妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

35 / 70

アニメ丸々1話書き切ろうとしたら半分の時点で1万字超えてこりゃイカン!って一旦切りました。:( ;´꒳`;):ヒェッ
因みにチェンジリングの漢字表記に関しては今作のオリジナルです。
今後もアニメオリジナル魔法でカタカナ表記されている物は私の独断と偏見で漢字を当てていきます。


人格輪転

 

魔法評議会会場『ERA(エラ)

時刻は妖精の尻尾(フェアリーテイル)がガルナ島を発って間もない頃。

 

 

「きゃあああぁぁっ!!! 何コレェ!!?」

 

 

悲鳴が轟いていた。

発生源はジークレインの部屋、声をあげたのはガルナ島で暗躍していたザルティ……もといウルティアだった。

 

 

「はっはっは!!! 今頃腫れてきやがった! しかもご丁寧に二箇所同時ときた!!!」

 

 

そしてこの部屋の主、ジークレインは彼女の顔を見てこれは傑作と言わんばかりに大爆笑していた。

字面を見ればかなり酷いが、今のウルティアの現状を見れば仕方ないのかもしれない。

なんせ彼女の両頬がぷっくぅと膨らんでおり、その顔は某アンパンヒーローのようになっていたのだ。

 

 

「そういえば、ナツとレアと戦ったんだったな。感想は?」

 

 

お互い少し落ち着いたところで、ジークレインは思い出したかのようにウルティアに聞いた。

両頬を手で押さえながらも痛みで顔を顰めていたウルティアが述べたのは素直な賞賛だった。

 

 

「私は半分も力を…いえ、あれ以上続けていたら出さざるを得なかったでしょうね。その上、あの子たちはもっともっと強くなるわ」

 

 

それを聞いたジークレインは自然と自分の拳に力が入るのを感じた。

 

 

「だろうな…あのイグニールとゼルネールの子だ。オレの夢の為に……燃え続け…荒れ狂うがいい」

 

 

冷笑を浮かべたジークレインは、その腹の奥で轟々と野心の炎を燃やしていた。

 

 

〜〜〜

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の本部があるマグノリアの街。

 

 

「帰って来たぞー!!!」

 

「来たぞー!!!」

 

 

朝一番に島を出発した事もあってか、昼ごはんを食べるにはちょうどいい時間帯に帰ってきていた。

S級クエストから五体満足で帰ってきて良い事ではあるのだが、グレイとレアはどこかガッカリといった雰囲気を出していた。

 

 

「しっかし、あれだけ苦労して報酬は鍵1個か…」

 

「ん、せっかくのS級クエストだったのに、ちょっと残念なの」

 

「正式な仕事ではなかったんだ。これくらいがちょうどいい」

 

「そうそう、文句言わないの!!」

 

 

2人の落胆の声にエルザが口を挟み、その隣でルーシィがにっこおっと満足げな笑みを浮かべて彼女に便乗した。

だがそんなルーシィに対してフリーシャが不満を言い放つ。

 

 

「そんな事言ってルーシィはちゃんと得してるじゃないのよ」

 

 

だがそんな不満の声を、ルーシィはそっぽを向いて左から右へと聞き流した。

その顔は「さぁ〜て何のことでしょうかね♪」と言外に語ったとぼけ顔であった。

カチンときたフリーシャは錯覚だろうか、全身から黒いオーラが溢れ出ていた。

 

 

「今夜忍び込んで売り飛ばしてやろうかしら…」

 

「なんてこと言うどら猫かしら!! 絶対止めてよ!?」

 

「……冗談なのよ」

 

「ねぇ!今の間何!!?」

 

 

あまりにも『やりかねないオーラ』を放出しているフリーシャを、ルーシィは割とガチで止めようと声を荒らげた。

フリーシャのブラックジョークに、ルーシィは自分の寿命が少し縮んだような気がした。

 

 

「前にも言ったけど、金色の鍵『黄道十二門の鍵』は世界中にたった12個しかないの。めちゃくちゃレアなんだからね」

 

「あの牛やメイドがか?」

 

「あたしがもっと修行したら、星霊の方がアンタより絶対強いんだから!!」

 

 

改めて黄道十二門の鍵について説明したルーシィだったが、実際に戦ったナツはそれを鼻で笑った。

確かにハコベ山で完全なる不意打ちとはいえタウロスをワンパン、シロツメの街では召喚主が違うといえどバルゴを2度一撃KOしている。

ルーシィもそれが分かっていたからこそ悔しそうに唸ることしか出来なかった。

 

 

「で……今回もらった鍵はどんなのなんだ?」

 

 

そんな中、グレイがタイミング良く話題を今回の報酬の鍵に戻した。

聞かれたルーシィは上機嫌そうに答えた。

 

 

「人馬宮のサジタリウス!」

 

「人馬だと!!?」

 

 

ルーシィの答えにグレイは頭の中で想像を膨らませて驚愕した。

しかしルーシィは何となくだがグレイの想像する人馬が()なのではと読めて微妙な表情を浮かべた。

一般的に人馬と言えば、人間の上半身に馬の下半身という半人半獣の生物で弓を持つ姿を想像するだろう。

しかしグレイが思い浮かべたのは馬の顔に首から下が人間の体、最早それは馬の被り物をした人間と表現した方が適切だろう。

 

余談だが、その傍らで話を聞いていたナツとレアも想像を膨らませていた。

しかしその姿は人でも馬でもなかった。

ナツは醜悪に歪んだ顔をした花からタコの足が生えた、端的に言えば化け物を想像しており、レアはただのイカを想像していた。

もう一度言おう、ただのイカである。

 

そんなのほほんとした空気も突然終わりを告げる。

 

 

「呑気な事だな。まさか帰ったら処分が下るのを忘れた訳ではあるまいな」

 

「「げっ!?」」

 

「処分…」

 

「…なの!?」

 

 

エルザの言葉に漏れなく全員が目を見開かせてエルザの方を見た。

 

 

「ちょっと待って!! それってもうお咎めなしになったんじゃ……」

 

「馬鹿を言うな。お前たちの行動を認めたのは、あくまで私の現場判断だ。罰は罰として受けて貰わねばならん」

 

 

ルーシィの抗議の声も虚しく霧散し、エルザに重い現実を叩きつけられる。

 

 

「私は今回の件に関しては概ね海容してもいいと思っている。しかし、判断を下すのはマスターだ。私は弁護するつもりは無い。それなりの罰は覚悟しておけ」

 

 

そう言うと、真っ先にハッピーとフリーシャの顔がサーッと青くなる。

 

 

「まさかアレをやらされるんじゃ!!!」

 

「ちょっと待て!!! アレだけはもう二度とやりたくねえ!!!」

 

「黙るかしらオス共!!!アレの事は口にするだけでも恐ろしいのよ…!!」

 

「アレって何ーーー!!!?」

 

 

青ざめた顔で戦々慄々している3人の会話に共通して『アレ』に、ルーシィは言い知れぬ不安を抱き始める。

3人ほどでは無いがルーシィも肩をビクビクさせていると、その肩をナツがポンと叩いて落ち着かせた。

 

 

「気にすんな! 「よくやった」って褒めてくれるさ、じっちゃんなら!」

 

「ん。おじいちゃんは優しいから、「それでこそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士じゃ」って褒めてくれるの」

 

「すこぶるポジティブね、アンタら…」

 

 

ルーシィを挟んで双竜がそう言い合い、ある種の現実逃避に見えた彼女はジト目で2人を見た。

だが間を置く暇なくエルザが「いや…」と口を挟んだ。

 

 

「アレはほぼ決定だろう。ふふ……腕がなる」

 

 

その言葉に、最初こそナツとレアは変化を見せなかった。

だが次第にナツの笑顔は引き攣り、レアはそっぽを向いた。

その時点でルーシィは2人を乾いた目で見始める。

最終的にナツはその引き攣った笑顔のままダラダラと大量に冷や汗をかきだし、レアはあさっての方向を向いて頭を抱えてしゃがんだ。

 

 

「行くぞ」

 

「!? イヤだぁーーー!!!アレだけは!!アレだけは!!!イヤだーーーーー!!!!」

「!? ご慈悲を!!どうかご慈悲をエルザ様ぁーー!!!アレだけはどうかご勘弁をーーー!!!」

 

 

瞬間、エルザは何時ぞやのようにナツのマフラーとレアのセーラー服の襟元を掴んだ。

そしてそのまま2人を引きずってギルドへと歩き出した。

2人としては逃げようと考えたその瞬間には引きずられていた為に一瞬何事だと思考が止まった。

だがすぐに状況を理解すると、2人揃って泣き喚き始めた。

表情の動かないレアであってもナツと同じように破顔し、口癖の語尾が吹き飛んでいた。

 

 

「だからアレって何ーーー!!?」

 

 

それほどまでに彼らを恐怖させているにも関わらず、その正体が分からない。

故にルーシィは彼らとは別種の未知という名の恐怖で体を震わせるのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

「マスターはおられるか!」

 

 

数分の後、彼らは無事ギルドへと帰ってきた。

扉を破壊するかの勢いで開けたエルザは開口一番にマスターの確認をしてナツたちを震え上がらせる。

 

 

「おかえりなさい。島はどうだった? ちょっとは海で泳げたりした?」

 

 

エルザの言葉に最初に返答したのはミラだった。

しかし少々…いやかなりズレた返答に一同は「それ今聞く?」と内心微妙な表情を浮かべたが、顔に出せばエルザになんて言われるか不明だった故にぐっと堪えた。

エルザは一応ミラの質問に「それどころではなかった」と真面目に返し、再度マスターの確認をとる。

 

 

「評議会のなんたら会合とかなんとかがあるって、昨日から出かけてるぜ」

 

 

今度はマカオがマスターの現状を話し、エルザは「そうか」と納得して一応静かになる。

そしてマスターの不在を聞いて、仕置き組は一斉にホッとなった。

 

 

「今んとこセーフ!」

 

「よぅし!じーさんが帰ってくるまで、アレはねぇな!」

 

「ん、一安心なの…」

 

「良かったよォ!オイラたち、まだ地獄を見なくて済むよォ!!」

 

「始まったら後戻り出来ないかしら。今はこの自由を満喫するのよ…」

 

「だからアレって何なのよ!!あー気になる…!あー怖い!!実態が分からないから尚更怖い!!!」

 

 

心の底から安堵するような彼らの言葉と猫2匹の不穏な言葉に、ルーシィはさらに恐怖に駆られて涙を流しながら頭をポカポカ叩き出した。

だがそうして騒いでいると、エルザから「静かにしていろ!」と叱責されてしまう。

そのままマスターがいつ頃に帰るかを聞くと、ミラからは今日中には帰ってくるとの返答を受け、エルザはビビり散らかすナツらに言い放つ。

 

 

「マスターが帰られたらすぐに判断を仰ぐ。S級クエストに勝手に手を出した罪は罪。心の準備をしておけ」

 

「だからどういう心の準備をすればいいのよォオォオオォォ!!!」

 

 

釘を刺された一同は再び体を震え上がらせ、ルーシィはいつまでもその未知という靄に恐怖心を煽られていた。

そんな中、翼を出したフリーシャが何やら紙切れを1枚持ってフラフラ〜っとやって来た。

 

 

「レア〜、なんか珍しい依頼見つけたかしら」

 

 

そんな突拍子もない言葉にレアは「ん?」と疑問を覚えながらフリーシャが持ってきた依頼書を手に取ってみる。

ナツとグレイもレアが手に持つ依頼書を覗き込んだ。

するとそこにロキが合流した。

 

 

「あぁナツ、グレイ、レア、おかえり」

 

「ロキか…えっとこの文字を…?」

 

「どうしたの?」

 

「げぇ!? ルーシィも帰ってきてたのか!!?」

 

 

ロキの言葉にナツが軽く応対したがすぐに依頼書に目線を戻す。

そこへルーシィが割り込むと、ロキはオーバーとも言えるぐらい仰け反ってルーシィから距離をとる。

 

 

「当たり前でしょ?ナツたちと一緒に行ってたんだから。なんでそこまでビビるの?」

 

 

拒絶ともとれる反応にルーシィはムッとしてそう言いながら詰め寄る。

しかしロキは「いや…」と誤魔化しながらその場を後にしようと駆け出した。

その直後、前を見ていなかったロキはエルザと正面衝突して吹き飛ぶ。

その衝撃からロキは意識を落とした。

ルーシィから「弱すぎ…」と呟かれる始末である。

 

 

「お前たち、今はそれどころでは無いだろう」

 

 

一方エルザはロキがぶつかった事も気づいていないかのようにナツらと合流した。

あまりにロキが不憫すぎる。

 

 

「この文字の意味を解いてください。解けたら50万J(ジュエル)差し上げますって書いてるの。やることの割に破格なの」

 

「ね? 珍しい依頼かしら」

 

 

一通り目を通したレアはそう呟きながら依頼書を近くのテーブルの上に置いた。

しかし覗き込んでいたグレイは驚いたように声をあげた。

 

 

「これ古代文字じゃねえか! こんなの誰が読めんだよ…」

 

「でも隣に現代語訳があるよ?」

 

 

グレイが声をあげたのは、依頼書に意味を解いてほしいと書かれた文字がガルナ島の遺跡でも見た古代文字だったからだ。

しかしハッピーの言う通りその隣には現代語訳が書かれておりそちらであればナツでも読むことが出来た。

 

 

「なになに? ウゴテル ラスチ ボロカニア……ダーッ全然わかんねェ!!」

 

 

確かにナツが読み上げた文字はまるで意味がわからなかった。

これの意味を解けという依頼なのだろうが、ナツが文字を読んだ瞬間異変が起こった。

依頼書の周りを囲んでいた人たちの体から虹色の光が溢れ始めたのだ。

元々お仕置きが待っていることで注目を集めていたナツらは、その光のせいでさらに注目を集める。

ワカバは呑気に「人間お仕置きの恐怖に耐えきれなくなると虹まで出るのか」と感心してマカオにツッコまれていた。

光が収まると、すぐに別の異変が現れた。

 

 

「さ…寒いィ!」

 

「あ? 氷使いがなんで寒いんだよ」

 

 

突然グレイが体を縮こまらせて震え始めたのだ。

顔は青ざめて寒気を訴える彼の姿は異常で、エルフマンからそう問われるも変わらず彼は寒気を訴え続ける。

すると、隣のルーシィも異変が現れ始めた。

 

 

「な、なんか…! 重てェ!!なんか胸の辺りが異常に重てェ!! こ、腰に来る…!!」

 

「ど、どうしたルーシィ……なんか声のトーンヤケに低いぞ」

 

「そ、そんな事な…ええぇぇえええ!!?」

 

 

マカオの言った通り何やら声のトーンが低いルーシィが体の不調を訴え始めた。

そしてマカオの問いかけに何故かグレイが反応してテーブルにもたれかかっているルーシィに目を向けると驚愕で体を跳ね上がらせる。

そんな最中、気絶していたロキが目を覚ました。

 

 

「アレ……オイラ、なんで倒れてたんだっけ?」

 

「ていうか、僕はなんで立ってるんだ? そもそも、なんだか僕の視点が低くないか?」

 

 

かと思えば、いつもとは全く違う口調で話し始めるロキ。

その傍らで何故かメガネをクイッと持ち上げるような仕草をしたハッピーがどこかキザったい口調で話す。

そしてふとハッピーがルーシィに視線を向けた時だった。

 

 

「うわぁぁあああ!!!! ガッ!ベッ! う、うわぁぁあ!!」

 

 

まるで化け物を見たかのようにハッピーはルーシィから距離をとる。

しかし自分がテーブルの上に立っていたのを忘れていたのか、翼を出し忘れていたのか、テーブルから転げ落ちた。

だがそれでも気にせんと言わんばかりに立ち上がって走り出した。

 

 

「おいハッピー!!何でオレの顔見て逃げ…は?なんだこの声!?」

 

 

自分の顔を見て逃げられる事に腹を立てたルーシィがそう声をあげると、何故か今更自分の声に驚くような仕草を見せ、マカオは一連の流れに「なんかいつもとパターン違くね?」と困惑する。

そんなカオスな状況に混沌の種をもう一つ。

 

 

「なんだか……体が熱いの…」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 

突然ナツが顔を自身の手で扇ぎながらそんな事を言い出した。

普段のナツなら絶対にすることが無いだろう仕草に全員目が点になる。

それに加え、ナツの語尾にレアの口癖がくっついている事も、思考をフリーズさせている原因の一つであった。

 

 

「えっと……ナツ…急にどうした…?」

 

「あ?どうしたって聞かれたって何もねえよ」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 

 

混乱から覚めない中ワカバが代表してナツに聞いてみるが、何故かワカバの問いに答えたのはレアだった。

しかもただレアが答えただけでは無い。

いつものレアなら有り得ない男勝りな口調に、死んでいた表情筋が動いたのだ。

普段瞳孔が少し開いたり、眉がほんの少しピクついたりする程度のレアの顔に、顰めっ面とはいえ色が付いたのだ。

 

 

「……は!? え…レア…お前…」

 

「一体何を騒いでいる!」

 

 

放心状態からいち早く回復したマカオがレアに確認をとろうとするも、テーブルの方から凛とした……と言うには少々幼い声が響いた。

声の方向へ視線を向けると、そこにはキリッとした表情のフリーシャが仁王立ちしていた。

 

 

「な…何かしら……この妙に柔らかい胸のコレは」

 

 

その傍らで、不思議そうな顔をしたエルザが何故か自身の胸を揉んでいた。

その光景に男性陣が「おぉー!」と鼻息を荒くさせた。男なんぞ所詮こんなものである…。

そしてそれを見ていたフリーシャは「なっ!?」と絶句する。

それも束の間のこと。

 

 

「止めんかーー!!!」

 

 

フリーシャはエルザの顔面目掛けて飛び蹴りをかまそうと飛んだ。

が…。

 

 

ガンッ!

 

 

そんな鈍い音が虚しく響いた。

胸を揉んでいたエルザの服装はいつの間にか私服からまた鎧に戻っており、フリーシャは顔目掛けて飛んだが飛距離が足らずその胸の鎧に足を打ち付ける結果となってしまったのだ。

ジーンと体の芯が震える感覚を覚えたフリーシャはそのまま落ちてしまう。

エルザの口から零れ落ちた「あんまり痛くないのよ」という言葉がさらに虚しさを加速させる。

 

 

「何なんだこの猫型体型は…。というかこれは猫そのものだ。私は換装した覚えなどないぞ…!」

 

 

落ちた場所で項垂れていたハッピーは早口で自身の体の状態を確認して悶々としている。

それからも理解不能な状況がしばらく続いた。

口々に騒いでいるがどれもこれも普段の彼らでは絶対にしないであろう言動に他の者達は呆然としてしまっていた。

 

 

「ん、とりあえず理解したの」

 

「り、理解って、一体何を理解したのよナツぅ!」

 

「レアはレアなの」

 

 

突然ナツがそう言ってグレイに詰め寄られるも、ナツは自分がレアだっと言って肩を鷲掴みしていたグレイを払う。

 

 

「レアたちは、心と体が入れ替わってるの」

 

『……えええぇぇえええ!!!!?』

 

 

しれっと告げられた事実に、ギルド中から驚愕の声があがった。

 

 

「ど、どうやらそうだと見て間違いないだろうな……」

 

 

そこへフラフラ〜っと立ち上がったフリーシャ…もといエルザが復活して会話へ加わる。

 

 

「ナツとレア、グレイとルーシィ、ロキとハッピー、そしてあろう事か私とフリーシャが入れ替わったのだ」

 

「ちょっと!ハッピーならまだしも、なんでリーシャがあろう事かって蔑まれるかしら!!」

 

「酷いよぉ、オイラ今関係なかったじゃないかあ!!」

 

 

フリーシャ(エルザ)が誰と誰が入れ替わったかを説明するが、意図していなかった言葉の刃がエルザ(フリーシャ)を攻撃し、全く関係ないハズのロキ(ハッピー)に飛び火する。

その時、バタン!とギルドの扉が開かれた。

 

 

「古代ウンペラー語の言語魔法……人格輪転(チェンジリング)が発動したんじゃ」

 

 

評議会のなんたら会合とやらから帰ってきたマスターマカロフであった。

フリーシャ(エルザ)が待ってました!と言わんばかりに一番に駆け寄り、それに続く形で他の者たちもマスターの前に駆け寄る。

 

 

「あの依頼書が原因じゃ。ある呪文を読み上げると、その周囲に居た人々の人格が入れ替わってしまう。これぞ人格輪転(チェンジリング)じゃ」

 

 

現在彼らに起こっている異変の原因とその発動条件の懇切丁寧な解説を経て、ルーシィ(グレイ)レア(ナツ)の肩にポンと手を置き、中身がナツであるかを確認した。

レア(ナツ)も戸惑いながらも「あぁ」と肯定すると、ルーシィ(グレイ)彼女()の胸ぐらに掴みかかった。

 

 

「てめェなんてことしやがる!!!」

 

「知るか!!ちょっと依頼書読んでみただけだろーが!!!」

 

「止めんかルーシィ……いやグレイ。この呪文で入れ替わるのは人格だけでは無い。魔法も入れ替わるのじゃ」

 

 

喧嘩腰のルーシィ(グレイ)を制止させ、マカロフは続きを話し、再び聞いていた者たちは口をあんぐりさせる。

魔法が入れ替わるとはつまり、元の体の持ち主が自身の魔法になってしまうという事だ。

グレイ(ルーシィ)ナツ(レア)エルザ(フリーシャ)が分かりやすいだろうか。

 

 

「最後にもう一つ…」

 

 

まだあるのか…!と言わんばかりに、一同は固唾を呑んでマカロフの次の言葉を待つ。

 

 

人格輪転(チェンジリング)を発動してから30分以内に呪文を解除しないと、未来永劫元に戻れなくなる……という言い伝えがある」

 

 

その瞬間、入れ替わっていた全員の顔が真っ青になる。

慌てて入れ替わってから経過した時間を確認すると、もう既に16分経過とタイムリミットまで半分を過ぎていた。

 

 

「じっちゃん!! 元に戻す魔法は!!?」

 

「うぅむ…なんせ古代魔法じゃからのう。そんな昔の事はよう……知らん!!!」

 

 

一抹の希望に縋ってマカロフに聞いてみるも、返答は残酷だった。

電撃のような衝撃が走った彼らに、その後マカロフが何を言ったかほとんど耳に入っていなかった。

だがマカロフはそんな彼らを気にも停めず、「精々頑張ることじゃ」と言葉を残してその場を去っていつもの定位置に戻って行った。

 

 

「だあー!!なんてこった!!! えぇいこーなったら!!!」

 

 

一先ず気を持ち直したルーシィ(グレイ)

だが彼はあろう事か自身の服の裾に手をかけ、その綺麗なお腹をチラ見せさせた。

これには男性陣も頬がピンクに染まる。男なんぞ所詮こんなもn…(以下略

 

 

「ぎゃあああぁぁぁああ!!!ちょっとおぉ!!それだけは止めてぇぇええ!!」

 

「そっか。中身はグレイだから、脱ぎ癖もルーシィの体に移るんだね。目の前暗くてよく見えないけど」

 

 

そしてそんな羞恥行為を元の体の持ち主が認める訳もなく、グレイ(ルーシィ)は乙女な悲鳴をあげながらルーシィ(グレイ)を押さえ込んだ。

そんな中ロキ(ハッピー)は呑気に納得していた。

視界が暗いならそのサングラスを外せとツッコミを入れる者は誰もいなかった。

 

 

「…そうだ! リーシャ、ちょっと面白いこと思いついたかしら!」

 

「はっ! フリーシャ…!? 一体何を!?」

 

 

すると、眺めているだけだったエルザ(フリーシャ)は突然そんな事を言い出した。

嫌な予感がしたフリーシャ(エルザ)は何かやらかしそうな彼女を止めようとするが時すでに遅し。

 

 

「換装! かしら!!」

 

 

エルザ(フリーシャ)の声が一際大きく響き、彼女の体が光に包まれる。

数秒もかからない内に光は消え、さっきとは全く違う姿が顕になる。

ツインテールの紅い髪を魚のヘアバンドで纏め、胸元に「えるざ」と名前が入ったゼッケンが縫い付けられたスクール水着を着用。

そして何故か手には釣り竿を持っていた。

 

 

「おぉ!! コレはコレで!!!」

 

 

男性陣が鼻の下を伸ばし、黄色い歓声をあげた。男なんぞ所詮…(略

 

 

「止めろォォオオオォオ!!!」

 

 

そして元の体であられもない姿を晒されたフリーシャ(エルザ)はシュワッチ!にも負けず劣らずの飛び込みパンチを叩き込む。

 

 

ゴンッ!

 

「あ…」

 

 

そのハズが、全く意図していなかったエルザ(フリーシャ)のエルボーがフリーシャ(エルザ)の顔面にクリーンヒットした。

何もかも上手くいっていないフリーシャ(エルザ)は落ちたところでガクシッと項垂れた。

 

 

「な、なんという事だ…S級魔導士としてのプライドが…!」

 

「うーん…おかしいのよ、綺麗な天輪の鎧にするつもりだったのに上手くいかないかしら」

 

 

こっちはこっちで上手くいかないと頭を捻らせていた。

それを見てレア(ナツ)がポンッと手を叩いた。

 

 

「わかった! 確かに技は入れ替わるけど、中途半端になっちまうんだ!」

 

「案外そういう訳では無いかもなの」

 

 

しかしそれはナツ(レア)の言葉によって否定された。

どういう事だと(彼女)の方向へ視線を向けると、松明だったのであろう先端が焦げた木の棒を持ったナツ(レア)とその周囲をフワフワと浮かぶ10個の火の玉が目に入り、全員揃ってギョッと目を見開いた。

 

 

「これも慣れっぽいの。レアとナツの魔法は感覚はなんとなく似ていたからすぐに使いこなせたの」

 

 

なんでもないように言ったナツ(レア)は火の玉を一つ口元に寄せてパクっと頬張った。

 

 

「ん、美味しい……炎ってこんな味なの…水とは違って辛味があるの」

 

「うっほおおおマジか! じゃあオレも水食えんのか!!?」

 

 

ナツ(レア)が完璧にナツの魔法を使うのを見て興奮したレア(ナツ)は絶体絶命の事態であるという中ミラに普段なら頼むことは絶対に無かろう普通の水を頼んだ。

数秒もしないうちに目の前に出されたジョッキ一杯の水を前にレア(ナツ)は満面の笑みで「いただきまーす!」と挨拶してから口につけたジョッキを一気に傾けた。

 

 

「……ど、どうなんだ?」

 

 

レアが当たり前にしていたとはいえ、やはり常人からすれば想像も出来ないような事に挑戦しているナツにみんなの興味が注がれており、エルフマンが代表してレア(ナツ)に聞いてみた。

しばらく沈黙が続いていると…。

 

 

「う……うめぇ…!! なんだコレ……プルプルしてんのに噛むとフワッて溶けて、スゲェ優しい味がする……」

 

「フッ……また一人水の味の魅力に堕ちたの……炎も辛味が癖になって美味しいの…」

 

「炎もうめぇだろ!? けど水も捨て難い…!」

 

 

何やら滅竜魔導士たちにしか分からない会話が始まり周りはそのテンションについていけず呆然となった。

そんな時、翼を生やしたハッピー(ロキ)がギルドの門を潜ってきた。

 

 

「誰かー!!なんとかしてくれー!!!」

 

 

そう叫んだ次の瞬間、彼は突如急降下して「ガベッ!?」と声をあげながら墜落した。

その様子を見た全員が「あー、魔法が中途半端に機能しているんだ」と半ば理解した。

そんな彼を嘲笑うかの如く(そんな意思は断じて無いが)翼を生やしたフリーシャ(エルザ)が安定した飛行を披露しながら舞い降りた。

 

 

「おぉ、なるほど。空を飛ぶとはこういう感じか…等と感心している場合じゃない!!もう時間が無いぞ!!!」

 

 

手足をジタバタさせながらそう忠告したフリーシャ(エルザ)はまた飛び上がっていった。

しかしそう言われても呪文の解除方法が分からなければ手の打ちようが無いのも事実。

 

 

「一体どうしたら…はぁ……」

 

 

グレイ(ルーシィ)はそんな先の見えない状況に大きくため息をつく。

しかし、そのため息と一緒に氷の礫が口からボロボロと垂れ始めた。

 

 

「グレイ……じゃなくてルーシィ、口から氷が…」

 

「うお!?むぐっ…!キモっ!? もうやだぁ…」

 

 

慌てて口を抑えたグレイ(ルーシィ)だが、それだけで氷の礫は止まってくれず、未だにポロポロと溢れてきていた。

そんな泣き言を呟いた時だった。

 

 

「ルーちゃん、私に任せて!」

 

 

そんな頼もしい声が聞こえてきた。

声の方向へと目を向けると、そこには3人の人影が見えた。

それを見てグレイ(ルーシィ)はパァっと顔に光が戻った。

 

 

「レビィちゃん!!!」

 

 

人影の正体は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中堅チーム『シャドウギア』の3人であった。





ハッピー先生の妖精の尻尾(フェアリーテイル)講座!

今日は水の魔導士、レアの秘密を教えちゃうよ!
レアはナツと同じ滅竜魔法っていう珍しい魔法を使うんだ。でもレアは炎じゃなくて水を食べちゃうんだ。
喋った後に「なの」とか「の」ってつくのは、ゼルネールの真似をしようとしたら癖づいちゃったんだって!
頭が良くてエルザよりも賢い時があるんだけど、時々何言ってるかわかんなかったりするんだ、ウパー!

では、今日はここまで!
起立!礼!あい!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。