妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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あけましておめでとうございます!(遅)
先月あと一本上げれるかなぁって思ってたのにあーでもないこーでもないと模索してたら年明けてました、申し訳ありませんm(_ _)m
個人的にココがこの小説書いてポイントの1つなので適当は嫌なのです(`・ω・´)フンスッ!
それと、今回の話を書くに当たって、レアの普段着を少々変更しています。
セーラー服はまだしも流石にマリンハットはコスプレ感が否めないので白いベレー帽に変更しています。


回想 双竜誕生
ドラゴンの子


 

ここは妖精の尻尾(フェアリーテイル)本部内にある書庫。

そこへ暇を持て余していたルーシィがやって来ていた。

というのも、いつも彼女を誘うナツとレアは「久しぶりに2人で仕事行こうぜ!」「OKなの!」という具合にさっさとギルドを飛び出したのだ。

いつも彼らと一緒の猫2匹はどうしたのかといえば、昨日ギルド内を大騒がせした人格輪転(チェンジリング)事件が大きく関係していた。

 

あの後その場で人格が入れ替わったマカロフとミラ、カナとエルフマン、ジェットとドロイはほぼ諦めていたレビィを説得してなんとか元に戻した。

理論はあっていたのだ、制限時間も余裕があれば呪文さえ間違えない限り戻せない道理は無かった。

 

問題であるロキ、ハッピー、エルザ、フリーシャの4人はレアの提案でガルナ島へと蜻蛉返りしていた。

彼女の案は至ってシンプル。

今すぐガルナに戻って月の雫(ムーンドリップ)をその身に受けるというものだった。

島で散々呪いだなんだと言われた月の雫(ムーンドリップ)であるが、元々はあらゆる魔法を解除する解呪の魔法なのだ。

使用した際に発生する邪気さえ適切に対処すればなんら問題は無いし、人間に対しては無害であることは既にリオンたちが証明している。

人格輪転(チェンジリング)も魔法だ。

いかに未来永劫元に戻らないと言われていようと、あの絶対氷結(アイスドシェル)をも溶かす月の魔力を前にすればかたなしだろう。

 

そういう訳ですっかりルーシィは暇になってしまったのだ。

なんの目的も無くフラフラとギルド内をさまよって書庫に寄ってみると、彼女は巨大な本棚にかかったハシゴの上で何やら作業をしていたミラを発見した。

 

 

「ミラさーん!! 何してるんですかー?」

 

「古い資料の整理よ」

 

「アタシも手伝います!!」

 

 

昨日色々あったばっかなのに凄いなぁと心中で感銘を受け、ボールを投げられて取りに行く犬の如くルーシィは手を挙げて手伝いを申し出る。

ミラは朗らかな笑みを浮かべた。

 

 

「お願いしていいかしら」

 

「はァーい! お易い御用です!!」

 

ガッテン!とサムズアップしてみせたルーシィはすぐにミラの元へと駆け寄り、作業内容を聞いて手伝い始めたのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

「それでナツもレアもアタシを巻き込んで……酷いと思いません?」

 

「フフっ…でもそういう所が可愛いのよねぇ」

 

 

ルーシィが手伝い始めてから約三十分が経過した。

その間、ルーシィは如何にして自分がS級クエストに巻き込まれたかを(自分が被害を被ったように少し脚色して)話した。

ミラはいつもの様に笑ってそう言ったが、ルーシィは「そうかなぁ」と唇をとんがらせた。

 

 

「ナツの子供っぽいところも、レアのちょっと意地っ張りなところも、ルーシィ好きでしょ?」

 

「……え!?」

 

 

突然の「好き」という言葉に反応してか、ルーシィは驚いて大きく仰け反った。

しかしそれがいけなかった。

ルーシィが仰け反ったのは、なんとさっきまでミラが乗っていたハシゴの上であったのだ。

普通に高さがあるところでそんな行為をとればバランスを崩すことは必至。

掴みかかった本棚から大量の本をぶちまけながらルーシィは盛大に落ち、ドシーン!と大音を立てながら尻もちをついた。

 

 

「大丈夫!!?」

 

「あっははは……すみません、こういの慣れてなくて……」

 

 

心配して駆け寄ったミラだったが、笑って応えるルーシィを見てとりあえず大きな怪我は無さそうだと安心した。

対してルーシィは自分の下敷きになっているぐちゃぐちゃに散らばった本の山を見てあちゃーと顔を顰めている。

ふと、自身の手元を見た。

 

 

「ん? なんだろう…この絵」

 

「わァ~…懐かしい…!」

 

 

目に入ったのは一冊の本かから飛び出した2枚の絵だった。

1枚の大きい方の絵は大勢の人が描かれていた。

その真ん中では桜色のツンツン頭の少年と、水色のロングヘアーに白いベレー帽を被った少女が何やら喧嘩をしていた。

もう1枚の小さい方の絵は先程の大きな絵で喧嘩をしていた2人が白髪のボブカットの少女を挟んで仲良くこちらに向かって笑顔を向けていた。

ルーシィは不思議そうに2枚の絵を拾い上げると、後ろから覗き込んだミラがそう零した。

それを聞いて、ルーシィはこれがなんなのか何となくわかった。

 

 

「コレ…この真ん中で喧嘩してるのって、昔のナツとレアですか!?」

 

「そうよ」

 

 

答えは是であった。

ルーシィは頭の中に今の仲間の姿をトレースして、2枚の絵のうち、大きい方の絵の周りを囲んでいる人物たちを見た。

 

 

「じゃあ、これがグレイで…こっちが……カナ? って、マカオとワカバ!!? 若ッ!!!」

 

 

そうして確認していると、ルーシィはハッと何時ぞやの記憶を思い出し、ミラに真相を聞いてみる事にした。

 

 

「そういえば前、エルザたちと初めてチームを組んだ時、行きの列車でエルザが昔はナツとレアの仲は凄く悪かったって聞いたんですけど、本当なんですか!?」

 

「えぇ、本当よ」

 

「じゃ、じゃあ!! どうやって今の2人の関係になったんですか!?」

 

「そうね……アレは、私がまだ妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってすぐの事だから…今から、6年前くらい前ね」

 

 

それを皮切りにミラはルーシィに語り始めた。

 

 

〜〜〜

 

 

 

6年前の妖精の尻尾(フェアリーテイル)、雰囲気は今と変わらずワイワイと賑わっていた。

そしてナツの喧嘩も6年前から健在だった。

だがその相手はグレイでは無かった。

勿論ナツとグレイの不仲は6年前も同じで出会えば喧嘩することは多かった。

しかし彼にとっては当時グレイよりも気に入らない者が存在したのだ。

 

 

「くたばれレア!!!」

 

「ぐっ…! いい加減に消火されるの…!!」

 

 

そう、現在の彼の相棒とも言える双竜の片割れであるレアである。

先にルーシィが聞いた通り、当時の2人の関係は現在のナツとグレイ以上に悪く、まさに水と油の関係。

面を合わせれば喧嘩は当たり前であり、いつも2人の喧嘩を止めていたエルザは当時を振り返ると、決まって眉を困ったように下げて『骨が折れたものだ』と語っている。

 

2人の関係がここまで拗れたのには原因がある。

これよりもさらに1年前、ナツとレアはほぼ同じタイミングでギルドに入った。

最初は同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)同士気が合うかと思われた。

しかしその思惑はナツ本人によって破壊された。

 

 

『水を飲むんじゃなくって食うって……変なやつだな。オレは()()()()()()()よりも火を食った方が絶対いいな!』

 

 

その言葉は水竜(リヴァイアサン)の逆鱗に触れてしまった。

次の瞬間、ナツの顔面に拳がめり込んでいた。

受け身を取り切れずボールのように何度か跳ねて壁に叩きつけられる。

ナツが鼻と口辺りを抑えながら立ち上がって文句を言うよりも先に、レアの抑揚の無い声が静かに響いた。

 

 

『水を…ゼルネールを……バカにするな…!!!』

 

 

レアの表情から感情の色は完全に消えていた。

大きな蒲公英色の瞳は四白眼となってユラユラと揺れていたが、視線という名の釘はしっかりナツに刺されていた。

だがレアはその目を閉じたかと思えば、フッと嘲るような微笑をナツに向けた。

 

 

『レアからすれば火を食べる事の方が理解不能なの。口の中焦げ臭そうなの。ん……ナツなら焦げた食パンも美味しく食べられるんじゃないの?』

 

 

それを聞いた瞬間、ナツの中で何かがプツンと切れた。

するとナツは足から炎を吹き出してレアに急接近し、そのまま炎を纏った拳を振り抜いた。

だがタダで受ける気が無いレアは水流を手に纏ってナツの燃える拳を真正面から受け止めた。

ギリギリとせめぎ合う中、2人の視線だけは相手を仕留める為にとお互い離れなかった。

 

 

『上等だ…黒焦げにしてやるよ…!!』

 

『その前にレアが鎮火して流してやるの』

 

 

これが2人の因縁の始まりだった。

この後2人の喧嘩は激熱化して周りを巻き込む大惨事になってしまった。

最終的にはカンカンに怒ったマカロフが2人の頭に拳骨を叩きつけて終幕となった。

だがこの日以降、2人は最初にも述べたように面を合わせれば喧嘩するようになってしまったのだ。

 

そんな2人だったが、ギルドで過ごしている間では悲しい共通点があった。

ナツは仕事の時以外はレア、グレイ、エルザなど誰かと喧嘩する毎日を過ごし、レアも仕事以外はナツと喧嘩するか、1人席に座って食事をしているかの2択しか無かった。

そう、2人とも真に気を許せる存在というのはあまり居なかったのだ。

 

 

〜〜〜

 

 

そんなある日のこと。

レアがいつもと同じ無表情で食事をしていると、バタン!と扉が開いた。

目を向けると、あの憎たらしい少年ナツが何やらタマゴを抱えて笑顔でマカロフの元へ一直線に駆けていた。

いつもの様に仕掛けようかと考えたレアだったが、それよりもナツが抱えているタマゴが気になり一旦保留にした。

タマゴはナツが両腕で抱えても手が届かないくらい大きく、殻には何やら奇妙な紫のまだら模様が入っていた。

 

 

「タマゴだー!! タマゴ拾った!!!」

 

「ンなもん一体どこで?」

 

「東の森で拾ったんだ!」

 

「東の森…」

 

 

あとから聞いた話によれば、ナツが言う東の森で修行をしていた時に突如頭上から降ってきたのだという。

 

 

「んだよ、ナツにしちゃ気が利くじゃねーか。みんなで食おうってか?」

 

「グレイ服…」

 

「うおっ!?」

 

 

椅子にどっかりと座ったグレイが関心と言わんばかりの笑みを浮かべてそう尋ねると、横からカナがお小言を零す。

余談だが、この頃のカナは未来で水着スタイル樽から直接飲酒する系女に進化するとは到底思えないワンピースを着た清楚な女の子である。

グレイのいつもの反応にカナがため息をつくと、ナツがマカロフに向かって掲げていたタマゴを再び腕の中に抱えた。

 

 

「冗談じゃねぇ! これはドラゴンのタマゴなんだ、孵すんだよ!」

 

「ドラゴンなの?」

 

 

思わぬ返しにマカロフ以外の者は揃って目を丸くさせ、中でもレアの反応が顕著で、ナツの言葉に思わず反応していた。

だが興奮冷めぬ様子のナツは座布団の上に置いたタマゴを満面の笑みでまじまじと見た。

 

 

「見ろよ! この辺の模様とか竜の爪みたいだし!!」

 

「そ…そうか…?」

 

 

確かにタマゴのまだら模様は円というより楕円の横を尖らせて角を作り、さらに楕円全体をぐにゃりと曲げたような形をしており、竜の爪というより爪で切り裂かれた跡のように見えなくもない。

グレイとカナがナツが指さした模様を同じようにまじまじと見ていると、ナツは笑みのままマカロフの方へと振り向いた。

 

 

「つーわけで、じっちゃん! ドラゴン、誕生させてやってくれ!!」

 

「なァにを言うかバカモン!!!」

 

 

しかしマカロフから返ってきたのは叱責であった。

当然願いを聞いてもらえると思っていたナツは驚いたように目を見開かせた。

 

 

「この世に生命を冒涜する魔法など無いわ。生命は愛より生まれるもの。どんな魔法もそれには及ばん」

 

 

厳格な声でそう語り聞かせるマカロフ。

だが聞かされた当人はポカーンと口を開けており、マカロフの言葉を理解出来ているとは言い難い様子であった。

 

 

「何言ってんのか全然わかんねぇ」

 

「ガキには早すぎたか」

 

 

案の定全く理解など出来ていなかったナツにマカロフはため息をついた。

そこへカシャンカシャンと鎧の音が近づく。

 

 

「つまり孵化させたければ一生懸命自分の力でやってみろという事だ。普段物を壊すことしかしていないからな。生命の誕生を学ぶには良い機会だ」

 

「エルザ!!」

 

 

声の主はもちろんエルザであった。

ちょうど仕事から帰ってきたところらしく、遠くでマカロフの話を聞き、微笑を浮かべながらナツにそう言葉を送った。

因みにレアとグレイはこの頃から既に苦手意識の刷り込みが完了しており、彼女の登場と同時に顔を歪めた。

 

 

「エルザが帰ってきたってぇ!!?」

 

 

その時、そんな声がギルド内にこだまする。

それに反応してエルザが視線を向け、眉がピクリと動いた。

視線の先には白髪ポニーテールの少女がいた。

黒のキャミソールとホットパンツという現代のカナよりほんの少し控えめだが十分な露出度の高さであり、紫のリボンで束ねた髪をたなびかせながら鋭い眼光がギラつく。

 

 

「この前の続きやるよ! かかっておいで!!」

 

「また喧嘩?」

 

 

手をクイックイッと曲げて挑発する少女。

その背後で同じ白髪のボブカットの少女が呆れたように発するが完全に聞く耳持たずだった。

するとエルザが挑発に乗った。

 

 

「フッ……そういえばまだ決着が着いていなかったな…ミラ!!」

 

 

 

なんとポニテ少女の正体は現在の妖精の尻尾(フェアリーテイル)の看板娘であるミラジェーン・ストラウスであった。

現在のミラしか知らなければ想像も出来ないだろうが当時のミラは簡潔に纏めると、手につかない程のじゃじゃ馬娘である。

性格はナツ以上に短気で、口より先に手が出る。

そして何よりも今との一番の相違点はエルザを目の敵とし、仲は当時のナツとレア同様最悪だったという事だろう。

 

 

「くたばれエルザァ!!!」

 

「泣かすぞミラジェーン!!!」

 

 

さらに実力も申し分無かった。

エルザと真正面から殴り合える力を持ち、後に彼女も妖精の尻尾(フェアリーテイル)のS級魔導士の1人として名を馳せるようになる。

 

 

「エルザの奴……アレでオレたちに喧嘩するなって言うから頭くるよな…」

 

「ん……納得出来ないの…」

 

 

しかしいざ2人が喧嘩を始めればどつきあいながら互いの容姿をディスりあうだけの低レベルなものであった。

だがなまじ実力もある分ナツの喧嘩と比べたら被害は大きくタチが悪い。

普段エルザに喧嘩を止められるナツ、レア、グレイは揃って微妙そうな表情を浮かべる。

グレイとレアが文句を垂れ流すと、ナツは喧嘩する2人を見ながらポキポキと指を鳴らした。

 

 

「くっそー…エルザもミラもいつかまとめてぶっ倒してやる!!」

 

「まったくもう、強がりばかり言ってたら女の子に嫌われちゃうよ」

 

 

だがナツの闘志に水を差すかのような言葉が飛び込んだ。

ナツはムッとなりながら声の方へ顔を向けると、さっきまでミラと一緒にいた白髪のボブカットの少女がそこにいた。

 

 

「るっせーんだよリサーナ」

 

「ねぇナツ、そのタマゴ私も一緒に育てていい?」

 

 

少女、名をリサーナはナツの文句など聞こえてないかのように話題をタマゴに戻した。

それを聞くや否や、ナツはパァと顔を明るくさせた。

 

 

「手伝ってくれんのか!?」

 

「うん!! なんか面白そうだし、タマゴ育てるの」

 

「育てるってなんか違くね…?」

 

「ん、タマゴは孵すのであって育てるのは生まれた子だと思うの…」

 

 

リサーナの言葉にグレイとレアがツッコムがナツにとってはそんな事はどうでもよかった。

タマゴどころか生物、それこそ虫の一匹ですら育てたことが無いナツにとってタマゴを孵す知識など正に皆無であった。

 

 

「どうすれば孵るんだろう……」

 

「あっためればいいんだよ」

 

 

ナツの疑問の声に答えたリサーナ。

それを聞いた瞬間、彼はリサーナの言葉に「あっためる!?」とオウム返しにし、目をギラつかせた。

 

 

「オレの得意分野じゃねぇか!!」

 

 

誰もが嫌な予感がした瞬間、予想通りナツはとんでもない凶行にでた。

 

 

「ウッヒョォォォオオオ!!!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁああああ!!!!」

 

「バカなの!!?」

 

「アホかお前!!!」

 

 

なんとナツはタマゴを持ち上げたかと思えば自身の炎のブレスをそれに向けて吐き出したのだ。

リサーナが悲鳴をあげ、レアがどつき、グレイがタマゴを回収することでなんとか止めさせた。

心做しかタマゴの顔(?)が青くなっている。

 

 

「もう!ダメだよ!! そんなに強くしたら焦げちゃうでしょ!!?」

 

 

あまりの乱暴ぶりに語気を強くして叱るリサーナ。

普段であれば何かしら言い返すであろうナツだが、彼とてタマゴの命を殺したいわけではない。

ダメだと言われれば素直に受け入れた。

だが、突然水竜が地雷原を踏み抜いてしまった。

 

 

「やっぱナツには荷が重いみたいなの」

 

「…………あん?」

 

 

当時から健在であったレアの天然が発動してナツの怒りのツボをついた。

ドス黒い感情が溢れ出し、ナツは右手にメラメラと燃える炎を宿した。

それに感化されてか、レアも目つきを鋭くさせて左足に水流を纏った。

空気は正に一触即発。

 

 

「上等だコラ…今日こそ決着(ケリ)つけんぞ」

 

「その目障りな炎…今から鎮火してやるの」

 

「コラアアアァァァー!!!!!」

 

 

だがそれは突然の大声によって瞬く間に霧散していった。

ナツとレアは揃って肩をビクンと跳ね上がらせた。

瞬間2人は自分たちの所だけ薄暗くなっている事に気がついた。

目の前の相手に集中しすぎてそれにすら気づいていなかったようである。

2人は動きをシンクロさせながらゆっくりと影の主の方を見上げる。

 

 

「こんな所で喧嘩する気!!? タマゴを巻き込んじゃうじゃない!!!」

 

「……つーか…なんでカピバラ?」

 

「ビーバーだよ!」

 

 

マーモットである。

全身を茶色に近い濃い赤の毛で包まれた、子供たちの2倍の大きさはあろうマーモットが怒り顔でナツとレアを見下ろしていた。

その正体は、接収(テイクオーバー)と呼ばれる魔法によって変身を遂げたリサーナである。

タマゴを巻き込む。

それを聞いて2人はさっきの剣幕が嘘かのように大人しくなった。

ナツはもちろんの事、レアとてタマゴから生まれるだろう生命の命を奪う気は無いのだ。

ナツは舌打ちしながらそっぽを向き、レアは帽子を被り直して踵を返した。

 

 

「お、おいレアどこ行くんだ…?」

 

「ハコベ山……山の中腹でバルカンの討伐依頼に行ってくるの。数が数だから長くなる……多分一週間は戻らないの」

 

 

そう淡々と告げたレアはさっさとギルドを後にしてしまった。

みんなその背中を多少差異はあれど少し不安そうな表情で見つめた。

しかしナツに限っては相変わらず不貞腐れた表情でダンマリを決め込み、大事そうにタマゴを抱えていた。

 

 

〜〜〜

 

 

「う…ほぉ……」

 

 

轟々と吹雪く中、ドシーンと音を立てて崩れ落ちた巨体。

その前方には白のベレー帽を被った少女がすまし顔でパンパンと自身の服をはたいた。

 

 

「これで6…なの」

 

 

ふぅと息をついたレアは拠点としている洞窟に向かって歩を進めた。

レアがハコベ山にやって来て行っている仕事はギルドでも言った通りバルカンの討伐である。

凶悪モンスターの一体として数えられるバルカンだが、レアが引き受けた依頼の討伐数は驚異の40体。

しかし流石は後に水竜(リヴァイアサン)と呼ばれる魔導士に成長する少女。

本人曰く猿などに負ける道理など微塵も無かった。

 

 

「……水温調節…まだ下手くそなの……」

 

 

しかし彼女もまだまだ発展途上。

今では当たり前のように使えている水温調整による水の状態変化は完全に習得出来ていない。

氷であろうと自身の魔力に変換する水の滅竜魔法だが、結局魔力補給は「水」でなければいけないのだ。

吹雪が吹く雪山という環境下では雪解け水などなどを確保するなど不可能であった。

 

結果的にレアは1日に6匹倒すというノルマを立て、魔力の回復は時間をかけてゆっくり行うことにしたのだ。

やがて拠点の洞窟に到着し、レアは自身のリュックから着火が可能な魔道具を取り出して焚き火を焚く。

 

 

「……火」

 

 

パチパチと音を立てながら逆立つ炎を見て、レアはふと因縁の相手の顔が思い浮かんだ。

 

 

 

「……うざ」

 

 

ボソッとこぼれ落ちた言葉にレアはゾワッと自身の毛が逆立つ感覚を覚えながら、焚き火のそばに置いていた溶けた氷が入っていたコップを手に取り、グイッとその中の水を飲み干した。

普段の彼女ならしないであろう乱雑な食事にレアは後からハッとなって深いため息をついた。

 

 

「はァー…なんでレアはアイツがいない所でもアイツに翻弄されてるの…?」

 

 

そんな思考に落ちたレアだったが、ブンブンと首を横に振って煩悩を消し去ろうとする。

それでも消えなかった為に、レアはバカバカしいと無理やり終止符を打って寝袋に潜り込んだ。

パチパチと燃える焚き火の音をBGMにしながら、レアはまどろみの中へと落ちていった。

 

 

〜〜〜

 

 

コココココン……コココココン……

 

ふと、そんな音がレアの耳に飛び込んだ。

キツツキが木をつつくような音に不快感を覚えながらゆっくりと目を開ける。

 

 

「んぐ………ッ!!?」

 

 

瞬間文字通り飛び起きた。

目を覚ましたレアの視界に映ったのは一面の白だった。

突然の異常事態にレアは寝袋がちぎれんばかりに強引に抜けて足に水流を纏って警戒を強めた。

だがその警戒は全くの無意味である事を自覚するのはすぐだった。

 

 

「……タマゴ…?」

 

 

そう、白の正体はタマゴの殻の部分だったのだ。

ナツがギルドに持ち帰ったタマゴと同等の大きさであり、赤い花のような不思議な柄が入っていた。

いつかの時と同様レアがタマゴをまじまじと観察ていた時だった。

 

 

「……?……わっ!?」

 

 

タマゴがぴょこぴょこと小さく跳ねたかと思えば、レアの腕の中へと独りでに飛び込んだのだ。

慌ててキャッチすると…。

 

コココココン……

 

自分が目を覚ますキッカケとなった音がタマゴから聞こえてきたのだ。

タマゴが自ら勝手に動く様子に、レアの頭ではハテナが渦巻いていた。

しかし、自身の腕の中におさまるタマゴを見て、レアの中で1つの考えが思い浮かぶ。

根拠などは無かったが、直感的に感じたことである。

 

 

「……レアと…一緒にいたいの?」

 

コココココン……

 

 

再びタマゴから音が鳴る。

その音は心做しかそれまでのよりも甲高く聞こえ、レアは何となく「当たり!」と言っているような気がした。

 

 

「……」

 

 

だが、レアは少し困ったように眉根を寄せた。

ハッキリ言ってしまえば、今のレアにはこのタマゴを育てる余裕が無いのだ。

本人曰く、バカ食いしてバカみたいに所持金を減らしているどっかのバカとは違って(本人の前で言って大喧嘩したのは内緒)レアはゼルネールを探す為にあちこち行っていたから、電車代に馬車代と出費が嵩張っているとの事だった。

しかしその思考に至った時、レアは根本的な問題に気がついた。

 

 

「君……ママはどうしたの?」

 

 

そう、このタマゴの母親の問題である。

これ程の大きさのタマゴだ。

ナツじゃないが、ドラゴンのタマゴだと言われても信じ込みそうな程の巨大なタマゴ。

それを産んだ母親は一体どんな存在なのか。

最悪の場合、これが自分では対処しきれない凶悪モンスターのタマゴの可能性もある。

そうなれば、ますます自分には手に余る事案だ。

 

……

 

しかし、タマゴからの返答は無かった。

ここまでのタマゴの動きを見るに明確な意思疎通は困難であろうと、軽い応対くらいは可能であると考えているレア。

だが今の質問に対しての返答は無し。

つまるところそれは…。

 

 

「…ママが何か……分からないの?」

 

コココココン……

 

 

是と返したであろうタマゴの返答。

それを聞いて、レアは衝撃に駆られていた。

まだタマゴとはいえ母親についてが分からないとはと。

その時、フッとレアの頭の中で苦い思い出が蘇る。

 

 

『ゼルネールぅ……』

 

 

ゼルネールが居なくなってしまったあの日である。

レアはキュッと胸が締め付けられるような感覚を覚えると同時に、腕の中のタマゴを自分と重ねていた。

 

 

「この子も……一人ぼっち…」

 

 

そう口に出すと、彼女の意思は固まった。

 

 

「じゃあ、レアが教えてあげるの…! レアが君のママになってあげるの!!」

 

 

すると、とんでもない事を口走った。

いつもの天然が発動した上にツッコム者も居ないが故にトントン拍子で話が進んでいく。

 

 

「レアはゼルネールの……ドラゴンの子なの! そのレアの子なら、君もドラゴンの子になるの!!!」

 

 

まるで意味がわからんぞ。

しかし本人は嬉しそうな上に、タマゴも再びコココココン……と音を立ててレアの気持ちに答えているようだった。

ここに野次を飛ばすのは無粋だろう。

レアは柔らかく微笑んで慈愛の眼差しをタマゴにたっぷりと浴びせながら、優しい手つきでタマゴを撫でたのだった。





まーた1万いきそうなのでここまで。
恐らく今回が前編だとするなら、あと中後編に分けられると思います。
もしかしたらまた長ーらく期間が空くかもしれませんが、首を長くして待って頂けると嬉しくてうp主がトビます。ᐠ( ᐛ )ᐟ
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