妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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できたので投稿投稿。
今回は二週間以内にイケたよ(`・ω・´)フンスッ!
……毎日投稿出来る人って凄いですね…orz


真実は氷の刃

 

ピキッ……

 

 

時は今、遺跡内で戦闘を繰り広げていた双竜。

だがその最中、リオンが展開した氷のドームの一部に亀裂が走ったのだ。

徐々に大きくなっていく亀裂に、気づかない程全員鈍感でも無く、揃って手を止めてその方向へ視線を向ける。

ナツが「なんだ!?」と声を上げたのもつかの間、亀裂はやがてドームに風穴を開け、中から……いや、外から氷のドームに入ってくる人物に全員もれなく目を丸くさせた。

 

 

「…!? コユリ…テメェも居たのか……」

 

「……グレイ」

 

 

リオンを止めるために村の資材置き場から走ってきたグレイだった。

双竜もリオンらもグレイについての最後の記憶は倒れて気絶していた事だった故に、共通して驚愕の表情を浮かべた。

グレイもまさかのコユリの存在に一瞬絶句するも、再び表情を締め直した。

 

 

「ナツ、レア……コイツらとのケジメはオレにつけさせてくれ」

 

「てめえ!! 一回負けてんじゃねーか!!」

 

「二人に対して一人で挑むなんて、正気とは思えないの」

 

「次はねえからよ。気も確かだ。これで決着にする」

 

 

突然のバトンタッチ宣言にナツとレアはそう声を上げるも、グレイはリオンとコユリの二人を見据えながら淡々と返した。

覚悟が決まったグレイに、双竜は何も言えなくなる。

 

 

「たいした自信だな」

 

「リオンに手酷くやられたんでしょ? 止めた方がいいわよ、グレイ」

 

「……10年前…ウルが "死んだ" のはオレのせいだ」

 

 

嘲笑うかのようにそう言うリオンと心配したかのように言うコユリ。

だが間を置いて語られるグレイの言葉に、二人はただ黙って聞いた。

 

 

「だが…仲間をキズつけ……村をキズつけ…あの氷を溶かそうとするリオン、オマエだけは許さねえ。コユリもそっちに立つのであれば、オマエも粛清対象だ……。共に罰をうけるんだ、リオン…コユリ」

 

 

そう言いながらグレイは静かに、いつか見た両手を前に交差する構えを取った。

それを見て、リオンとコユリはあからさまに表情に焦りが生まれた。

 

 

「そ…その構えはッ!? 血迷ったか!!」

 

「グレイ、まさか……私たちに絶対氷結(アイスドシェル)を撃つつもり!!?」

 

「アイスドシェル?」

 

「なの?」

 

 

汗を頬に垂らし声を荒らげるリオンとコユリとは反対に、ナツとレアは聞き慣れない単語にポカンとなる。

だが、二人の脳裏に蘇ったのはこのガルナ島であった三つの場面だ。

 

 

『ウルはこの悪魔に絶対氷結(アイスドシェル)っつー魔法をかけた』

 

『オレに魔法を教えてくれた師匠ウルが命をかけて封じた悪魔だ』

 

『ウルはもういない……グレイから聞いてないのかしら?』

 

 

それは地下の洞窟でグレイが語ったデリオラに起こった事と、それを起こした者の末路を語ったコユリの言葉だ。

ここまで思い出して、ナツもレアも、グレイが何をしようとしているのか嫌でも理解した。

 

 

「今すぐ島のひとの姿を元に戻せ……そして仲間を連れて出ていけ。これはオマエらに与える最後のチャンスだ」

 

 

それを聞いたリオンは焦りの表情を引っ込め、微笑を浮かべた。

 

 

「なるほど、その魔法は脅しか……くだらん」

 

 

たかが脅しであれば怯む事はない。

そう高を括ったリオンだが、次の瞬間。

ドッ!とグレイを中心に魔力がドーム状に展開され、周囲のものを吹き飛ばす。

これはリオンも身をもって経験した事があり、その意図を理解させられる。

 

 

「本気だ。この先何年経とうが…オレのせいでウルが死んだという事実は変わらねえ。どこかで責任とらなきゃいけなかったんだ」

 

 

魔力の渦の中心にいる故にその勢いに耐えられずか、グレイの腹や腕、肩にかかった包帯がベリベリと剥がれていく。

凄まじい冷気が辺りを支配する中リオンとコユリが見たのは、額の絆創膏がペリッと剥がれるも気にすることなく、覚悟の決まった顔でコチラを見据えるグレイの姿だ。

 

 

「それをここにした。死ぬ覚悟はできている」

 

「本気…なのか…!?」

 

「答えろ、リオン!!コユリ!! 共に死ぬか!生きるかだ!!!」

 

 

そうして最後の返答を求めるグレイ。

魔力の渦の影響からか身体が二重三重にブレて見えるグレイが叫ぶ姿は今までのどんな姿よりも迫力があった。

だがそんなグレイを見て尚、リオンは口角をニヤリと三日月のように吊り上げる。

 

 

「やれよ。お前に死ぬ勇気はない」

 

 

なんの感情の起伏も感じられないそれを静かに胸の内に落とし込み、グレイは再び二人を見据え直す。

 

 

「残念だ。これで全て終わりだ!!!」

 

 

本当に残念そうに言葉を零し、グレイは交差した腕を広げようと力を込めた。

そして、氷の魔導士の奥義にして禁忌が今…。

 

 

「アイスド…「ドアホォ!!!」!!!」

 

「バカァ!!!」

 

「!!?」

 

 

発動しなかった。

魔法が発動する直前、なんとナツがグレイの起こした魔力の渦に飛び込んで殴り飛ばし、それに追い討ちをかけるようにレアがグレイの頭に踵を叩き込んだ。

思いがけない横槍に、リオンとコユリはポカーンとなった。

だが止める側も必死だったからか、ナツもレアも揃って息切れを起こしている。

 

 

「ナツ…レア……」

 

「勝手に出てきて責任だ何だうるせぇんだよ。人の獲物とるんじゃねえよ」

 

「え…えもの?」

 

 

今度はグレイがポカーンとなる。

だがそれが何のその、ナツとレアはいつもの調子で言葉を紡ぐ。

 

 

「あいつはオレが倒すんだよ!!」

 

「レアはあいつを倒すの」

 

「な……! オレにケジメつけさせてくれって言ったじゃねーか!!」

 

「「はい了解しました」ってオレたちが言ったかよ」

 

「レアはそんな過去の事、興味なんてこれっぽっちも無いの」

 

「てめぇら…!」

 

「お? やんのか?」

 

 

いつものようなナツとグレイの軽口の掛け合いに加え、レアの天然発言も加わって、グレイの情緒を掻き乱す。

やがて彼は膝を着いていた状態から立ち上がり、ナツのマフラーを掴みあげる。

 

 

「あいつらとの決着はオレがつけなきゃならねえんだよ!!! 死ぬ覚悟だってできてんだ!!!」

 

 

だが、グレイのその発言は二匹の竜の逆鱗に触れてしまった。

ナツは掴まれた腕を逆にガシッと掴んで力を込めた。

 

 

「死ぬ事が決着かよ、あ? 逃げてんじゃねえぞコラ」

 

「恩返しのつもりなの? 冒涜もいいところなの」

 

 

静かに燃える炎のような怒りと滝のように勢いがあるも冷たい視線が、グレイの身を焦がし痛めつける。

二人の言葉にハッとなり、グレイは何も言えなくなってしまう。

だがその時であった。

三者が相対する中、ゴゴゴゴ…と地鳴りが木霊する。

最初は小さかったそれも、数秒もすれば遺跡全体を震わせるものとなった。

そしてそれは、外で戦闘を行っていたエルザやルーシィにもバッチリ聞こえていた。

エルザが「なんの音だ」と呟くが、ルーシィはたった数秒でその正体を目にし、絶句する。

 

 

「そんな…傾いてた遺跡が…元に戻ってる……」

 

 

そう、ルーシィの零した通り、傾いていた遺跡はズゥーンと音を立てて元通りに建て直してしまったのだ。

目の錯覚か現実か、遺跡がほんの少し浮いていたようだった。

 

 

「ど…どーなってんだ!!?」

 

「あれだけ苦労したのに、こんなあっさり……どういう事なの」

 

「こ…これじゃ、月の光がまたデリオラに……」

 

「お取り込み中失礼」

 

 

すっかり元通りになり、斜めになっていた地面が平らになったのを不満げにバンバンと踏みつけにするナツ。

その隣でレアはその場にしゃがみこみ、平らになった地面をコンコンと叩いている。

そしてグレイはまだ昇ってもいない上に建物のせいで見えないハズの月を恨めしそうに見るかのように天井を見上げた。

そんな中割り込んできたのは、何時ぞやの仮面の老人、ザルティだった。

 

 

「ほっほっほっ。そろそろ夕日が出ますので、元に戻させてもらいましたぞ」

 

 

ひょこっと現れてはとことこと何でもないかのように話しながら歩み寄ってくるザルティに、グレイは不気味さを覚えた。

 

 

「オレたちがあれだけ苦労して傾けさせたのに……どうやって戻した!?」

 

「ほっほっほっ」

 

「どうやって戻した!!!」

 

 

ナツが問うもザルティはそのニヤケ顔を見せるだけで答える気配が無い。

それが気に障ったからかクワッと表情を顰めてナツが叫ぶも、ザルティは踵を返す。

 

 

「さて…月の雫(ムーンドリップ)の儀式を始めに行きますかな」

 

 

完全に無視を決め込むザルティの一連の行動は、ナツにとって許容できる範囲を余裕で超えていた。

カチンと来たナツは「シカト…」と短く零し、プルプルと身体を震わせる。

 

 

「上等じゃねえかナマハゲがぁ!!!」

 

「ほっほっほっ」

 

「待てやコラー!!!」

 

「ナツ!!」

 

 

かと思えば鼻息を荒くさせて火を吹いて怒りを顕にし、ザルティの後を追う。

追いかけられるザルティは無邪気に鬼ごっこを楽しむ子どものような軽い足取りで駆け、ムキになったナツがそれを追う光景に、先走りすぎだと不安を覚えたグレイがナツを呼び止める。

だがナツは怒りの表情を浮かべたまま振り向くも、足は止めない。

 

 

「オレはあのクソッタレを100万回ぶっ飛ばす!!! こっちはお前とレアに任せるぞ!!! 負けたままじゃ名折れだろ!?」

 

 

 

それを聞いたグレイは案外冷静なナツに安心し、コクッと頷き、ナツは遺跡の奥へと姿を消した。

そんな中、グレイの肩をレアがポンポンと叩いた。

 

 

「グレイのじゃないの」

 

「わかってるよ」

 

 

レアの口から飛び出したそれはナツの最後の言葉に付け加えた言葉だった。

肩を叩かれてレアの方を向いていたグレイは返答しながらもう一度前にいるリオン、コユリを見た。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のだ」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のなの」

 

 

グレイとレアの言葉が揃ったのは完全に偶然だった。

だが、その偶然が妖精の尻尾(フェアリーテイル)が築いてきた絆の深さを実感させた。

それを見せられていたリオンはようやく口を開く。

 

 

「やれやれ…騒がしい奴等だ」

 

「おまえ……さっきオレが絶対氷結(アイスドシェル)を使おうとした時、ナツとレアが止めるのを計算に入れていたのか」

 

「いや……まさか奴があの魔力に近づけるとは想像もしてなかった」

 

 

自分だってグレイの渦巻く魔力に吹き飛ばされたのに、ナツを言外に下に見る発言にグレイの隣にいたレアがムッと眉を顰める。

だがグレイはそのまま会話を続けた。

 

 

「じゃあ、本気でくらう気だったのか」

 

「そうだ。だがオレたち……いや、オレは助かる。そう気づいたから "やれ" と言った。たとえオレが氷に閉じ込められようと、オレには仲間がいる。そしてここは月の雫(ムーンドリップ)絶対氷結(アイスドシェル)を溶かせる島だ」

 

「迂闊だった…。これで絶対氷結(アイスドシェル)は無力だな」

 

 

微笑を浮かべながらあの時のセリフの概要を語り、グレイは自分の行いが如何に愚行だったかと気付かされ俯いた。

 

 

「それでもこのオレとの決着を望むと? おまえはオレには勝てな…「もう止めよう」…何?」

 

 

リオンが続けて言うも、それを遮ったのは他でもなくグレイだった。

突然の会話の切断に、リオンは不可思議気にグレイを見る。

 

 

「デリオラは諦めるんだ」

 

「何をバカな事を……。脅しの次は説得だと? 貴様のギルドは牙を抜く優秀な歯医者でもいるのか?」

 

 

突然向けられた凶刃をしまいこんだグレイに、リオンは鼻で笑う。

如何せん順序が逆なのでは無いかと思うこの場にいた女性陣だったが、その言葉は喉の奥へと引っ込ませた。

 

 

「リオン、コユリ……よく聞いてくれ」

 

 

相手を落ち着かせるような声色のグレイが告げる、グレイが二人に隠してきた真実。

 

 

「ウルは生きてるんだ」

 

 

たった九文字の言葉は、リオンの表情から笑みを引っ込ませるのには十分だった。

そして隣で聞いていたコユリも目を見開かせて動かなくなる。

 

 

絶対氷結(アイスドシェル)は、自らの体を氷に変える魔法だったんだ。あの時……デリオラを封じた氷…つまり、おまえ達が溶かそうとしてる氷はウルなんだ。ウルは氷となって……今も生きてる……」

 

 

ウルとの約束を破ってまで告げた真実。

だがその約束は師匠(ウル)弟子たち(リオンとコユリ)の未来を案じて告げたもの。

であれば、その二人を救う為に約束を破るのであらば、彼女とて本望だろう。

 

 

「グレイ…」

 

 

リオンへ静かに歩み寄るグレイに、リオンは俯いてそう零す。

そしてグレイは、締めの言葉を二人に告げる。

 

 

「リオン…コユリ……だからこんな事はや…」

 

 

……ハズだった。

 

 

「知ってるさ、そんなくだらん事」

 

「グレイッ!!」

 

「!? リオン!!!」

 

「あれはもはやウルでは無い。ただの氷クズだ」

 

 

グレイの口から吐き出されたのは、言葉ではなく血だった。

理由は単純、リオンがグレイの腹に氷の刃を突き刺したからだ。

口と腹から血を吹き出しながら倒れるグレイを見たリオンの顔は、酷く…酷く歪な笑顔だった。





この話で、ようやく漫画で言うところの五巻まで終えました!!
……FAIRY TAIL全巻が六十三巻で五巻の時点で二十九話……( ゚д゚)マ?
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