なんとか年内に間に合いました^^;
恐らく今年はこれで最後ですので。
ほな、良いお年を!!ジャ-ノ( '꒳' )ノ''
鉄棍は抜かれたもののまるで廃墟と化してしまった
しかし中は外のくたびれ具合とは正反対で、ファントムに対する反撃の準備を整えていた。
ある者はけが人の手当、ある者はファントムのギルド本部の場所を確認し狙撃を画策する、ある者は爆弾
どこに目を向けても弱気な者は存在しない。
屈辱的な撤退を余儀なくされて、誰も彼もが反撃のために闘志を燃やしていた。
しかし、そんな中例外が一人。
「どーした? まだ不安か?」
「……ううん…そういうのじゃないんだ……。なんか……ごめん」
一人ファントムによって拐われ、双竜に助けられたルーシィである。
あの後、彼女は自分の身の上の話と今回ファントムが行動を起こした理由を説明した。
というのも、ファントムのギルド本部にて敵のマスターであるジョゼ自ら、勝ちを確信したからかルーシィの心を折るためかの理由は定かでは無いが丁寧に教えてくれた。
彼女の本名はルーシィ・ハートフィリア。
フィオーレ王国を代表する資産家である『ハートフィリア
そしてファントムの狙いは、ルーシィを手中に収めることであった。
それも誘拐などという後ろめたいものでは無く、ルーシィの父、ジュード・ハートフィリアの依頼による正式なものだったのだ。
「まあ金持ちのお嬢様は狙われる運命よ。そしてそれを守るのが漢」
「そういう事言うんじゃねえよ」
「でもオイラも驚いたな。ルーシィ、なんで隠してたの?」
ルーシィへ気にかける発言をかけたグレイの近くにいたエルフマンが腕を組みながら好奇心がそそられるかのようにボヤく。
それを横からグレイが注意を入れると、ハッピーが眉をひそめながら尋ねた。
家賃7万にヒーヒー言う普段の彼女を思い浮かべれば、驚くのも無理は無いだろう。
だがルーシィとて、この事実を墓まで持っていこうというつもりは無かったらしい。
「家出中だからね…あまり話す気にもなれなくて……。一年間も家出した娘に関心なかったクセに急に連れ戻そうとするんだもんな……。パパがあたしを連れ戻すためにこんな事をしたんだ……最低だよ」
ボヤキにも似たルーシィの言葉に、多くはわからずとも、ルーシィと彼女の父親との間で確執がある事は察した。
仲間をキズつけられた怒り。
それは自身の実の父に間違いなく向いているのだろうが、それにしては言葉に覇気が無かった。
「でも…元を正せば、あたしが家出なんかしたせいなんだよね」
「そ…そりゃ違うだろ! 悪いのはパパ…」
「バカ!!」
「あ…いや…ファントムだ…!!」
それ以上に彼女の心にのしかかっていたのは強い罪悪感であった。
沈みこむルーシィにエルフマンが励まそうと声をかける。
だが明らかにかけるべき言葉を間違えている彼にグレイが口を挟んで訂正させた。
しかしと言うべきかやはりと言うべきか、ルーシィの顔は晴れない。
自身の身勝手な行動のせいで、みんなに迷惑がかかっている。
自分が家に帰れば、ファントムは掲げていた大義名分を失い、ファントムは
そうなれば全て丸く収まるだろうにと自責の念に苛まれていた。
「そーかなあ」
なんと声をかければいいかわからないグレイとエルフマンを差し置いて声をかけたのは、以外というか納得というか、この場で彼女と最も交流が深いナツであった。
「つーか「お嬢様」ってのも似合わねえ雰囲気だよな。この汚ねー酒場で笑ってさ……騒ぎながら冒険してる方がルーシィって感じだ」
ルーシィが
あるいは、憧れのギルドの晒す本性に振り回されて本職に負けずとも劣らずのツッコミを叩き込む姿。
はたまた、冒険の果てに目にする想像を超える魔法の数々に心の底から感動する姿。
どれもこれも、ナツの想像する温和でお淑やかなお嬢様像とはかけ離れていた。
そして、あの時涙を流しながら思わず溢れ出たであろう彼女の本心。
突然のあまり上手く返せなかった言葉を、今ここで彼女に贈った。
「ここにいたいって言ってたよな。戻りたくねえ場所に戻って何があんの?
その言葉が今の彼女の心をどれほど救ってくれただろうか。
生まれ育った家を飛び出し、勢いのまま憧れの場所へと入った。
仲間から本当の家族のように迎え入れられ、これまでに無い充実した日々を過ごした。
無責任に家を飛び出した罪をここで清算しろということかと。
仲間たちは今回の件で自分を責めてくるとは思っていない。
しかしそれ以上に、自分が原因で仲間たちが傷ついているという事実が耐えられない。
揺るぎない事実はルーシィの心をポッキリと折り、この場所を離れる覚悟さえしていた。
だが目の前の少年は、折れた心を支えてくれた。
かけて欲しい言葉を的確にかけてくれた。
その言葉で、ルーシィは僅かでも許された気がした。
それが表面上に涙となってまた溢れ出た。
今度は悲しいのでは無いことはハッキリと確信できた。
「泣くなよォ。らしくねえ」
「そうだ!! 漢は涙に弱い!!」
「だって…」
泣く姿を見たグレイとエルフマンがタジタジになるも、もう堪えることは出来ない。
その時だった。
「ていっ。なの」
「あだっ!? な、何すんだレア!?」
「ナツがルーシィ泣かせたからなの」
「な、泣かしてねえよ…!!」
ここまでずっと聞いているだけだったレアがナツの頭にチョップを落としたのだ。
理由も合わせて突然襲いかかった理不尽にナツは抗議の声をあげ、他はいつもの天然が発動したかと呆然としてしまった。
ルーシィでさえさっきまでの涙が引っ込み、ポカンとした表情でレアを見ていた。
ナツの声を徹底して無視しながらルーシィの前にしゃがむと…。
「あ…」
ルーシィの首の周りに腕をまわし、抱擁を与えた。
触れる肌から伝わってくる体温も、耳元にかかってくる彼女の息も、冷水のように冷たい。
だが、体の内側は言い表せない温かさでいっぱいになっていた。
「仲間は家族なの。家族の痛みは、みんなで分け合うの。家族の苦しみは、みんなで支え合うの。そうすれば、どんなに高い壁が立ちはだかったって……みんなで乗り越えられるの」
語りかけられる言葉はいつものように平坦だ。
しかし、それが逆にいつものような日常を感じさせ、ルーシィは安心感に包まれていた。
「これ、おじいちゃんからの受け売り……レアが行き詰まった時に教えてもらったの。レアも、ナツも、フリーシャもハッピーも、グレイも、エルザも……みんながいるの。ルーシィも一緒に、みんなで乗り越えようなの」
限界だったのだろう。
言いたいことは言い終えて抱擁を解いたレアが見たのは、キュッと口を結んでいるものの瞳を潤ませ、目尻から涙をポロポロと零れ落とすルーシィの顔だった。
「へぁ…!? えっと…! なんでまだ泣いてるのルーシィ…!?」
「おーいレアがルーシィを泣かしたぞー」
「んぅ…! ち…違うの…! これは…そう! ルーシィはナツに泣かされたのがフラッシュバックしたの…!」
「な!? んだとコラー! だからオレは泣かしてねえ!!」
珍しく慌てふためくレアを見て、ナツがいつものお返しと言わんばかりにレアの醜態を晒そうとする。
だがレアからの
本人を差し置いてやいのやいのと言い合いを始めた二人にグレイとエルフマンは呆れたように肩を竦めた。
一方で件の人物は涙を溢れさせながらも困ったような笑みを浮かべているのだった。
〜〜~
微笑ましい幸せな時間はそう長く続かない。
それはギルドに……いや、街中に響く巨大な地鳴りによって遮られた。
パラパラと木くずが天井から降ってくる中、その報告は突然舞い込んだ。
「外だーーー!!!」
重症のマスターを東の森に住む、マスターの古くからの知り合いで人嫌いの治癒魔導士、ポーリュシカの元へと連れて行ってきた帰りのアルザックの声につられ、一行は裏口から外へ出た。
そこで彼ら彼女らは……自身の目を疑った。
「な…何だあれは……!」
「ギルドが……歩いて……!?」
「ファントムか……!?」
海と見違うほどの巨大な湖。
その水平線の彼方から6本の機械仕掛けの足を生やした城がコチラへまっすぐと歩を進める光景であった。
一歩進める毎に水面から水柱が立ち、大気がビリビリと震える。
そして三角屋根のてっぺんでヒラヒラと揺れ動く旗にはファントムのギルドマークが刺繍されていた。
「想定外だ……こんな方法で攻めてくるとは……」
驚愕で目を見開くエルザがそう呟く。
まさか
湯浴みから慌てて飛び出し、バスタオル一枚身につけただけの大胆な格好のエルザに誰も口出ししないのが、ここにいる全員の心の余裕の無さを物語っていた。
やがてファントムのギルドはエルザらの地点から目測にして三から四百メートル地点まで進軍すると、腰を下ろすように建物部分が着水した。
続けて建物の中心部分辺りから1本の大砲が姿を現した。
三重にしまわれていた砲身が伸びていき、ガコンという音と共に発射口へ禍々しい黒い魔力が収束していく。
狙いは言わずもがなである。
「マズイ! 全員ふせろォオオ!!!」
危機を感じ取ったエルザは警告の声をあげながら前に出た。
激しい動きに耐えきれずバスタオルがはらりと落ちると同時に、彼女の体は換装による光に包まれる。
「ギルドはやらせん!!!」
やがて光が納まり、ギルドの……みんなの前に守るように立ち塞がったエルザが着ていたのは金剛色の兜と鎧であった。
その名は見た目の通り『金剛の鎧』――エルザが持つ鎧の中でも圧倒的な超防御力を誇り、周囲に浮遊する2つ金剛色の盾と合わせて、並大抵の攻撃では傷一つ付かない。
しかし今回に限っては、その並大抵の枠から大きく外れる。
「まさか正面から受け止めるつもりじゃ…!!」
「いくら超防御力を誇るその鎧でも…!」
「よせエルザ!!死んじまうぞ!!!」
「だったら…!!」
「あっ…! おいレア!!」
「よせ!お前まで!!」
無茶だと多くの者が引き止めようとする中、ただ1人レアがエルザの元へと駆け出す。
当然彼女を止める声があがるも聞く耳を持たないレアはすぐさまエルザの背中の所までたどり着く。
「レアだって……ギルドを守るの!!!」
一瞬戻るよう声をあげようとしたエルザを抑え、レアは叫びながら十八番の水流のバリアを自身とエルザを中心に張った。
その強引さに一瞬困ったような笑みを浮かべたエルザであったが、すぐさま真剣な面持ちに切り替えて前を見据える。
「……助かる…!」
「まだまだなの…!」
「頼もしくなったな。なら、2人で守るぞ!!」
「ん!!」
言うが早いか、レアはかまくらのようにバリアの上にさらにバリアを重ねがけして防御力をあげる。
エルザも負けじと浮遊する盾に魔力を注ぐ。
すると盾はエルザの前で合わさり、さらに巨大化することで、等身大以上のの巨大な盾へと変貌した。
最終的に2人は五層のバリアに覆われてその時を待つ。
「レア!!! エルザ!!!」
「ナツ!!! ここは2人を信じるしかねえんだ!!!」
助けたい一心でほぼ無意識にレアとエルザへ手を伸ばすナツ。
だがグレイが飛び出す彼を抑えたことでその手は虚しく空を掴む。
恐怖、焦り、そんな感情が渦巻いて誰も彼も表情が険しく歪む。
そして……とうとう魔導収束砲〝ジュピター〟が発射された。
湖を2つに割る勢いで
対するは金剛の装備で守りを固めた
すぐさま矛と盾は衝突し、激しい拮抗を起こす。
ものの数秒で一枚目のバリアが破壊される。
拮抗地点を中心に巻き起こる風はそのまま等しく波動砲の威力を表しており、その風圧に誰も2人のそばに近寄れない。
続けて二枚目、三枚目のバリアが破壊される。
一瞬苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたレアは割れた三枚のバリアに回していた魔力をすぐさま残りの二枚に注ぐ。
そんな彼女の行為を嘲笑うかのように波動砲は続けてもう二枚バリアを割り、いとも容易くレアの守りを打ち破った。
この間僅か12秒。
未だ勢い衰えぬままエルザの盾に波動砲がぶつかる。
瞬間、烈風が吹き抜けた。
後ろの者たちはその衝撃に耐えるために誰もが身をかがめて伏せている。
盾に接触した波動砲はその破壊力を遺憾なく発揮し、接触した地面をゴリゴリと削っていき、頑丈な盾に罅を入れる。
その余波はエルザにまで届き、鈍い音を立てながら鎧の装甲を削っていった。
だが、後ろに建つギルドの為、後方にて伏せる仲間たちの為、そして今なお自身の背中を押して支えてくれるレアの為、エルザは文字通り身を粉にして仁王立ちをして攻撃を受け止め続ける。
だが、遂に彼女も限界を迎える。
盾は使い物にならないくらい破壊され、鎧もあちこちが破損して素肌そのボロボロの鎧ごしに露わになる。
やがて彼女の身体は宙に浮き、背中を押していたレアを巻き込んで後方へと吹き飛ばされてしまった。
しかし、この我慢比べはエルザたちの勝利である。
彼女らが吹き飛ぶと同時に黒き波動は空中へ霧散していき、地面に抉るような破壊痕だけ残した。
永遠にも思えた地獄の1分は大きすぎる代償を払って幕を閉じた。
「エルザーー!!! レアーーー!!!」
吹き飛ばされた2人だったが、レアが瞬時に体勢を整えてエルザを受け止めて安全に着地した。
その身一つで魔導砲を受け止めたその鎧はボロボロに砕け散ってしまったが、意外にもエルザ自身の傷は少ない。
それもそうだろう、レアがエルザの鎧の内側に外に張ったものとは別にバリアを張っていたのだ。
彼女が真に魔力を注いでいたのは、エルザの鎧の内側に張ったバリアだったのだ。
だが、事はそう上手く運ばない。
傷は無くとも、エルザの息は荒く意識も朦朧としているのか目の焦点が合っていない。
彼女がこうなってしまったのは、何時ぞやのオシバナ駅の時と同様に魔力が足りないのだ。
文字通り心血を注いで攻撃を防いだエルザの精神は酷く摩耗され、まともに立ち上がれないでいた。
《マカロフ……そしてエルザも戦闘不能》
受け止めたくない事実を、スピーカーから発せられた冷たい声が告げる。
声の主は今しがたこちらを消し飛ばそうとした
《もう貴様らに凱歌はあがらねえ。ルーシィ・ハートフィリアを渡せ。今すぐだ》
淡々と語るそれには底知れぬ怒りが伝わる。
それはルーシィに出し抜かれたことに対する怒りか、或いは日々の
どちらにせよ、今ジョゼが提示しているのは交渉ではなく戦力差を見せつけた脅迫であった。
「ふざけんな!!」
「仲間を敵に差し出すギルドがどこにある!!」
「ルーシィは仲間なんだ!!」
「そーだそーだ!!」
「帰れ!!」
「ルーシィは渡さねえ!!」
だからどうしたと言わんばかりに、
最高峰の魔導士の脅しであろうと、怯む者は誰一人としていなかった。
しかし、件の当人はそうでは無かった。
ジョゼの脅迫に対する罵声混じりの反対の声、その一つ一つがルーシィの心を抉る刃となっていた。
一度立ち直りかけた心。
それは先程見せた圧倒的な力とエルザの戦闘不能という事実によって粉々に粉砕された。
自分がファントムの元へ行けば丸く収まる……もう仲間達には自分のせいで傷ついて欲しくない。
捨ておいた思考が再び蘇る。
「あたし……」
「仲間を売るくらいなら死んだ方がマシだッ!!!」
抱いてはいけない決意を吐露しかけた瞬間、それを遮ったのは他でもない倒れていたエルザであった。
もう限界であるはずの体に鞭を打って腹の底から拒絶の叫びを放つ。
もう動けるはずのない彼女の気迫にルーシィは息を呑んだ。
そこへ追い討ちをかけるように声をあげたのは双竜であった。
「今更そんな脅しに怖がると思ってたのかなのっ!!!」
「オレたちの答えは変わらねえっ!!! お前等をぶっ潰してやる!!!」
「仲間に手を出した
二人の叫びに反対の者などいるはずがない。
妖精たちは雄叫びをあげて彼らの思いを、決意を証明してみせた。
その言葉は、思いは、正しき決意はルーシィの胸を苦しませて涙腺が崩壊させる。
もう誰も傷つかないで欲しい、犠牲になるのは自分だけで十分だと。
しかしそれと同じくらい嬉しさがあった。
自分は仲間たちからこんなにも愛されているのだと実感した。
《ならばさらに巨大な
突然告げられた死刑宣告と与えられた執行猶予。
妖幽ギルド間戦争の第二幕が今、切って落とされた。
次回予告!
レア「フリーシャは15分あったら何が出来るの?」
フリーシャ「15分かしら? そうね…とりあえずお寿司を五十貫食べられるのよ! お寿司を五十も食べられたらリーシャは幸せかしらぁ…」
レア「フリーシャがハッピーみたいな事言ってるなの…」
次回『15分』
フリーシャ「じゃあレアは何が出来るかしら?」
レア「レアはギルドのみんなにいっぱい『大好き!』を言えるの!」
フリーシャ「リーシャ自分の言動が恥ずかしくなってきたかしら…」