妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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思ったより筆が乗りましたね
鉄の武人で相手二匹持ってくムーブが気持ちえぇんじゃ(*´ч`*)


月は出ているか

 

「見えてきた……ガルナ島だ」

 

 

ボボが異形の左腕を顕にして数分も経っていないが、彼ら彼女らにとって数時間にも及ぶような時間が過ぎていた。

それほどの衝撃の中で告げられた到着の一声。

一行はボボの視線の先に吸い寄せられるように、ガルナ島へと視線を向けた。

 

 

「ねえ……オジさん」

 

 

島の全容が見えてきた中、ルーシィがボボに対して口を開くも、返事は無かった。

なぜなら…。

 

 

「あ…あれ? いない?」

 

 

そう、ここまで船を動かしてくれたボボの姿が何処にも居ないのだ。

海に落ちたかと疑ったグレイだったが、既にハッピーが潜っての偵察を完了し、海の中にはいないことが確定した。

その時だった。

 

ゴゴゴゴゴ……

 

突然そんな体の奥に響くような音が聞こえ始めた。

音の存在だけを感知できた双竜は「何の音?」と危機感ゼロな呟きをしていたが、他の者達はしっかりと音の正体を目にした。

 

 

「きゃあああ!!! 大波ィ!!!」

 

 

自身の目先を覆い尽くすほどの大波が、ルーシィたちの乗る船を強襲しようとしていたのだ。

 

 

「のまれるぞ!!!」

「ハッピーフリーシャ!!船を持ち上げて飛ぶのよ!!」

「無理だよォ!!!」

「常識的に考えるかしらァ!!!」

 

 

そうして六人は為す術なく波にのまれてしまった。

 

 

〜〜〜

 

 

「!……ここは…。 ! みんな無事!?」

 

 

青い海、白い砂浜……そして四人と二匹の漂流者と大破した船。

完全に無人島に流れ着いてしまった光景である。

一番最初に意識を取り戻したルーシィは皆の安否を確認しながら立ち上がった。

 

 

「おおっ!! 着いたのか!?ガルナ島!!!」

 

「ん……酷い目にあった」

 

「どうやら、昨日の大波で海辺に押し寄せられたみたいね」

 

 

ルーシィの声に応えてか、ナツ、レア、グレイと、続々と目を覚ました。

 

 

「それにしても何だったんだろ? あの腕……悪魔の呪い? それに消えたオジさん」

 

「気にすんなっ!!探検行こーぜ探検!!」

 

「あいさー!」

 

「依頼内容からして最も気にするべき事じゃないかしら…」

 

 

全員の安否を確認したところで、ルーシィは昨晩会ったボボの事について顎に手を当てて考察する。

しかし頭を使うことが嫌いなナツは島の奥地へ向かおうとする。

だがあくまで依頼をこなしに来たので、まずは依頼主である村長のいる村まで行こうとルーシィは提案した。

そんな中、一人待ったをかける男がいた。

 

 

「待ちな」

 

「ん? グレイ、ここまで来たら船も無いし戻れないの」

 

 

グレイである。

突然の声掛けにレアが対応したが、グレイはすぐさま「いや」と否定の言葉を返した。

 

 

「オレも行く」

 

 

思いがけない言葉に、全員揃ってポカンとなった。

だが当の本人であるグレイは続けてあっけらかんと答えた。

 

 

「やっぱりお前らだけ先に2階行くのもシャクだし、破門になったらそれはそれでつまらん」

 

 

まさかのお許しの言葉に、五人は揃って笑みを浮かべた。

グレイが引き締めるように声をあげ、六人は村に向かって歩を進めたのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

歩くこと数時間、目覚めた時の時間が既に昼過ぎだったからなのか、村の正面の門に着く頃には日は傾いていた。

しかし門には「KEEP OUT」と書かれた札が張り付けられている。

 

 

「立ち入り禁止って……一体どんな村だよ…」

 

「すみませーん!! 開けてくださーい!!!」

 

 

グレイが得体の知れない不安感から身を震わせる中、ルーシィが声を上げる。

しかし返事は無い。

ナツが小さく「まいったな」と零すと、口をニッとさせた。

 

 

「壊すか」

 

「ダメ!!!」

 

 

当たり前だ。

依頼主の住む村を破壊しては信頼もへったくれも無い。

その時だった。

 

 

「何者だ!」

 

 

門の上から村民とみられる二人組の男が顔を見せた。

十中八九門番であろう。

 

 

「魔導士ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者です。依頼を見て来たんですけど…」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)? 依頼が受理されたとの報告は入っていない」

 

「いや…あの……」

 

「何かの手違いで遅れてんだろ」

 

 

顔を出した門番に、ルーシィが代表してそう言う。

しかし当たり前ながら正式に受理されず、勝手に来た故にその一報は村に届いていない為門番からはそう訝しまれ、ルーシィはしどろもどろになってしまう。

そこにグレイがフォローを入れた。

 

 

「全員紋章を見せろ」

 

 

門番の一人がそう言う。

それくらいならばお易い御用なので、各々紋章を門番に見せる。

ナツは右肩、ハッピーとフリーシャは背中、レアは左肩、ルーシィは右手の甲、グレイは右胸板という具合に。

 

 

「本物のようだぞ」

 

「うーむ…」

 

 

当然紋章は本物なので、門番の一人は信用したようだ。

だが、もう一人の門番は何やら難色を示していた。

そうしてとんでもない爆弾を落とした。

 

 

「女共の服を脱がせ」

 

「何で!!? 関係ないでしょ……ってだからレア!! 羞恥心を覚えてって言ったじゃない!!」

 

 

門番の爆弾発言に勿論反発したルーシィだったが、その隣では涼しい顔をしたレアがセーラー服を脱ぎ始めていた。

天然で羞恥心の欠けらも無いレアにそんな命令をすれば実行するのは必然だった。

すぐさま門番は発言を撤回し、門を開けた。

その間もう一人の門番に白い目で見られていたのはここだけの話である。

 

 

「よくぞ来てくださった。魔導士の方々……ホガホガ」

 

 

魔物の口のような門を潜り、奥から現れたのは全身を布で覆った集団だった。

村長のモカと名乗った先端に三日月の装飾を施した杖を持った人物以外は顔から足まで完全に布で覆われており、そのモカでさえ杖を持った左手、ヨボヨボの足、そして目元しか見えない。

 

 

「さっそくですが、これを見て頂きたい。皆の者ォ!」

 

 

モカの号令に、後ろの布集団もモカに合わせて自身を纏っていた布を取払った。

そうしてルーシィたちが目にしたのは……。

異形の腕や足、そして角。

その色や形は千差万別。

しかし全員に揃って、人間には無い何かしらの不純物が混じった体をしていた。

 

 

「やはり…」

 

「……」

 

「スゲェもみあげ!!!」

 

「いや…見てほしいのはこっちじゃ……ホガ」

 

 

再び垣間見ることになった異形の手足に、グレイが零し、ルーシィも固唾を呑みながら頷いた。

約一名…いや二名着眼点が違ったが…。

確かにモカの左右のもみあげは驚愕に値するが今は置いておいても良いだろう。

 

 

「この島にいる者全て……犬や鳥まで例外なく、このような呪いにかかっております…ホガ」

 

「言葉を返すようだが、何を根拠に「呪い」だと? 流行病とは考えねえのか?」

 

 

モカの言葉にグレイが遮った。

しかしグレイの質問に対し、モカは何十人という医者に見てもらったがこのような病気は無いと淡々と答えた。

モカはそれにと言葉を連ねる。

 

 

「こんな姿になってしまったのは "月の魔力" が関係しているのです」

 

「月の魔力?」

 

 

聞きなれない言葉にルーシィが反応する。

元々この島は古代から月の光を蓄積し、島全体が月のように輝く美しい島なのだったという。

だが、異変は突然だった。

 

 

「何年か前に突然月の光が紫色に変わり始めたのです」

 

「紫? そんな月見たことねーぞ」

 

 

ナツの反応は至極当然だ。

レアやルーシィも同じ反応であるし、モカ自身も外から来た者はそう言うのだと笑って流した。

だが現に、この島で見る月は紫なのだ。

 

 

「そして紫の月が現れてから、ワシらの姿が変わりだした」

 

「月が出てきたのよ」

 

 

モカが話しているうちに、傾いていた日はすっかり沈みきっており、雲にかかった月が姿を現した。

その月の色は、確かに紫だった。

異様な光景に、一行は唖然としてしまった。

 

 

「これが、月の魔力の呪いなのです」

 

 

モカがそう口にした時だった。

 

 

「うっ!」

「うぅ…!!!」

「オオォオォ…!!!」

 

 

村民たちが突然苦しみ出したのだ。

それは村長であるモカも例外では無い。

そこへさらに異変が加わった。

肌の色が変色し、牙が生えだし、ある者は体に斑点や縞模様が現れ、ある者は角が生えた。

その姿……まさに悪魔であった。

 

 

「驚かせて申し訳ない……。紫の月が出ている間、ワシらはこのような醜い悪魔の姿へと変わってしまう。これを呪いと言わず……何と言えばよいのでしょうか」

 

 

悪魔の姿へと変貌した彼らの表情に喜色の笑みを浮かべている者は一人として居らず、モカの言葉に耐えきれずか、数名は涙を流している。

 

 

「朝になれば皆、元の姿に戻ります…。しかし……中には元に戻れず、心まで失ってしまう者が出てきたのです。心を失い魔物と化してしまった者は……殺すことに決めたのです」

 

「元に戻るかもしれねえのにか!?」

 

「放っておけば、皆がその魔物に殺される。幽閉しても、牢など壊してしまうのです…。」

 

 

ナツは村民たちの決断に声を荒らげたが、モカの言葉に押し黙ってしまった。

その話の続きだろう。

モカは懐から一枚の写真を取り出し、涙が溢れてきた。

 

 

「だから……ワシも息子を殺しました。心まで悪魔になってしまった息子を…」

 

 

そう言ってモカは故人となってしまった息子の写真をナツたちに見せ、彼らは言葉を失った。

そこに映っていたのは、昨日ハルジオンで船を出してくれたあの船乗りの男ボボであったのだ。

 

 

「その人……え!? でも…あたしたち昨日…」

 

「しっ!!」

 

 

ルーシィがその事を伝えようと口が先走るが、グレイが人差し指を立ててルーシィの言葉を止めた。

 

 

「ようやく消えちまった理由がわかった。そりゃあ……浮かばれねえわな」

 

 

グレイのその言葉だけで、全員察した。

幽霊……心が悪魔となり仲間の為殺され、やり切れないその魂は、地縛霊として一行をこの島へと招いたのだろう。

 

 

「さぞ高名な魔導士方とお見受けします。どうか、この島を救ってください……。このままでは全員…心が奪われ……悪魔に…」

 

「そんな事にはさせないのっ!!」

 

「俺たちが、その呪いを解いてやる!!」

 

 

モカの言葉をそれ以上続けさせぬよう、レアが断ち切り、ナツが宣言した。

モカはその言葉に安心したかのように目を細め、改めて依頼した。

 

 

「ワシらの呪いを解く方法は一つ……。

月を破壊してください」

 

 

〜〜〜

 

 

「見るから見るほど不気味な月かしら」

 

「なんで紫なんだろうねー」

 

 

あの後、戸惑いながらも了承した一行は、今は誰も住んでいない家を貸してもらう形で寛いでいた。

 

 

「ハッピー、フリーシャ。早く窓閉めなさいよ。月の光を浴びすぎるとあたしたちまで悪魔になっちゃうのよ」

 

 

何処か能天気な猫二匹は窓から身を乗り出して空に浮かぶ紫の月を眺めていた。

その様子を見てルーシィは窓から離れたところから声を掛けた。

一方でナツ、レア、グレイは椅子に座りながら当惑の眉をひそめていた。

 

 

「それにしてもまいったな」

 

「流石に月を壊せってのはな…」

 

「うん…」

 

 

グレイの呟きにルーシィは深刻な表情をして頷く。だが約二名論点がズレていた。

 

 

「何発殴れば壊れるか見当もつかねえ!」

「何回蹴ればいいか想像もつかないの!」

 

「壊す気かよ!!!」

 

 

どうやら本気で月を壊す気でいたらしく、グレイがグモォッ!と唸った。

 

 

「無理なんだよ、月を壊すなんてよ」

 

「そうね……どんな魔導士でもそれはできないと思う」

 

「でも月を壊せってのが依頼だぞ」

 

「ここで折れたら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名前が折れるの」

 

 

正論を並べるグレイとルーシィと、感情論で月の破壊を目論むナツとレア。

だが今回はメロン一家の件とは訳が違う。

人間どうしても出来ることと出来ないことがある。

今回は出来ない部類に入る。

 

 

「第一どうやって月まで行く気だよ!」

 

「ハッピー、フリーシャ」

 

「流石にむり」

 

「行ったが最後、途中で魔力が切れてリーシャたちは潰れたトマトみたいになるかしら」

 

 

ナツの無茶ぶりにハッピーとフリーシャはそれぞれそう返し、フリーシャの表現方法にルーシィが少し身を震わせた。

 

 

「きっと「月を壊せ」っていうのは、被害者の観点から出てくる発想じゃないかしら。きっと何か他に呪いを解く方法はあるハズよ」

 

「だといいんだがな」

 

 

ルーシィの考察にグレイは大口開けて欠伸をしながら返事した。

 

 

「よし!! だったら明日は島を探検だ!!!」

 

「ん、明日に備えて今日はもう寝るの」

 

 

そう言いながらナツとレアは床に敷いてある布に飛び込む。

恐らくだが敷布団だろう。

それからグレイとルーシィも二人に続くように横になった。

そうして六人は仲良く眠りについた。

 

 

「……って!! こんな獣と変態の間でどーやって寝ろと!? レアはなんでこんな状況下で寝れるわけ!!?」

 

 

否、ルーシィだけ獣のいびきとパンイチの変態の間寝る……物理的にも精神的にも寝れる状態では無く、ほぼ一晩中目を覚ましているのだった。

尚、ルーシィ同様隣でナツのいびきを聞きながら寝ているレアは今夜快眠だったそうな。

 

 

〜〜〜

 

 

翌朝、まだ日が昇りだして間もない頃。

六人は既に身支度を終えて家を出ていた。

しかしルーシィ以外の五人はまだ眠そうであり、ルーシィの後ろをとぼとぼと歩いていた。

 

 

「早ェよ……」

 

「めっちゃ朝じゃねえか……」

 

「まだ眠足りないの……」

 

「誰のせいで眠れなかったと思ってるのよ! アンタたちはもう十分寝た!! 出発よ出発!!! 猫ども!!起きろ!!!」

 

「あい」

 

「かしら」

 

 

そのまま一行は覇気も無いまま気だるそうに島の探索に出たのだった。





最近我慢出来なくて別の小説の設定やらを書きなぐってます(´・ω・`)
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