妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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鉄の森編ラストです。
次回ナツの漢(?)の勝負を挟んだらガルナ行きます。


最強チーム

 

「コレが呪歌(ララバイ)なの?」

 

「ホントに気味の悪い笛かしら」

 

 

エリゴールとの一戦を終え、当初の目的であった呪歌(ララバイ)の回収に成功した『双竜』御一行。

レアが落ちていた呪歌(ララバイ)を拾い上げたその時だった。

 

 

「ナツー!! レアー!!」

 

 

聞き覚えのある声が耳に入る。

そちらに目を向けると、エルザの運転する魔動四輪が見えてきた。

 

 

「お! 遅かったじゃねえか」

 

「ん、もう終わったの」

 

 

そう言ってレアは持っていた呪歌(ララバイ)を高々と上げて振る事で、エリゴールを倒し、笛は回収した事を伝える。

それを運転していたエルザは今も尚魔力を車に供給し続けている事もあり、苦しそうながらも「さすがだ」と零し笑みを浮かべる。

一方、グレイはエリゴールはもう既に倒され、出番が無いことに不満なのかと「けっ」と呟いて二人を見ていた。

その後ろで、ナツがオシバナ駅から連れ出したカゲヤマが、レアの手に握られている笛を信じられないという形相で見ていた。

 

 

「そ……そんな! エリゴールさんが負けたのか!?」

 

 

そんなカゲヤマに答える者はおらず、グレイに続いて車を降りたルーシィは、運転席から降りたエルザに肩を貸す。

 

 

「ったく、あんなの相手に苦戦しやがって」

 

「苦戦? 圧勝だよ!」

 

「ん! オーバーキルで完全勝利なの」

 

「微妙なトコだね」

 

「オーバーキルはそうだけど結果論かしら」

 

 

やはり不満が拭いきれないグレイはボロボロの二人を見てそう言う。

確かに二対一で服をボロボロにされての勝利では苦戦していたと言われても仕方ないだろう。

ナツは上半身裸にマフラー、下半身は無事といえどボロボロになっているのには変わりなく、レアに至っては上はスポーツブラ一枚、下はホットパンツ一枚と、ギルドでいつも酒を飲んでいるカナよりも危ない格好だ。

水着と露出度はそう変わらない。

 

 

「何はともあれ見事だ。これで総長(マスター)たちは守られた」

 

 

話を切り替えたエルザの言葉に、みんな等しく笑い合う。

そのままクローバーに向かい、笛の処分についての指示を仰ごうと提案し、レアがエルザに笛を渡そうとしたその時…。

 

 

ブルウウゥゥン!ドゴオォン!!

 

 

「油断したな妖精(ハエ)ども! 呪歌(ララバイ)はここだ!!ざまあみろー!!!」

 

 

なんとカゲヤマが誰も乗っていない魔動四輪を乗っ取り、得意の影の魔法で笛を横取る。

そしてそのまま車を走らせ、高笑いを上げながらクローバーへと向かっていってしまった。

突然のカゲヤマの行動に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はしばらく動くことができなかった。

 

 

「あんのヤロォォォ!!!」

 

「何なのよ!! 助けてあげたのにー!!」

 

「追うぞ!!!」

 

 

エルザの掛け声で走り出す五人と二匹だが、車と人の足ではただただ離される一方であった。

 

 

〜〜〜

 

 

空はすっかり暗くなり、町に明かりが着きだす頃、ギルドマスターの集まる定例会会場を見下ろせる峠の上から見下ろす影が一つ。

 

 

「(よし…定例会はまだ終わってないみたいだな)」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)から呪歌(ララバイ)を取り戻したカゲヤマである。

 

 

 

「(この距離なら十分呪歌(ララバイ)の音色が届く。ついに……ついにこの時が…)」

 

 

ようやく自分たちの苦しみは終わる。

そう思って笑みを浮かべるカゲヤマだったが、突然その肩にポンと手を置かれる。

ビクッと心臓が跳ね上がり、ゆっくりと後ろを振り向くと…。

 

 

むぎゅう

 

 

「ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!! ゲホッゲホッ!!!」

 

 

人差し指がカゲヤマの頬に当たる。

手を置いた男の正体は妖精の尻尾(フェアリーテイル)総長(マスター)であるマカロフであった。

古典的なイタズラに引っかかった事が余程面白かったのか腹を抱えて笑う。

が、直後に噎せてしまった。

 

 

「いかんいかんこんな事してる場合じゃなかった。急いであの四人の行き先を調べねば…町一つ二つ消えかねん……!」

 

 

と、噎せた事が原因か本来の目的を思い出し、足早にそこを去ろうとする。

マカロフは包帯姿のカゲヤマを病院の患者と勘違いしたのか、病院に早く帰るよう催促した。

そこでカゲヤマも、この老人の正体が妖精の尻尾(フェアリーテイル)総長(マスター)であるマカロフだと言うことに気づき、慌てて引き止める。

 

 

「一曲…聴いていきませんか? 病院は楽器が禁止されているもので……」

 

 

マカロフに病人であるという誤解を利用し、そう近づく。

しかし緊張からか冷や汗は隠せておらず、マカロフは訝しげに見つめる。

 

 

「誰かに聴いてほしいんです」

 

「気持ち悪い笛じゃのう」

 

「見た目はともかく、いい音が出るんですよ」

 

 

マカロフは一度うーんと唸ってから、目を細めて口を開く。

 

 

「急いどるんじゃ。一曲だけじゃぞ」

 

「ええ。(勝った!)」

 

 

その言葉を待っていたと言わんばかりに笑うカゲヤマ。

よぉく聴くように一言入れ、笛を口に近づける。

これで吹けば全てが変わる。

カゲヤマの脳裏に浮かぶのは、仲間たちの正規ギルドに対する侮辱。

 

 

『正規ギルドはどこもくだらねェな!!』

 

『能力が低いくせに、イキがるんじゃねえっての!!』

 

『これはオレたちを暗い闇へと閉じ込め…生活を奪いやがった魔法界への復讐なのだ!!!』

 

『そんな事したって、権利は戻ってこないのよっ!!!』

 

 

ふと浮かんだのは、自分たちが見下し、散々バカにしてきた妖精(ハエ)のうちの一人の言葉。

自分の心臓の鼓動が早くなるのに気づく。

 

 

『もう少し前を向いて生きろよ、オマエ等全員さ』

 

『カゲ!! お前の力が必要なんだ!!!』

 

 

ドクン、ドクン……

 

 

『同じギルドの仲間じゃねえのかよ!!!』

 

『レアはこんなギルド絶対に認めないのっ!!!』

 

 

ドクンドクンドクン!

 

自分の心臓の鼓動がうるさい。

しかし、妙に胸につっかえる何かが、笛を吹くことを拒んでいる。

そうこうしているうちに、カゲヤマを追いかけていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)一行が、ようやく追いついた。

 

 

「いた!!」

 

「じっちゃん!!」

 

「おじいちゃん!!」

 

総長(マスター)!!」

 

 

カゲヤマを止めようと、茂みから飛び出そうとする。

しかし、それを止めたのはマカロフの同期である青い天馬(ブルーペガサス)総長(マスター)であるボブだった。

 

 

「今イイトコなんだから見てなさい♡」

 

 

と、直ぐにナツとグレイへ標的変更(ロックオン)するボブに、ルーシィは少し引いた態度を取る。

 

 

総長(マスター)ボブ!」

 

「あらエルザちゃん大きくなったわね」

 

 

思わぬカミングアウトに、ルーシィも思わず「この人が!?」と声を上げる。

と、そんな茶番を繰り広げている間にも、事態は進展していた。

 

 

「どうした? 早くせんか」

 

「……」

 

 

一刻も早く問題児四人の行方を追いたいマカロフはそう催促する。

カゲヤマ自身、胸のつっかかりは取れておらず、モヤモヤする気持ちが残るまま笛を握る力を加える。

いよいよかと思ったエルザが再び飛び出そうとするも、今度はボブとは別の者に止められる。

 

 

「だから黙ってなって。面白ェトコなんだから」

 

 

四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)総長(マスター)であるゴールドマインであった。

ニヤニヤした表情でマカロフ達のことの成り行きを見守る。

そしてマカロフも、細めていた目を開き、下からカゲヤマを睨み上げた。

 

 

「さあ」

 

「…!!!(吹けば……吹けばいいだけだ。それで全てが変わる!!!)」

 

 

圧に耐えきれず、笛を口に付けるも、やはり吹けない。

心でそう叱責するが、次のマカロフの言葉に、全身が凍る感覚を覚える。

 

 

「何も変わらんよ」

 

「!!?」

 

 

全身の鳥肌が逆立つ。

確実にさっきの心の声は自身の内に秘めていたはずなのに、マカロフは心が読めるかのようにそう言い放った。

 

 

「弱い人間はいつまで経っても弱いまま。しかし弱さの全てが悪ではない。もともと人間なんて弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だからギルドがある。仲間がいる」

 

 

自分の心の内を見透かしているかのように、的確に言葉を連ねるマカロフ。

カゲヤマは動くことも出来ず、ただただその言葉に耳を傾ける。

 

 

「強く生きる為に寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし、遠回りをするかもしれん。しかし明日を信じて踏み出せば、おのずと力は湧いてくる。強く生きようと笑っていける。

そんな笛に頼らなくてもな」

 

 

そう最後に締めくくり、ニカッと笑った。

 

 

「(さすがだ……。全てお見通しだったか…)」

 

 

感服。

それに尽きた。

力なく笛を落とし、カゲヤマは地面に膝を着いてマカロフに頭を垂れた。

 

 

「参りました」

 

 

六文字の降伏の言葉によって、鉄の森(アイゼンヴァルト)との戦いに決着が着いた。

近くで隠れていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々もマカロフ向けて飛び出した。

 

 

総長(マスター)!!」

 

「じっちゃん!!」

 

「おじいちゃん!!」

 

「じーさん!!」

 

 

それぞれの呼び方で飛び出し、笑顔でマカロフを囲った。

一方マカロフはというと理解不能というばかりに目を見開かせていた。

 

 

「ぬぉおぉっ!!なぜお主らがここに!!?」

 

「さすがです! 今の言葉、目頭が熱くなりました!!!」ガシャッ

 

「固ーっ!!!」

 

 

真っ先にエルザがマカロフに近づき、抱擁を与える。

しかし本日三回目、被害者四人目ともなればもう良いだろう。

鎧に頭を打ち付けて痛い思いをするだけに終わった。

エルザから解放されたマカロフは、今度はナツとレアから交互に頭をペシペシと叩かれる。

 

 

「じっちゃんスゲェなァ!!!」

 

「ん! 言葉だけで止めちゃったの!!」

 

「そう思うならペシペシせんでくれい……」

 

「ホラー ……アンタ医者行くわよ」

 

「よくわからないけどアンタもかわいいわ〜〜♡」

 

 

一方力なく項垂れているカゲヤマにはルーシィが近づき、総長(マスター)ボブも彼をロックオンする。

一件落着。

そう思われた時だった。

 

 

『全く……どいつもこいつも根性のねェ魔導士どもだ』

 

 

なんと、笛であるはずの呪歌(ララバイ)が突然目を光らせ、言葉を発した。

その頭上には巨大な魔法陣が現れ、笛からは煙が出てくる。

 

 

『もうガマンできん。ワシが自ら喰らってやろう』

 

 

そして煙はだんだんと形になっていく。

頭上の魔法陣が消え、代わりに現れたのは…。

 

 

『貴様らの魂をな……」

 

 

巨大な木のバケモノだった。

大きさは定例会会場を悠々と超えており、腹には巨大な穴がポっコリと空いている。

所々に樹木を思わせるような木の枝が生えており、顔は笛の時と変わらない三つ目がコチラを睨みつけている。

 

 

「な…何だ!? こんなのは知らないぞ!!」

 

「あらら大変…」

 

「こいつァゼレフ書の悪魔だ!!!」

 

 

誰しもが突然現れたバケモノに目を奪われ、定例会会場は大パニック状態だ。

助太刀しようにも、その半数以上が年老いた老人。体の不調を訴える者も出ており混乱を極めている。

 

 

「一体……どうなってるの? 何で笛から怪物が……」

 

 

誰もが抱えた疑問を口に代弁したルーシィ。

それに対し、正体を知っているであろうゴールドマインが解答した。

 

 

「あの怪物が呪歌(ララバイ)そのものなのさ。つまり、生きた魔法。それがゼレフの悪魔だ」

 

「黒魔導士ゼレフ。魔法界の歴史上最も凶悪だった魔導士……。何百年も前の負の遺産がこんな時代に姿を現すなんてね…」

 

 

ゴールドマインに続いてボブも口を開く。

テンションは変わりないようだが、その額には冷や汗が流れており、現状のヤバさをヒシヒシと感じていた。

 

 

「さあて……どいつの魂から頂こうかな」

 

「なんだと……!!」

 

「……魂って食べれるの?」

 

「そこじゃないでしょ!!!」

 

 

呪歌(ララバイ)の実質の死刑宣告に、レアがいつもの天然をカマしてルーシィにツッコまれる。

良くも悪くも緊張感が無い。

その間に国の軍隊が現れたが、呪歌(ララバイ)の放った魔法が山一つを消し飛ばし、さっさと退却してしまった。

 

 

「決めたぞ。全員まとめてだ」

 

「おもしれェ!! やってみやがれ!!!」

 

 

再び呪歌(ララバイ)がコチラへと振り向き、そう告げる。

山一つ破壊する怪物と相対するは妖精の尻尾(フェアリーテイル)であるナツ、レア、グレイ、エルザの四人である。

 

 

「たった四人で、何するつもりなの…?」

 

「ルーシィは?」

 

 

しかし同じチームであるハズのルーシィは戦闘には参加しないらしく、四人よりかは一歩引いた、しかし守るべきギルドマスター達よりかは前にという微妙な場所に立っていた。

ハッピーの言葉に、ルーシィはそっぽを向く。

 

 

「今日は使える星霊いないし、みんなの足引っ張るかもしれないし…」

 

「言い訳かしら」

 

「うるさい猫っ!!」

 

 

のほほんと嬉しそうに撤退するルーシィにそう言葉を挟んだフリーシャ。

しかし、戦闘開始はすぐた。

呪歌(ララバイ)は再び魔法陣を展開し、周囲に不協和音を発する。

思わず耳を塞ぎたくなるような不快感の中、妖精の尻尾(フェアリーテイル)総長(マスター)であるマカロフだけは、ニヒリと笑ってみせる。

 

 

「行くぞ!」

 

「「おう!!」」

 

「ん!」

 

 

エルザが声を上げて先陣を切り、続けて三人も呪歌(ララバイ)にかかる。

いの一番に飛び出したエルザはすぐさま自身の鎧を" 天輪の鎧 "へと換装し、二本の剣を用いて呪歌(ララバイ)の胸を切りつける。

それに続いたのはグレイだ。

 

 

「アイスメイク "槍騎兵(ランス) "!!!」

 

 

無数の氷の槍が飛び出し、その全てが呪歌(ララバイ)の巨大な体に命中する。

あまりの破壊力に大きく怯んだ呪歌(ララバイ)

だがまだまだ。

 

 

「これでも食らえ! 火竜の鉄拳!!!」

 

「木は木らしく埋まっているの!!! 水竜の鉤爪!!!」

 

 

ナツが炎を纏った拳を呪歌(ララバイ)の顔面に叩き込み、レアがその頭上から水流を纏った足でかかと落としを決めた。

 

 

「小癪な! 鬱陶しいわァ!!!」

 

 

呪歌(ララバイ)も負けじとその巨体を振るうが、四人には当たる気配は無く、再び斬られ、氷の槍を撃ち込まれ、炎と水の打撃を叩き込まれる。

呪歌(ララバイ)に対して一切隙を見せず、一切休息も与えないその連携ぶりに、その場にいる全員が目を見開かせる。

だが、ようやく呪歌(ララバイ)のターンである。

頭上に展開されていた魔法陣が口に取り込まれ、周囲が地響きで揺れる。

 

 

「なんかヤバそう!!」

 

呪歌(ララバイ)来るよ!!!」

 

 

そう。

音色を聴いた全ての魂を喰らう集団呪殺魔法の本領発揮だ。

周囲の緑は枯れていき、呪歌(ララバイ)に取り込まれていく。

 

 

「貴様らの魂頂くぞ!」

 

 

聴かせれば勝ちの魔法が今…!

 

 

プス〜……

 

 

「何コレ!!?」

 

「すかしっぺ!!!」

 

 

発動しなかった……。

 

 

「な、なんじゃこの音は!!? ワシの自慢の音色は一体ドコヘ…!!」

 

 

あまりにも情けない気の抜けるような音に、ルーシィ達だけで無く呪歌(ララバイ)自身も唖然とする。

それもそのハズである。

魔法といえど所詮は笛だ。

さっきまで剣やら氷やらで傷つけられまくればそりゃいずれ破損する場所が現れる。

破損すれば笛なのだから欠陥品となりちゃんと音は出ない。

 

 

「散々引っ張るだけ引っ張っておいてこのオチ!?」

 

「オイラお腹空いちゃった」

 

 

完全に勝った雰囲気が流れるが、まだ呪歌(ララバイ)という名の怪物が残っている。

やはり緊張感が足りなさすぎる。

 

 

「ざけんなァ!!!」

 

 

呆然としてしまった呪歌(ララバイ)だが既に立ち直るが、自身の自慢の魔法が不発に終わった事に逆ギレし、その辺の地面を蹴り飛ばす。

だがやはり大きさは武器であり、その巨体から繰り出される八つ当たりキックは凄まじい破壊力をもたらす。

そして次に、ギルドマスターたち目掛けて炎の魔法を放った。

 

 

「アイスメイク "(シールド) "!!!」

 

 

食らってしまうと思い目を瞑るがいっこうに痛みがこない。

不思議に思い目を開けると、グレイが巨大な氷の盾をギルドマスター達の前に張っており、全ての攻撃を防いだのだ。

そのあまりの早業に、ギルドマスター達も目を見開かせる。

 

 

「あの一瞬でこれほどの造形魔法を!!?」

 

「造形魔法?」

 

 

聞きなれない単語、ルーシィが復唱する。

 

 

「魔力に形を与える魔法かしら」

 

「そして、形を奪う魔法でもある」

 

 

フリーシャがルーシィに説明し、ハッピーがそれに続く形で付け加える。

一方で呪歌(ララバイ)はというと、寸前だ攻撃を防がれた事でさらに苛立ちを覚える。

しかし、突然自分が放った炎がひとりでに別の場所へと流れていく。

疑問を覚える呪歌(ララバイ)はその終着点に目を向けると、ナツがその炎を口の中へ吸収し食べていたのだ。

 

 

「食ったら力が湧いてきた!」

 

「ば、化け物か貴様ァ!!」

 

「んだとコラァ!!?」

 

 

相手の力を自分の力に変えたナツは殴りかかってきた拳を難なく避け、その拳を伝って登っていく。

その間に、レアはさっき出来たグレイの盾を温度変化の魔法で水に溶かしてナツと同様それを食べ出す。

エルザは鎧を換装し、黒を基調とした鎧を身に纏う。

黒羽(くれは)の鎧』と呼ばれるその鎧は、その対称に生えた二対の翼から名ずけられ、一撃の破壊力を増加させる効果がある。

 

 

 

「アイスメイク" 円盤(ソーサー) "!!!」

 

「ん! 食べたら力が湧いてきたの!」

 

 

さらにグレイは氷の刃の付いた円盤を作り出し、回転させながら呪歌(ララバイ)に投げつける。

レアはグレイの盾を完食し、呪歌(ララバイ)の体を伝ってナツと同じ場所まで登る。

一足先に円盤が体を切り刻み、エルザもその一撃を顔面に叩き込む。

 

 

「ナツ!レア!」

 

「今だ!!」

 

 

エルザとグレイのバトンを受け取り、二人は拳に魔力を込める。

 

 

「これでも食ってろ!!」

 

「吹っ飛ぶの!!」

 

 

二人の魔力はさらに昂り、共鳴し、融合していく。

魔力融合(ユニゾンレイド)

本当に息の合った魔導士どうしでしか実現出来ず、それを行える者は少ない。

しかし、成功すれば魔法の威力は大幅に高まり、唯一無二の合体技となる。

『双竜』として行動を共にしてきたからこそ為せる、二人の究極奥義だ。

 

 

「「炎海紅蒼爆氷撃!!!」」

 

 

息つかぬ連撃、連撃、連撃。

二人の拳が触れる毎に爆散し、凍てつき、塵にしていく。

呪歌(ララバイ)は堪らず悲鳴を上げながら倒れ、その巨大な姿を消滅させていく。

閃光が瞬き、煙が立つ。

 

「見事!」

 

 

史上最悪の黒魔導士ゼレフが作り出した悪魔をこうもあっさり倒してしまったのは、たった四人の妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だった。

 

 

「これが…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士か…!」

 

「さっすが最強チーム!! チョーカッコイイ!!!」

 

「どうじゃー!すごいじゃろぉぉっ!!!」

 

 

カゲヤマは自身らを圧倒した妖精の尻尾(フェアリーテイル)に驚愕し、感服した。

ルーシィも感激の声を上げ、マカロフも自分の事のように声を上げ、高笑いしていた。

 

 

経緯(いきさつ)はよくわからんが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には借りができちまったなァ」

 

「なんのなんのー!!」

 

 

ゴールドマインからそう言われ、マカロフはさらに高々と笑い声を上げる。

だが、それはすぐに途切れる事となった。

それは、マカロフの視線の先を見ればすぐに分かった。

 

 

「「「「やり過ぎだァーーー!!!」」」」

 

 

それは粉々になってしまった定例会の会場の有様であった。

しかもそれどころか町に加えて向こうに見える山も一つか二つ消えていたのだ。

 

 

「なっはっはっはっは!! また見事にぶっ壊れちまったなァ!」

 

「ん、もう見る影もないの」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員が呆然とする中、ナツは呑気に笑っており、レアは何処か他人事のような一言を呟く。

 

 

「捕まえろー!!!」

 

「おし!任せとけ!!」

 

「鬼ごっこは得意なの!」

 

「オマエらは捕まる側だー!!!」

 

 

これにて、鉄の森(アイゼンヴァルト)の引き起こした呪歌(ララバイ)事件は閉幕した。

しかし、ある意味別の意味でも、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はまた一つ、伝説の一ページを歴史に刻んだのだった。




一応レアとナツの合体技、魔力融合(ユニゾンレイド)の補足をば。

炎海紅蒼爆氷撃(えんかいくそうばくひょうげき)
ナツとレアの合体技。
ナツの火竜の鉄拳と、レアの水竜の凍拳をそれぞれ連続で打ち合うラッシュ攻撃。
今回は行わなかったが、最後にナツとレアの同時ドロップキックをお見舞いする。
グレイとエルザのお膳立てのお陰でパンチラッシュだけで呪歌(ララバイ)倒れちゃった。
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