妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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さぁていよいよ決着です。


同志

 

空が裂けた。

大地が沈黙した。

 

——光が降り注いだ。

 

それは、裁きであり、祈りであり、希望だった。

 

ジョゼ・ポーラ。

幽鬼の支配者(ファントムロード)のマスターであり、聖十大魔導(せいてんだいまどう)の名を冠した魔導士は、妖精の法律(フェアリーロウ)によって討たれた。

 

マスター・マカロフの手によって放たれたその光は、善悪全てを識別し、ギルドの敵を滅する伝説の超魔法。

 

光に包まれた瞬間、すべての戦いは、終わった。

 

武器を構えていた者たちも、怒号を上げていた者たちも、ただその眩しさに目を奪われていた。

 

——戦争は、終わったのだ。

 

 

~~~

 

 

「よお。聞こえるか、ガジル、ブルーム……」

 

 

ハッピーとフリーシャに頼んでここに置いて行ってもらったナツとレアは瓦礫をベッドに横たわるガジルとブルームに接触を図っていた。

ナツが声をかけるも、二人からの返事は無い。

 

 

「……返事がないなら勝手に聞くの……こっちもしんどいから」

 

 

変わってレアが口を開いた。

彼女は手短に、用件を切り出した。

 

 

「二人は滅竜魔法……どこで覚えたの?」

 

 

そう問われるも、二人は依然口を開かない。

 

 

「オイ! レア以外の同じ魔法使えるやつに初めて会ったんだ! それくれー教えてくれても…」

 

「うるせェ……」

 

「空気読めないのかなあ……僕らもしんどいんだよ……」

 

 

じれったくなったナツがそう急かすと、ようやく返事があった。

しかしどうにも喧嘩腰で、その言葉にナツとレアは思わずムカッとなる。

しかし、答えない気が無いわけではなかったらしい。

 

 

「メタリカーナとスカイグローブ……」

 

「鋼鉄のドラゴンメタリカーナと、樹木のドラゴンスカイグローブが、ガジルと僕に滅竜魔法を教えてくれたんだ」

 

 

小さく呟くように答えたガジルに補足してブルームが話す。

その回答は、まさにナツとレアが求めていた答えだった。

 

 

「やっぱりドラゴンに教えてもらったのか!?」

 

「おまえらもか」

 

「ん。レアは水のドラゴンゼルネール、ナツは炎のドラゴンイグニールなの」

 

「ふーん……」

 

 

場の空気が少し温まり、ナツが次の質問を投げかけた。

 

 

「そいつら今どうしてる?」

 

「……さぁな」

 

「そ・い・つ・ら・い・ま・ど・う・し・て・る!!?」

 

「うっるさいなぁ!!! 知らないっていうニュアンスが今のガジルの返答でわかんないかなぁ!!?」

 

 

だが、ガジルの返答が不服だったのか詰め寄って再度聞いたが、ブルームがキレてナツの額に頭突きした。

だが、今のガジルとブルームの反応に、レアは一つの可能性に辿りついた。

 

 

「もしかして……消えたの?」

 

「!!?」

 

 

レアの問いかけに、ガジルとブルームは目を見開いた。

どうやら当たりだったようだ。

 

 

「お前ら、メタリカーナとスカイグローブの居場所知ってんのか!?」

 

 

それは普段のガジルに似合わない、どこか焦ったような声だった。

その隣で座るブルームもどこか希望が入り混じったような驚愕顔を浮かべていた。

ナツとレアは少し驚いた顔で二人を見る。

 

 

「バカ言え、オレらが探してるのはイグニールとゼルネールだ」

 

「七年前、七月七日にレアの前からゼルネールは消えたの。それは……ナツのイグニールもおんなじなの」

 

 

その言葉に、ガジルとブルームは二度目の驚嘆の表情を見せた。

やがて、ブルームがぽつりと呟いた。

 

 

「……いっしょだ」

 

「ん?」

 

「スカイグローブも、メタリカーナも、七年前の七月七日に消えた……」

 

 

ブルームの言葉に、今度はナツとレアの二人に衝撃が走った。

今から七年前、777年の七月七日に、4頭のドラゴンがこぞって姿を消した。

偶然にしてはあまりにも出来すぎていた。

 

 

「……何で七ばっか並んでるんだ?」

 

「知るか」

 

 

ナツの言うことももっともだが、その真意を測れる者などこの場には居なかった。

話すことは話したと言わんばかりに、ガジルはその場を立ち上がった。

 

 

「まあ、オレにはどうでもいい事だ」

 

 

そう言って背を向けたガジル。

だが背を向けるだけで、その場から動かなかった。

場に微妙な空気が流れ始める。

 

 

「行くなら早く行けよ」

 

「風邪ひいちゃうの」

 

「ここはオレたちのギルドだっ!!!てめえらが出てけっ!!!」

 

「凄い図太い神経してるねキミら……」

 

 

どっかりと腰を下ろしたままのナツとレアにガジルが怒号を浴びせ、ブルームは戦闘を終えてオフ状態の二人に口の端をひくつかせる乾いた笑みを浮かべた。

仕方ないと言外に語るかの如く、その場から立ちあがったナツとレア。

 

 

「イグニールかゼルネールの事、なんかわかったら教えてくれよ」

 

「何でオレらがっ!! なめてんのか!!!」

 

「レアたちもメタリカーナかスカイグローブの事でわかったことがあったら教えるの」

 

「僕ら頼んでないんだけど……」

 

 

手を差し伸べるナツとレアになおも噛みつこうとするガジルと困惑気味のブルーム。

だが二人に向けて振りむいたナツはニカッと笑みを浮かべていた。

 

 

「同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)じゃねーか」

 

「次に会ったらぶっ殺ス!!!絶対にな!!! 首を洗って待ってな!!!」

 

 

ナツは肩をすくめながらムスッとした表情をみせた。

 

 

「ぶっそうな奴だなぁ。これでおあいこだから仲直りしてやろーと思ったのに」

 

「物騒はどっちだてめェ!!! ギルドをこんなにしやがって!!!」

 

「おまえらだってオレたちのギルドめちゃめちゃにしたじゃねーか!!! あーあ!やっぱ仲直りやーめた!!!」

 

「上等だ!! 二度と来るな!!!」

 

 

怒鳴り合いながらもどこか本気にならない彼らに、レアとブルームは同時に小さくため息をついた。

 

 

「仲がいいのか悪いのか……」

 

「ん、たぶん……両方なの」

 

 

~~~

 

 

日も沈みだし、空と街を茜色に染め上げられていた。

見るも無残な姿に変えられてしまったかつてのギルドを前に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちは立ち尽くしていた。

みなの表情は大小あれど、統一して曇っていた。

 

 

「こりゃあまた……ハデにやられたのう……」

 

 

マスター・マカロフがそんな言葉を思わず漏らす。

そこにこもっていたのは落胆の感情。

最初、ガジルによってハリネズミにされた際はそれを表に出さずにこらえていたものの、さすがに修復不可能な状態までに(ギルド)を破壊されたことのショックは大きかった。

それは他の者たちも同様であった。

その中でも特に気落としているものが一人。

今回の戦争の一端となってしまった少女、ルーシィであった。

 

 

「あ……あの…マスター……」

 

「んー? おまえもずいぶん大変な目にあったのう」

 

 

責める者はいない。

いるはずがない。

だが、自分が発端でギルドが崩され、仲間が傷つけられ、多くの悲しみを生んだ。

その事実は彼女の心の中では動かず、絡まった鎖のように厳重に彼女の心を縛って締め付けていた。

 

 

「そーんな顔しないの、ルーちゃん」

 

 

そんな彼女の顔をあげさせたのは、一人の快活そうな少女の声だった。

聞き慣れた声だった。

聞こえた方向に顔を向けると、病院で療養を受けていたはずの彼女の親友、レビィがそこにいた。

彼女だけではない。

ジェット、ドロイ、リーダス。

痛々しいはずの姿であるものの、誰一人として暗い表情の者はいなかった。

 

 

「心配かけてゴメンね、ルーちゃん」

 

「違…う……それはあたしの……」

 

「話は聞いたけど、誰もルーちゃんのせいだなんて思ってないんだよ」

 

 

その主張に、ルーシィは再び自分を責めだす。

自分のせいでギルドを傷つけられた、仲間を傷つけられた、ギルドが崩壊してしまった。

心の中の仲間への、ギルドへの思いが溢れそうになる。

 

 

「ルーシィ。楽しい事も、悲しい事も、全てとまではいかないが、ある程度共有はできる。それがギルドじゃ。一人の幸せはみんなの幸せ。一人の怒りはみんなの怒り。そして、一人の涙はみんなの涙。自責の念にかられる必要はない。君には、みんなの心が届いているハズじゃ」

 

 

マスター()の言葉に、仲間(家族)の笑顔に、想いが涙となって溢れそうになるのを、彼女は両手で覆ってこらえる。

全ての元凶である私が、みんなを傷つけた元凶である私が……これほどまでの幸福感に包まれて良いのだろうか……。

 

 

「顔を上げなさい。君はもう、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間なんだから」

 

 

彼女の心の問い、マスター・マカロフは答えを出してくれた。

認めてくれている、支えてくれている、分かち合ってくれる。

覆っていた両手を外し、うつむいていた顔を上げた。

溢れていた涙がこぼれ、彼女の足元を濡らす。

もう、こらえる必要なんてない。

 

大きく声をあげて、彼女は泣きだした。

まるで幼子のように泣きじゃくる彼女を、仲間たちは笑顔で囲んだ。

立つこともできずに膝から崩れ落ちたルーシィをレビィが受け止め、優しく抱きしめられる光景を、みなが見守っていた。

 

 

「(それにしても…ちと、ハデにやりすぎたかのう……こりゃあ評議員も相当お怒りに…いや…待て……ヘタしたら禁固刑……!)」

 

 

その傍らで、自分の今の立場の危うさを再認識したマスターも、ルーシィと同じように泣き出したのだった。

さっきまでルーシィを慰めていた姿とあまりに乖離した姿にエルザをはじめとした数名が目撃して、目を見開いて彼を凝視していたのだった。

 

 

~~~

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の平穏までの苦難はもうしばらく続くこととなった。

というのも、幽鬼の支配者(ファントムロード)との決着がついたその日、彼らは評議員傘下の軍隊、強行検束部隊“ルーンナイト”に包囲されたのだ。

 

事情聴取のため、軍の駐屯地に連行された妖精の尻尾(フェアリーテイル)は一週間にわたって取り調べを受けた。

その後の処分は評議会の後に後日下されるとのことで一度幕を引いた。

 

しかし、状況証拠や目撃証言はファントム襲撃を立証しているため、そこまで重い罰は下らないだろうとは考えられていた。

 

 

「お~~もぉ~~て~~えぇ~~」

 

「一度にそんなに持つからだよ。バカじゃねーの」

 

 

大量の角材を背負うナツ。

そんな要領を得ない姿を見てグレイはジト目を向けながらそう呟いた。

ふと視線を感じた彼はその方向へと目を向けたが、そこには土埃が舞うだけで誰もいなかった。

 

 

「ははっ!! おめえは軟弱だからそれが限界なんだろーなァ!!!」

 

「ア!? オレがその気になればてめえの倍はいけるっての!!!」

 

 

そう言った彼は持っていた角材をさっさと指定の場所に置いてから、言質の通りナツの背負っていた倍の角材を背負って歩き始める。

ふとパチパチと小さな拍手が聞こえた彼はその方向に目を向けた。

瞬間、彼は重さに耐えきれずに悲鳴を上げながら押しつぶされてしまった。

 

 

「なっさけなーーーっ!! 見たかハッピー今の!!!」

 

「あい」

 

 

なぜ彼らが角材を運んでいるのか。

それは壊れたギルドを復刻、再建設するためである。

 

 

「おい、おまえたち。遊んでるヒマがあったらさっさと運ばんか。一刻も早くギルドを修復するんだ」

 

 

いまだに潰れたグレイを笑っているナツをみかねて、土木作業着に換装したエルザが口を挟んだ。

外見から入るそのやる気具合は巨人化しても尚フィットする作業着を着たマスターと並んである意味壮観であった。

 

青空の下、破壊されたギルドの残骸はすでに撤去され、新たな骨組みが組み立っていた。

現場の中心にはマスター・マカロフがおり、角材を積み木のように次から次へと組み立てていた。

 

 

「よっこらせぇいっ! ……っと、次の梁持ってこーいっ!!!」

 

 

地響きを立てながら、マカロフは巨大な梁を片手で掴んで持ち上げる。

が、その下の地面がわずかに沈み込み、支柱が軋んだ音を立てた。

 

 

「むぅ、地面だふやけてやがるな……! 誰か補強を——」

 

「レアがやるの」

 

 

彼の呼びかけにすぐさま駆け寄ってきたのはレアだった。

彼女は腰に手を当て、地面にそっと掌をかざす。

地中へと染み込む魔力を帯びた水が、じわじわと地盤を浸透する。

余分な水分を吸い上げ、代わりに細かな粒子を緻密に締め直すような流れが走る。

直後、グラついていた支柱はピタリと安定した。

 

 

「おおっ……地面が締まったか……!」

 

 

マカロフの額に汗が滲む。

彼の巨体でさえ軋まない確かな足場。

彼は感心したように口元をほころばせた。

 

 

「感謝するぞ。お前さんは立派な支えだよ」

 

「……」

 

 

彼の言葉に返答はない。

だが、そっぽを向いた彼女の耳はほんのり赤みを帯びていた。

 

 

~~~

 

 

「ぐぇー……ハラ減ったぁ」

 

 

地面にぐてーんと寝転がるナツ。

その横で、同じく疲れた様子のグレイがぼそっと呟く。

 

 

「そういやオレもハラ減ってきたな」

 

 

次の瞬間、彼の手元に何かが現れた。

それは何かを丁寧に包んだ布包みであった。

不思議に思いながら開けてみると——

 

 

「これ……弁当!!?」

 

「おおお!!! よくわかんねえけどうまそうじゃねーか!!!」

 

 

鮮やかな色合いの手作り弁当だった。

卵焼き、煮物、彩り野菜に兎さんカットのリンゴ、そして白米には鮭フレークでハートが描かれていた。

だが手元に届けられたグレイにとっては不評だった。

 

 

「冗談じゃねえ。こんな得体のしれねェもん食えるかよ」

 

「んじゃ、オレもらっていい?」

 

 

グレイが許可してナツの手に弁当が渡りそうになった瞬間。

ぴしゃあとナツは頭から水を被っていた。

 

 

「って冷てえ!!?」

 

「……それ、グレイがもらったの。だから、グレイが食べるべきなの」

 

 

水を出したのは、近くにちょこんと座っていたレアだった。

レアの主張に「えー!?」とぐずっているナツを背後に、グレイはいまだに得体の知れない弁当を食べることを渋っていた。

レアがその弁当をのぞき込んで匂いを嗅いでみた。

 

 

「……ん。毒とかは入ってないの。安全は保障できるから食べても大丈夫なの」

 

 

その言葉を信じてか、グレイを意を決して卵焼きを一口。

 

 

「……ん? ……おう!うめえじゃねーかコレ!」

 

 

その後も、グレイはパクパクと残りも食べていったのだった。

 

——その様子を、工事用フェンスの陰から覗いている影が一つ。

 

 

「……水竜(リヴァイアサン)……いえ、レアさん……今、ジュビアのお弁当をグレイ様に……!!」

 

 

幽鬼の支配者の幹部、エレメント4の一員にして()雨女のジュビアである。

なぜ彼女がここにいるのか……端的に言えば、グレイに恋したのである。

グレイの手元にある弁当も彼女が朝早く起きて手作りしたものであり、一時はグレイに食べてもらえない状況に陥ったことにひどく落ち込んでいた。

だが、レアがその状況を変えたことに、彼女の中で電流が走った。

 

 

「……この方……! まさか、水を媒介にして想いの道を繋ぐ……“恋のキューピッド”!?」

 

 

彼女の恋は盲目による恋愛フィルターが発動した。

その中で映るのは、神殿の泉のほとりに立ち、水の弓で愛の矢を放つレアの姿であった。

今思えば、先日の戦いにてグレイとの運命的な出会いを果たしたのも、この方がいたから……!

その思考に至ったとき、彼女の妄想は止まることを知らなかった。

 

もう一度、ジュビアはレアの方を見た。

彼女の表情は無だ。

しかし、そこには神秘すら感じた。

その仕草は、どこかあたたかくて、ふわりと優しい。

 

 

「ああ、やっぱり……貴女様は……ジュビアたちの恋を見守る天の使い……グレイ様に、ジュビアのこの想いが届きますように……どうかお導きを……」

 

 

まるで祈るように手を合わせ、ジュビアはそっとその場を後にしたのだった。

 

 

「……? なんかさっきから視線がチクチクするの」

 

「レアもか……? やっぱ気のせいじゃねー……よな?」

 

「ずりィぞグレイ、オレにもくれー!」





マスター・ジョゼ。戦闘描写も無しにお前の出番もここまでだ。
恨むなら原作との差を生み出すことができなかったうp主の力量を恨むんだな…
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