妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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リアルが…! リアルが忙しいんじゃぁあ(›´ω`‹ )


幽鬼の支配者編
幽鬼の支配者


 

マグノリア、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドへと続いている大通り。

 

 

「った〜く、あの親父さんケチくさいったらありゃしねェ……」

 

「ん。山の一部がハゲたくらいで大袈裟なの」

 

「いや…十分やり過ぎだから……」

 

 

仕事終わりのナツとレアが愚痴を零し、ルーシィにツッコミを入れられる。

2人が愚痴を零した対象は他でもない、クヌギ駅の駅長である。

報酬金が貰えただけありがたい話なのにだ。

 

 

「ていうか、クヌギ駅なんてすぐそこじゃない。1日も掛かるなんてよっぽど大変だったの?」

 

 

ふとルーシィが直感的に感じた疑問を浮かべ聞いてみると、双竜の2人は揃って顔を青ざめた。

 

 

「あの悪魔のせいだァ!」

 

「もう二度と列車には乗らないの…」

 

「あぁ…そういう事……。無理だから諦めなさい……」

 

 

結論、いつもの(乗り物酔い)である。

そんな風に和気あいあいとしていた時だった。

 

 

「おーい! ナツー、レアー、ルーシィ!!」

 

 

後方から自分たちを呼ぶ声が聞こえてきた。

「ん?」と声を揃えて振り返って見ると、見慣れた顔ぶれが揃っていた。

 

 

「おぉー! ハッピー!みんなー!」

 

「無事に戻れたみたいで良かったの」

 

「あい!」

 

「大変だったかしら……。けどお陰様でこの通り元通りなのよ」

 

 

古代魔法人格輪転(チェンジリング)によって心と体を入れ替えられていたハッピー、フリーシャ、エルザと、リオン達への仲介役として彼らに着いて行ったグレイであった。

レアの言った通り、月の雫(ムーンドリップ)による解呪が上手くいったようであった。

だが、解呪組の中で1人足りていない。

 

 

「あれ? そういやロキの奴は?」

 

「ハルジオンに着いたきりはぐれてしまってな…」

 

「どうせまたナンパでもしてんだろって、合流せずに帰ってきたんだ」

 

「……エルザの目を潜り抜けたの…?」

 

 

ナツの問いにエルザとグレイがそう答えると、レアは「何気に凄いことなのでは?」と要らぬ関心を示していた。

 

 

「いや〜! 何はともあれこれで全部元通りだなッ!」

 

「ん、一件落着なの」

 

「元をたどればあんな大事態になったのはてめェのせいだからな…!」

 

「どういう意味だよヒエヒエパンツ…ッ!」

 

「理解力まで燃え尽きたかこのアツアツマフラー…ッ!」

 

「戯れるな!」

 

 

またもやナツとグレイが一触即発の空気を流すも、それはエルザによって一瞬で霧散された。

不完全燃焼の2人は「だってコイツが…!」と零しながら互いを指さし合った。

しかし、止められればエルザの監視下という条件付きだが飛びかからないのは躾が効いている証拠だろう。

一層賑やかになった一行は再びギルドへの帰路を歩き出す。

 

歩き出したはいいが、その道中の空気はハッキリ言って良くは無かった。

その原因がナツとグレイの喧嘩でない事はここに明言する。

 

 

「何かしら……妙に注目されてるのよ」

 

「なぁんかやな感じ…」

 

 

何故かマグノリアの住人から視線を集めながら住人同士でヒソヒソと内緒話を目の前でされていた。

向けられた視線はどれもこれも同情や哀れみ、そして怯えの感情が多分に含まれていた。

ナツとレアの地獄耳には「気の毒に…」という意味深な言葉が飛び込む。

その時、先頭を歩いていたエルザが見えてきたギルドに違和感を覚えた。

 

 

「何だ…? ギルドの様子がおかしい……」

 

 

遠目から見えたギルドの影。

だがそれは、いつも見慣れた姿とは……随分とかけ離れていた。

 

 

「な…なに……え?」

 

「これは……」

 

「オレたちのギルドが!!!」

 

「誰が…ッ!!」

 

 

一同が目にしたのは、十数本の鉄棍が突き刺さり、形は保っているも半壊してしまった妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド本部の姿だった。

たった1日見ていない内に破壊されたギルドの姿に、彼らは言葉が出なかった。

呆然とする者がほとんどの中、ナツは額に血管が浮き出るほど怒りをあらわにし、レアは目尻に涙を浮かべながらギリッと噛み締めた。

 

 

「……何があったというのだ」

 

「ファントム……」

 

 

開いた口が塞がらない状況下の中呟かれたエルザの言葉の答えが後方から飛んできた。

驚いて振り向くと、悔しそうな表情を浮かべて俯いたミラがそこに立っていた。

 

 

「悔しいけど……やられちゃったの…」

 

 

〜〜~

 

 

ここは破壊されたギルドの地下。

普段は倉庫として使っているが、今は仮酒場兼依頼受付場所となっている。

茫然自失の状態に落ちかけていたミラに案内され、一同はここへやって来た。

元々倉庫として使っていた故に人で溢れかえっており、行儀は良くないが立ちながら酒を飲んでいる者もいた。

そんな彼らの心境は共通して穏やかとは程遠いものだった。

彼らのマスターも当然…。

 

 

「よっ!おかえり」

 

 

なんてことは無く、いつもと全く変わらない調子で帰ってきたナツらへジョッキ片手に声を掛けた。

そんな気にしてもいなさそうな様子に呆気にとられる中、エルザが形だけの返事を打った。

 

 

「じっちゃん! 何呑気してンだよッ!」

 

「随分遅かったのォお主ら。まァた乗り物に振り回されたようじゃの」

 

「今それどうでもいいの! お酒飲んでる場合じゃないの!!おじいちゃん!!!」

 

「エルザ達も元に戻れたようで何よりじゃわい」

 

「マスター!! 今がどんな事態かわかっているんですか!!!」

 

 

あまりにも気にしていない様子にエルザも双竜と同様に怒りをあらわにした。

だがマスターはそんな怒りの咆哮に動じることも無く、騒ぐ子供をあやすような声色で続けた。

 

 

「まあまあ落ち着きなさいよ。騒ぐ事のほどでも無かろうに…」

 

 

だが発言の内容は到底落ち着けるようなものでは無い。

その意図は酒を飲みながらも、すぐに彼の口から語られた。

 

 

「ファントムだぁ? あんなバカタレ共にはこれが限界じゃ。()()()()()()()()()()狙って何が嬉しいのやら…」

 

 

その言葉が引っかかってエルザが問い返すと、ミラが代わりに答えた。

なんでも、襲われたのは夜中なのだ。

その返答にルーシィも納得がいった。

昨日一日中ギルドに居たにも関わらず次の日にはこの有様なのだから、犯行時間は夜に限られる。

その結果、怪我人はゼロである事にエルザは一先ず安堵の息をついた。

 

 

「不意打ちしか出来んような奴等に目くじら立てる事はねえ。放っておけ」

 

 

あくまでも不干渉のスタンスを貫こうとするマスター。

それに対して約二名、納得など出来るはずが無かった。

 

 

「納得いかねえよ!!! オレはアイツら潰さなきゃ気がすまねぇ!!!」

 

「この話はこれで終わりじゃ! 上が直るまで仕事の受注はここでやるぞい」

 

「仕事なんかしてる場合じゃないの!!! 明らかな宣戦布告なの!!!放置したら、今度こそ怪我人が出るの!!!」

 

「二人ともォ!! いい加減にせんかァ!!!」

 

 

バコォン!と空樽を蹴り飛ばしたナツと机をバン!と叩いたレアを、マスターは何故か()()()()()()を引っぱたいて制した。

完全なセクハラにミラが頬を膨らませて怒ると、「漏れそうじゃ…」と呟きながらスタコラサッサと立ち去った。

 

 

「なんで平気なんだよじっちゃん…!」

 

「これじゃあ、あの生き霊共にやられっぱなしなの…!」

 

「ナツ…レア…。悔しいのはマスターも一緒なのよ。だけど、ギルド間での武力抗争は評議会で禁止されてるの」

 

 

怒る双竜をミラがそう諭した。

 

 

「マスターのお考えがそうであるなら……仕方……ないな…」

 

 

苦虫を噛み潰したような表情でそう言ったエルザの言葉は、まるで暴走しそうな自分に言い聞かせているようであった。

それは他の者も同様で、エルザの言葉を飲み込もうとして表情を曇らせるのであった。

 

 

〜〜~

 

 

「な〜んか大変な事になっちゃったな〜」

 

 

あの後結局仕事に行く空気になどなる訳もなく、お通夜状態のギルドで一日を過ごして帰ってくることになった。

ガラガラと仕事に持っていくのに使うキャリーバッグを引きずりながら歩くルーシィは召喚したプルーにそう話しかける。

 

 

「ファントムっていえば、妖精の尻尾(フェアリーテイル)と仲が悪いって有名だもんね」

 

 

そして、その妖精の尻尾(フェアリーテイル)と同じくらいしっちゃかめっちゃかしているギルドでもあった。

それもあってか、ルーシィは一時期妖精の尻尾(フェアリーテイル)幽鬼の支配者(ファントムロード)のどちらのギルドに入ろうか迷っていたのだ。

だが今そんな悩みは全く無く、ウキウキとした感情を表情に出しながら家の戸に手をかけた。

 

 

「でも、今はこっち入ってよかったと思ってる! だって妖精の尻尾(フェアリーテイル)は…」

 

「おかえり」

「おかー」

「先に食べてるかしら」

「いい部屋だな」

「よォ…」

「ん……」

 

「サイコオオオォォォオオオ!!! 多いってのォオッ!!?」

 

「ダガペッ!!?」

 

 

部屋に入ると、見慣れた(いつもの)面々が何故か食卓を囲んでいた。

反射的に投げたキャリーバッグがムスッとしているナツの顔面にめり込む形でクリーンヒットすると、コーヒーカップを片手にエルザが事情を説明した。

 

 

「ファントムの件だが。奴等がこの街まで来たという事は、我々の住所も調べられてるかもしれないんだ」

 

 

身の毛がよだつ話に、ルーシィは「え?」と零しながらぞぞぉっと身を引いた。

 

 

「まさかとは思うが、一人の時を狙ってくるかもしれねえだろ? だからしばらくはみんなでいた方が安全だ……ってミラが」

 

 

全く知らない話に「そうなの!?」と聞き返すと、チーム同士でお泊まり会をしている事をハッピーとフリーシャが答えた。

 

 

「おまえも年頃の娘だしな…。ナツとグレイを危機感の少ないレア一人に任せて泊まらせるのは私としても気が引ける。だから同席する事にしたという訳だ」

 

「双竜とグレイは泊まるの確定なんだ…」

 

 

あまりに強引な決定にルーシィはゲンナリした。

その際に出てきた「なんであたしンちに勝手に決めたの?」という疑問は糠に釘なため言葉にせず飲み込んだ。

一種のヤケクソである。

 

ナツ達はナツ達で清々しい程にお泊まり会をエンジョイしていた。

プルーが頬張るペロペロキャンディを羨ましがってお菓子箱を漁るナツ。

眠いからとルーシィのベッドを半裸で占領しているグレイ。

既に風呂上がりでルーシィの寝間着を勝手に拝借しているレア。

洗濯物を漁ってあまり見せられないどエロい下着を発掘するハッピーとフリーシャ。

それを見せつけられムッツリが発動しているエルザと本当に多種多様である。

 

 

「それにしてもお前たち…」

 

 

そんな中、混乱から回復したエルザが鋭くさせた視線を男性陣に向けた。

 

 

「汗臭いな……同じ部屋で寝るんだ。風呂くらい入れ」

 

「やだよめんどくせえ」

 

「オレは(ねみ)ーんだよ」

 

 

エルザの最もな指摘に二人は駄々で応対した。

すると、エルザは微笑を浮かべながら二人の肩に腕を回した。

 

 

「仕方ないな……。昔みたいに、一緒に入ってやってもいいが……」

 

「アンタらどんな関係よ!!?」

 

 

思わぬ誘いにルーシィがぐもおぉ!と唸った。

いくら気心知れた幼馴染みのような関係とはいえ、エルザも自身が発した年頃の娘である。

流石に問題が発生しかねないのだが、顔赤くさせた男性陣と違い、エルザ自身には羞恥心が無いように見受けられた。

身内限定とはいえ、エルザもその面の危機感は欠如しているのだった。

最終的に「一緒に入るくらいなら一人で入る」という事で終結したのだった。

 

 

〜〜~

 

 

あれから一時間。

入浴の順番を一番最後に回されたルーシィも風呂からあがり、濡れた髪をタオルで乾かしていた。

 

 

「ねぇ…例のファントムって、何で急に襲ってきたのかなぁ?」

 

「さあな……。今まで小競り合いはよくあったが、こんな直接的な攻撃は初めての事だ」

 

 

彼女が今の妖精の尻尾(フェアリーテイル)全員共通の疑問を口に出す。

全員共通の疑問故に答えたエルザも当たり障りの無い回答しか出来ない。

 

 

「じっちゃんもビビってねえでガツンとやっちまえばいいんだ」

 

「じーさんはビビってる訳じゃねえだろ。あれでも一応聖十大魔道(せいてんだいまどう)の一人だぞ」

 

「ん。ビビるならどっちかというと評議会の方だと思うの」

 

「あー…。確かに聖十大魔道(せいてんだいまどう)も法の前には勝てないかしら」

 

聖十大魔道(せいてんだいまどう)?」

 

 

未だ不貞腐れているナツが机に顎を置きながらそう文句垂れる。

だがグレイがルーシィの執筆している小説から目を離してそう言った。

それにレアが補足するとフリーシャも納得の息を零した。

だがルーシィはグレイの手元から執筆中の小説をふんだくりながら聞きなれない言葉を聞き返した。

 

 

「魔法評議会議長が定めた大陸で最も優れた魔導士10人につけられた称号だ」

 

「へぇー! すごぉーい!!」

 

 

思っていたよりかなりスケールの大きい称号をうちのマスターが与えられていたことに、ルーシィは感嘆の声をあげた。

だが忘れてはならないのは、ファントムのマスター・ジョゼも同じ領域に達しているのだ。

 

 

「マスターもミラちゃんも、二つのギルドが争えばどうなるかをわかってるから戦いを避けてるんだ。魔法界全体の秩序の為にな」

 

 

事の大きさに、ルーシィは目を見開いてゴクリと唾を飲んだ。

そうなると、次点で気になるのが「ファントムの現戦力」だ。

 

 

「そんなにすごいの? ファントムって」

 

「数は圧倒的にあっちの方が多いの。戦力的にはあっちが数、こっちが質でトントンなの」

 

「言い得て妙かしら。ファントムの大半は名も挙がらないような有象無象かしら。けど、本当にヤバい奴等はマスター・ジョゼ含めて7()()なのよ」

 

 

外野でナツが「大したことねーよ」と吠える中、レアとフリーシャが語る。

その言葉にエルザが「そうだな」と肯定しながら説明を引き継いだ。

 

 

「マスター・マカロフと互角の魔力量を持つ聖十大魔道(せいてんだいまどう)のマスター・ジョゼを初めとし、向こうのS級魔導士にあたる勢力『エレメント4(フォー)』。一番厄介とされるのが、幽鬼の支配者(ファントムロード)()()……鉄竜(くろがね)のガジルと樹竜(たいじゅ)のブルームだ」

 

「双竜!!? てことは……もしかして滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)!!!?」

 

「ああ。ガジルが鉄、ブルームが樹の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であり、今回の襲撃の犯人こそそのガジルだと思われる男だ」

 

 

ルーシィがファントムの双竜の存在に大きく反応すると、ナツが気に入らないと言わんばかりにフンと鼻を鳴らした。

 

 

「ナ…ナツとレア以外にもいたんだ……。じゃあそいつら…鉄とか……木を食べちゃう訳…?」

 

 

ルーシィのその疑問は大正解であった。

 

 

〜〜~

 

 

フィオーレ王国北東にあるオークの街。

そこは魔導士ギルド幽鬼の支配者(ファントムロード)が拠点を構える街である。

既に夜遅い時間であるが、未だに数人の魔導士達が飲んだくれていた。

そんな酒場にガジガジと鉄を砕く音が響き渡っていた。

音の鳴る方へと視線を飛ばすと、鉄板、釘、ナットにボルト……あらゆる鉄の廃材を口に放り込んで噛み砕いている男がいた。

 

 

「ガジル〜!聞いたぜぇ〜!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に攻撃仕掛けたんだって!? うはァ!スゲェ!!」

 

 

そんな男に話しかける酔っ払いが一人。

上機嫌に笑うその者とは正反対に、男の機嫌はどんどん悪くなる。

そして、男の食事中における気は短い。

 

ズドンッ!!!

 

鈍い音が酔っ払いの顎から鳴った。

それもそのはず、男の腕が鉄棍に変わりその者の顎を打ち抜いたのだから。

ガッゴッ!と地面を跳ね、やがてバコォン!と壁にその体を打ちつけた。

骨折もおかしくないような惨状にも関わらず、心配する者は皆無。

寧ろ、嘲る者がほとんどである。

なぜなら、ここの禁忌(タブー)に触れたのは酔っ払い(そいつ)なのだから。

 

 

「メシ食ってる時ァ話しかけんなっていつも言ってんだろーがよォ。クズが。妖精の尻尾(ケツ)が何だってんだ。強ェのはオレたちの方だろうがよ」

 

 

腕の鉄棍を元に戻しながらそう言ったこの男こそ鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)鉄竜(くろがね)のガジルである。

 

 

「火種は蒔かれた。見事ですよ、ガジルさん」

 

 

すると、折れたとんがり帽を目深に被った長身の男がそう言いながら姿を現した。

男が現れると、ガジルの先程までの不機嫌さは一瞬で霧散した。

 

 

「甘ェよ()()()()。あれくらいじゃクズ共は動かねぇ。だから、ブルの奴が特大のビックリ箱をプレゼントしに行ったゼ」

 

 

その報告を聞き、男……マスター・ジョゼはたいそう愉快そうに笑い、目を細めた。

 

 

「それはそれは…。ただし……間違っても〝奴〟は殺してはダメですよ」

 

 

忠告を下すマスター・ジョゼ。

だが了承の意は無い。

代わりに彼は「ギヒッ」と獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

 

〜〜~

 

 

時は一時間程遡り、場所はマグノリアのとある路地。

 

 

「いいのかレビィ…? ラキ達と一緒に女子寮に居た方がいいんじゃねのか?」

 

「いいのいいの。私たちチームじゃん」

 

 

チームシャドウギアのレビィ、ジェット、ドロイの3人が夜の散歩をしていた。

心配したジェットが提案するも、レビィは満面の笑みでその提案を一蹴した。

それも2人にとって最高に嬉しい形で。

ズキューンと再び心を射止められた2人は、レビィはオレが守る!と決意を新たに固めた。

 

 

「…ん? ねぇ、何か聞こえない?」

 

 

すると、レビィがそう言いながら耳をすませた。

未だにオレが守る!と熱く語っていた2人は聞こえている訳もなく「え?」と声を揃えた。

その一瞬の間がレビィに確信を与えた。

 

 

「うん…! やっぱり聞こえる……子供の泣き声……!」

 

 

確信づいてからのレビィの行動は早かった。

2人の静止にも構わず駆け出し、目の前の曲がり角を曲がり、道なりに進む。

やがて3人はマグノリアの南口公園へと出た。

 

 

「レビィ! 泣いてる子供なんて本当にいるのか!?」

 

「絶対いる! あれは空耳じゃないはずだよ」

 

 

レビィが言ったこととはいえ泣き声など聞こえてない故に半信半疑な2人と対照的に、こんな夜遅くに子供が泣いているなら助けなければと必死になるレビィ。

そんな優しさに……幻影(ファントム)は牙を剥く。

 

 

〜〜~

 

 

翌朝、まだ太陽が昇り始めて間もない頃だった。

マグノリア南口公園にはそんな朝早くだというのに大勢の人間がザワザワと騒がれていた。

それもそのはず、公園には昨日までは()()()()()()()()()木のオブジェが立っていたのだ。

 

 

「すまん、通してくれ! ギルドの者だ!」

 

 

そんな騒ぎが街中に広がるのは時間の問題であり、エルザ達もその場にやって来ていた。

寝間着のまま家を飛び出しており、その表情には焦りが見え隠れしている。

その焦りは……最悪な形で的中した。

 

 

「!!!」

 

「う…! レビィちゃん……」

 

「ジェット!! ドロイ!!」

 

 

渦を巻いた木のオブジェ。

()()()に……チームシャドウギアの3人が、顔と上半身以外が()()()()()()()()()

そして、3人を捕らえる木のオブジェ。

その形を、ギルドの者が見間違うはずが無かった。

 

 

「ファントム……!」

 

 

木のオブジェは、正に仇である幽鬼の支配者(ファントムロード)のギルドマークなのだから。

頭から血を流し意識を失う彼女らに、悔しさから歯ぎしりが止まらない。

すると……。

 

ザッ…ザッ…

 

小さな足音と、巨大な威圧感が公園の入口からこちらへ近づいてきた。

杖を持ったマスター・マカロフであった。

木のオブジェの下までやって来たマカロフは言葉発せぬ3人を見て……空いている手で目元を覆う。

 

 

「ボロ酒場までならガマンできたんじゃがな……。ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ……!」

 

 

バギィッ!!!

 

 

怒りに打ち震える眠れる巨人は、持っていた杖を握り潰し、内に秘めた魔力の奔流の一部を解放させる。

その魔力は、大陸で最も優れた魔導士の名を冠するに相応しいものだった。

 

 

「戦争じゃ…!!!」

 

 

その選択に、善も悪も無い。

ただ己の正義を振りかざすのみである。





遂に戦争開幕。
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