妖精の尻尾の双竜   作:uru1629

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ディズニーで好きな映画は「マレフィセント」
ダークヒーロー物大好き!!!


眠れる塔の女騎士様

 

光が墜ちた。

全てを消滅せんとする、滅亡の光が。

 

楽園の塔を呑み込んだエーテリオンは海底を震わせ、荒れ狂う波を呼び起こした。

近くの船からそれを見ていたショウたちは波に呑まれ、船をひっくり返される。

荒ぶる波に呑まれそうになったところを、ジュビアが水泡の障壁を張り、みんなを内側に抱き込むことで窮地を脱した。

 

やがて波が落ち着きを取り戻し、一行は楽園の塔があった場所へ目を向ける。

土煙と水蒸気が立ち込め、その結末はまだ見えない。

 

「ナツぅ……レアぁ……エルザぁ……」

 

 

ハッピーの細い声は、波間に消えていった。

 

 

~~~

 

 

エーテリオンは落ちた。

にもかかわらず、塔の内部にいた人間は全員生きていた。

 

 

「いってぇ……! 何がどうなってやがる…!!」

 

 

額を抑えながら立ち上がるナツ。

怯んではいるものの外傷は無く、頭上を疑問符が渦巻いていた。

 

 

「その声……ナツ…なの?」

 

 

その時、ナツの耳に聞き慣れた声が飛び込んできた。

ハッとなったナツが声の聞こえた方向へ目を向けると…見慣れた相棒、レアの姿がそこにいた。

 

 

「レア!! 無事だったんだな!」

 

「ん。……それよりもさっきの…多分、エーテリオンなの」

 

「はあ? じゃあなんでオレたち生きてるんだ?」

 

 

レアの言葉にナツはますますわからなくなる。

そんな彼の疑問に答えるかのように、レアは付近にある水晶に目を向けた。

 

 

「……確証はないけど……多分、この魔水晶(ラクリマ)のせいなの……エーテリオンの魔力を吸い込んだ」

 

「す…吸い込んだ……?」

 

 

レアが言葉を紡ぐたびにナツの疑問は深まる。

しかし、そんな彼でも一つはっきりしていることがあり、それはレアも同様だった。

 

 

「結局、早くエルザのところに行くべきなの」

 

「……わかってる」

 

 

その言葉を最後に、ナツとレアは再び上を目指して走り出したのだった。

 

 

~~~

 

 

塔の最上階。

ナツとレアが下の階で再会を果たしたころ、死を覚悟していたはずのエルザは今、ジェラールと再び相対していた。

 

レアの読み通り、エーテリオンの魔力は崩れた外壁の内側に隠されていた魔水晶(ラクリマ)に吸収されていたのだ。

エルザが言った27億イデアという膨大な量の魔力を内包させた魔水晶(ラクリマ)の塔——真のRシステムが完成したのだ。

 

 

「だ……騙したのか……」

 

 

自身の8年の努力が実を結んだことに喜びの声をあげるジェラールに、エルザは目つきを鋭くさせる。

 

 

「かわいかったぞ、エルザ」

 

「え!!?」

 

 

そんな中、目の前の彼と似た声が背後から聞こえた。

釣られるように視線を後方に向けると、彼女は自身の目を疑った。

 

 

「ジェラールも本来の力を出せなかったんだよ。本気でやばかったから、騙すしかなかった」

 

「ジ―クレイン!!? な……なぜ貴様がここに!!?」

 

 

青髪に右目付近に刻まれた特徴的な紋章。

それは目の前の巨悪と瓜二つの存在、違いは服装のみであった。

 

 

「初めて会った時の事を思い出すよ、エルザ。マカロフと共に始末書を提出しに来たときか。ジェラールと間違えてオレに襲い掛かってきた。まあ……同じ顔だし、無理も無いか……」

 

 

エルザの疑問に答えることなく、ジークレインは過去を懐かしむように語りだす。

訳も分からないまま呆然としているエルザの元までジークレインは歩を進める。

 

 

「双子と聞いて、やっと納得してくれたよな。しかし、おまえは敵意を剥き出しにしていたな」

 

「当たり前だ!!! 貴様は兄のくせに、ジェラールのしようとしている事を黙認していた!!! いや…それどころか、私を監視していた!!!」

 

 

問いかけられたエルザはようやく呆けた口をまともに動かした。

彼女は怒りの声をあげるも、ジークレインは怯むことなく、堂々と彼女の横を通過していく。

 

 

「そうだな……そこはオレのミスだった。あの時は「ジェラールを必ず見つけ出して殺す」とか言っておくべきだった。しかし…せっかく評議院に入れたのに、お前に出会ってしまったのが一番のミスだったな」

 

「とっさの言い訳ほど苦しいものはないよな」

 

 

やがてジェラールの横に並び立つジークレイン。

同じ顔、同じ声の二人が会話する奇妙な光景。

それを見てエルザは一層視線を鋭くさせた。

 

 

「やはり……おまえたちは結託していたのだな……」

 

「結託? それは少し違うぞ、エルザ」

 

 

ジェラールとジークレイン。

二人してエルザに向き直ったその時の事だった。

 

ジークレインの体に突然ノイズが走り出す。

ブヴッ…と耳障りの悪い音を立てながら、その輪郭が崩れ、ジェラールの身体と重なっていく。

 

 

「オレたちはひとりの人間だ。最初からな」

 

 

その光景に、さすがのエルザも驚きを隠すことはできなかった。

彼女の足元が崩れ落ちるような感覚に襲われる。

目を大きく見開き、開いた口が塞がらない。

 

 

「そ…そんな…まさか…! 思念体!!!?」

 

「そう。ジークはオレ自身だよ」

 

 

重なり合った二つの姿は、やがて完全に一つに溶け合う。

ジークレインのまさかの正体に、エルザは理解が半ば追いつかなかった。

 

ジークレインなどという人間は、はじめから存在しない。

評議院に潜り込み、エーテリオンを落としたのもジェラール自身。

そのためだけの欺きだったのだ。

 

全ては、Rシステム完成のために。

そう理解したとき、エルザの内から込み上げる怒りの感情。

 

 

「かりそめの自由は楽しかったか、エルザ。全てはゼレフを復活させるためのシナリオだった」

 

「貴様は一体どれだけのものを欺いて生きているんだァ!!!!」

 

 

エルザの咆哮は、彼には届かない。

手のひらを閉じて、開いて、再び固く閉じる。

彼の奥底からみなぎってくる、禍々しい魔力。

 

 

「フフ…。力が…魔力が、戻ってきたぞ」

 

 

第二ラウンドが、幕を開けた。

 

 

~~~

 

 

「Rシステムだ」

 

「何!!?」

 

 

輝きを増していく水晶姿の楽園の塔を見て、ショウは小さく呟いた。

 

 

「オレたちが造っていたRシステムの本当の姿だゼ」

 

「みゃあ…作動してる……」

 

 

ウォーリーがそれに続く形で補足する。

そしてミリアーナは光り輝くRシステムを見て呟く。

そんなミリアーナの言葉に、ルーシィは必死の形相で彼女に振り向いた。

 

 

「作動って!!? まさかゼレフが復活するの!!?」

 

「わからない……オレたちだって、作動しているのは初めて見るんだ」

 

 

ルーシィの問いに、ショウは震えた声で返す。

その意思はウォーリーとミリアーナも同じである。

誰もこの先どうなるのか、予測がつかなかった。

 

 

~~~

 

 

「くあぁっ!!!」

 

 

楽園の塔最上階では、エルザは怒りを力にジェラールへと挑んでいた。

しかし、エルザの体力はすでに限界に近いことに加え、ジェラールとジークレインが一つとなったことで力の差があまりにも開いていた。

 

 

「さっきまでの威勢はどうした? 斑鳩との戦いで魔力を使い果たしていたか?」

 

 

無様に転がるエルザにジェラールは煽るように言う。

エルザも負けじと体勢を立て直し、魔法で大剣を取り出す。

すぐさま大きく踏み込み、ジェラールに迫る。

 

 

「ジェラァアァアァァル!!!!」

 

 

鬼の形相を浮かべながら大剣を振りかぶる。

放たれた大剣の一撃を、ジェラールは魔弾を飛ばして狙いをそらす。

それを受けエルザは空いているもう片方の手に別の大剣を取り出した。

 

 

「今頃評議院は完全に機能を停止している。ウルティアには感謝しなければな」

 

 

構えられたもう一本の大剣の一撃を危なげなく魔弾でそらすジェラールは語る。

彼の言うように、現在評議院では彼の仲間であるウルティアが、彼女の持つ魔法——時のアークを用いて建物を老朽化させ崩落させている。

つまり、今この現状を、評議院側から干渉する方法は無いということになる。

 

 

「あいつはよくやってくれた。楽園にて全ての人々が一つになれるのなら、死をも恐れぬと…。まったく、バカな女である事を感謝せねばな」

 

「貴様が利用してきた者たち全てに呪い殺されるがいい!!!」

 

 

エルザの怒りを見てなお他者を嘲るジェラールに、彼女は渾身の一撃を振るおうとする。

だが、それは突如彼女の身体に走った違和感によって阻害されてしまった。

 

瞬間、エルザの右腕は錆びついたブリキの人形のように動きが鈍くなる。

目を向けると、自身の肌を這うように蛇の入れ墨のようなものが走っていた。

 

 

「な…何だこれは!!?」

 

拘束の蛇(バインドスネーク)。さっき抱き合ったときにつけておいたものだ」

 

 

エルザの肌を這う拘束の蛇(バインドスネーク)はやがて右腕にとどまらず、左腕、そして全身へとその身体を伸ばしていった。

身体全体をその蛇に身体を這われ、エルザは身動きが全く取れなくなっていた。

 

 

「Rシステム作動のための魔力は手に入った。あとは生け贄があれば、ゼレフは復活する。もうおまえと遊んでいる場合じゃないんだよ、エルザ」

 

 

そう語るジェラール。

するとエルザの背後に魔水晶(ラクリマ)の一部がズズズ…っと地面から這い上がる。

 

 

「この27億イデアの魔力を蓄積した魔水晶(ラクリマ)に、おまえの体を融合する。そして、おまえの体は分解され、ゼレフの身体へと再構築されるのだ」

 

 

ジェラールは冷たく告げ、エルザを突き飛ばす。

体は蛇の呪縛に縛られ、剣を振るうどころか足さえ動かない。

エルザの体が魔水晶(ラクリマ)に触れた瞬間、魔水晶(ラクリマ)は液体のように蠢き、彼女の体を呑み込み始めた。

 

 

「おまえのことは愛していたよ。エルザ」

 

 

その声は嘲笑か、それとも狂気か。

 

 

「が…!あああああ!!! くそっ!くそぉっ!!」

 

「偉大なるゼレフよ!!!今ここに!!!この女の肉体を捧げる!!!」

 

 

バッと腕を広げて高らかに叫ぶジェラール。

すると、Rシステムとして構築された魔水晶一つ一つがさらに光を増す。

 

 

「ジェラール…!」

 

 

ゆっくりと魔水晶(ラクリマ)に呑まれながらも、エルザはその名前を呼ぶ。

だが、彼はそれに応える様子は無かった。

 

 

「ジェラァールゥウーーー!!!」

 

 

涙を流しながらエルザは悲痛な声をあげた。

その声をかき消さんと魔水晶(ラクリマ)が彼女を呑み込もうとしたその時だった。

 

彼女の手を誰かがガシッと掴んだ。

そのまま彼女は引っ張られ、魔水晶から体が引っ張り出された。

 

 

「エルザは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ」

 

「ん。渡さないの」

 

 

魔水晶から引きずり出された彼女の目に、二人(にとう)の竜の姿が映った。

 

 

「……ナツ…レア…」

 

 

引っ張った勢いでその場に座り込む三人。

エルザの体に這われた蛇の呪縛は解かれたのか、すぅー…と跡形もなく消えていく。

エルザの左目から零れ落ちた涙を、レアが優しく拭った。

 

 

「な~~にしてんだよ。早く帰って仕事行かねーと、今月の家賃払えねえぞ。ルーシィが」

 

「…レア、路地裏で住むところせびるルーシィ……見たくないの」

 

 

満身創痍の様子の彼女に、ナツとレアはいつもの様子で語りかけた。

 

 

「ス…スマン…体が……動かなくて…」

 

思えばショウたちによってここに連れてこられてから戦い尽くしであったエルザ。

拘束の蛇(バインドスネーク)が無かろうと、疲労困憊で動けるような状態ではないのだ。

それを聞いたナツは「ほ~う?」と悪い笑みを浮かべた。

 

 

「普段ヒデェ目にあってるからな!!!こ~~れでもくらえっ!!!」

 

 

 

すると、あろうことかナツは身動きが取れないエルザのわきをくすぐり始めた。

動けないエルザはそれを甘んじて受けるしかなく、「やめ…っ!」と小さく悲鳴をこぼしていた。

そんな様子をそばで見ていたレアはというと。

 

 

「……面白そう…! レアもやるの…!」

 

「お……おまえたち…っ!!」

 

「なっはっはー!!!」

 

 

ナツがエルザをくすぐる様子に目を輝かせ、ナツと一緒になってエルザの素足の裏側をくすぐり始めた。

ある程度二人が満足したところでくすぐりがうち止められると、呼吸を整えたエルザは神妙な面持ちで二人を見た。

 

 

「ナツ、レア……今すぐここを離れるんだ…」

 

「やだね。オマエが無理なら代わりにオレがやってやっからさ」

 

「動けないのにエルザが戦うの…? それこそ無理なの」

 

 

エルザの忠告にやはりと言うべきか、二人は聞く耳を持たない。

レアの言うことはもっともだが、それでもエルザは二人を止めようとする。

 

 

「よせ…相手が悪い……おまえたちはあいつを知らなすぎる」

 

「知らなきゃ勝てねえもんなのか?」

 

「んー……そんなことないと思うけど…」

 

「だよなー」

 

「頼む…言うことを聞いてくれ……」

 

 

ナツとレア、二人して顔を見合わせてエルザの言い分を議論していると、エルザの左目から再び涙がじわりと溢れ出る。

その涙は、これ以上仲間に傷ついて欲しくない…二人が向かって行けば死んでしまうかもしれない…そんな思いが読み取れた。

 

そんな彼女の想いを読んでか否か、ナツはエルザを抱き上げて抱擁を交わす。

 

 

「な……何を…」

 

「エルザ。オレも…オレたちもおまえを全然知らねえ」

 

「え…?」

 

「けど勝てる!!!」

 

 

次の瞬間、ナツはエルザの鳩尾に拳を叩き込んだ。

そんな予想外の行動に、傍観していたジェラールは目を見開いた。

疲労困憊だったエルザはその一撃で呆気なく意識を刈り取られた。

力の抜けた彼女はずるりとナツの腕から滑り落ち、レアが優しくそれを受け止め、静かに寝かせた。

 

 

「……噂以上の傍若無人ぶりだな。身動きできねー仲間を痛めつけて満足か」

 

 

やがてジェラールがそう言うも、ナツとレアは答えない。

だが、やがてナツが小さく呟いた。

 

 

「エルザが……泣いてた」

 

 

ジェラールの反応はない。

 

 

「弱音をはいて、声を震わせていた」

 

「……ナツもレアも…そんなエルザは見たくないの…。強くて、狂暴で、みんなを勝手に引っ張り出す…。それが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のエルザなの……」

 

 

ナツに続いて、レアも静かに語った。

握られた拳に…踏みしめられた足に…炎が……水が静かに宿った。

 

 

(悪い夢)が覚めた時。いつものエルザでいてほしいの」

 

「だからオレが…オレたちが戦うんだ」

 

 

二人がくるりと振り返る。

怒りの形相を浮かべたナツが炎を携えて、冷酷な眼差しをしたレアが水流を渦巻かせて、共通の敵を睨んだ。

 

 

「面白い。見せてもらおうか…ドラゴンの魔導士の力を」

 

 

ジェラールは依然として余裕の笑みを浮かべながら、怒れる竜と相対した。





ナツさんレアさんかっけぇっす……。
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