妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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ようやっとですよ…ようやっとS級クエスト完了ですよ…。


届け あの空へ

 

日付がそろそろ変わり出す頃、不気味に輝く月を見据えたエルザとレア、そして内に秘めるドキドキを押さえ込んでいるが、それが少し漏れているナツは村の見張り台へと上ってきていた。

その3人の様子を村民たちも嬉々とした表情で見ていた。

 

 

「エルザ。月を壊すなら、あの遺跡の方がいいんじゃね? ここより高いし」

 

「レアは十分だと思うの」

 

「そうだな。それに、遺跡には村人は近づけんからな」

 

 

少しソワソワした様子でナツがエルザに聞いたが、代わりにレアが答えてエルザもそれに同意する。

一方見張り台の下ではソワソワしている村民たちの中で違う感情を抱いている者が4名程いる。

 

「月を…壊すって……さすがのエルザでもそれは無理……だよな」

 

「な…何をするつもりなのだろ…?」

 

「ドキドキするね」

 

「いろんな意味でね…」

 

「それにレアとエルザは何に気づいたのかしら…」

 

 

疑問、緊張、興奮。

様々な感情が入り乱れる中、一行はその時を待つ。

そんな中、普段と変わらない様子のレアはエルザにどう破壊するのかを尋ねた。

エルザは「そう慌てるな、これから説明する」と微笑を浮かべながらそうレアを説き右手を少々斜めに構えた。

 

 

「この鎧は巨人の鎧。投擲力を上げる効果を持つ。そしてこの槍は闇を退けし破邪の槍」

 

「それをぶん投げて月を壊すのか!! うおおっ!すげぇ!!!」

 

「「(イヤイヤ…無理だから……)」」

 

「んー…それはちょっと無理があると思うの」

 

「「(良かった…珍しくレアがマトモで…)」」

 

「いくら投擲力を上げてもあそこに着く頃には火力が無くなってるの」

 

「「(違う、そうじゃない…)」」

 

 

ドキドキを越してワクワクとしているナツと何故か物凄く真面目に話し合っているレアとエルザにルーシィとグレイは揃って面持ちを暗くして3人を見ていた。

そのテンションについていけないのだ。

 

 

「あぁ、レアの言う通りだ。だからお前たちの火力を借りてブーストさせたい」

 

 

エルザの語った作戦は至ってシンプル。

槍の石突きの部分を投げるタイミングに合わせ、魔法を使って殴るだけである。

 

 

「巨人の鎧の投擲力と、お前たちの火力を合わせて月を壊す」

 

「ん、なら蹴りでいくの。ホラ、魔力融合(ユニゾンレイド)の時みたいになの」

 

「あー、あんな感じか。おし! わかった!!」

 

 

やる事が単純故に作戦会議もすぐに終了した。

そんな様子を下でルーシィとグレイは戦々恐々とした様で見ていた。

 

 

「3人とも何であんなにノリノリなんだよ…」

 

「まさか本当に月が壊れたりしないよね…」

 

 

プルプル震える二人を他所に、エルザは「行くぞ」と促した。

槍を大きく振りかぶりそして…!

 

 

「双竜!!!」

 

「おぉう!!」

「んん!!」

 

「そらぁ!!!」

「んなのぉ!!!」

 

 

女騎士が呼びかけ、双竜が呼応する。

彼女が槍を投げるためそれから手を放したと同時に二人は槍の石突きを蹴り抜く。

ドン!と鈍い音が響き、一瞬時間が硬直したような感覚を全員が覚えた。

 

 

「届けェェえええっ!!!!」

 

 

気合いを込めるようなエルザの叫びと共に、槍は勢い良く飛んで行った。

まるで打ち上げられた巨大な花火、或いは宙の彼方へと旅立つロケットのように、ぐんぐんぐんぐんと天へ上がっていく。

煙の尾を引いた槍は月に吸い込まれるように飛び、やがて見えなくなるまで飛んでいった。

瞬間、ピシャア!!と、そんな音が響いたが、月に変わり映えは無い。

それも束の間。

 

 

ピキィ…!

 

 

『おおおおおおおおっ!!!!』

 

「「嘘だぁーーーーっ!!!!」」

 

 

月の中心に大きな亀裂が走り出したのだ。

村民たちは長年の苦しみから解放されると狂喜乱舞の様で声を上げ、未だ目の前の光景が信じられないグレイとルーシィは目を猫のようにパッチリと開かせ、口は顎が外れたと言わんばかりにあんぐりと開けていた。

ピキピキィと亀裂はさらに広がっていく。

そして…。

 

 

パリィン!!!

 

 

ガラスが割れたようなあまりにも甲高い音が響いた。

それもそうだ、全員の目に入ったのは薄いガラスのような紫の空が割れ、その奥から見慣れた黄色い月が顔を覗かせた光景だった。

 

 

「え!?」

 

「月!!?」

 

「これは…!!」

 

「割れたのは月じゃない……空が割れた…?」

 

 

そこを中心に、紫色の空はどんどん崩れ去っていく。

そんな光景に誰もが目を奪われる。

 

 

「どうなってんだ!コレぁ!!?」

 

「この島は邪気の膜で覆われていたんだ」

 

 

みんなを代表して見張り台から体を突き出して空を見るナツがそう言い、その言葉に後ろにいたエルザが答える。

 

 

月の雫(ムーンドリップ)によって発生した排気ガスだと思えばいい。それが結晶化して、空に膜を張っていたんだ」

 

「ちょっと考えればコレは予想出来ることだったの」

 

 

至極当然だというふうに答えるレアにルーシィは「どういう事?」と先を促した。

 

 

「前提として、月は一つしか無いの。マグノリアから見た月は普通の色だったけど、この島でだけ月は紫に見えていたの。なら疑うべきは月本体じゃなくて、この島の空の方だったの」

 

 

そう言われ、彼女も納得の表情をみせる。

約一名理解出来ていない様子だったが…。

その時である。

割れた空は光の粒子になり、村民たちを足元から包み始める。

空に浮かぶ月のような金色の輝きに、ルーシィが「キレイ」と零すのも無理は無いだろう。

 

 

「邪気の膜は破れ…この島は本来の輝きを取り戻す」

 

 

そして村民たちを包んでいた光はだんだん輝きを失ってその姿を露わにする。

一行の目に映ったのは、相も変わらず悪魔化している村民たちであった。

 

 

「けど……戻らねえのか…?」

 

「そんな…」

 

「いや、これで元通りなんだ」

 

 

変わっていない現状にハッピーの落胆の声があがるが、エルザの一声で眉を顰める。

その中エルザは鎧を元の鎧に戻して見張り台の下に降り、張っていた声を普通の声色に戻す。

 

 

「邪気の膜は彼らの姿ではなく、彼らの記憶を冒していたのだ。「夜になると悪魔になってしまう」という間違った記憶だ」

 

 

そこまで言われて、ルーシィも答えにたどり着いたのだろう。

全身の毛という毛が逆立ち、背筋に悪寒が走った。

「まさか」というルーシィの言葉に答えてか、或いは未だに理解出来ていないナツに説明する為か、エルザは「そういう事だ」と一呼吸置いて答え合わせを行った。

 

 

「彼らは元々悪魔だったのだ」

 

 

なんでもないかのように告げられた衝撃の事実。

それに対しての反応はまちまちだった。

ナツは目を見開かせて口をあんぐりと開け、ルーシィは膝から崩れ落ちて耳を劈く金切り声をあげる。

ハッピーは天を仰ぎ、フリーシャはぎゃいぎゃいとルーシィの頭上を飛び回る。

そしてグレイは口をあんぐり開けたアホ面で本人確認していた。

確認された村民も混乱気味に「うむ」と答えた。

 

 

「彼らは人間に変身する力を持っていた。その人間に変身している自分を本来の姿と思い込んでしまった。それが月の雫(ムーンドリップ)による記憶障害」

 

「でも……それじゃあ、リオンたちは何で平気だったの?」

 

「それは多分、 "人間" だからなの」

 

 

それはそれとして別の疑問が浮かんだルーシィがそう口にすると、今度はレアが引き継いだ。

そしてその流れでフリーシャがレアに何故村民が元々悪魔であるかを聞いた。

 

 

「村人の正体の確信は遺跡の事なの。月の光は本来聖なる魔力の源なの。そんな聖なる場所に、闇の住人は近づけないの」

 

「流石だ……君たちに任せて良かった」

 

 

レアが解説を終えると、何処からかそんな声が聞こえてくる。

声の方向へ視線を向けると、誰もが目を疑った。

 

 

「魔導士さん、ありがとう」

 

 

そこに居たのは、なんと死んだハズの村長モカの息子のボボだったからだ。

 

 

「幽霊!!!?」

 

「ああああっ!!!」

 

「じ…地縛霊なのよ…!」

 

「船乗りのオッサンか!?」

 

 

普通登場するはずの無い故人の登場に、ルーシィと猫2匹は揃ってパニックになる。

グレイも言葉こそ冷静だがボボを見る目は完全に幽霊を見た時の目で動揺を隠せていなかった。

そして村民たちもその事実に理解が追いついておらず目の前にいるボボとボボの墓を交互に見ていた。

 

 

「胸を刺されたくれェじゃ、悪魔(オレたち)は死なねェだろうがよ」

 

 

ポカーンとする村民たちを見てボボは豪快に笑う。

だが未だに生きているという事実が受け止めきれていないのか、グレイが身に感じた謎を本人に問うた。

 

 

「あ…あんた……船の上から消えたろ…?」

 

「……」

 

 

ボボはしばらく黙っていると…。

 

 

シュッ…!

 

 

その場から姿を消した。

聞いたグレイも驚きのあまり目をひん剥かせたが、直後にバサッと何かが羽ばたく音が聞こえる。

その方向に目を向けると、思わず「おぉ」という声が溢れ出る。

そこには背中から翼を生やしたボボが飛んでいたのだ。

 

 

「あの時は本当の事が言えなくて済まなかった。オレは一人だけ記憶が戻っちまってこの島を離れてたんだ。自分たちを人間だと思い込んでる村のみんなが怖くて怖くて」

 

 

ケラケラと笑ってそう語るボボ。

そんな姿を見てか、ようやく現実と理解出来たのか、モカが体を震わせていた。

そしてボボと同様の翼を背中から生やした。

 

 

「ボボーーー!!!」

 

「やっと正気に戻ったな、親父」

 

 

弾丸の勢いで飛んできたモカをボボはしっかりと受け止め、2人で笑いあった。

そんな2人に感化されてか、他の村民も背中から翼を生やして次々に飛び立つ。

みんなが魅せる顔も、口々に発せられる言葉も、どれもこれも喜色に満ちていた。

 

 

「ふふ……悪魔の島…か」

 

「でもよ……みんなの顔を見てっと……悪魔ってより、天使みてーだな」

 

 

悪魔なのに天使。

本来矛盾であるそれだが、誰もナツの言葉を否定しなかった。

笑いながら飛び回る姿を見て、地上にいたみんなも自然と笑顔になっていた。

 

 

「今夜は宴じゃーーーっ!!! 悪魔の宴じゃーーー!!!」

 

「悪魔の宴って……なんかすごい響きね…」

 

 

直後、苦笑いに変わったことは言うまでもないだろう。

 

村民たちが喜びの舞を披露する中、変わらずザルティは観察していた。

その傍らでは、彼の水晶がフワフワと浮かびながら少し発光していた。

 

 

「ご覧になりました?」

 

『ああ……。なぜ村を元通りに?』

 

「サービス♡」

 

 

突如水晶に向かって話しかけると、水晶から男の声が発せられる。

水晶の質問にサムズアップしながら答えたザルティに、水晶は……いや、水晶の奥で見ていた男は「やれやれ」と呆れたように言った。

そして男……評議員の一人、ジークレインが再び口を開いた。

 

 

『しかし…思いのほかやるようだな…妖精の尻尾(フェアリーテイル)……。オレたちの邪魔にならなければいいがな』

 

 

それを聞いたザルティは、自身の象徴とも取れるその仮面を取った。

中から現れたのは逆立った黒髪の爺さんだった。

しかしその体はモヤのような煙に包まれていく。

モヤはだんだんとザルティの時とは違うシルエットを象っていく。

逆立った髪は長く流れ、平たい胸板は膨らみ、あらゆる所で曲線が目立っていく。

煙が晴れて現れたのは、黒髪高身長の女……評議員の魔導士にして検証魔導士の一人……ウルティアであった。

 

 

「そうね…」

 

 

たった一言、ジークレインの言葉に同意したウルティアは、その場を後にした。

 

 

〜〜〜

 

 

夜中に始まった悪魔の宴は、その日の太陽が昇るまで続いた。

宴の途中、零帝一派の幹部にあたるシェリー、ユウカ、トビーが来訪し、謝罪の意としてエルザから1発ずつ殴り飛ばされた話は割愛することとする。

宴の余韻からかみんなの眠気は完全に吹き飛んでおり、妖精一行は流れで帰り支度を整えていた。

そんな中、ルーシィはグレイの顔を覗き込んでいた。

別に惚れなどという話では無く、ルーシィの視線はグレイの額に注視していた。

 

 

「キズ…残っちゃいそうね」

 

「あ? 別に構わねーよ」

 

 

そう、そこにはリオンの攻撃で受けた切り傷がパックリと現れでており、恐らく一生物の傷になるのだろうとルーシィはほぼ確信していた。

だがグレイはそう言い放って腕を組んだ。

「顔よ?」と尚も心配してそう問うルーシィだったが、グレイは微笑を浮かべた。

 

 

「キズなんてどこに増えようが構わねえんだ。目に見える方はな」

 

「お、上手いこと言うじゃん」

 

 

そう締めたグレイに、無用な心配だったと感じウインクしながらグレイに賛辞の言葉を送る。

だが、空気を読めない者が2人ほど…。

 

 

「はぁ? 見えないキズって何?」

 

「んくっ、プハァ…背中の傷の事なの?」

 

 

双竜の2人である。

手に持っている松明の炎にかぶりつきながら頭の中で渦を巻くナツと、バケツいっぱいの水を空中にばら蒔いて細かく水玉を作り、それを団子を食べる要領で食べていたレアがキョトンとしてそう聞いた。

因みに炎を満面の笑みで食べているナツに村民が「悪魔だ…」と恐れ、水玉を食べる姿とその周囲の神秘的な様のレアに「天使だ…」と崇める。

悪魔が悪魔のような人を恐れ、悪魔が天使のような人を崇めるという珍妙な図が出来上がっていたりする。

分かりやすく水を差されたグレイは顔をムッとさせてナツに詰め寄った。

 

 

「うるせーよ! カッコイイ事言ってんだからほっとけよ!」

 

「今のが?」

 

「……ん、よく分からないの」

 

 

グレイの言葉にナツはさらに眉を顰め、レアも興味は失せたと言わんばかりに再び水玉を食べ始めた。

小話ではあるが、普段ド天然の癖して妙に勘が良いが、どこでそのスイッチが入るかという謎は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の七不思議であるとか無いとか。

いつものように喧嘩をし始めるナツとグレイを見てルーシィはやれやれと言った具合にため息をついた。

 

その背景ではエルザが村民たちと対面しており、彼らはギョッと目を見開かせていた。

 

 

「な…なんと!! 報酬は受け取れない……と?」

 

「ああ……気持ちだけで結構だ。感謝する」

 

 

会話の流れでも分かる通り、エルザは村から報酬を受け取ることを丁重にお断りしていた。

だがモカとしては救われたのに何もお礼はしないというのは随分と気が引けたものだった。

村民たちも意思は同じである。

故にモカが「しかし…」と続けようとした所、エルザが再び口を開く。

 

 

「昨夜も話したが、今回の件はギルド側で正式に受理された依頼では無い。一部のバカ共が先走って遂行した仕事だ」

 

「ほがぁ……それでも我々が救われた事には変わりません。ここはギルドへの報酬では無く、友人へのお礼という形で受け取ってくれませぬかの?」

 

 

エルザの言葉にモカは朗らかな笑みを浮かべながらそう答えた。

その心の器の深さに、ナツとグレイは喧嘩を止め、ルーシィは信仰している神が目の前に現れたかのように手を結んでモカたちを見ていた。

レアも食事に一区切りがつき、そちらをじっと見つめていた。

エルザはモカの言葉を受けては微笑を浮かべる。

 

 

「そう言われると拒みづらいな」

 

 

ようやくエルザが折れてくれたと村民たちは揃って声をあげた。

そして喜んでいるのは何も村民たちだけじゃない。

 

 

「700万J(ジュエル)!!!」

 

「おおおっ!!!」

 

「わーいなの!」

 

「やったぁ!!!」

 

 

グレイは喧嘩していた時の顰めっ面が一変して満開の笑顔。

ナツはそれに加えて鼻から火を吹いていた。

レアはいつもハイライトが消えている蒲公英色の瞳に一番星が宿り、ルーシィはバンザイして飛び跳ねながら喜びを表していた。

だが、エルザはタダでは折れてくれない。

 

 

「しかし、これを受け取ってしまうとギルド理念に反する。追加報酬の鍵だけありがたく頂く事にしよう」

 

「「いらねーーーっ!!!」」

 

「なのっ!!」

 

「いるいる!!!」

 

 

まさかの折衷案にナツとグレイは揃って嘆きの咆哮をあげる。

それに呼応してかレアも明確な拒絶の意思を見せたが、慌ててルーシィが引き止めた。

村民たちもここまで強情かと思ったが、何も受け取ってくれないよかマシと思ったのか、その案で納得した。

 

 

「では、せめてハルジオンまで送りますよ」

 

「いや、船なら用意できてる」

 

 

ならばとボボがそう言うも、再びエルザは報酬の時同様気持ちだけ貰うという旨を伝えた。

思わぬ返答に全員例外無く「え?」となる。

だがエルザは何も言わずに浜辺へ向かおうとしたから、慌ててみんなもそれについていく。

浜辺に出た瞬間、その圧倒的存在感に目を奪われた。

 

 

「海賊船!!?」

 

「まさか強奪して来たのかしら!?」

 

「流石はエルザ様!」

 

 

そう、目の前にあったのはおどろおどろしい海賊船だった。

どうやらドラゴンをイメージした帆船らしく、船首のドラゴンの首をはじめ、所々にドラゴンの翼を模した装飾品がある。

帆はボロボロながらもかろうじて機能していることもあり、程よく張られて空気を受けようとスタンバイしている。

因みに船長を含めた船員たち全員は既にエルザによって調教済みであり、エルザを「姐さん」と呼び慕っている。

エルザ本人は「何やら気が合ってな」と自覚していなかったが。

 

 

「イヤよ!! こんなの乗りたくない!!!」

 

 

一人駄々をこねるルーシィだったが、ナツが彼女に向かってニカッと笑い、レアはサムズアップしてみせる。

 

 

「泳ぐなら付き合うぞ」

 

「サメ避けなら任せてなの」

 

「ムーリーッ!!!」

 

 

いつもと変わらないレアの表情がドヤ顔に見えるのは何故なのだろう…。

先程よりも強い拒絶で、ルーシィは嫌々ながら海賊船に乗り込んだ。

ナツとレアは最後まで泳いで帰ると駄々をこねていた。

最終的にはエルザが2人まとめて無理やり船に乗せ、船酔いさせる事で大人しくさせた。

エルザの鬼畜さにいつものように震え上がっていると、島の方向から声が聞こえてきた。

 

 

「みなさぁあぁん!!!ありがとうございまあぁああぁす!!!」

 

 

ボボがみんなを代表してそう声をあげ、他の者たちも手を振って言葉を交えながら送り出した。

そんな様子をガルナ島の崖の上で、リオンとその仲間たちが静かに……いや、1匹の例外を置いて静かに見守っていた。

 

 

「…行っちまったな」

 

「フガッ…な…泣いてなんかないモンね!!グスッ…」

 

「なぜ泣く…」

 

 

一体どこでそんな絆が芽生えていたのかと質問したくなるくらい号泣するトビー。

そうやって号泣する彼を背後に、シェリーがリオンの方へと視線を向けた。

 

 

「いいんですの? せっかく分かり合えた弟弟子さん…すなわちあi…「いいんだ」」

 

「最後まで言わせてあげなさいよ…」

 

 

リオンはシェリーの言葉に食い気味に否定の言葉を述べ、コユリはそんな彼に心の内から溢れ出た言葉で柔らかいツッコミを入れた。

しかし返事が無く、不思議に思ったコユリはリオンの顔を覗いてみる。

包帯やガーゼだらけのその顔は見ていて痛々しいが、表情は以前とは別人と言えるほど爽やかであった。

 

 

「なぁ……ギルドって楽しいか?」

 

 

フッと零れ落ちた言葉に、誰もが目を見開いた。

しかしコユリだけは動揺は少なかった。

ゆっくりとリオンの隣に座り、シェリー達を見上げた。

 

 

「そうね…私も気になるわ。教えてくれないかしら、先輩方?」

 

 

ニコッと笑うコユリに、他の者たちも表情を和らげる。

リオンの憑き物が落ちたかのような晴れ晴れとした顔と、コユリの明るい笑顔に燃える情熱の炎を宿した瞳は、まるでどこまでも広がる青い空と全てを照らす太陽のようであった。





これにてガルナ島編は完了です。
次回からはアニオリ挟んで幽鬼の支配者編入ります。
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