妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

5 / 70
続けて投稿
あと誤字指摘ありがとうございます^^


日の出

 

「言ってみれば随分と簡単な仕事よねー」

 

 

シロツメの街に向かう馬車の中、ルーシィはそう言った。

馬車に乗る前よりも声が生き生きしているルーシィに、ネコ2匹は不思議に思った。

 

 

「あれ? 嫌がってたわりにはけっこう乗り気?」

 

「トーゼン!!」

 

 

ハッピーが疑問を口にして、ルーシィは腕を組んでガッツポーズを見せる。

 

 

「なんたってあたしの初仕事だからね! ビシッと決めるわよ! 要は屋敷に潜入して本を一冊持ってくればいいんでしょ?」

 

「スケベオヤジの屋敷にかしら」

 

「そう、スケベオヤジ」

 

 

フリーシャがスケベオヤジの単語を強調するが、ルーシィは出発前の反応はもう見せなかった。

寧ろ乗り気に自身のフェロモンをネコ2匹に見せびらかす。

 

 

「こー見えて、色気には自信あるのよ。うふん♡」

 

「ネコにはちょっと判断できないです」

 

「ネコにそんな色気出して悲しくないのかしら?」

 

「うるさいわね!」

 

 

しかしネコ2匹は冷たくあしらい、フリーシャの辛辣な言葉にルーシィもいつものツッコミを返した。

 

 

「言っとくけどこの仕事……あんたらやる事ないんだから、報酬の取り分4・2・2・1・1だからね」

 

「ルーシィ1でいいの?」

 

「謙虚でいい事かしら」

 

「あたしが4よ!!」

 

 

今度はルーシィが報酬の件でマウントを取ろうとするも、これもまたネコ2匹にいじられ、結果いつもと同じ構図になる。

ちなみルーシィの中での配分の順番は左からルーシィ、レア、フリーシャ、ナツ、ハッピーだった。

何故女性陣は配分が多くなっているのか……。

これが女尊男卑である。

 

 

「ちょ…ちょっと待て……オレたち…も……やる事…ある」

 

 

と、酔っているせいで口を閉ざしていたナツが酸っぱい顔をしながら言った。

 

 

「捕まったら助けてやる」

 

「そんなミスしません」

 

 

ナツが言うも、ルーシィはキッパリそう言った。

 

 

「魚釣りでもエサは無駄になる事多いんだよ」

 

「あたしはエサかいっ!!」

 

「待って…助けてなの、うっぷ……」

 

 

やはり絶好調なルーシィだった。

 

 

〜〜〜

 

 

シロツメの街。

山に囲まれ、奥に屋敷が見える小さな街。

 

 

「着いた!」

 

「馬車には二度と乗らん…」

 

「右に同じくなの…」

 

「いつも言ってるよ」

 

「無理だから諦めるかしら」

 

 

街に着いたルーシィ一行だが、約二名が仕事を始める前から既にボロボロで、そう文句を垂れた。

 

 

「とりあえずハラ減ったな。メシにしよメシ!」

 

「ホテルは?荷物置いてこよーよ」

 

 

ナツとハッピーがそう言って歩を進める中、ルーシィだけが立ち止まる。

 

 

「あたしおナカすいてないんだけどぉ〜。アンタたち自分の"火"とか"水"食べれば?」

 

 

ルーシィの何気ない一言がナツの顔を引き攣らせ、レアもルーシィをいつもにも増したジト目で見た。

 

 

「とんでもねぇ事言うなぁ」

 

「ホントなの」

 

「?」

 

 

しかし理解出来ていないルーシィは頭に?を浮かべる。

 

 

「オマエは自分の"プルー"や"牛"食うのか?」

 

「食べる訳ないじゃない!!」

 

「それと同じなの」

 

「そ…そう?」

 

 

ナツとレアのそんな例えにルーシィも納得した。

要するに自分の火や水は食べられないということだ。

滅竜魔導士の意外な弱点にめんどくさ〜、とルーシィは内心思った。

 

 

「そうだ!」

 

「「?」」

 

「あたしちょっとこの街見てくる。食事はみんなでどーぞ」

 

 

ルーシィは何を思いついたのか、四人の返事も聞かず、さっさと街に向かって歩き出した。

 

「何だよ…みんなで食った方が楽しいのに」

 

「あい」

 

「きっと今までボッチでルーシィはそんな事知らないの」

 

「そんな事あるかしら?」

 

 

レアのボケか天然かよく分からない発言に、フリーシャは苦笑いを浮かべた。

 

 

〜〜〜

 

 

シロツメの街のとあるレストラン。

ナツは注文した品を貪り食い、ハッピーは魚に限定して口に放り込んでいる。

その傍らでレアはスープパスタを、フリーシャは寿司を無言で食べていた。

 

 

「脂っこいのはルーシィにとっておこっか」

 

「脂っこいの好きそうだもんね」

 

「ん。なら、これも脂っこいの」

 

 

ナツ達の会話に無言だったレアが加わり、いつもの天然をかまして側の骨付き肉を手に取った。

 

 

「あたしがいつ脂好きになったのよ」

 

「お! ルー…シィ?」

 

 

聞き知った声に四人は振り向いたが、2パターンの反応を見せる。

男性陣は絶句して思わず口に含んだ物も少し落としてしまう。

女性陣は男性陣ほどでは無いもののやはり絶句し、ルーシィの方を見開いて凝視している。

この反応も無理はない。

四人の目に映ったのは…。

 

 

「結局あたしって、何着ても似合っちゃうのよねぇ……。お食事はおすみですか?御主人様、お嬢様。まだでしたらごゆっくり召し上がってくださいね♡ うふ♡」

 

 

髪をツインテールにし、メイド服を身にまとったルーシィだった。

ポカーンとした四人だったが、急いで身を寄せあった。

 

 

「どーしよぉ〜! 冗談だったのに本気にしてるよ〜! メイド作戦」

 

「今さら冗談とは言えねえしな。こ…これでいくか」

 

「も…もしかしたら案外上手くいくかもなの…」

 

「であればリーシャたちは楽して報酬ゲット……案外アリかもなのよ」

 

「聞こえてますがっ!!?」

 

 

ひそひそと話していた四人だったがバッチリルーシィの耳には届いていた。

当の本人はまさかの事実にうそーんと白目を向いた。

 

 

〜〜〜

 

 

「立派な屋敷ね〜。ここがエバルー公爵の…」

 

「いいえ。依頼主のほうです」

 

 

ルーシィ達の目の前に佇む大きな屋敷。

ハッピーの説明にルーシィも納得する。

なんせ本一冊の為に20万出す人なのだからとルーシィは思ったが、彼らはまだ報酬が10倍に膨れ上がったことを知らない。

と、ナツがその大きな扉を叩き、甲高い音が響く。

 

 

「どちら様で?」

 

「魔導士ギルド妖精の(フェアリー)……」

 

「!!! 静かに!!!」

 

 

ナツが名乗ろうとすると、中から聞こえた男の声は慌てて遮った。

 

 

「すみません…裏口から入っていただけますか?」

 

 

五人は疑問に思いながらも、黙って裏口に回った。

中に入ると、奥さんらしき人が出迎え、応接間らしき所まで案内してもらう。

ソファに腰掛け、しばらく待っていると、人当たりの良さそうな男性が現れた。

 

 

「先ほどはとんだ失礼を…。私が依頼主のカービィ・メロンです。こっちは私の妻」

 

「うまそうな名前だな」

 

「メロン!」

 

「ちょっと! 失礼よ!」

 

「あはは! よく言われるんですよ」

 

 

カービィはそう言ってナツ達の失礼な態度も笑い飛ばした。

ちなみに黙っていたレアとフリーシャはというと…。

 

 

「(メロン……ジュルリ)」

 

「(そのままでもいいし、絞ってジュースに……炭酸を加えてもいいかしら。あと凍らせる方法もあるかしら)」

 

 

やはり似たり寄ったりの思考だった。

カニの時といい今回といい、この四人はそういった食のことで謎に反応することは多い。

 

 

「まさか噂に名高い妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士さんがこの仕事を引き受けてくれるなんて……」

 

「そっか? こんなうめェ仕事よく今まで残ってたなあって思うけどな」

 

「ん。お得なの」

 

「(仕事内容と報酬がつりあってない。きっとみんな警戒したのよ)」

 

 

ナツがケタケタ笑いながらそう言って、レアも頷くなか、ルーシィは内心そう考えた。

 

 

「しかもこんなお若いのに。さぞ、有名な魔導士なんでしょうな」

 

「ナツとレアは二人で双竜って呼ばれてるんだ」

 

「おお! その(あざな)なら耳にした事が」

 

 

ハッピーがナツとレアをそう紹介すると、カービィはあからさまに驚いた。

 

 

「……で、こちらは?」

 

「あたしも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士です!!」

 

 

カービィはルーシィに目を向け、じーっと見つめる。

やがて……。

 

 

「その服装は趣味か何かで? いえいえ…いいんですがね」

 

「ちょっと帰りたくなってきた」

 

 

事情を知らないカービィはルーシィをコスプレ好きの魔導士だと勘違いした。

依頼主にそう言われ、悲しくなったルーシィはしくしく泣く。

一連の流れにナツはゲラゲラ、ハッピーは口を両手で押さえ頬を膨らませながらプークスクスと、レイは片手で口を抑えてクスクスと、フリーシャは腕を組んで顔はそっぽをむきながらも肩を震わせて、それぞれ笑っていた。

 

 

「仕事の話をしましょう」

 

 

気を取り直して、カービィは真剣な面持ちで話し始めた。

ルーシィも初仕事に唾を飲む。

 

 

「私の依頼したい事はただ一つ。エバルー公爵の持つこの世に一冊しかない本、日の出(デイ・ブレイク)の破棄、又は焼失です」

 

「!!!」

 

 

予想していた仕事内容と大きく外れていたルーシィは思わず目を見開く。

 

 

「盗ってくるんじゃねえのか?」

 

「実質上、他人の所有物を無断で破棄する訳ですから…盗るのと変わりませんがね……」

 

「驚いたぁ…。あたしてっきり奪われた本かなんかを取り返してくれって感じの話かと」

 

 

未だ驚いているルーシィを置いてナツがゲラゲラ笑いながらソファをパシパシ叩く。

 

 

「焼失かぁ……。だったら屋敷ごと燃やしちまうか!!」

 

「ん。依頼達成なの」

 

「あい!」

 

「かしら」

 

「ダーメ!! 確実に牢獄行きよ!」

 

 

ナツに便乗しまくるその他3人纏めてルーシィがツッコミ入れ、再び神妙な顔に戻る。

 

 

「一体…何なんですか? その本は…」

 

「どーでもいいじゃねーか」

 

「ん。20万入れば本燃やすも家燃やすも変わらないの」

 

「変わるわよ! 大事な事よ!!」

 

 

レアの物騒な発言に、ルーシィが二段構えでツッコム。

しかし続きの言葉が中々出てこず、カービィはルーシィ以上に深刻そうな表情を見せる。

だが次のカービィの発言に、五人は驚愕を露わにする。

 

 

「いいえ……200万Jお払いします。成功報酬は200万Jです」

 

「にっ!!?」

 

「ひゃ!!!」

 

「くぅ!!?」

 

「まっ!!!」

 

「んん!!?」

 

「なんじゃそりゃあああああっ!!!」

 

「おやおや……値上がったのを知らずにおいででしたか」

 

 

ナツ達の予想以上の反応に、カービィはケタケタと笑う。

 

 

「200万!!? ちょっと待て!!5等分すると…………うおおおっ計算できん!!!」

 

「簡単です。オイラが50万、ナツが50万、レアが50万、フリーシャが50万、残りはルーシィです」

 

「頭いいなぁ!!ハッピー!!!」

 

「残らないわよっ!!」

 

「一旦黙るかしらオスども。レアとリーシャで100万、ナツとハッピーで100万、残りはルーシィ。これで万事解決なのよ」

 

「ん!! フリーシャ、ハッピー以上に頭がいいの!」

 

「だから残らないわよっ!! ハッピーの計算と何も変わってないじゃない!!!」

 

「まあまあ、みなさん落ち着いて」

 

 

突然掲示された莫大な金に目がくらみ、完全に混乱する五人。

これにはカービィも苦笑いだった。

 

 

「な…な…何で急に、そんな……200万に……」

 

 

未だ200万の衝撃の熱が冷めぬ中、ルーシィはポカーンとした表情でカービィに聞いたが、当の本人は以前にも増して神妙な面持ちだ。

 

 

「それだけどうしても、あの本は破棄したいのです。私は、あの本の存在が許せない」

 

 

悔いるように吐き捨てたカービィの言葉にルーシィは疑問を覚える。

しかし……。

 

 

「おおおおおっ!!!」

 

 

突然顔が燃えだしたナツに隣にいたルーシィがビクッとなる。

 

 

「行くぞレア、ルーシィ!! 燃えてきたぁ!!!」

 

「ん!! 200万なの!!!」

 

「ちょ……ちょっとォ!!」

 

 

立ち上がったナツとレアはルーシィのそれぞれの手首を握り、そのまま走って屋敷を飛び出した。

そんな3人とそれに着いていく2匹のネコを、カービィとその妻はどこか険しい目で見送ったのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

「失礼しまぁす♡ 金髪のメイドさん募集を見て来ましたぁ♡ すみませーん、誰かいませんかぁ」

 

 

場所は変わってエバルー公爵邸前。

ルーシィは屋敷内に潜入する為に屋敷の主であるエバルーを呼び出している。

 

 

「うまくやれよルーシィ」

 

「がんばれ〜!」

 

「しっかりなの〜」

 

「ボロは出すんじゃないかしら〜」

 

 

ナツ達はエバルー公爵邸の周りの木々の影に隠れ、ルーシィの行く末を見守っている。

ルーシィ本人も自分で言ったように色気には自信があり、この仕事も簡単なものだと悪どい笑みを浮かべている。

その時、ボコっとルーシィの足元の近くのタイルが盛り上がった。かと思うと、

 

 

ドムッ!!

 

「ひっ!」

 

ズシィン!!

 

「メイド募集?」

 

 

現れたのはゴリラだった。

いや、ゴリラ型のメイドだった。

力士にも匹敵するゴツイ体にピンクの髪をツインテールにしているメイドがタイルを突き抜けて穴から飛び出してきた。

 

 

「御主人様! 募集広告を見て来たそうですが」

 

「うむぅ」

 

 

ゴリラメイドが穴に呼びかけると、穴の中からそんな声がコダマして聞こえ、次の瞬間……。

 

 

ぬぼんっ!

 

 

鼻髭を立派に生やした真ん丸なオヤジ、屋敷の主であるエバルー公爵が飛び出してきた。

 

 

「ボヨヨヨヨ〜〜〜ン。我輩を呼んだかね。どれどれ……」

 

 

飛び出したエバルー公爵は早速ルーシィのメイド選別に入り、ルーシィの胸やら足やらをじぃ〜っと見つめる。

見つめられているルーシィも笑顔を浮かべながらも鳥肌が立ちまくるが我慢を貫き通す。

だがしかし……。

 

 

「いらん! 帰れ()()

 

「ブ…!?」

 

 

興味の無くなったエバルー公爵はふいっとそっぽを向き、シッシッと手を動かした。

そこからは色んな意味で散々だった。

自分のような偉い人間には美しい娘しか似合わないと言って地面から飛び出したのはこの世の終わりかとも思われる程のブスのオンパレード。

ルーシィは唖然としながら一番最初に出てきたゴリラメイドに摘まれ、ポイッと投げ出されたのだった。

 

 

〜〜〜

 

 

見事に潜入作戦が玉砕したルーシィはメイド服からさっさと着替え、木の下でしくしくと力なく項垂れていた。

 

 

「使えねぇな」

 

「ちがうのよ!! エバルーって奴、美的感覚がちょっと特殊なの!!」

 

 

辛辣なナツの言葉にルーシィは涙目になりながら猛抗議するが、ハッピーに「言い訳だ」と一蹴されムキーッと悔しさを露わにする。

そんなルーシィの肩にポンと置かれる手が一つ。

 

 

「ん、今回は流石に同情するの。ドンマイなの…」

「え〜ん、レア〜〜」

 

 

()()()レアがルーシィを慰め、ルーシィもそんなレアに泣きついた。

 

 

「こうなったら"作戦T"に変更だ!」

 

「ん! 一番手っ取り早いの」

 

「あのオヤジ絶対許さん!! で、作戦Tってなんなの?」

 

 

立ち直ったルーシィは今度は怒りを表に出し、闘志を燃やす。

そんなルーシィが作戦内容を聞いたら、ハッピーが勢いよく答えた。

 

 

突撃(TOTSUGEKI)ーーー!!!」

 

「それ……作戦なの?」

 

 

疑問を覚えるルーシィに反応を示すものは誰一人と居なかった。

この場にはルーシィを除き、脳筋しか居ないことが証明された。




日の出編は近いうちに投稿しきれると思います
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。