妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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投下ぁ!


ルーシィ・ハートフィリア

 

「じっちゃん!!」

「おじいちゃん!!」

「マスター!!!」

 

 

顔色が明らかに異常なマカロフを中心に、三者三様の悲鳴があがった。

真っ先に駆け寄ったエルザが彼を抱えると、力が入らず彼の全体重がエルザの腕に乗っかる。

小刻みに息を切らすマカロフはその実態はわからずとも誰が見ても重症だと、それだけはわかった。

 

 

「どうなってんだ!? あのじーさんから全く魔力を感じねえ!!」

 

「お…おい……それじゃあ、マスターは…ただのじいさんになっちまったのか…?」

 

 

何より一番大きな異常は、グレイが言ったようにマカロフの体から一切の魔力が無くなっていたのだ。

魔力(エナジー)が無くなる……それがいかに深刻な状況であるかを正確に図れる者は少なかった。

 

 

「じっちゃん!!!」

 

「これ……枯渇(ドレイン)の症状なの!? 放っておいたら魔力欠乏で死んじゃうの!!」

 

「何だと!!?」

 

 

遅れて天井から飛び降りてきた双竜もすぐにマカロフの元へと駆け寄る。

だが、レアがその勢いのままにマカロフを苦しめている魔法とその結末を口に出してしまったのは良くなかった。

それに気づいてハッ!と口を抑えるレアだったが、もう遅かった。

 

 

「おい、今の聞いたか…?」

 

「あぁ……あっちのマスターが死にかけだって」

 

「てことは……あっちの戦力は半減だ!!」

 

「今だぶっ潰せー!!!」

 

 

士気が低下していたはずのファントムはまるで水を得た魚、光が閉ざされた陰の如くわっ!と押し寄せた。

負けじと抵抗する妖精であるが、マスターが重症という紛れもない事実が与える影響は大きすぎた。

マカオに、ワカバに、リーダス……今まで被弾すら許さなかった者らが次々と敵の攻撃に膝をついていく。

戦況の優劣がどちらに傾いたか、それは語るまでも無いだろう。

 

 

「撤退だー!! 全員ギルドへ戻れーッ!!!」

 

 

それを見たエルザの判断は早く正確だった。

しかしながら当然仲間の仇討ちもなし得てないのに引く気は無い者らが異論を唱える。

だが、それらをもかき消すエルザの声が響く。

 

 

「マスターなしではジョゼには勝てん!! 撤退する!!命令だ!!!」

 

 

聖十大魔導(せいてんだいまどう)であるジョゼに対抗出来るのは、同じ土俵に立つマカロフのみ。

揺るぎないその力の差が反論する者らを押し黙らせる。

そんな様子を、二匹の竜が嗤いながら眺めていた。

 

 

「あらあら、もう帰っちゃうのかい? ギヒヒ」

 

「ハハハッ、そうそうこういうの! こういうアセアセって顔が見たかったんだぁ!」

 

「撤退とは悲しい」

 

 

突如、ガジルの真上、ブルームの傍に男が現れた。

シルクハットに修道院のような服装、そして一際目を引いたのは白い布の目隠し。

何よりこの男不思議かな、その場に現れたにも関わらず気配が無いのだ。

しかして、先程までそこにいなかったはずなのにも関わらず、ずっとそこにいたかのように姿を現した。

 

 

「アリア……。相変わらず不気味な野郎だ」

 

「よくあのおじいさんやれたね」

 

「全てはマスター・ジョゼの作戦。素晴らしい!!」

 

 

そう、突然目隠しから溢れる程の涙を流しながら泣き出したこの不気味な男こそ、エレメント4(フォー)の一人『大空のアリア』である。

号泣しだしたアリアにガジルが「いちいち泣くな」とゲンナリした様子でツッコミながらズポッと足裏から生やした剣を抜いてアリアの横に並んだ。

 

 

「で…お嬢様は捕まえたのか? っと…名前なんつったか…?」

 

()()()()だよ、ガジル」

 

 

聞き捨てならない会話にナツとレアの耳がピクリと反応する。

 

 

「ルーシィという小娘なら、〝本部〟に幽閉している」

 

「は!?」

「何!?」

 

「ど、どうしたのナツ、レア!?」

 

 

聞き違いでは無い。

間違いなく彼らの会話の中心にいるのは、自分達の知っているルーシィだと確信したナツとレアが声をあげる。

予想の斜め上の情報に、ハッピーの声にも気づかなかった。

 

 

「ガジルー!!!」

 

「ブルーム!! どういうことなの!!?」

 

「ハハッ、そんな顔できるんじゃん! 今度はもっと良い顔見せてよ、水竜(リヴァイアサン)♪」

 

火竜(サラマンダー)! いずれ決着つけようぜ。そう遠くないうちにな」

 

 

それだけ吐き捨てると、後方にいたアリアがバッ!と大きく手を翳した。

すると、「待て!」と呼び止める声も聞かず、3人の姿は最初からそこにいなかったかのようにすうぅっと消えてしまったのだった。

 

 

「……ルーシィが捕まった…?」

 

「「え!!?」」

 

「みんな!!」

 

 

呆然としてしまったナツの口からポロリとこぼれ落ちたそれに猫二匹も驚愕をあらわにした。

その時、レアが3人へと呼びかける。

声の方向へと視線を向けると、ファントムの一人の足を掴んで引きずりながらやって来たレアの姿があった。

 

 

「とりあえず一旦ここを出るの」

 

「おう!」

 

「一旦出るって…!」

 

「どうするつもりかしら!?」

 

「決まってんだろ!!!」

 

「ルーシィ助けるの!!」

 

 

そうして妖精の尻尾(フェアリーテイル)の双竜は撤退する自軍からも、それを追わんとする敵軍からも気づかれずに外へ出たのだった。

 

 

〜〜~

 

 

「言えよ。ルーシィはどこだ」

 

 

オークの街、ギルド幽鬼の支配者(ファントムロード)支部の裏手。

混沌とした戦場から抜け出した双竜は連れてきたファントムの一人に尋問を行っていた。

ナツからの問いに男は困惑の表情を浮かべた。

 

 

「は? 知らねえよ、誰だそれ」

 

 

その解答に対し、ナツは炎を以て罰を与えようとするが、そこへレアが待ったをかけた。

 

 

「ナツ。多分雑魚にはルーシィのことは伝えられてないの。聞くなら、あのデカブツが言ってた()()の場所なの」

 

「バカか!? それこそ誰が教えるって…」

 

 

そこから先の言葉は続かなかった。

なぜなら男はナツによって火だるまとなり転がったからだ。

熱い熱いと悲鳴をあげながらのたうち回っていると、今度はその大きく空いた口の中に大量の水が入っていった。

突然水を飲まされて咳き込むが、構わず水は侵入を続け、さらに鼻や耳と、ありとあらゆる穴から水が攻めいろうとしている。

彼の今の惨状はというと、体は燃え上がっているが頭に水泡を被っているという奇妙な光景だった。

 

 

「言え。これ以上仲間をキズつけられたら…てめえを灰にしちまいそうなんだ」

 

「なんでお前が挑発できる立場だと思ったの? それとも成仏したかったの? 焼かれるか溺れるか好きな方を選ぶ権利をあげるけど、祓魔師(本業)じゃないから上手くいく保証は無いの」

 

 

男はこの日初めて、この幽鬼の支配者(ファントムロード)に所属していることを心の底から悔いた。

ギランと怪しく光った2つの双眸が自身を睨む姿を、悪魔の姿と幻視した。

殺されたくない、助かりたい一心で男は首をちぎれんばかりに横に振り、あっさりと本部の位置を吐いたのだった。

 

 

〜〜~

 

 

「この先なの…!」

 

「待ってろよ、ルーシィ!」

 

 

オークの街を一望できる小高い丘へと続く道を、ナツとレアは全速力で駆けていた。

見据える目的はたった一つ、囚われたルーシィを助けるため。

 

 

「……ナツ。ルーシィ助けても、本部を叩くなんていわないでなの」

 

「うぇ!? なんでわかったんだ!?」

 

 

走ってる最中のこと、レアの発言にナツは驚愕のあまり躓く。

その行動と直後の言動にレアは「やっぱりなの…」と呆れの表情をみせながらため息をついた。

 

 

「ナツ。二人だけでジョゼとエレメント4(フォー)を纏めて相手取るのは無理だよ」

 

「今必要なのは無茶な突撃じゃなくて体勢の立て直しかしら。いつもの盗賊ならまだしも、これだけの大所帯に突撃するのは無謀なのよ」

 

「何だと!?」

 

「無理だよ!」

「無謀なのよ!」

 

「2回言うなー!!!」

 

 

二人の後ろを遅れて飛ぶハッピーとフリーシャがレアの意見に同意を示すが、納得のいかないナツはそう憤慨する。

走りながら口論をしていたその時、ナツとレアの鋭い嗅覚がそれを捉えた。

 

 

「! このニオイ!」

 

「ん! ルーシィなの!!」

 

 

そうと分かれば話は早いと言わんばかりにナツとレアは揃ってスピードをあげる。

数秒もしない内に、二人の視界には巨大な城のような建造物が見えてきた。

あれこそがギルド幽鬼の支配者(ファントムロード)の本部である。

そしてニオイを辿り、さらに視線を集中させていく。

 

 

「いたの!」

 

「あぁ、オレも見えた!」

 

 

すぐさま二人は、城の端に一際高く建つ塔の最上階に後ろ手で縛られているルーシィを見つけた。

その直後の事だった。

 

 

「「あぁーーーッ!!!?」」

 

 

なんとルーシィが命綱無しに後ろ向きで空中に身を委ねたのだ。

そのまま彼女の身体は重力に従って加速しながら落下していく。

 

 

「ナツ、前!! レアは後ろ!!」

 

「おぉう!!」

 

 

短いやり取りで各々の役割を把握した双竜は足に魔法を纏って一気に加速した。

火力を出しやすいナツが一歩前を出て、レアは手にも緩やかな水流を纏う。

 

 

「双竜ーーーッ!!!」

 

 

落下しているルーシィの叫びが異様に大きく響く。

瞬間、ナツとレアの足にさらに力が込められ、ドォン!ともう一段ギアが上がったように加速する。

 

ルーシィが地面に激突するまで、ナツとルーシィが接触できるまで……。

残り20メートル。

 

 

「ルーシィーーーッ!!!」

 

 

残り15メートル。

 

 

「届けなのッ!!!」

 

 

10メートル。

 

 

「ぬぉおあああ!!!」

 

 

5メートル。

 

 

「んんッ!!!」

 

 

1メートル。

 

 

「だらぁあああ!!!」

 

 

間一髪、ルーシィが地面に激突するよりも早く、ナツがその身体を受け止めた。

しかし、一難去ってまた一難。

ここまで突っ走ってきた運動エネルギーがナツとルーシィの二人にのしかかり、このままでは激突する方向が力を増して向きを変えたに過ぎない。

すると、今度はレアがナツの背中に飛びかかり、手に纏っていた水流を展開した。

 

 

「水竜の抱擁ッ!!」

 

 

ボン!と水流のバリアが展開されるも、慣性は押し殺されないままドゴォン!と近くの瓦礫に激突した。

しかし、その衝撃は全てバリアが吸収しており、地面側からレア、ナツ、ルーシィという順番で縦に横たわっていたが無傷で済んだのだった。

 

 

「ルーシィが降ってきたー!!」

 

「親方ッ! 空から女の子なのよ!!」

 

 

遅れてやって来た猫二匹は思いもよらぬ救出劇に揃って目を丸くさせていた。

かくいうナツとレアも同じように驚いて――。

 

 

「ムチャクチャだなおい!!! てか、顔……苦しい……」

 

「早く…退いてなの……。重いの…」

 

「やっぱり、いると思った!」

 

 

――いる暇は無く、各々の状況でいっぱいいっぱいであった。

レアは単純に二人分の体重が自分の身体にのしかかっており、ナツはルーシィの豊満な胸に頭を押し付けられ、頭を動かそうにもレアの胸板がそれをロックしているため動かせないでいた。

この幸せ者め。

ルーシィも手を縛られているが故に上手く立てなかった為、ハッピーとフリーシャに助けられて上体を起こした。

 

 

「大丈夫か?」

 

「うん…なんとか」

 

 

復活したナツがルーシィの手を固定していた縄を引きちぎって解放する。

常套句のような問いかけにルーシィは肯定したが、縛られていた手首をほぐすその表情は「大丈夫」と言うには些か雲がかかっていた。

 

 

「……ん、目的は達したの。ギルドに戻るの」

 

「何もしねえで逃げんのか!!?」

 

 

問題が一段落片付いた所でレアが代表して号令するが、ナツただ一人だけ異論を唱える。

それを受け、レアは彼に対して久しく向けていなかった軽蔑の混じった怒りの籠った視線を向けた。

 

 

「ナツ。おじいちゃんも今枯渇(ドレイン)のせいで重症なの」

 

「!?」

 

「そんな状態でどうやって…」

 

「じっちゃんの仇もとるんだよ!」

 

「だから!ナツ達だけじゃ無理なんだってば!」

 

「3回目!」

 

「マスターだけじゃないかしら! ナブだって骨折してるのよ!」

 

「あいつは弱ぇんだよ!」

 

「マカオだって目の上が腫れちゃってるんだよ!」

 

「あいつはオッサンだから!」

 

 

ああ言えばこう言うナツに、レアだけでなくハッピーとフリーシャも揃って口論に参加しだす。

ここが敵陣の目の前であるにも関わらずギャーギャーと騒ぎ立てる4人を止める者は居ない。

 

否、ルーシィがいた。

しかし彼女は今、それを止められるような心理状態では無かったのだ。

マスターが重症という事実が、彼女に言い表せない程のショックを与えていた。

続く仲間の負傷の知らせに彼女の表情の陰りは一つあがる度に濃くなっていく。

 

 

「ごめん…」

 

 

やがて彼女の口から零れたのは小さな謝罪の言葉だった。

淡雪のようにはかなく消えそうなそれであったが、4人は聞き逃さなかった。

しかし、4人はその意味が理解できずポカンとした表情をルーシィに向けた。

 

 

「……ごめんね」

 

 

それでも尚、彼女の口から出てくるのは、似たような謝罪の言葉。

彼女の脳裏に映し出されるのは、串刺しにされたギルド……見世物にされた親友とその幼なじみら……そして、怒りに燃えるマスターの姿。

 

 

「全部……あたしのせいなんだ……」

 

 

膝に置かれた手がギュッと握りしめられる。

その拳にピトン…と一滴の雫が垂れ落ちた。

一方ルーシィの発言の真意が未だに分からない4人の表情には、困惑の色がさらに強く表れる。

そんな中、ルーシィは肩を震わせながらナツらの方に振り向いた。

 

 

「それでもあたし…ギルドにいたいよ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大好き…!!」

 

 

その瞳からは、大粒の涙がボロボロと溢れ出ており、頬には小さな川が形成されていた。

それを見た4人は全員もれなく動揺の渦へと叩き落とされた。

 

 

「オ…オイ、どした!? 何の事だ…!?」

 

「ん……ずっとここにいればいいの…。ルーシィは悪くないの……」

 

 

彼女が捕まっている間、何を言われたのかは分からないが、今のルーシィの心が酷く摩耗していることは一目瞭然であった。

 

 

「ナツ……戻ろうよ」

 

「お…おう……。しゃあねえな……」

 

 

短く出た提案に、反対する者はもういなかった。

限界が来たのか泣きじゃくるルーシィをナツが背負い、レアは彼女の背中をギルドに着くまで優しくさすってあげたのだった。





タマ○ンストライクも書きたかったがあまりに原作通りだったんでカット(´・ω・`)
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