妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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最近サモランガチ勢の沼に堕ちかけてます
タスケテ…バイト厨ニナッチマウヨ…( ;∀;)


月の雫

 

「グレイの師匠が封じた悪魔……なの?」

 

 

重苦しい雰囲気の中、一番最初に口を開いたのはレアだった。

改めての確認に、グレイは「間違いねえ」と肯定する。

 

 

「元々北の大陸にあったものがここに運ばれた?」

 

「もしかして、島の呪いはこの悪魔が原因ってことは無いかしら?」

 

「考えられなくもねえ。この悪魔はまだ生きてるんだしな」

 

 

フリーシャの感じた疑問に、グレイが新たな事実を述べながら納得の表情を見せた。

デリオラはまだ生きてる。

それを聞いたナツはニッと頬を吊り上げ「おし!」と気合いを入れる声を上げる。

 

 

「そーゆー事なら、この悪魔ぶっ倒してみっか」

 

「アンタはなんで力でしか解決策を思いつかないのよ」

 

 

腕をぐりんぐりんと回して準備運動を始めるナツ。

それに対して呆れた声色のルーシィがやれやれといった様子でため息を吐いた。

その瞬間…。

 

 

ドゴッ!!!

 

「どぅおっ!!?」

 

 

キッとナツを睨んだグレイがその顔面に拳を振り抜いたのだ。

突然すぎる故にナツはグレイの拳をモロに食らい、ドガァ!と派手に地面を転がされた。

 

 

「グレイ!! てめえ…何しやがる!!!」

 

「火の魔導士がこれに近づくんじゃねえ。氷が溶けてデリオラが動き出したら、誰にも止められねえんだぞ」

 

「そんなに簡単に溶けちまうものなのかよ!!!」

 

 

いきなり攻撃された事に憤りを感じたナツは殴られた頬を抑えながら叫ぶ。

しかしグレイは未だナツに睨みきかせる。

ナツは納得いかない様子でそう問い質すと、グレイはハッとなり「いや…」と短く零した。

 

 

「大丈夫?」

 

「オイ!!殴られ損じゃねえか!!! 凶暴な奴だな…」

 

「ナツ。ここは場のノリとして抑えるの」

 

「の…ノリか……」

 

「ん、ノリなの」

 

 

やはり情緒が不安定な様子のグレイを、ルーシィは慰める様に肩に手を置いた。

一方言った通り殴られ損のナツは恨めしそうにグレイを睨む。

その後のレアの言葉でナツの怒りが引っ込んだのはナツの単純さに感謝すべきかレアの天然度に感謝すべきか…。

 

 

「ウルはこの悪魔に絶対氷結(アイスドシェル)っつー魔法をかけた」

 

 

絶対氷結(アイスドシェル)

氷の魔導士が使う奥義にして禁忌。

絶対氷結の名の通り、それは溶けることの無い氷。

いかなる爆炎の魔法をもってしても、この魔法によって生み出された氷は溶かすことができない。

 

 

「溶かせないと知ってて、何故これを持ち出した…?」

 

「知らないのかもね。何とかして溶かそうとしてるのかも」

 

「何の為にだよっ!!!」

 

「し…知りませんけど……」

 

 

グレイの疑問にルーシィが考察まじりの回答をする。

しかし、グレイにとってこの氷が溶ける…この悪魔が解放されるというワードは禁句なのだろう。

唐突の怒鳴り声。

予想外の般若顔。

特に理由のない怒りがルーシィを襲う―――!

ドスの効いた声に影がかった般若顔に、ルーシィは涙目になりながら声を震わせ後ずさった。

 

 

「グレイ。八つ当たりはめっ!なの」

 

「…! 悪ぃ…くそっ…!調子でねえな。誰が何の為にデリオラをここに……」

 

 

レアが可愛らしいお叱りの言葉を与え、グレイはわかりやすく熱が冷めていく。

小さく謝罪の言葉を零し、再び頭を抱えては思考の渦に落ちた。

そんな中、これからの行動に提案をしたのは以外にもナツだった。

 

 

「簡単だ。さっきの奴らを追えばいい」

 

「そうね」

 

「いや……ここで待つんだ」

 

 

謎の勢力……零帝一派の消えていった方向を指差すナツに、レアは頷き、ルーシィは返事をする事で同意を示したが、待ったをかけたのはこれも以外な事に思考の渦に落ちていたハズのグレイだった。

ここで待つという提案に、全員が首を傾げた。

 

 

「月が出るまで待つ」

 

「月……ってまだ昼なの!!」

 

「そうだそうだ!無理!!ヒマ!!死ぬ!!」

 

 

グレイがそう言うと、即座に反論したのはレアとナツ。

一方でルーシィはどういう事なのかと理由をまず聞いた。

グレイ曰く、島の呪いもデリオラも、全て"月"が関係していると思って仕方ないのだという。

それが思考の末に出したグレイの結論だった。

 

 

「奴らも「もうすぐ月の光が集まる」とか言ってたしな」

 

「そっか…確かに何が起こるか、アイツらが何をするか……気にはなるわね」

 

「オレたちは無理だ!!!」

 

「ん!!追いかけることに一票なの!!!」

 

 

グレイが理由を述べた事で、追いかける事に同意だったルーシィはグレイの意見に賛成した。

しかし、やはり待つという行為自体に苦痛を感じるのか、ナツとレアは頑なに追いかけるという主張を続ける。

その数分後の事。

 

 

「ぐがー!」

 

「スピー…」

 

 

地面に大の字で寝転がって眠るナツと、そのナツの腹を枕に眠るレアの姿がそこにあった。

 

 

「やっぱりナツもレアも、本能のままに生きる獣かしら」

 

「あい、それがナツとレアです」

 

「こうして見ると、ナツとレアってちょっと兄妹っぽいわね」

 

 

長年の相棒にそんな感想を零すフリーシャとそれに同意するハッピー。

それに対してルーシィは無防備な状態で眠る二人を少し微笑ましそうに眺めていた。

その傍ら、グレイは師匠(ウル)の封じた悪魔を見ながら物思いにふけっていた。

その様子はやはり表情が冴えない。

 

 

「はァー……待つとは言ったもののヒマね」

 

「あい」

 

「ま、それは割り切るしかないかしら」

 

 

ナツとレアを観察し終えたルーシィは近くの手頃な岩に座ってため息をつき、ハッピーとフリーシャが相槌を打つ。

すると、ルーシィは何か閃いたかのようにポンと手を叩いて銀の鍵を取り出した。

 

 

「開け!琴座の扉……リラ!!」

 

 

銀の鍵をいつものように空中に掲げると、煙が現れた。

やがて晴れ、姿を現したのは青いワンピースにフリルのついた白い頭巾を被り、背中には天使のような羽が生え、何より極めつけは琴座の星霊らしくハープを持っていた。

 

 

「キャー!! 超久しぶりィルーシィー!!!」

 

「はぁい、リラ」

 

「もおっ!!たまにしか呼んでくれないんだもーん!!ルーシィのいけずー!!!」

 

 

どうやらかなりのハイテンションキャラらしく、あまりのテンションの高さにハッピーは「また変なの来た」と軽く引いている。

 

 

「いけずって…だってアンタ、呼べる日って月に三日くらいじゃない」

 

「ええっ!?そうだっけ!!?」

 

「何かしらこのズボラな性格は…」

 

 

オマケにフリーシャの言った通り相当ズボラなようで、ルーシィとの契約内容が頭からすっぽ抜けている様子にフリーシャのイライラゲージが溜まっていた。

 

 

「でぇ? 今日は何の歌歌ってほしい?」

 

「何でもいいわ。任せる」

 

「オイラ、魚の歌がいい!!」

 

「却下かしら」

 

「うぇえ!? 何でだよぉフリーシャ〜」

 

 

話を切り替えて歌のリクエストに入る。

ルーシィ曰く名実ともに音楽関連の星霊らしく、歌が上手いのだとか。

ハッピーがリクエストするもフリーシャの光の速さの却下にハッピーが泣く。

 

 

「だってあの歌、聴いてたらお腹空いてくるかしら。何よりガキ臭いのよ!!」

 

「じゃあテキトーに歌うわね!!イェーイ!!!」

 

 

フリーシャがイライラの爆発寸前でそう言い切ると、ハッピーが膝をついて項垂れた。

それを聞いてか否か、リラはグーサインを出しながらハープに手をかけた。

ハイテンションズボラに加えマイペース属性も加わってはもはや怖いもの無しである。

 

 

「―――♪」

 

 

しかし、歌い出すと完全に別人だった。

ポロンポロロンと、ハープの優しい音が響き渡り、それに負けないリラの優しく温かい歌声が胸に染みる。

場所が洞窟という事もあり、その音は反響して心地いいくらい耳に残った。

 

 

「―――♪」

 

 

予想外の優しい歌声に、ハッピーは感嘆の声を上げる。

その隣でフリーシャはルーシィと共に目を閉じてリラの歌声に聞き入っていた。

心做しか先程よりその表情も柔らかい。

 

 

「―――♪」

 

ピトン……

 

 

歌の終わりに差し掛かった時、そんな音が洞窟内に響き渡った。

音の発信源に目を向けたルーシィ、ハッピー、フリーシャは自分の目を疑った。

 

 

「え? ちょ…グレイ?」

 

「あ? なんだよ」

 

「……泣いた」

 

 

なぜなら凍りついたデリオラの方を向いていたグレイが、俯いた状態で下唇を噛み締め、涙を流したのだから。

 

 

「確かにリラは人の心情を読む歌が得意だけど……」

 

「グレイが泣くなんてよっぽどかしら……」

 

「泣いてねえよ…!!」

 

 

昔は弱かったのに、今ではこんなにも強くなったんだ……それがリラの歌った歌の大雑把な意訳だ。

その歌詞がグレイの琴線に触れたのか、感情が溢れてしまったのだろう。

 

 

「もっと明るい歌にしてよリラ!!」

 

「えー!? だったら最初からそう言ってぇ!!」

 

「つーかよく考えたら、誰か来たらどーすんだよ!黙ってろ」

 

 

よく考えなくてもその通りだ。

敵に隠れて様子を伺おうとしているのに自分から音を立てて存在をアピールしていては隠密もクソも無い。

その後はグレイの言う通り、全員黙って夜を待つのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

あれから数時間。

洞窟内には何やら地響きのような音がなっていた。

ゴゴゴゴ!と文字通り揺れる音に全員強制的に叩き起された。

 

 

「何の音なの?」

 

「夜か!!!」

 

 

その時だった。

カアッ!と突然天井に紫色の魔法陣が現れたのだ。

やがて魔法陣から紫の光が降り注がれ、一筋の極太い紫の光の道が現れた。

そしてその光の道は、デリオラが閉じ込められている氷に当たった。

 

 

「月の光がデリオラに当たってる!!」

 

「偶然なんかじゃねえぞコリャ!!」

 

 

そうして一行は光の元を探す為に駆け出した。

謎の三人組が消えた道へと走るとすぐに階段が現れた。

それを登ると、すぐに元の遺跡に戻ってきた。

さらに見つけたのは…。

 

 

「遺跡の真ん中に魔法陣が…」

 

「もっと上だ!!」

 

 

洞窟で見たのと同様、紫の魔法陣から光の道が真っ直ぐに下に降り注がれている様子だった。

ナツの声で再び駆け出す。

何層にも渡って魔法陣と光の道が伸びている中、遂に遺跡の最上階……山の山頂まで上がってきた。

分かっていた通り外はすっかり暗くなっており、相も変わらず紫の月が怪しく光りながら地上を照らしている。

しかし、山頂で見る紫の月は、麓で見たものとは少し違った。

 

 

「何なのアレ?」

 

「しっ!」

 

 

それは謎装束の集団が謎の言語を唱え、その結果からなのか月の光が一本の道となって謎装束の囲んだ円の中心に降り注がれている。

 

 

「本当に月の光を集めてんのかコイツら!!」

 

「それをデリオラに当てて……どうする気?」

 

「ベリア語の呪文……月の雫(ムーンドリップ)ね」

 

 

 

誰も状況が分からない中、ルーシィが召喚しっぱなしだったリラがその正体を見抜いた。

一人そういう事かと納得し、訳を話した。

 

 

「コイツらは月の雫(ムーンドリップ)を使って、あの地下の悪魔を復活させる気なのよ!!」

 

「何!?」

 

 

しかしグレイが散々言ったように、ウルが放った魔法絶対氷結(アイスドシェル)はいかなる爆炎を持ってしても溶かせない氷なのだ。

しかし、封印魔法というのは完璧にはなり得ない。

 

 

「その氷を溶かす魔法が月の雫(ムーンドリップ)なのよ。一つに集束された月の魔力は、いかなる魔法をも解除する力を持っているの」

 

「アイツら……デリオラの恐ろしさを知らねえんだ!!」

 

 

強力な解除魔法の実態を知り、グレイは歯を噛み締めた。

だが、それだけではない。

 

 

「この島の人が呪いだと思ってる現象は月の雫(ムーンドリップ)の影響だと思うわ」

 

 

リラがそう言う。

それもそうだ。

月という一つの星に関する魔法を何のデメリットも無しに発動出来はしない。

一つに集まった月の魔力は人体をも汚染する。

 

 

「アイツらァ……!!!」

 

「待って!!誰か来たわ!!」

 

 

ますます怒りを募らせていくナツだが、飛び出す前にルーシィがナツの顎へ肘を強打させて止めた。

そして彼女の言う通り、また新たに誰か来た。

白いコートを羽織り、顔は悪魔を催した仮面で隠れている。

何処かデリオラにその雰囲気が似てなくもない。

そしてその後ろには昼に見かけた極太眉毛のユウカと、犬姿のトビー、ケバメイクの少女シェリーの姿もあった。

 

 

「くそ…昼起きたせいで眠い」

 

「おおーん」

 

「結局、侵入者も見つからなかったし」

 

「本当にいたのかよっ!!!」

 

 

相変わらずのコントのようなやり取りの中、シェリーは仮面の者に声をかけた。

 

 

「悲しい事ですわ、零帝様。昼に侵入者がいたようなのですが…取り逃してしまいました。こんな私には、愛は語れませんね」

 

「…侵入者」

 

 

どうやら仮面の者が零帝のようだ。

シェリーの報告にボソッと呟いたが、何やらグレイが気づいた様子を見せる。

しかし仲間は誰もそれに気づいていない。

 

 

「デリオラの復活はまだなのか」

 

「この調子だと、今日か明日には…と」

 

「どっちだよ!!!」

 

「いよいよなのだな…」

 

 

シェリーの報告を聞いて、零帝はほくそ笑んだ。

一方、零帝の言葉を一言一句耳に入れる度に、グレイの動きが固くなっていた。

 

 

「侵入者の件だが、ここに来て邪魔はされたくないな」

 

「ええ」

 

「この島は外れにある村にしか人はいないハズ」

 

 

そう淡々と言葉を紡ぎ、零帝は手のひらを村の方向へ掲げた。

 

 

「村を消してこい」

 

「はっ!」

「了解!」

「おおーん!!フガッ!」

 

「何!?」

 

 

零帝の命令に、一斉に焦り出す。

今この状況において、村の人間たちは全く関係無い。

にも関わらず、今まさにそのトバッチリを受けようとしている。

 

 

「血は好まんのだがな…」

 

 

そう言う零帝だが、浮かべた笑みは変わっていない。

 

 

「この声…オイ……ウソだろ…」

 

 

そうして、ようやく言葉を発したかと思ったグレイは、デリオラを見た時以上に汗をかいて、動揺した表情を浮かべていた。





リラの歌が歌詞を乗せていいのかがかなり際どいグレーゾーンなので苦労しました(^^;
これで大丈夫…ヨネ?
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