妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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盤上系ゲームって難しい…
ポケモンはやってて盤面見えるのにオセロやると急に( ᐛ )ってなる…。


楽園ゲーム

 

ナツが壁に張り付いたまま、必死に叫んでいた。

 

 

「ハッピー!! もっと強く引っ張ってくれ!!!」

 

「もう力いっぱいやってるよ!!!」

 

 

ハッピーは羽ばたきながら、ナツの頭にぴったりはまったネコの被り物を引っ張っている。

 

 

「がんばれーなの」

 

「ぬおおおっ!! もげるぅぅ……!!!」

 

レアが小さな声で応援を送る中、ナツが断末魔のような声をあげた。

フリーシャが溜息をつく。

 

 

「自業自得かしら…」

 

 

そう呟いた直後、ついに——

 

すぽーん!!

 

 

「とれたー!!」

 

 

軽い音と共に、ナツの頭にはまっていた被り物がすっぽ抜けた。

ようやく解放されナツは満面の笑みを浮かべた。

 

一方勢いよく外れた被り物はくるくると宙を舞い、スポン!と起き上がろうとしていたウォーリーの頭にはまった。

 

 

「今度は四角にはまった!!」

 

「あのマスクの被り口はどうなってるんだろう……」

 

 

ナツが腹を抱えて笑い転げ、ハッピーは白目をむきながら呟いた。

その隣でレアはネコ頭のウォーリーを不思議そうに見つめる。

 

 

「カクカクなのに頭丸くなったの」

 

「ずいぶんなマヌケずらになったかしら」

 

 

さらにフリーシャが冷たく言い放った。

それでもウォーリーはふらつきながらも立ち上がり、はまったネコの被り物を引き抜き、地面に放り捨てた。

 

 

「まだ勝負はついてねェゼ、双竜……!」

 

 

だが次の瞬間、膝をついて呻いた。

その様子を見て、ナツは腕を組んで言う。

 

 

「もう借りも返したし、エルザもハッピーもフリーシャも無事ってんなら、これ以上やる意味はこっちにはねーんだけどな」

 

「ん。こっちから売る喧嘩だって別にないの」

 

 

レアも淡々と同意する。

だがウォーリーはうつむいたまま、力のない声で呟いた。

 

 

「オレたちは楽園へ行くんだ……」

 

 

その言葉に、ナツの表情が僅かに動く。

 

 

「ジェラールの言う……人々を支配できる世界へ……」

 

「支配……」

 

 

レアが眉をひそめた瞬間だった。

空間の空気が一瞬だけ重たくなったように感じられた。

次いで、周囲の空気を裂くように、どこからともなくエコー混じりの声が響き渡った——

 

 

「ようこそみなさん。楽園の塔へ」

 

「ジェラール!?」

 

 

声の発信源を探すと、外に設置された巨大な土偶が赤く目を光らせていた。

 

 

「オレの名はジェラール。この塔の支配者だ。互いの駒は揃った。そろそろ始めようじゃないか……楽園ゲームを」

 

「ゲームだぁ?」

 

「ジェラール……何だコレは……」

 

 

ナツが眉をひそめる。

ウォーリーも困惑を隠せないでいた。

そんな声が聞こえているのか否か、そんなことはお構いなしにジェラールは続ける。

その声は淡々としているも、確信に満ちていた。

 

 

「ルールは簡単だ。オレはエルザを生け贄とし、ゼレフ復活の儀を行いたい。すなわち、楽園への扉が開けばオレの勝ち。もしそれを阻止できればそちらの勝ち。ただ……それだけでは面白くないのでな。こちらは三人の戦士を配置する」

 

「三人の戦士? どんな奴なんだろう……」

 

 

ハッピーが不安そうに呟く。

 

 

「そこを突破できなければ、オレにはたどり着けん。つまりは3対8のバトルロワイアル。最後に一つ特別ルールを説明しておこう。評議員が衛星魔法陣(サテライトスクエア)でここを攻撃してくる可能性がある。全てを消滅させる究極の破壊魔法、エーテリオンだ」

 

「コイツ何考えてるのかしら……!」

 

 

フリーシャが眉を吊り上げた。

 

 

「残り時間は不明。しかしエーテリオンが落ちる時、それは全員の死。勝者なきゲームオーバーを意味する。さあ、楽しもう」

 

 

その言葉を最後に、土偶の赤い目が消えた。

沈黙が辺りに満ちる。

 

 

「な……何なんだよジェラール……エーテリオンってよう……そんなのくらったらみんな死んじまうんだゼ」

 

 

ウォーリーが吐露するように小さく叫ぶ。

そんな様子にナツが目を向ける。

 

 

「オレたちは真の自由がほしいだけなのに……」

 

 

噛み締めるウォーリーに、ナツはにっと笑いながら言い放つ。

 

 

「どんな自由がほしいか知らねーけど、妖精の尻尾(フェアリーテイル)も自由で面白えぞ」

 

「……っ」

 

 

ウォーリーが顔を上げる。

そんな彼にレアも続けて言う。

 

 

「ん。好きな仕事して、好きにお酒飲んで、好きにバカやって……みんな自由なの」

 

「……」

 

 

ウォーリーは黙ったままうつむく。

その時だった。

 

突如として、ナツとレアの足元に魔法陣が展開される。

魔力の奔流が荒れ、蒼い光が渦を巻く。

 

 

「うおっ、何だ!?」

 

「すごい魔力だよ!!」

 

 

ナツが飛び退き、ハッピーが叫ぶ。

そんな中、フリーシャの鋭い声が響く。

 

 

「これは……転移魔法!!?」

 

「君たち“二人”がそろってここまで来るようでは、ゲームにならない。双竜……ここからは分かれて行動してもらおう」

 

 

すると、またしてもジェラールの声が響いた。

そんな言葉に、ナツとレアが納得できるはずもなかった。

 

 

「はあ!? 何言ってやがる!!」

 

「勝手に決めるななの……!」

 

 

ナツが吼える。

レアも小さく怒鳴る。

だが、二人の意思は儚く散らされる。

 

 

「これはいわゆるハンデ……連携が過ぎれば、他の駒が活きない」

 

 

魔法陣が一層光を増す。

 

 

「ふざけんなよっ!! レア、手ぇ貸せ!!」

 

「んっ……!」

 

 

レアがナツの手を取る。

だが——

 

 

「くそっ……レアァァァーーー!!!」

 

「ナツ……!!」

 

 

光が二人の間を断ち切るように裂け、手は引き離された。

そのまま二人はハッピーとフリーシャと共に蒼い閃光の中へと消えていったのだった。

 

——場所は変わって、塔の最上階。

ローブを着て、フードを深くかぶったジェラールは魔導盤の前に立ち、指先で小さな駒を二つ摘み上げる。

火を吹く竜と、水を巻く竜。

 

 

「それぞれの力で上ってくるがいい。君たちが再び出会うにふさわしい場所まで来られれば……の話だがな」

 

 

狂気を宿した笑みが、ジェラールの口元に浮かんでいた。

 

 

~~~

 

 

眩い光が弾けたあと、レアとフリーシャの視界が一瞬、白に染まった。

気づけばそこは、長く薄暗い石造りの通路だった。

塔の内部であることは間違いない。だが、ナツやハッピーの姿はどこにもなかった。

 

 

「……ナツ、いないの……」

 

「こっちも見当たらないのよ。……ハッピーたちは別の場所に飛ばされたかしら」

 

 

足元をしっかりと確かめながら、レアが小さく呟く。

フリーシャの返答にも、不安と苛立ちがにじんでいた。

 

 

「ん……たぶん、ジェラールの仕業なの」

 

 

ぴたり、とレアの足が止まった。

何かを感じ取ったのだろう。

蒲公英色の瞳が、通路の奥を鋭く見据える。

フリーシャも爪を展開し、緊張を滲ませながら構えを取った。

 

——その時だった。

 

しん、と張り詰めた空気の中、高下駄の音が一歩ずつ近づいてくる。

石畳を静かに叩く、かすかな足音。

しかし、そのひとつひとつが、まるで斬りかかってくるような緊張感を纏っていた。

そして、現れたのは——

 

 

「うちは斑鳩と申しますぅ。よしなに」

 

 

通路の奥、蒼白い灯りに照らされながら歩み出たのは、一本の細身の刀を腰に差した和装の女。

目尻のほくろが艶やかに揺れ、冷たい微笑を浮かべていた。

 

 

「……ジェラールが言ってた“三人の戦士”の一人、なの?」

 

 

レアが低く問う。

 

 

「さぁ、どうやろなぁ。お嬢はんにとって、うちはそういう存在になれるやろか」

 

 

斑鳩は、静かに刀の柄に手を添えた。

その動きには一片の隙もなかった。

 

 

「……フリーシャ、下がってて」

 

「えっ!? でも、レア……狭い場所だって、リーシャなら——」

 

「ここ、狭すぎるの。フリーシャの翼、自由に動かせないの」

 

 

レアの言葉に、フリーシャは唇を噛むようにして一歩後退した。

 

 

「……分かったわよ。でも、危なくなったらすぐ呼ぶのよ。いいわね……!」

 

 

レアは小さく頷き、構える。

 

——ぴたり、と空気が止まった。

 

一瞬の沈黙のあと、斑鳩の手が抜き放つ。

 

 

「斬ッ」

 

 

空気が鳴いた。

通路に突如、鋭利な“裂け目”が走る。

それは、斬撃そのものが空間を割いた証だった。

 

レアは咄嗟に横跳びして回避する。

次の瞬間、水の魔力を脚に集中させる。

 

 

「水竜の鍵爪!!!」

 

 

跳躍と共に放たれる回し蹴り。

その脚から鋭く水が巻き上がり、斑鳩の懐を裂くように伸びる。

 

しかし——

 

 

「ほぉ……なるほど、えぇ脚捌きしてまんな」

 

 

斑鳩は一歩、紙一重で身を引くと、再び斬撃を繰り出す。

その一閃が、レアの水流を両断した。

 

 

「水竜の抱擁……っ!!」

 

 

瞬時に、レアの周囲に螺旋状の水流が巻き上がる。

外側へ向かって撥ねる防御陣。

その水が、斬撃の余波を受け止め、壁を爆ぜさせた。

 

 

「くっ……(ナツ……みんな……ッ)」

 

 

足元が崩れ、レアの身体が塔の外へと投げ出される。

重力に逆らうことなく、彼女の身体が闇の中へと吸い込まれていった。

 

 

「レアァァァッ!!」

 

 

翼を広げて飛び出そうとするフリーシャ。

 

だが——

 

斑鳩の刃が、それを許さない。

斜めからの斬撃が道を塞ぎ、フリーシャの進路を遮った。

 

 

「甘いどすえ」

 

「……邪魔、なのよ……っ!」

 

 

焦げた羽毛が散る中、フリーシャが睨み返した。

斑鳩の刃が進路を塞ぐ中、フリーシャはなんとか距離を取ろうと後方に跳んだ。

しかし、斑鳩はすでにその動きを読んでいた。

 

 

「逃がしまへんよ」

 

 

斬撃が再び走る。

フリーシャは翼を折り畳むようにして回避するが、鋭い一閃が羽根を掠めた。

 

 

「くっ……!」

 

 

空中で姿勢を崩したところを、今度は真正面から斬撃が迫る。

ギリギリで身体をひねるが、斜めに切り裂かれた服の下から、血が一筋、舞った。

 

 

「きゃあっ……!」

 

「ふふ……ウチ、ネコは好きやけど……跳ねるネコは、よう吠えて鬱陶しおすなぁ?」

 

 

斑鳩は歩くような速さで近づきながら、なおも余裕を見せる。

フリーシャは翼をたたむと一瞬、重力に逆らうような軌道で舞い上がる。

(ソウ)を展開して斜めに跳躍しながら、緑の光の爪で斬りかかる。

 

 

「はあああっ!!」

 

 

その鋭い爪が、三角飛びのように壁を蹴って斬りかかった。

だが——

 

 

「甘いわぁ」

 

 

斑鳩は足元をずらしただけでフリーシャの軌道を逸らすと、逆に刀の柄で彼女の腹部を殴打した。

 

 

「ぐっ……ぅ……!」

 

 

痛みによろめいた瞬間、さらに背中に一撃、そして脚を払うようにして床に叩きつける。

 

 

「ギッ……!」

 

「フフ……もろうた」

 

 

刃が、首元に振り下ろされる。

その瞬間——

 

 

「どけよーーー!!!」

 

 

その叫びと同時に、通路の奥から閃光のようにトランプカードが弾丸のように飛来した。

その叫びと同時に、通路の奥から少年が右手を振り抜く。

狙いはただ一つ——斑鳩の首筋。

 

だが斑鳩は微動だにせず、すっと刀を傾けた。

刃先がわずかに閃いた瞬間——

飛来したトランプカードが、紙の()()から真っ二つに裂かれる。

 

 

「バカな……!」

 

「うちに斬れないものはありません」

 

 

その声のあと、ショウの身体に遅れてクロス状の裂傷が現れた。

 

 

「がはぁ!! え……あが……い……いつの間に……」

 

 

血を吹き出しながら倒れると同時に、胸ポケットから一枚のトランプカードが舞い上がる。

 

 

「ショウ!!」

 

「姉さん……」

 

「あらぁ、そんな所におりましたん? エルザはん」

 

「今すぐ私をここから出せ!! お前の勝てる相手じゃない!!」

 

「安心して……そのカードはプロテクトしてある……絶対に外からキズつける事はできないんだ……」

 

「へぇ……」

 

 

斑鳩が刀に手をかける。

 

 

「ショウ!!私を出せ!! 奴の剣、ただ者じゃない!!!」

 

「大丈夫……信じて」

 

 

瞬間、斑鳩の一閃がトランプカードに命中。

 

ホラ……大丈夫、でしょ……そんな言葉はすぐに引っ込んだ。

 

目を見開いたショウの視界に映ったのは、カード内部——

そこに立つエルザが、自らの剣で空間を斬るようにして、迫る斬撃を受け止めていたのだ。

 

「カードの中を……空間を超えて斬ったァ!!?」

 

 

斑鳩はさらに刀を振るい、カードに連撃を浴びせる。

エルザは苦悶の声を漏らしながらも、その全てを剣で受け止めた。

 

 

「姉さん!!!」

 

 

その時、エルザはカードの封印を破った。

 

 

「貴様のおかげで空間に歪みができた。そこを斬り開かせてもらった」

 

「(空間を超える剣もすごいけど……あの一瞬でそれを利用した姉さんはやっぱさすがだ……見事すぎて言葉が見つからない……)」

 

 

感涙を浮かべながら、ショウは地に伏したままエルザを見上げる。

エルザの視線は、すぐにその横に倒れていた小さな姿に移った。

 

 

「ッ……!? フリーシャ!!!」

 

 

走り寄ってその身体を抱き上げる。

冷たい肌、濡れた羽毛、細い手に滲む血の匂い——

 

「える……ざ……?」

 

「お前……このキズ……! レアはどうした……」

 

「……ッ! レア……早く……助け……ないと……ここから……落ちたのよ……」

 

「……っ! ……貴様がやったのか……」

 

 

エルザの低く、冷たい声が空気を震わせる。

その静寂を切り裂くように、斑鳩がくすりと微笑んだ。

 

 

「……そうや言うたら……どないしてくれはるん?」

 

「貴様を斬る……それだけだ」

 

 

その言葉と同時に、空気が張り詰めた。

そして剣が——抜かれる。

 

新たな戦いの幕が、音もなく開こうとしていた。





すみません時間軸を原作に合わせると少し飛んでます。
これだから見切り発車は…。
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