 

「評議員の中じゃいつか妖精の尻尾(フェアリーテイル)が町一コ潰すんじゃねえかって懸念する奴もいるらしいぞ」

 

 

厳格で渋い声でそう言うゴールドマインだが、マカロフはマトモに受け止める気は無いらしく、ルーシィに対するセクハラ発言をかましながらヒョロヒョロ踊っている始末。

蛙の子は蛙というように、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士がこう破天荒になったのはこの爺さんが一番の原因では無かろうか……。

そんな時、両足で手紙を掴んでいる小鳥がマカロフの元に寄ってきた。

 

 

「マカロフ様。ミラジェーン様からお手紙が届いています」

 

「ん?」

 

 

酔いがまだ覚めていないマカロフは軽い気持ちでその場で手紙を開く。

中から、ホログラムのようにミラの上半身が現れた。

 

 

総長(マスター)、定例会ご苦労様です』

 

「どうじゃ!!こやつがウチの看板娘じゃ!!めんこいじゃろぉ!?」

 

 

完全に鼻の下を伸ばしきったマカロフが他のギルドマスターにミラを紹介して自慢する。

彼女が小さい頃、面識のあったボブ、ゴールドマインも何処か嬉しそうにその様子を見ていた。

 

 

『実は、総長(マスター)が留守の間、とても素敵な事がありました!』

 

「ほう」

 

『エルザがあのナツ、レア、グレイの三人とチームを組んだんです!もちろんルーシィ、ハッピー、フリーシャも一緒に』

 

「!!!」

 

『ね、素敵でしょ?』

 

「……」

 

 

手紙では続けて最強チームと思うというような事を言っていたが、マカロフの内心はそれどころでは無かった。

ピクピクと小刻みに震えているマカロフからは尋常ではない量の汗が吹き出しており、手紙のミラが内容を伝え終え消えても尚汗は止まらない。

ミラが姿を消したと同時に、マカロフはパタッと倒れた。

 

 

「あらあら……」

 

「心配が現実になりそうだな…」

 

「(な…なんて事じゃあ。本当に町一つ潰しかねん!! 定例会は今日終わるし、明日には帰れるか……。それまで何事も起こらずいてくれえぇ頼むっ!!!)」

 

 

事情が分からない他のギルドマスターはワーワーとマカロフが倒れた事に騒ぎ立てるが、事情を知るものたちはマカロフの心配よりも、彼らが訪れる町の心配が先に浮かんでいたのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

「知らねぇんだよ……魔風壁の解除なんて……オレたちができる訳ねぇだろ……」

 

 

あの後、エルザは何とか一人で歩ける程まで魔力が回復し、駅の外に群がる人々を荒い方法でありながらも逃がした。

しかし、突如として出現した駅を覆う程の風の渦……魔風壁により、エルザを除いた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者たちは閉じ込められてしまう。

そのエルザもエリゴールに不意を付かれるという形で魔風壁の内側に押し込まれ、他の者同様出られなくなってしまったのだ。

現在、エルザはレアによって瞬殺された鉄の森(アイゼンヴァルト)の実力者の一人であるビアードに、鉄の森(アイゼンヴァルト)の本当の目的と、魔風壁の解除方法を尋問する。

しかし、本当の目的……オシバナ駅の先にある終点、クローバーの町にいる定例会を行っているギルドマスターである事を聞き出せたはいいものの、魔風壁に関してはどうする事もできないようだった。

 

 

「エルザー!!」

 

 

そんな時、グレイの声がエルザとビアードの耳に入る。

彼も傷つきながらも無事レイユールとの戦闘に勝利した。

今頃彼は放送室でグレイの怒りに触れたことによって顔面を凍らされて放っていかれているところだろう。

グレイもレイユールから鉄の森(アイゼンヴァルト)の本当の目的を聞き、内心穏やかでは無かった。

魔風壁についてもここに来るまでに確認済みであり、無理に出れば体がズタズタになる事も理解できた。

八つ当たり気味に倒れている鉄の森(アイゼンヴァルト)に当たるグレイだが、実力者であるビアードが無理だと言っているのだ。

彼らでは到底無理だろう。

すると、エルザがハッ!と何かを思い出した。

 

 

「そういえば、鉄の森(アイゼンヴァルト)の中にカゲと呼ばれてた奴がいたハズだ!! 奴は確かたった一人で呪歌(ララバイ)の封印を解除した!!!」

 

解除魔導士(ディスペラー)か!? それなら魔風壁も!!」

 

 

グレイも理解したようで、目を見開きながら額から流れた血を拭う。

彼らの言葉が正解と言わんばかりに、ビアードは舌打ちを一つ打った。

であればやることは一つ。

 

 

「探すぞ! カゲを捕らえるんだ!!」

 

 

そう言って二人は駆け出した。

彼らの姿が見えなくなると、ビアードは柱の方に顔を向けた。

 

 

「カラッカ……いつまでそこに隠れてる…居るんだろ?」

 

 

突然そんなことを柱に向かって言うビアード。

だが、そこには確かに人がいた。

何の変哲もない柱から、いつぞやのたらこ唇にまん丸男、レアの蹂躙によって逃げ出したカラッカがぬうっと姿を現した。エバルーの土潜(ダイバー)とは違い、完全に柱と同化していた様で、柱には傷一つ無い。

 

 

「ス……スマね…」

 

「聞いてただろ? カゲが狙われている。行けよ」

 

 

力の無いビアードの言葉にカラッカは冷や汗をかきながら答える。

 

 

「か…勘弁してくれ!! オレには助太刀なんて無理だ!!」

 

 

カラッカの言う通り、彼の魔法では真正面から妖精の尻尾(フェアリーテイル)に挑んでもビアードや他の者同様返り討ちに逢うのが目に見えている。

しかし、彼の魔法であらば、他の者よりも簡単にできる事があり、それは同じチームメンバーであるビアードが一番よく分かっていた。

 

 

「もっと簡単な仕事だよ……」

 

「…え?」

 

 

怪しく笑うビアードに、カラッカの冷や汗は湧き出るのが止まらなかった。

 

 

〜〜〜

 

 

「あーあ……完全に見失っちゃったよ」

 

「あい」

 

 

一方、エルザから半ば脅される形で逃げ出した男……カラッカを探していたルーシィとそれに着いてきていたハッピーとフリーシャ。

カラッカの無機物に潜る魔法のせいもあって、三人は完全に彼を見失った。

 

 

「ねえ……一旦エルザのとこ戻らない?」

 

 

見失ってしまったのだから、情報を共有しようとそう提案するルーシィ。

だが、ルーシィの言葉を聞いたハッピーとフリーシャは揃ってガクガクブルブルと体を震わせ、あまつさえ身を寄せ合っている。

 

 

「な…何よ」

 

 

突然揃って体を震わせる猫二匹をルーシィは訝しげに見る。

体どころか声も震わせながら先に口を開いたのはハッピーだった。

 

 

「エルザは「追え」って言ったんだよ」

 

「ルーシィはすごいかしら……あのエルザの頼みを無視するのよ」

 

「ホント、あのエルザの頼みをねぇ〜……。エルザにあんな事されるルーシィは見たくないなぁ」

 

「リーシャも見たくないかしら……あんな事されるルーシィは……」

 

「あ…あたし何されちゃう訳!!?」

 

 

全容は掴めないが、どうやらエルザの頼みを無視すれば大変な目に会うかもしれないという共通認識を持つハッピーとフリーシャの言葉に、ルーシィまでもが体を震わせる。

そこからの態度の豹変具合は面白いものであった。

 

 

「わ…わかったわよ!!探します!!! 見つかるまで探しますッ!!!」

 

「ルーシィってコロコロ態度変わるよね」

 

「手のひらに付いてるドリルが恐ろしい勢いで回転してるかしら」

 

「もおおっ!!うるさいなあっ!!! てか、何でアタシになついてんの!?このネコ達ィ!!!」

 

 

ルーシィの百面相。

ハッピーとフリーシャには効果が無いようだ!

 

 

〜〜〜

 

 

ドゴオオオォォォン!!!!

 

 

また場所は変わってナツの元。

彼は今エリゴールを追って、部屋の壁という壁を破壊していた最中、喧嘩を売られたカゲヤマを伸した所だった。

カゲヤマの切り札である八つ影(オロチシャドウ)を使うも正面から突破され、火竜の咆哮にてトドメを刺したのだ。

しかし戦闘を始める前にカゲヤマ自身が倒されたらエリゴールの場所を教えると安易に言った為、ナツに手加減され意識までは刈り取られなかった。

 

 

「ナツー!!」

 

「おう! レア、遅かったな!もう終わったトコだぞ!!」

 

 

すると、丁度やって来たのはナツのにおいを辿ってきたレアだった。

地面に伏したカゲヤマはレアを見て自分がボロボロであるのも忘れてギョッと目を見開いた。

 

 

「バカな…! 何でお前がここに……他の奴らはどうした…!?」

 

「ん? 倒したの」

 

「なっ!!?」

 

 

あっけらかんと答えるレアにカゲヤマは絶句する。

あれだけの数を女三人(実質二人)で倒し切るなぞ思いもよらなかった。

目の前ではさっき自分を打ちのめした桜頭とあの数の魔導士を全滅させた青髪がここにいる目的も忘れているかのように和気あいあいと話している。

 

 

「ていうかナツ。アイツからエリゴールの居場所聞くんじゃないの?」

 

「あ、そうだった。てことでお前! 俺が勝ったんだから、約束通りエリゴールの場所言えよ!!」

 

 

ようやく現実に戻ってきた二人は揃ってカゲヤマに向く。

だが、その言葉でカゲヤマは自身の…自身らの勝利は確定しているかのようにほくそ笑んだ。

 

 

「くくく…バカどもめ。エリゴールさんはこの駅にはいない……」

 

「は?」

 

「どういう事なの?」

 

 

ナツとレアは揃って理解出来なかった。

エリゴールの目的はここで笛の音を流すことによる無差別殺人であると思っている二人は、ここにその笛の音を流すエリゴールがいないことに頭に?が浮かぶ。

そんな時、聞き知った声が二人の耳に飛び込む。

 

 

「ナツー!それ以上はいい!! 彼が必要なんだ!!」

 

「うお!?なんだなんだ!!?」

 

 

魔風壁の解除を唯一行えるであろうカゲヤマを探していたエルザとグレイが合流したのだ。

先程のナツのトドメの一撃が駅全体に響いており、彼らもこの場所を特定できたという事だ。

ルーシィたちが音の原因を探って合流するのも時間の問題だろう。

 

 

「でかしたクソ炎!! レアも合流できてるのは丁度いい! 説明してるヒマはねえがそいつを探してたんだ」

 

「私にまかせろ」

 

 

揃って状況がちんぷんかんぷんな双竜は同様に首を傾げる。

だがグレイの言った通り時間が無い故に、エルザは駆けてきた勢いのままカゲヤマの胸ぐらを掴んでは壁に叩きつけ、さらに剣を構えた。

 

 

「四の五の言わずに魔風壁を解いてもらおう。一回NOと言う度に切創が一つ増えるぞ」

 

「う…」

 

「オイ……そんなボロボロなんだ。いくらなんでもヒデェぞ」

 

「ん……。やっぱりエルザは危ないの……」

 

「黙ってろ!!」

 

 

鋭い目をさらに鋭くさせ脅しかけるエルザに、カゲヤマも冷や汗をダラダラと垂らしながら狼狽える。

それに加え事情を全く知らないナツとレアもエルザの鬼畜の所業を見てワナワナと震えている。

 

 

「いいな?」

 

「わ…わかっ……」

 

 

カゲヤマが恐怖のあまり縦に首を振ろうとしたその直後。

 

 

「ばっ…!? ぐふっ……」

 

「カゲ!!?」

 

 

突然、口から血を吐き出し、エルザに倒れかかったのだ。

カゲヤマの背中には短剣が深く刺さっており、カゲヤマの意識を完璧に刈り取った。

その背後には、カゲヤマを刺したと思われる男の姿が。

 

 

「(簡単な仕事だよ……。カゲを…殺せ!)」

 

 

駅の広場にて、ビアードにそう言われたカラッカの姿がそこにあった。

暗殺という面では、カラッカの魔法は恐るべき力を発揮する。

壁に入り込めるというのは簡単に言えば奇襲し放題であり、確かにカラッカ向きの仕事ではあった。

 

 

「カゲ!! しっかりしろ!! お前の力が必要なんだ!!!」

 

「マジかよクソっ!! 唯一の突破口が…」

 

「あ…うあ…あぁ……」

 

 

場が混乱に包まれる。

それは刺した本人も例外では無かった。

そんな中、黒い感情が渦巻く者が二人。

 

 

「…仲間……じゃねぇのかよ…」

 

「なんで? ……なんで…刺す……の…?」

 

「ひ、ヒイィィィ!!」

 

 

強く握られた拳と高ぶる怒りはナツとレアの魔力に顕著に現れ、二人の拳には迸る炎の荒れ狂う水が燈る。

ナツもレアも、同じタイミングで親竜が消え去り、同じタイミングで妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入り、二人とも同様に仲間は家族であると教えられた。

喧嘩することはあれど、ギルドの仲間は家族なのだと。

だが目の前の彼らはどうだ?

目的の為であらば平然と仲間を見捨てる、切り捨てる。

それをいとも簡単にやってのける。

 

目の前の男、カラッカの動揺の様子から、本人としてはやりたくなかったのだろうが、結果的にはカゲヤマを……仲間を切り捨てるほうを選んだ。

そもそもそのような思考になる事すらも、双竜には理解が出来なかった。

カラッカは二人の怒りをビリビリと肌で感じ、怯んで再び壁の中に潜り込む。

 

 

「同じギルドの仲間じゃねえのかよォ!!!」

 

 

しかし取り逃がすナツでは無い。

炎を纏った拳を構え、カラッカが潜り込んだ壁に一直線に向かい、殴り壊す。

破壊された壁の中からカラッカの姿を捉えたナツはすぐさま左手でカラッカの襟元を掴み、床に叩きつけた。

しかしまだ終わらない。

冷たい魔力を水に変換させ、足に纏ったレアが倒れているカラッカの上に飛び上がり、そのまま腹に向かって垂直落下する。

その丸い腹が大きく凹み、カラッカは中の物を全て口から吐き出しそうになるも、何とか飲み込んだ。

だが今の一撃で、カラッカの意識は完全に無くなった。

 

 

「それがお前たちのギルドなのかっ!!!」

 

「認めない!! レアはこんなギルド絶対に認めないのっ!!!」

 

 

しかし、未だに二人の怒りは収まる気配が無い。

その声はカラッカには聞こえないが、言わずにはいられなかった。

 

 

「カゲ!! しっかりしないか!!!」

 

「エルザ……ダメだ…意識がねえ」

 

「死なすわけにはいかん!! やってもらう!!」

 

 

一方倒れたカゲヤマの方は、簡易的な止血はしたものの、応急処置も済んでおらず、今の状態での意識の回復は絶望的である中、ひっきりなしにエルザが声をかけ続けている。

 

 

「やってもらうたって、こんな状態じゃ魔法は使えねえぞ!!!」

 

「やってもらわねばならないんだ!!!」

 

 

しかし現実は残酷なり。

例えカゲヤマが今ここで目覚めようと、この怪我ではグレイの言う通り怪我で上手く魔法は使えないだろう。

しかし彼の力が無ければ魔風壁の解除は不可能。

まさに八方塞がりであった。

 

 

「……お……お邪魔だったかしら…」

 

「あい…」

 

 

遅れて合流を果たしたルーシィ、ハッピー、フリーシャはあまりに緊迫した状況に、顔を引き攣らせることしか出来なかった。

死神が死のメロディーを奏でるまで……もう時間が無い。

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