妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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小さい頃声優さんなんて全然知らなかったですけど、改めてアニメ見直してショウの声優さんが下野さんって知ったときは思わず二度見しました(笑)


ネコネコFight!!

 

静まり返った塔最下層の空気に、まだエルザの涙の温度が残っていた。

グレイが誰よりも先に、ぽつりと口を開いた。

 

 

「ちょっと待てよ、エルザ……。話の中に出てきたゼレフって……」

 

 

その問いに、エルザは濡れた頬を手の甲で拭い、わずかに伏せた目を上げる。

 

 

「ああ……。魔法界の歴史上最凶最悪と言われた——伝説の黒魔導士だ」

 

 

どこか遠い記憶をなぞるような声だった。

 

 

「た…確か呪歌(ララバイ)から出てきた怪物もゼレフ書の悪魔って言ってたよね……」

 

 

ルーシィが思い出すように口にすると、エルザは静かに頷いて答えを重ねた。

 

 

「それだけじゃない……。おそらく、あのデリオラも……ゼレフ書の悪魔の一体だ」

 

 

その名を聞いて、グレイの目が大きく見開かれる。

言葉を失ったまま、わずかに息を呑む。

ジュビアは不安げにエルザを見つめた。

 

 

「ジェラールは……そのゼレフを復活させようとしているんですか……?」

 

 

問いかける声に、エルザは少し視線を落とし、かすかに首を振った。

 

 

「動機まではわからん……。だが、ショウ——かつての仲間の話では、ゼレフの復活の暁には“楽園”にて支配者になれるとか、どうとか……」

 

 

淡々と語られる言葉に、ルーシィが引っかかるように眉を寄せた。

 

 

「そういえばさ……そのかつての仲間たちのことなんだけど……どうしても腑に落ちないんだよね……」

 

 

ふとエルザを見据える。

 

 

「あいつらはエルザを裏切者って言ってたけど、裏切ったのはジェラールじゃないの?」

 

 

核心を突く言葉だった。

だが、エルザは静かに目を閉じた。

 

 

「……私が楽園の塔を追い出された後、ジェラールに何かを吹き込まれたんだろうな……」

 

 

短く答えた後、声を潜めて続ける。

 

 

「しかし……私は八年も彼らを放置した。裏切ったことに変わりはない……」

 

 

その自責の響きに、ルーシィが食ってかかった。

 

 

「でもそれは、ジェラールに仲間の命を脅されたから近づけなかっただけじゃない!! それなのにあいつら……!」

 

 

だが、ルーシィの言葉を制するように、エルザは首を振った。

 

 

「……もういいんだ、ルーシィ。私がジェラールを倒せばすべてが終わる」

 

 

それは強さを取り繕った声だった。

だが、その言葉を聞いていたグレイの胸には、微かな違和感が残る。

 

 

「(……本当にそうか?)」

 

 

過去話の前にエルザが放った言葉が、ずっと引っかかっていた。

 

 

「(“この戦い……勝とうが負けようが……私は表の世界から姿を消すことになる……”——……あの言葉が……妙に……)」

 

 

グレイの瞳に、疑念がひそやかな焔のように灯った。

 

エルザの静かな語りが終わった直後、ザッ、と靴音が響く。

皆がそちらに目を向けると、震える足取りで歩み寄ってくる人物がいた。

 

 

「姉さん……その話……ど、どういうことだよ……?」

 

 

現れたのはショウだった。

全身を震わせ、しかしエルザの前に立つ彼の瞳は怒りと混乱に揺れている。

 

 

「ショウ……」

 

 

エルザがその名を静かに呼ぶと、彼は怒りに任せて声を荒げた。

 

 

「そんな与太話で仲間の同情を引くつもりなのか!! ふざけるな!!!」

 

 

その叫びに、辺りの空気が張りつめる。

 

 

「真実は全然違う!! 8年前、姉さんはオレたちの船に爆弾を仕掛けて、一人で逃げたじゃないか!! ジェラールが姉さんの裏切りに気づかなかったら、全員爆発で死んでいたんだぞ!!!」

 

 

ショウの言葉は止まらない。

 

 

「ジェラールは言った!! これが“魔法”を正しい形で習得できなかった者の末路だと!! 姉さんは魔法の力に酔ってしまって、オレたちのような過去を捨て去ろうとしたんだと!!!」

 

 

その言葉に、グレイが目を細める。

 

 

「ジェラールが()()()?」

 

 

ショウの勢いが一瞬鈍る。

額には汗が浮かび、唇が震える。

続いてルーシィが、静かに語りかけた。

 

 

「あなたの知ってるエルザは、そんなことする人だったのかな?」

 

 

その言葉に、ショウは歯を食いしばり、エルザを見つめる。

だが、エルザはうつむき沈黙を守っていた。

 

 

「お……おまえたちに何がわかる!!! オレたちのこと何も知らないくせに!!!」

 

 

ショウの声は涙混じりだった。

 

 

「オレにはジェラールの言葉だけが救いだったんだ!!! だから!!! 8年もかけてこの塔を完成させた!!! ジェラールのために!!!」

 

 

握り締めた拳が震える。

その叫びは、怒りとも悲しみともつかぬ感情の混ざり合った絶叫だった。

 

 

「そのすべてが……ウソだって? 正しいのは姉さんで、間違ってるのはジェラールだというのか!!?」

 

 

返答はない。

だが、代わりに他の声が響いた。

 

 

「そうだ」

 

 

声の主に一同が目を向ける。

 

 

「シモン!!?」

 

「てめ……!」

 

ショウが驚愕の声を上げる。

敵意を示しかけたグレイが前に出るが、ジュビアがその腕を引いた。

 

 

「待ってください、グレイ様!!」

 

 

グレイが戸惑いながら振り向くと、ジュビアが真剣な表情で続けた。

 

 

「あの方は、あの時グレイ様が氷の人形(みがわり)だと知ってて攻撃したんですよ」

 

「何!?」

 

 

驚くグレイに、ジュビアが続ける。

 

 

「暗闇の術者が辺りを見えていない訳がないんです。ジュビアがここに来たのは、その真意を確かめる為でもあったんです」

 

 

その言葉に、シモンは小さく頷いた。

 

 

「さすが、噂に名高いファントムのエレメント(フォー)

 

 

シモンは静かに語る。

 

 

「誰も殺す気はなかった。ショウたちの目を欺くために気絶させるつもりだったが、氷ならもっとハデに死体を演出できると思ったんだ」

 

「オレたちの目を欺くためだと……!?」

 

 

ショウが再び動揺する。

 

 

「おまえもウォーリーもミリアーナも……みんなジェラールに騙されているんだ。機が熟すまで、オレも騙されてるフリをしていた」

 

「シモン……おまえ……」

 

 

エルザが感情を押し殺した声を出すと、シモンは照れたように頬をかいた。

 

 

「オレは初めからエルザを信じてる。8年間ずっとな」

 

 

その言葉に、エルザの瞳から涙がこぼれた。

次の瞬間、彼女はシモンと強く抱き合った。

 

 

「会えて嬉しいよ、エルザ。心から」

 

「シモン……」

 

 

エルザの声は震えていた。

その様子を、ルーシィは穏やかな表情で見守っていた。

だが、一人だけ違う思いを抱える者がいた。

 

 

「なんで……みんな、そこまで姉さんを信じられる……何で……」

 

 

皆の視線がショウに注がれる。

彼は膝から崩れ落ち、地面に拳を打ちつけながら泣いていた。

 

 

「何でオレは……姉さんを信じられなかったんだ……くそぉおおおっ!! ううわああぁあぁ!!! 何が真実なんだ!!? オレは……何を信じればいいんだ!!!」

 

 

その嘆きに、エルザは静かに膝を折り、ショウの前に座る。

 

 

「今すぐ全てを受け入れるのは……難しいだろう。だが、これだけは言わせてくれ」

 

 

彼女の声は震えていた。

 

 

「私は8年間……おまえたちのことを忘れたことは、一度もない……何もできなかった……私は、とても弱くて……すまなかった……」

 

 

その言葉と共に、彼女は泣きじゃくるショウをそっと抱きしめた。

そしてその光景を見つめながら、シモンが静かに語りかける。

 

 

「だが、今ならできる。そうだろ?」

 

 

エルザは小さく頷いた。

 

 

「ずっとこの時を待っていた。強大な魔導士がここに集うこの時を」

 

「強大な魔導士?」

 

 

ルーシィが問う。

シモンは真剣な目で答えた。

 

 

「ジェラールと戦うんだ。オレたちの力を合わせて。まずは、双竜とウォーリーたちが激突するのを防がねば。ジェラールと戦うには、あの者たちの力が絶対に必要なのだ。火竜(サラマンダー)のナツ……水竜(リヴァイアサン)のレア」

 

 

その名が告げられた瞬間、一同の中に緊張が走った。

物語は、ついに次の局面へと進み始めたのだった。

 

 

~~~

 

 

「ハッピー!!! フリーシャー!!! どこだー!!!」

 

 

塔の中を走り回っていたナツはふと、開け放たれた猫の形をした扉の前で足を止めた。

扉の奥にはふわふわの何かが見える。

 

 

「なんだこの部屋……ネコだらけだ!」

 

 

そこは猫、猫、猫……猫まみれの空間だった。

ぬいぐるみ、クッション、ソファ、ランプシェード、棚のデザインやその上のフィギュアまで。

どれもこれも猫モチーフ。

足元のカーペットもふわふわで、歩くたびに猫の鳴き声のような電子音が鳴った。

 

 

「……ん、変な部屋なの」

 

 

後ろから顔をのぞかせたレアが、部屋の隅に置かれた巨大な猫のぬいぐるみに近づく。

そっとそのぬいぐるみに触れて、ぽつりとつぶやいた。

 

 

「……ちょっと、かわいい……の」

 

 

もふ、と顔をうずめたレアの肩が、ふにふにと上下に揺れた。

まるで、猫が満足して毛布をこねているような、そんな仕草だった。

一方、ナツは壁にかかった猫の被り物に目を輝かせていた。

 

 

「うお、なんだコレ」

 

 

そう言いながらナツはそれを頭から被ってみた。

かぽっと心地のいい音が鳴り、ナツの顔面はネコに早変わりした。

満足げに鏡の前でポーズを取るナツ。

 

 

 

「あははっ!なんかいいなコレー! ハッピー驚くだろーな、コレ。エルザも驚かしてやっかな……待てよ、ルーシィの方がリアクション面白そうだな」

 

 

猫の被り物をかぶったまま、鏡の前でポーズを取るナツは、尾を振るつもりか腰を左右に振ってみせた。

表情は見えずとも、その被り物の下では悪い顔を浮かべているだろう。

レアはくるりと振り返って、その様子を見上げる。

 

 

「変なの……。似合ってないの」

 

「似合ってねーのかよ! いや、でもちょっと面白くねーか?」

 

「んー……ちょっとまぬけって意味なら……大成功なの」

 

「おい!」

 

 

レアはぬいぐるみを抱いたまま、ナツの横にちょこんと座り込む。

 

 

「それ、ちゃんと抜けるの?」

 

「は? あー、うん。……ん? ……ぬけねぇ……え?」

 

「……やっぱりなの」

 

 

ナツは両手で必死に被り物を押し上げようとするが、まるで接着されたようにビクともしない。

 

 

「ちょっ、マジで!? 外れねぇって、これ! オレずっとこのままなのか!?」

 

「……やっぱりおもしろいの。ルーシィ、ぜったい笑うの」

 

「笑ってねえで助けてくれー!!」

 

 

二人が軽口を叩き合っている、その背後で──

 

カチ。

 

乾いた音が室内に響く。

その瞬間、部屋の温度がふと下がったような気がした。

 

……その温度の変化に、部屋にいた誰も気づかない。

猫耳をかぶった少年と、ぬいぐるみを抱えた少女は、まだ無防備な笑い声を響かせていた。

その背後で、殺意だけが静かに牙を剥いていた。

 

目を細めた男が、ドアの影に立っている。

ナツもレアもその気配にまだ気づかず、無防備なまま笑っていた。

ウォーリーはゆっくりと銃口を二人に向け、ニヤリと口角を吊り上げた。

 

 

「ジ・エンドだゼ、ボーイ&ガール……」

 

「ダメーーー!!」

 

 

突如、甲高い悲鳴が響いた。

次の瞬間、乾いた銃声が鳴り響き、ナツとレアの間をかすめるように弾丸が駆け抜ける。

 

 

「み…ミリアーナ!!?」

 

 

ウォーリーが叫ぶ。

彼の銃口は逸れ、銃弾は壁に小さな穴を開けて止まっていた。

ビクリと肩を震わせたナツが振り返る。

レアも、ぬいぐるみをしっかり抱きしめたまま、その声の方を見やった。

 

 

「四角!!!」

 

「居たの……!」

 

 

ナツが叫ぶ。

レアの声は淡々としていたが、どこか嬉しげだった。

 

 

「な…何をするんだ!!せっかくのチャンスを!!」

 

 

ウォーリーがミリアーナに怒鳴る。

 

 

「ネコネコいじめちゃダメなのーっ」

 

「ネコじゃねェゼ!!見りゃわかんだろ!!」

 

 

ナツとレアが顔を見合わせる。

そして、レアは小さく首をかしげ、抱えていたぬいぐるみを顔の高さまで持ち上げた。

 

 

「「にゃー」」

 

「ホラー!!」

 

「てめえらっ!!!」

 

 

ミリアーナが喜色の笑みを浮かべながら顔を覆い、ウォーリーは目をカッと見開かせながら怒声を飛ばした。

 

 

「よくもやってくれたなァ、四角野郎ーーー!!!」

 

「借りは、キッチリ返すの……」

 

 

ナツが拳を握りしめて叫び、レアの瞳が鋭く細められる。

 

 

「どけ、ミリア!!奴は敵だゼ!!!」

 

 

ウォーリーがミリアーナを押しのけると、体がガシャリと音を立てて分裂した。

 

 

「くらえ! ポリゴンアタック!!!」

 

 

ブロック状に分かれた彼の身体が勢いよく飛来する。

 

 

「おっと!!」

 

「ネコバリアー……なの」

 

 

しかしナツは危なげもなく軽やかに身をかわす。

一方レアは咄嗟にぬいぐるみを掲げて攻撃を受け止めた。

 

 

「てき? ネコネコなのに?」

 

 

ミリアーナが首をかしげる。

 

 

「だからネコじゃねーって言ってんだろ!!! 人がネコのフリしてるんだゼ!!」

 

「みゃっ!!?」

 

「ネコファイア!!!」

 

 

ナツの燃え上がる拳がブロックをいなし、レアも水流を脚にまとわせて迎撃態勢をとる。

 

 

「ナツ、炎とネコは関係ないの……」

 

 

ボソッとツッコミを入れた。

二人は火炎と水流を巧みに操りながら、迫るブロックを捌いていく。

それを首だけを浮かして高所から見下ろしていたウォーリーが舌打ちした。

 

 

「チィ…さすがはジェラールが警戒しろって言うだけのボーイ&ガール…… ミリア!!援護してくれ!!」

 

「みゃああ!!人なのにネコネコのフリするなんて、元気最悪ーーー!!」

 

「おまえはどーなのよ……?」

 

「ん、一番ネコのフリしてるの……」

 

 

憤慨するミリアーナにナツが呆れたように呟いた。

レアもそれに便乗してしれっと言い放った。

 

 

「ネ拘束チューブ!!」

 

 

ミリアーナが両手をかざすと、縄のような管がうねりを上げて飛び出した。

ナツの左手首と、レアの右足首に巻き付くと、両者が纏っていた魔法が消え去った。

 

 

「よくやったゼ、ミリアーナ!!」

 

 

ウォーリーの笑みが深くなる。

 

 

「ウォーリー!! うそネコやっつけちゃってーー!!」

 

「秒間32フレームアターック!!!」

 

「ぐおおっ!!?」

 

「ナツ!!」

 

 

レアの目が見開かれる。

 

 

「な…なんだコレ!? 急に魔法が使えなくなった!!」

 

「魔法が……!? コレのせいなの……!?」

 

 

レアが足首に絡みついた管に手を伸ばそうとしたその瞬間、別の管が彼女の手首に巻き付き、上方へと引っ張りあげた。

 

 

「うあっ!? ふぎゅっ!!」

 

「うぎゃっ!!!」

 

 

続けざまにウォーリーががら空きになったレアの胴体に攻撃を叩き込んだ。

ナツも巻き込まれ、ふたり揃って地面に転がる。

すかさずミリアーナの拘束チューブが絡みつき、ナツとレアは背中合わせに拘束される。

ウォーリーの身体が再構築され、銃を構える。

 

 

「どうやらここまでのようだな。双竜」

 

「んぎぎっ!!」

 

「ん……っ! 動けない……っ!」

 

「プリレンダリングポリゴンショットでもくらいやがれ」

 

「ウォーリー!!早くやっつけてーー!!」

 

「く……! 不覚なの……!」

 

「言ってる場合か! 魔法なしでアレをくらったら……!」

 

 

ウォーリーが構えをとった。

銃口がナツとレアに狙いを定める。

 

 

「おっと……ダンディなキメゼリフを忘れていたゼ。おまえらの運命は、オレと出会った時に終わっ——べぱ!!?」

 

 

もうダメかと思われたその時、バコォン!と鈍い音が響いた。

音の正体はウォーリーの後頭部に炸裂した鈍器の一撃だった。

彼の身体が崩れるように前のめりに倒れた。

そこには、ネコの顔が掘られたバットを持ったハッピーの姿があった。

 

 

「ハッピー!!」

 

「リーシャもいるかしら!」

 

 

その後ろから赤いワンピースをなびかせた金色の影が伸びる。

鋭い目で見降ろすフリーシャの姿もそこにあった。

 

 

「ナツもレアもも無事でよかったー! てか何その被り物」

 

「ネコネコが飛んでる!!」

 

 

ミリアーナの目が星のように輝く。

だがその刹那、ウォーリーが立ち上がる。

口元には怒りに満ちたへの字が浮かび、銃口がハッピーに向けられる。

 

 

「コイツ……!! オレのキメゼリフをよくもッ!!」

 

「わっ!? わわっ!!」

 

 

ハッピーがジタバタと慌てて飛び回る。

 

 

「ダメー!! ネコネコをいじめないでー!!」

 

 

ミリアーナがその前に立ちはだかった。

 

 

「ネコは飛ばねぇ!! しゃべってもいいが、飛んじゃいけねェんだよッ!!!」

 

 

その間に、レアが身をよじって叫んだ。

 

 

「今のうちなの! フリーシャ、これ切ってなの!!」

 

「了解かしら!!!」

 

 

フリーシャが鋭い緑のオーラの爪を両手に展開し、急降下。

彼女の狙いは、ナツとレアを拘束している管だ。

 

 

「させるか!!」

 

 

ウォーリーが再び銃を構えようとする。

 

 

「だからダメなのーーー!!!」

 

「離せ!!!ネコじゃねェ!!! あのうそねこをやるんだゼ!!!」

 

 

ミリアーナが叫び、彼のマフラーを後ろから引っ張る。

その隙に、フリーシャの爪が管に触れる。

しかし……

 

 

「……ちっ、切れない!?」

 

「急げフリーシャ!!」

 

 

ナツが叫ぶ。

 

 

「焦らせないでかしら!! このチューブ、魔力阻害がかかってるのよ!!」

 

 

触れるたびにバチバチとノイズが走り、爪の力がうまく乗らない。

 

 

「くそ!! こうなったらアレをやるしかねえっ!!!」

 

 

ナツは歯を食いしばると、真正面からミリアーナの視線を捉えた。

 

 

「必殺……!!『苦しんでるネコ!!!』に゛ゃあああ……っ!!!」

 

「……あ……」

 

 

ミリアーナの耳がぴくりと動いた。

次の瞬間、その瞳がうるんで、ぽろりと涙がこぼれた。

そして——

 

パサリ。

 

ナツとレアの身体を締めていた管が、音もなくほどけていった。

 

 

「何してんだミリアーナーーー!!!」

 

「だって……ネコネコが……」

 

 

絶叫するウォーリーにミリアーナ涙ぐみながら訴える。

 

 

「おっし!!」

 

「一瞬なの!!」

 

 

二人は立ち上がり、動きを合わせる。

 

 

「いけーナツーー!!!」

 

「決めちゃえなのよレアーー!!!」

 

 

ハッピーの声援が木霊し、フリーシャの声も空から響く。

 

 

「火竜の——!」

「水竜の——!」

 

「「——翼撃!!!!」」

 

 

炎と水が交差し、爆音が響いた。

ウォーリーのポリゴンボディが吹き飛び、ミリアーナも軽々と衝撃に舞った。

煙の中、二人のシルエットが悠々と立ち上がる。

 

 

「ふいーーーっ!! 四角へのリベンジ、完了したぞー!!!」

 

「スッキリしたのー」

 

 

ナツが胸を張って叫び、レアもにこっと微笑んだ。

 

 

「……って、いつまで被ってんの、それ」

 

「ええ、正直くどいかしら」

 

 

だがハッピーが首を傾げた。

続いてフリーシャがすかさずツッコミを入れる。

 

 

「……とれないんだよ」

 

 

妙にしょんぼりしたナツの声が空しく響いたのだった。

それでもレアは、黙って隣に座り、もう一度ぬいぐるみに顔をうずめた。

 

 

「……似合ってないけど、ちょっとだけ……かわいいの」





寡黙な子がぬいぐるみをフニフニしてるの……よくないですか?(癖)
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