盤上系ゲームって難しい…
ポケモンはやってて盤面見えるのにオセロやると急に( ᐛ )ってなる…。
ナツが壁に張り付いたまま、必死に叫んでいた。
「ハッピー!! もっと強く引っ張ってくれ!!!」
「もう力いっぱいやってるよ!!!」
ハッピーは羽ばたきながら、ナツの頭にぴったりはまったネコの被り物を引っ張っている。
「がんばれーなの」
「ぬおおおっ!! もげるぅぅ……!!!」
レアが小さな声で応援を送る中、ナツが断末魔のような声をあげた。
フリーシャが溜息をつく。
「自業自得かしら…」
そう呟いた直後、ついに——
すぽーん!!
「とれたー!!」
軽い音と共に、ナツの頭にはまっていた被り物がすっぽ抜けた。
ようやく解放されナツは満面の笑みを浮かべた。
一方勢いよく外れた被り物はくるくると宙を舞い、スポン!と起き上がろうとしていたウォーリーの頭にはまった。
「今度は四角にはまった!!」
「あのマスクの被り口はどうなってるんだろう……」
ナツが腹を抱えて笑い転げ、ハッピーは白目をむきながら呟いた。
その隣でレアはネコ頭のウォーリーを不思議そうに見つめる。
「カクカクなのに頭丸くなったの」
「ずいぶんなマヌケずらになったかしら」
さらにフリーシャが冷たく言い放った。
それでもウォーリーはふらつきながらも立ち上がり、はまったネコの被り物を引き抜き、地面に放り捨てた。
「まだ勝負はついてねェゼ、双竜……!」
だが次の瞬間、膝をついて呻いた。
その様子を見て、ナツは腕を組んで言う。
「もう借りも返したし、エルザもハッピーもフリーシャも無事ってんなら、これ以上やる意味はこっちにはねーんだけどな」
「ん。こっちから売る喧嘩だって別にないの」
レアも淡々と同意する。
だがウォーリーはうつむいたまま、力のない声で呟いた。
「オレたちは楽園へ行くんだ……」
その言葉に、ナツの表情が僅かに動く。
「ジェラールの言う……人々を支配できる世界へ……」
「支配……」
レアが眉をひそめた瞬間だった。
空間の空気が一瞬だけ重たくなったように感じられた。
次いで、周囲の空気を裂くように、どこからともなくエコー混じりの声が響き渡った——
「ようこそみなさん。楽園の塔へ」
「ジェラール!?」
声の発信源を探すと、外に設置された巨大な土偶が赤く目を光らせていた。
「オレの名はジェラール。この塔の支配者だ。互いの駒は揃った。そろそろ始めようじゃないか……楽園ゲームを」
「ゲームだぁ?」
「ジェラール……何だコレは……」
ナツが眉をひそめる。
ウォーリーも困惑を隠せないでいた。
そんな声が聞こえているのか否か、そんなことはお構いなしにジェラールは続ける。
その声は淡々としているも、確信に満ちていた。
「ルールは簡単だ。オレはエルザを生け贄とし、ゼレフ復活の儀を行いたい。すなわち、楽園への扉が開けばオレの勝ち。もしそれを阻止できればそちらの勝ち。ただ……それだけでは面白くないのでな。こちらは三人の戦士を配置する」
「三人の戦士? どんな奴なんだろう……」
ハッピーが不安そうに呟く。
「そこを突破できなければ、オレにはたどり着けん。つまりは3対8のバトルロワイアル。最後に一つ特別ルールを説明しておこう。評議員が
「コイツ何考えてるのかしら……!」
フリーシャが眉を吊り上げた。
「残り時間は不明。しかしエーテリオンが落ちる時、それは全員の死。勝者なきゲームオーバーを意味する。さあ、楽しもう」
その言葉を最後に、土偶の赤い目が消えた。
沈黙が辺りに満ちる。
「な……何なんだよジェラール……エーテリオンってよう……そんなのくらったらみんな死んじまうんだゼ」
ウォーリーが吐露するように小さく叫ぶ。
そんな様子にナツが目を向ける。
「オレたちは真の自由がほしいだけなのに……」
噛み締めるウォーリーに、ナツはにっと笑いながら言い放つ。
「どんな自由がほしいか知らねーけど、
「……っ」
ウォーリーが顔を上げる。
そんな彼にレアも続けて言う。
「ん。好きな仕事して、好きにお酒飲んで、好きにバカやって……みんな自由なの」
「……」
ウォーリーは黙ったままうつむく。
その時だった。
突如として、ナツとレアの足元に魔法陣が展開される。
魔力の奔流が荒れ、蒼い光が渦を巻く。
「うおっ、何だ!?」
「すごい魔力だよ!!」
ナツが飛び退き、ハッピーが叫ぶ。
そんな中、フリーシャの鋭い声が響く。
「これは……転移魔法!!?」
「君たち“二人”がそろってここまで来るようでは、ゲームにならない。双竜……ここからは分かれて行動してもらおう」
すると、またしてもジェラールの声が響いた。
そんな言葉に、ナツとレアが納得できるはずもなかった。
「はあ!? 何言ってやがる!!」
「勝手に決めるななの……!」
ナツが吼える。
レアも小さく怒鳴る。
だが、二人の意思は儚く散らされる。
「これはいわゆるハンデ……連携が過ぎれば、他の駒が活きない」
魔法陣が一層光を増す。
「ふざけんなよっ!! レア、手ぇ貸せ!!」
「んっ……!」
レアがナツの手を取る。
だが——
「くそっ……レアァァァーーー!!!」
「ナツ……!!」
光が二人の間を断ち切るように裂け、手は引き離された。
そのまま二人はハッピーとフリーシャと共に蒼い閃光の中へと消えていったのだった。
——場所は変わって、塔の最上階。
ローブを着て、フードを深くかぶったジェラールは魔導盤の前に立ち、指先で小さな駒を二つ摘み上げる。
火を吹く竜と、水を巻く竜。
「それぞれの力で上ってくるがいい。君たちが再び出会うにふさわしい場所まで来られれば……の話だがな」
狂気を宿した笑みが、ジェラールの口元に浮かんでいた。
~~~
眩い光が弾けたあと、レアとフリーシャの視界が一瞬、白に染まった。
気づけばそこは、長く薄暗い石造りの通路だった。
塔の内部であることは間違いない。だが、ナツやハッピーの姿はどこにもなかった。
「……ナツ、いないの……」
「こっちも見当たらないのよ。……ハッピーたちは別の場所に飛ばされたかしら」
足元をしっかりと確かめながら、レアが小さく呟く。
フリーシャの返答にも、不安と苛立ちがにじんでいた。
「ん……たぶん、ジェラールの仕業なの」
ぴたり、とレアの足が止まった。
何かを感じ取ったのだろう。
蒲公英色の瞳が、通路の奥を鋭く見据える。
フリーシャも爪を展開し、緊張を滲ませながら構えを取った。
——その時だった。
しん、と張り詰めた空気の中、高下駄の音が一歩ずつ近づいてくる。
石畳を静かに叩く、かすかな足音。
しかし、そのひとつひとつが、まるで斬りかかってくるような緊張感を纏っていた。
そして、現れたのは——
「うちは斑鳩と申しますぅ。よしなに」
通路の奥、蒼白い灯りに照らされながら歩み出たのは、一本の細身の刀を腰に差した和装の女。
目尻のほくろが艶やかに揺れ、冷たい微笑を浮かべていた。
「……ジェラールが言ってた“三人の戦士”の一人、なの?」
レアが低く問う。
「さぁ、どうやろなぁ。お嬢はんにとって、うちはそういう存在になれるやろか」
斑鳩は、静かに刀の柄に手を添えた。
その動きには一片の隙もなかった。
「……フリーシャ、下がってて」
「えっ!? でも、レア……狭い場所だって、リーシャなら——」
「ここ、狭すぎるの。フリーシャの翼、自由に動かせないの」
レアの言葉に、フリーシャは唇を噛むようにして一歩後退した。
「……分かったわよ。でも、危なくなったらすぐ呼ぶのよ。いいわね……!」
レアは小さく頷き、構える。
——ぴたり、と空気が止まった。
一瞬の沈黙のあと、斑鳩の手が抜き放つ。
「斬ッ」
空気が鳴いた。
通路に突如、鋭利な“裂け目”が走る。
それは、斬撃そのものが空間を割いた証だった。
レアは咄嗟に横跳びして回避する。
次の瞬間、水の魔力を脚に集中させる。
「水竜の鍵爪!!!」
跳躍と共に放たれる回し蹴り。
その脚から鋭く水が巻き上がり、斑鳩の懐を裂くように伸びる。
しかし——
「ほぉ……なるほど、えぇ脚捌きしてまんな」
斑鳩は一歩、紙一重で身を引くと、再び斬撃を繰り出す。
その一閃が、レアの水流を両断した。
「水竜の抱擁……っ!!」
瞬時に、レアの周囲に螺旋状の水流が巻き上がる。
外側へ向かって撥ねる防御陣。
その水が、斬撃の余波を受け止め、壁を爆ぜさせた。
「くっ……(ナツ……みんな……ッ)」
足元が崩れ、レアの身体が塔の外へと投げ出される。
重力に逆らうことなく、彼女の身体が闇の中へと吸い込まれていった。
「レアァァァッ!!」
翼を広げて飛び出そうとするフリーシャ。
だが——
斑鳩の刃が、それを許さない。
斜めからの斬撃が道を塞ぎ、フリーシャの進路を遮った。
「甘いどすえ」
「……邪魔、なのよ……っ!」
焦げた羽毛が散る中、フリーシャが睨み返した。
斑鳩の刃が進路を塞ぐ中、フリーシャはなんとか距離を取ろうと後方に跳んだ。
しかし、斑鳩はすでにその動きを読んでいた。
「逃がしまへんよ」
斬撃が再び走る。
フリーシャは翼を折り畳むようにして回避するが、鋭い一閃が羽根を掠めた。
「くっ……!」
空中で姿勢を崩したところを、今度は真正面から斬撃が迫る。
ギリギリで身体をひねるが、斜めに切り裂かれた服の下から、血が一筋、舞った。
「きゃあっ……!」
「ふふ……ウチ、ネコは好きやけど……跳ねるネコは、よう吠えて鬱陶しおすなぁ?」
斑鳩は歩くような速さで近づきながら、なおも余裕を見せる。
フリーシャは翼をたたむと一瞬、重力に逆らうような軌道で舞い上がる。
「はあああっ!!」
その鋭い爪が、三角飛びのように壁を蹴って斬りかかった。
だが——
「甘いわぁ」
斑鳩は足元をずらしただけでフリーシャの軌道を逸らすと、逆に刀の柄で彼女の腹部を殴打した。
「ぐっ……ぅ……!」
痛みによろめいた瞬間、さらに背中に一撃、そして脚を払うようにして床に叩きつける。
「ギッ……!」
「フフ……もろうた」
刃が、首元に振り下ろされる。
その瞬間——
「どけよーーー!!!」
その叫びと同時に、通路の奥から閃光のようにトランプカードが弾丸のように飛来した。
その叫びと同時に、通路の奥から少年が右手を振り抜く。
狙いはただ一つ——斑鳩の首筋。
だが斑鳩は微動だにせず、すっと刀を傾けた。
刃先がわずかに閃いた瞬間——
飛来したトランプカードが、紙の
「バカな……!」
「うちに斬れないものはありません」
その声のあと、ショウの身体に遅れてクロス状の裂傷が現れた。
「がはぁ!! え……あが……い……いつの間に……」
血を吹き出しながら倒れると同時に、胸ポケットから一枚のトランプカードが舞い上がる。
「ショウ!!」
「姉さん……」
「あらぁ、そんな所におりましたん? エルザはん」
「今すぐ私をここから出せ!! お前の勝てる相手じゃない!!」
「安心して……そのカードはプロテクトしてある……絶対に外からキズつける事はできないんだ……」
「へぇ……」
斑鳩が刀に手をかける。
「ショウ!!私を出せ!! 奴の剣、ただ者じゃない!!!」
「大丈夫……信じて」
瞬間、斑鳩の一閃がトランプカードに命中。
ホラ……大丈夫、でしょ……そんな言葉はすぐに引っ込んだ。
目を見開いたショウの視界に映ったのは、カード内部——
そこに立つエルザが、自らの剣で空間を斬るようにして、迫る斬撃を受け止めていたのだ。
「カードの中を……空間を超えて斬ったァ!!?」
斑鳩はさらに刀を振るい、カードに連撃を浴びせる。
エルザは苦悶の声を漏らしながらも、その全てを剣で受け止めた。
「姉さん!!!」
その時、エルザはカードの封印を破った。
「貴様のおかげで空間に歪みができた。そこを斬り開かせてもらった」
「(空間を超える剣もすごいけど……あの一瞬でそれを利用した姉さんはやっぱさすがだ……見事すぎて言葉が見つからない……)」
感涙を浮かべながら、ショウは地に伏したままエルザを見上げる。
エルザの視線は、すぐにその横に倒れていた小さな姿に移った。
「ッ……!? フリーシャ!!!」
走り寄ってその身体を抱き上げる。
冷たい肌、濡れた羽毛、細い手に滲む血の匂い——
「える……ざ……?」
「お前……このキズ……! レアはどうした……」
「……ッ! レア……早く……助け……ないと……ここから……落ちたのよ……」
「……っ! ……貴様がやったのか……」
エルザの低く、冷たい声が空気を震わせる。
その静寂を切り裂くように、斑鳩がくすりと微笑んだ。
「……そうや言うたら……どないしてくれはるん?」
「貴様を斬る……それだけだ」
その言葉と同時に、空気が張り詰めた。
そして剣が——抜かれる。
新たな戦いの幕が、音もなく開こうとしていた。
すみません時間軸を原作に合わせると少し飛んでます。
これだから見切り発車は…。