妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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みな~さまお待たせいたしました。
うp主です。
楽園の塔編のストックがたまりましたので、ここから連続投下して参ります。
評価や感想など、お待ちしております←(感想乞食)


楽園の塔編
胡蝶の夢


 

「星霊だぁ!?」

 

「まあそーゆー事」

 

 

ロキの失踪事件から一晩が明けた妖精の尻尾(フェアリーテイル)

ナツは信じられないという言わんばかりにロキを様々な角度からジロジロと覗き込んでいた。

それもそうだろう。

3年も共にした仲間が、先日存在が消えかけた星霊であることを見抜くなど無理な話だ。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中でも仲がいいグレイが「気づかなかった」と言うあたり、かなり上手く人間界に溶け込んでいたようだ。

 

 

「でもよ、お前牛でも馬でもねーじゃねーか」

 

「ナツの知ってるバルゴだって人の姿だろ?」

 

 

いまだ納得がいかないというナツは、ルーシィが契約している星霊を思い出してそう言う。

ナツの理論からすれば動物の特徴が色濃く出る星霊達のことを思えばロキはただの美青年だ。

彼の例に挙げたバルゴも、ナツは何時ぞやの変身したゴリラの姿で認知しているためロキの言い分は通じなかった。

 

 

「ロキは獅子宮の星霊よ」

 

「獅子!!?」

 

 

ルーシィの言葉にナツもハッピーも驚きを露わにする。

獅子といえば鬣が立派なかの百獣の王だろう。

特に同じネコ科であるハッピーとフリーシャが強く反応した。

 

 

「獅子ってアレだよね!大人になった猫!!」

 

「そうだね」

 

「違ーう!!!」

 

「じゃあ、猫の進化系なのよ!!」

 

「もっと違ーう!!!」

 

 

興奮混じりに尋ねたハッピー。

ロキはニコニコと笑みを浮かべながら肯定したが、同じネコ科であるものの生物としては別物だ。

ルーシィはスパーンと皮切りのいいツッコミを叩き込むと、フリーシャが声をあげる。

だが更なる解釈違いの返答にルーシィはもう一度ツッコミを叩き込んだ。

 

 

「つーか、お前今まで通りで大丈夫なのか?」

 

「ん。昨日のアレ見ると、相当大変そうだったの」

 

「これからはそうはいかないね。ルーシィが所有者(オーナー)になってくれたからね。ルーシィのピンチにさっそうと現れる、さしずめ白馬の王子様役ってとこかな」

 

 

グレイとレアの心配は最もだろう。

だが二人の問いにそんな気障っぽい返答を恥ずかしげもなしに言い切り、ルーシィは思わず頬を染めた。

それを見て面白がる者が2名。

 

 

「「でぇきてるうぅ〜」」

 

「巻き舌風に言うな……!」

 

 

ハッピーとフリーシャである。

口を抑えながらニヤニヤと笑みを浮かべ、巻けてない舌を精一杯動かして煽っていた。

下世話な猫共である。

 

 

「そういう訳で、二人の今後について話し合おうか」

 

「こらこら下ろしなさーい!!!」

 

 

そう言ってロキはルーシィを横抱きに、いわゆるお姫様抱っこをしてギルドを去ろうとする。

慌てたルーシィはロキの腕の中で暴れるも彼はそれを意に返さない。

かと思えば、ロキはレアの方へと振り向いた。

 

 

「レア……君も、どうだい?」

 

 

抱かれたルーシィが慌てるよりも先に、ロキは優雅にウインクを寄越す。

 

 

「せっかくだから、このまま君も一緒に……ほら、話し合おうか? 僕とルーシィと、レアと。どうせなら綺麗なカフェにでも行って……三人でさ」

 

 

ルーシィは顔を一層赤くさせてさらに暴れた。

 

 

「ちょ、ちょっと!! なんでレアまで!!? なんの話し合いよ!!!」

 

 

ロキはお構い無しだ。

抱きかかえたルーシィの頬に視線を落としながらも、片目はしっかりレアを見据えている。

 

 

「愛を深めるっていうのは、独り占めだけが正解じゃないんだよ。君も一緒に花を添えてくれたら最高じゃないか」

 

「欲張りだぁ」

 

はー()()()ってやつなのよ!!」

 

 

ハッピーが後ろでクスクスと笑い、フリーシャも楽しそうに尻尾を揺らしていた。

だが意味合いは合っているもののフリーシャのイントネーションはおかしかった。

そして当のレアはというと、ポカンとしたまま首を傾げていた。

 

 

「花……? お花は春なの。今は夏だから……海の方がいいかも」

 

「……ははっ、そうくるか」

 

 

流石のロキも肩で笑うしかなかった。

天然すぎるレアは恋愛の色香に気づきもしなかった。

その代わりか、レアは小さな微笑みを浮かべた。

 

 

「でもロキの横にはルーシィが咲いてるの。だから大丈夫なの」

 

「咲いてるって言い方やめてよ……」

 

 

ルーシィは頬を赤くしたままため息をついた。

 

 

「ホント、あんたはどこまで欲張りなのよ……。力もまだ万全じゃないんだからもう帰りなさい」

 

 

そう言いながら鍵を取り出したルーシィだったが、ロキは彼女の腕を抑えながら「ちょっと待って」と片眉を上げた。

 

 

「はい、コレ」

 

「何コレ?」

 

 

彼が上着のポケットから取り出したのは人数分揃った何かのチケットだった。

真っ先に疑問を浮かべたルーシィがそう零す。

 

 

「リゾートホテルのチケットさ。君たちにはいろいろ世話になったからね。これ、あげるから行っといでよ」

 

 

元々ガールフレンドたちを誘って行こうと思ってたリゾートビーチ近くホテルのチケットらしい。

もう人間界に長居することも無いからということもあるのだろう。

だがその規模はそこらのリゾート施設とは段違いだった。

 

 

「アカネリゾートッ!!?」

「おおおっ!!!」

「最高峰のホテルなの……!!」

「こんな高ェホテル泊まったことねえ!!!」

 

 

普段であれば絶対に手が届かないだろう高級リゾートの招待チケットである。

それが手元にあり、チケットをあげたロキは「楽しんでおいで」と言って星霊界へと帰っていった。

浮かれている彼らだったが、ゴトゴトと荷台を引く音が裏で響く。

目を向けてみると。

 

 

「貴様ら何をモタモタしている。置いていかれたいのか」

 

「「気ィ早ァア!!?」」

 

 

相も変わらず大量の荷物に加え、レディース用のアロハシャツに麦わら帽子。

果ては浮き輪まで身につけて出発準備を既に整えていたエルザがそこに居た。

どうやらエルザも彼の厚意を受け取っていたようだ。

てなわけで、彼らはアカネビーチへと出発したのだった。

 

 

〜〜~

 

 

ナツら一行はロキからもらったチケットで最高級のアカネリゾートへ到着した。

 

白い砂浜に、どこまでも続く青い海。

高級ホテルのリゾートビーチだけあって、波打ち際まできれいに整備されており、遠くに見えるヨットやパラソルの色も南国らしい彩りを添えていた。

 

砂浜にはパラソルとデッキチェアが並び、

お洒落なフルーツドリンクを持ったリゾート客がのんびりと寛いでいる。

陽射しを避けるためのヤシの木陰からは潮風に乗ってカモメの鳴き声が届いていた。

 

 

「見ろよこの水!! めっちゃ透明だぞっ!!!」

 

「うおおっ! スゲェ!!!」

 

 

ナツとグレイは到着早々、海の透明度にテンションが上がり。

我先にと水に飛び込んで大はしゃぎしていた。

 

 

「まったくもう……!」

 

 

ビーチに残ったルーシィは、大きなビーチバッグからサンオイルや飲み物を取り出していた。

 

 

「せっかく来たんだから日焼けもしなくちゃ損よね!」

 

 

そうつぶやきながら、持ってきたオイルを開封して自身の肌に塗っていた。

彼女の隣には、鮮やかな赤のビキニに、サングラスと麦わら帽子を組み合わせたエルザが立っていた。

まるで鎧を脱ぎ捨てた女王のように堂々としているが、両手には大量の荷物と浮き輪まで抱えている。

 

 

「パラソルはそこだ。荷物は日陰に置け。それから昼食の時間も決めておくから、集合が遅れた者は……わかっているな?」

 

「「オウ!!」」

 

 

ナツとグレイの返事は波の音にかき消されそうだったが、エルザの視線が飛んでくるとしっかり返事だけはするのだった。

 

少し離れたところでは、レアが真新しい白と水色のフリル付きワンピース水着に着替え、腰まで伸ばした水色のサイドテールを潮風に揺らしていた。

小さな貝殻の髪飾りが、波打ち際の光にきらりと反射する。

 

レアは波の近くまで行くと、裸足の足先をそっと波に当てた。

冷たい水がくすぐると、小さく微笑を浮かべる。

 

 

「冷たいの……でも気持ちいいの」

 

 

まるで水に話しかけるみたいに呟き、波打ち際で拾った小さな貝を手のひらに乗せた。

光にかざしてじっと見つめては、嬉しそうに小さく頬を緩めていた。

 

一方、ビーチの木陰ではフリーシャがいつもと変わらない赤いフリルのワンピース姿で、大きなデッキチェアに腰掛けて本を読んでいた。

 

 

「フリーシャは海入んねーのか?」

 

 

気まぐれに声をかけたナツに、フリーシャはしっぽをぱたぱた揺らしながら涼しい顔で答えた。

 

 

「冗談じゃないかしら、海なんて塩水の塊なのよ。入ったらギトギトするじゃないかしら」

 

 

けれど、そのしっぽだけは熱い砂の上から浮かせるようにちょんちょん動いている。

 

 

「嘘つけ〜! しっぽは正直だぞ〜?」

 

「う、うるさいのよ……!」

 

フリーシャは本でナツをぱしんと叩いて黙らせると、またページに視線を落とした。

 

透き通るような海と、眩しい太陽と、仲間たちの声が響く砂浜。

束の間の休息は、こうして始まったばかりだった。

 

 

〜〜~

 

 

波の音と、陽射しの照り返しと、誰かの笑い声が混じり合う。

あのギルドの喧騒とは違う、けれど同じくらい騒がしくて、どこまでも心地いい。

 

──浜辺の中央では、

目隠しをしたルーシィが手探りでスイカを探している。

ナツの悪戯な笑い声に誘導されて、振り下ろされた棒はスイカではなく、日陰で昼寝をしていた強面のおじさんの額に見事直撃した。

 

次の瞬間、響き渡る悲鳴と怒号。

ルーシィが目隠しを外したとき、ナツはすでに全力で砂浜を走って逃げていた。

 

──しばらくして。

波打ち際を離れた沖合で、小さなボートに乗せられたナツが、ルーシィが操るジェットスキーに引かれて弧を描く。

 

きらめく波しぶきが空に散り、ナツの情けない謝罪がジェットスキーのエンジン音と波を切る音で掻き消える頃には、船尾でにやりと笑うルーシィが潮風に髪をなびかせていた。

 

「……ざまぁみろ」と口の端でそう呟くルーシィ。

空と海がまぶしく揺れる。

 

──ひと段落つき、

浜辺の一角では、ビーチバレーのコートが出来上がっていた。

エルザのスパイクは砂煙を巻き上げて突き刺さり、グレイのレシーブが直撃したナツを再び砂の山に埋めた。

 

ハッピーとフリーシャが審判の真似事をして尻尾を振るう。

フリーシャは本を小脇に挟んだまま、「アウトなのよ」と小さく判定を呟き、ハッピーがずるずると旗を引きずって走り回る。

 

弾ける笑い声と、砂浜に飛び散る影と汗の光。

無邪気な熱気が真っ青な空に溶けていく。

 

──少し離れた場所。

レアは波打ち際に腰を下ろしていた。

足先を潮に浸しながら、拾った小さな貝殻を並べては、どれが一番綺麗かをじっと比べている。

 

ふと、手のひらに乗せた貝殻に波が触れ、流されそうになったそれを慌てて両手ですくい上げた。

胸のあたりで貝をそっと抱き込むと、レアは波に小さく囁く。

 

 

「だいじょうぶ……なの。」

 

 

遠くのビーチバレーの歓声が届く砂浜で、レアは潮の香りと陽射しに小さく目を細めた。

 

──いつかまた戻れない日が来るかもしれない。

そんなことは誰も考えない。

今はただ、眩しく、ささやかで、夢のような時間が流れているだけだった。

 

 

〜〜~

 

 

海で遊び尽くしたあとの疲れを心地よく抱えながら、ルーシィとレアはロビー階に続くエレベーターホールへと並んで歩いていた。

 

 

「地下にカジノがあるんだってさ。せっかくだし、ちょっとだけでも遊んでみたいな〜」

 

 

ルーシィが振り向いて笑いかけると、レアもふわりと小さく笑みを浮かべた。

 

 

「ん、遊ぶの。みんなで勝てるといいの」

 

 

砂浜では誰よりも控えめに見えたレアだが、こうして無邪気に笑うと年相応の少女らしさが滲む。

 

二人は途中でエルザの部屋の前に立ち止まった。

ノックをして中に入ると、エルザもどうやら水着から既にいつもの鎧姿に戻っていたようだ。

 

 

「ねえエルザ!地下にカジノがあるんだって! 行ってみない?」

 

「賭け事はあまり好きではないのだがな」

 

「ナツとグレイはもう遊びに行ってるみたいなの」

 

 

レアがそう言うと、エルザは「やれやれ」と零しながら光に包まれる。

光が晴れると、彼女は鎧ではなく深紅のドレスに身を包んでいた。

 

 

「ラフな格好でいいのに〜…」

 

「やるからには遊び倒さねば、カジノに失礼だろう」

 

「ん。じゃあ、早く行くの」

 

 

やる気が入ったらしいエルザに軽く返事をし、出口に向かっていく。

エルザはふと部屋の鏡で、ドレスを身にまとった自分の姿を見た。

 

 

「(たまにはいいじゃないか……自分に優しい日があっても……)」

 

 

リゾートの夜は、始まったばかりだ。

 

 

〜〜~

 

 

──煌めくシャンデリアの下、アカネリゾートの地下カジノは夜の熱気で満ちていた。

ルーレットの玉が弾ける音、カードを切る音、遠くで鳴るスロットのベル。

大人たちの歓声と溜息が入り混じる空気の中で、ひときわ荒ぶる声が響いていた。

 

 

「お……お客様困ります!!」

 

「だって17に入ってたぞ!! オレは見たんだ!!!」

 

「あい!!」

 

「そんなこと言われましても……」

 

 

ディーラーは困ったように眉を下げたが、指先は揺らがない。

テーブルにはナツが積んでいたチップの山があったはずだが、今は跡形もなくディーラーの後ろのカジノへ吸い込まれていった。

 

ナツはテーブルに片膝をつき、ぐっとルーレット台に乗りかかる。

ハッピーもそれに便乗するようにルーレットの横に立った。

 

 

「17に入ってたのにカタンってズレたんだって!! 何だコレ!!?」

 

「そんなことある訳ないでしょ〜……」

 

「諦めるかしら、ナツ。運が悪いのよ」

 

 

困ったようにそう零したディーラーに続いて、呆れ顔のフリーシャが頬杖をつきながら言った。

だがナツは納得できんと燃え上がった。

 

 

「うるせー!!! オレはこの目で見たんだ、騙されねーぞ!!!」

 

「ナツ、負けたの?」

 

 

そのとき、小さな声が後ろから落ちてきた。

振り向くと、腰まで伸びた水色のサイドテールを揺らしたレアが、首を傾げて立っていた。

 

 

「な、レア!? オレは負けてねー!!!」

 

 

ナツは振り返りざまに語気を荒げる。

 

 

「あい!! オイラも見たんだぞ!!!」

 

 

ナツの肩に乗ったハッピーまで尻尾を逆立てて、ディーラーを睨みつける。

 

 

「お客様、本当にイカサマは……」

 

 

ディーラーは苦笑いを浮かべながらも、カードを切る手を止めない。

それが余計にナツとハッピーの怒りを煽る。

 

 

「絶対ズレた! ちょっとカタンってなったんだ!!」

 

「玉が途中でジャンプしたんだぞ!! おかしいよ!!」

 

 

後ろでフリーシャが溜め息を吐いた。

依然、頬杖をついたまま尻尾を揺らす。

 

 

「これだから脳筋火竜(サラマンダー)とオス猫は……潔く負けを認めるかしら……」

 

 

だがナツとハッピーは全く聞く耳を持たない。

 

 

「くそっ……もう一回やらせろ!!」

 

「全部取り返してやるんだ!!」

 

 

荒れた声を上げる二人を見て、レアはテーブルのチップの欠片をそっと拾い上げた。

その仕草はまるで、砂浜で小さな貝殻をすくうみたいに柔らかい。

 

 

「……ナツ、ハッピー……だいじょうぶなの。」

 

 

ぽそりと落ちる声に、二人は揃って目を向ける。

 

 

「だいじょうぶって……何が……」

 

「オレは負けてねー!!」

 

「ん、負けてないの。だから……レアが、全部取り返すの。」

 

「……お前……」

 

 

ナツが呆気に取られて声を失った。

ハッピーは肩に乗ったまま、口を半開きにして尻尾をゆらした。

だがレアの瞳は真剣だった。

淡い光に濡れたルーレット台をじっと見つめている。

 

 

「イカサマじゃないの。ちゃんと勝てば……ちゃんと戻るの。フリーシャ、このチップ借りるの」

 

「……えぇ、好きにするがいいかしら。」

 

 

フリーシャが笑う。

尻尾をぱたぱた振りながら、託したようにチップをレアに渡した。

彼女はこくりと頷くと、小さな手でテーブルにコトンと置く。

 

玉が回る。

ルーレット台の光が弾け、玉が跳ねる。

 

 

「お……おい……!!」

 

 

ナツが無意識に身を乗り出す。

ハッピーは尻尾を握りしめ、目を瞬かせる。

 

 

──チリリ……。

 

 

玉が静かにポケットに収まる。

ディーラーが盤面を確認した瞬間、周囲からどよめきがあがった。

 

 

「当たった……!!?」

 

「嘘だろ……!!?」

 

 

レアは振り返らない。

勝った分を重ねて、再びコトンと置く。

 

 

「まだ……全部じゃないの。」

 

 

ナツとハッピーがごねた分の負け金。

フリーシャが借りた分も。

レアは一度も振り返らず、真っ直ぐに玉の行方を追い続けた。

 

──二回目の玉が弾けて止まる。

 

 

「……!!」

 

 

ナツとハッピーが息を呑む。

ディーラーが手を止め、笑みを漏らした。

 

 

「お見事でございます……!」

 

 

いつの間にか周囲に人だかりができていた。

歓声が混じる中、レアは両手に勝ち分のチップを抱えてナツの前に戻った。

 

 

「……全部、だいじょうぶなの。」

 

 

ぽふりとナツの掌に乗せられるチップの山。

ハッピーが目を丸くして、それを押さえた。

 

 

「れ、レア……!!」

 

「……負けてないでしょ?」

 

 

レアの小さな笑顔に、さすがのナツも声を詰まらせた。

ハッピーは頬を赤くして尻尾を振る。

 

 

「オイラの分も……ありがとう……!」

 

「ん」

 

 

レアは小さく頷いて、ルーレット台に残る玉の音を最後に振り返らなかった。

 

──誰よりも往生際の悪い火竜と猫を黙らせるのは、波打ち際の貝殻を拾うみたいに柔らかな、仲間の意地だった。

 

 

「ダンディに勝ち切るとは……可愛い顔して、やるじゃないか、ガール」

 

 

すると、パチパチと小気味いい拍手が響いた。

振り向いてみると、妙にカクカクとした輪郭をした四角い体格の男がそこに立っていた。

 

 

「カ……カクカク!?」

 

「四角いの……四角い人なの……?」

 

 

ナツが思わず眉をひそめた。

隣でレアも、じっと男を見つめて首を傾げる。

 

 

「アンタは見事だぜ。仲間のためにダンディに賭けて、ダンディに取り返す。泣いていたボーイどもを見てられなかったんだろ?」

 

「ナツのこと……? 泣いてるんじゃなくて怒ってたと思うの。けど、悔しそうでもあったの」

 

「ふ……眩しいな。生きずらい男と違って、清らかに生きている……。お前たちにいいことを教えてやるぜ。男に二つの道しかないのサ。ダンディに生きるか——」

 

 

次の瞬間、男の影が伸び、四角いブロックが床から盛り上がった。

 

 

「!?」

 

 

レアの足元に絡みつくように、無数の四角いブロックが鎖となって立ち上がる。

彼女の細い腕を、白い脚を、四角い鎖が瞬く間に縛り上げた。

 

 

「レア!?」

 

「な、なにしやがるんだ!!」

 

 

フリーシャの悲鳴が響き、ナツが詰め寄ろうとした瞬間。

ウォーリーは四角い手で懐から銀色の拳銃を引き抜き、銃口をナツの口内に突きつけた。

 

 

「——止まって死ぬか、だゼ」

 

 

拳銃の冷たい金属が、ナツの歯に触れる。

 

 

()がんが(なんだ)ごいぐ(コイツ)…!!!」

 

「エルザはどこにいる? だゼ」

 

 

丸いコインの弾ける音だけが、四角い緊張の幕開けを告げていた。





ウォーリーの語尾の「ゼ」
変換がいちいちダルすぎる…(笑)
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