悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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エピローグ後編

 

櫻達は真白の元へと向かうことにした。が、その道中で思わぬ妨害が入ることとなる。

 

「こんにちは。百山櫻。ふふっ、無自覚かもしれないけど、君はそこそこ有名人なんだよ? その辺を無防備にほっつき歩いていいような人じゃないんだ。そんなことをしたら…………悪い大人に捕まっちゃうからさぁ!」

 

櫻達の前に現れたのは、ルサールカの友人で、ミルキーという名の魔族だ。彼女はルサールカに注目が向いている隙に、“思考誘導”を使い密かに逃亡を図っていたのだ。

誰もがルサールカの動向に注目する上、彼女の心属性の魔法の影響で、彼女の逃亡に気づくものはいなかった。

 

彼女はその手に大きなハンマーを持っている。おそらく彼女は、櫻を始末するつもりなのだろう。

 

「私、基本楽しいことにしか手を出さないんだけど、それはそれとして、やられっぱなしってのは嫌なんだよね」

 

「お願いだから、手を引いて。これ以上戦っても、何の意味もないから」

 

「あっれ〜? ビビってるのかなぁ? だってそうだよねぇ……。櫻、君はクロと一度融合したことで、魂が欠損している。君の魂は、いまだに欠けたままのはずだ。そんな状態では、魔法少女として戦うことなんて到底できないでしょ? それこそ、誰かと融合していない限りは、ね」

 

ミルキーの言う通り、櫻の魂はクロとの融合で欠損しており、誰かと融合しなければ魔法少女としての力を振るうことはできない。来夏も束も茜も、櫻とは違う道を歩んだ。真白と八重は、クロの死を引きずって、殻に閉じこもってしまっている。

 

もはや、櫻と融合して共に戦うものなど、存在しなかった。

 

「んーどうする? 私が相手しようか?」

 

「はいはい! 私も〜!! 魔族相手なら楽しそうだもん」

 

ミルキーの登場に、櫻と行動を共にしていたミリューとユカリが、櫻の代わりに戦闘をしようかと提案をする。が。

 

「ううん。いい。これは、私に対して向けられたものだから。私がちゃんと対処する。ミリューちゃん達は、手を出さないで」

 

櫻は、彼女達の提案を跳ね除ける。自身は1人では戦えず、明らかにミリュー達の協力を取り付けた方が良いにも関わらず、だ。

 

「へぇ……それじゃあ、大人しく死んでくれるってことでいいのかな?」

 

「悪いけど、もう私は……私だけのものじゃないの。簡単に死んでなんてあげないから」

 

「何を意味のわからないことを!!」

 

ミルキーはその手に持つハンマーを振るう。櫻は、成すすべなく、そのハンマーによって潰されてしまう……。

 

はずだった。

 

「召喚・桜銘斬」

 

「は……? なんで……、それを…!」

 

櫻は、融合なしには戦えない。にも関わらず、櫻は魔法を扱ったのだ。

無属性の魔法を。扱えないはずのその力を。

 

「言ったでしょ。もう、私だけのものじゃないって」

 

「だから、何を意味のわからないことを!!」

 

ミルキーは“思考誘導”を発動させる。櫻視点では、頭上からミルキーがハンマーを振り下ろしているように見えただろう。しかし実際には、背後から櫻に向けてハンマーを横向きに振おうとしている。

 

櫻自身では、そのことに気付けはしない。だから、ミルキーはてっきり、側から見ているミリューやユカリが、その旨を知らせるのだと思っていたが…。

 

「そこ!!」

 

ミリューやユカリは何のアドバイスをすることもなかった。にも関わらず、櫻はミルキーが背後にいることを見抜き、その手に持つ『桜銘斬』でミルキーの攻撃を阻止したのだ。

 

「なんで……! お前は!」

 

ミルキーは焦りを見せる。とにかく、近距離戦では無理だと感じたためか、後方に大きく飛び退き、遠距離での攻撃へと切り替える。

 

“思考誘導”を発動させつつ、なるべく全方位から魔力弾を浴びせる。いくら百山櫻といえど、一切の被弾なしにこの場を切り抜けることは不可能なはず……。

 

だが……。

 

「“ブラックホール”」

 

櫻は、使った。

本来なら、使えるはずのないそれを。

本来自分が持つべきものではない、闇属性の力を…。

 

「は……? どういう、こと……?」

 

「櫻、こっからは交代で。私の方が、闇属性の扱い方は心得てるからさ」

 

ミルキーは見た。

百山櫻の、美しい桃色の髪に、そぐわない異色が混じっていたのを。

本数はさほど多くはない。が、確かに異物として、確かに存在感を主張している、黒色の髪色を。

 

「ま、さか……!」

 

「残念だけど、櫻は戦えるよ。そりゃそうでしょ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。じゃないと、櫻に受けた恩を返すどころか、恩を仇で返すことになっちゃうし」

 

「クロが怪人化する直前に、その魂だけ、自分の体に取り込んで置いたのか!?」

 

そう、櫻は、決してクロのことを諦めはしなかった。彼女は、問答無用で仲間を殺すなどという無慈悲な選択は取れなかった。

 

「そうだよ。体はもうないけど、こうして櫻の中で、私は確かに生きてる」

 

「は……はは………。なるほどね…ルールーの百山櫻に対するプロファイリングはミスってなかったわけだ」

 

ルサールカは確かに、櫻の性質を見破っていた。彼女であれば、仲間を殺すことはできないと。だからこそ、クロが怪人化し、何もかも手遅れになってしまった後でしか、櫻は動けないと、そう踏んでいた。しかし、櫻は考えたのだ。クロが怪人化するのは認めつつ、どうにかしてクロの存在をこの世に留め置く方法がないかと。

 

結果として、クロの魂だけを生かし、怪人化しかけていた体を殺すことで、櫻はそれを実現した。櫻は最後まで、体の方も生かす方法はないかと、思い悩み続けていたが、クロの生存において、櫻が取った手段は、最善策と言っていいだろう。

 

「悪いけど、容赦はしない。私は……俺は……! シロに伝えなきゃいけないことがあるんだ!!!!」

 

櫻の体で、声で、確かにクロはそう叫ぶ。

 

「くっ、はっはっは! なるほど確かにルールーが目をつけるわけだ。本当に凄いやつだよ、お前は、なあ! 百山櫻!」

 

ミルキーはそう叫びながら、再びハンマーを構え、櫻……否、クロに向かって突撃する。

 

(種は割れた。もう遠距離で攻撃する必要もない。真正面から叩き潰す!!)

 

『私のこと、褒めてくれるのはありがたいけど……。でも、凄いのは、私だけじゃない』

 

友情魔法(マジカルパラノイア)……黒桜!」

 

必殺の一撃が、ミルキーを襲う。

 

『私の仲間は、私よりも、もっと凄いんだから』

 

ミルキーはその場に倒れ込む。自身の持っていたハンマーは、クロの……櫻とクロの攻撃で、粉々に砕け散った。

 

(ああ、そうか……ルールーが負けたのは……侮っていたからだ……。彼女達の、友情を………。百山櫻が本当に凄いのは、その強さじゃなくて……)

 

「交代っと……。ミリューちゃん、その魔族のこと、お願いしてもいいかな?」

 

「んーいいよ。ユカリはどうする?」

 

「私はお目付け役で見とく! 誰かが見てないと、途中でかえっちゃうかもしれないから」

 

「えー私そんなに信用ないかな……?」

『櫻ってよりかは、私に信頼がないんじゃないかな…』

 

(誰かと繋がる、絆だったのか……)

 

 

 

★☆ ★☆ ★☆ ★☆ ★☆

 

 

 

来てしまった……。

表札には、双山の文字。

 

ここに、シロがいる。

確か、今は八重もいたんだっけ……。

 

うわぁ………不安だなぁ……。

 

「クロちゃん、行くよ」

『ま、待って、まだ心の準備が…!』

 

ぴんぽーんと、インターホンの音が鳴る。

来てしまったのか、ついにこの時が…!

 

『はい……』

 

応答するのは、ひどく無機質な声。八重の声だ。魔衣さんは不在なんだろうか?

魔衣さんがいるならば、八重とシロのことを気遣って、代わりに応答しそうなものだが。

 

「八重ちゃん? ごめんね、少し、真白ちゃんに用があって」

 

『やめて……。お願いだから、これ以上関わらないで』

 

「八重ちゃん、お願い。大事な話があるの」

 

『やめてよ……。これ以上、あの子の心をかき乱すような真似しないで。私にはもう、あの子しか……』

 

相当参ってるらしい。むしろ、八重とシロの精神的にも、はやく俺が魂だけでも生きてることを伝えなければ。

 

『櫻、交代できる?』

「クロちゃん? うん、わかった。交代するね」

 

俺は櫻と主導権を交代する。ミリューいはく、本来なら、櫻はシロとしか交代することができないらしいが、現在の俺と櫻は、お互いの欠損部分を補い合って、一つの魂と同様の状態になっているため、相性なんてものは全て吹っ飛んでて、交代も自由自在らしい。

 

「八重、開けて。シロと話すことがある。私は……クロはここにいる。体は死んだけど、魂だけは櫻に保護してもらったから。だから、話がしたい。約束したから、だから……」

 

ちなみに一人称はすっかり私で定着している。前世の記憶を忘れてはいないが、もう雪は巣立ったみたいだし、それは割り切った。心の中じゃ俺って言ってるけど、すっかり俺は“クロ”だった。

 

『ふざけないで!! 櫻、貴女は……そんな! クロは死んだのよ!! いくら私達を慰めたいからって、それはないでしょう!? クロのことを殺しておいて! 死後もなおクロのことを冒涜する気なの!?』

 

やっべ、地雷踏んだか? というか、全然信用されてない……。いや、無理もないのかもしれないけどさ……。

 

「信じられないかもしれないけど、本当なんだって。ほら? 櫻ってこんな口調してた? してないでしょ? もっとふわふわしてて、八重ちゃ〜んって感じで名前呼ぶでしょ? 今の私の口調聞いてみたらわかると思うけど、滅茶苦茶キリってしてない? 仕事できそうな雰囲気出してるでしょ? ポワポワ感消えて、なんか有能そうな雰囲気出てない?」

『クロちゃんって自分のこと有能だって思ってたんだ……』

 

いや、別に思ってはないし、むしろ自己肯定感は低い方なんだけどね。ただ、少なくとも櫻ほどぽわぽわしてないし、のほほんとしてないと思うんだ。だから、まあNOT櫻を認めさせるために、誇張して言ってるだけなんだけど。

 

『戦う時の貴女はいつも勇ましかったわ。いつものぽわぽわした雰囲気くらい、いつだって消せるのよ! 貴女は! 普段はのほほんとしていて、何も考えてなさそうなお花畑ちゃんみたいな顔をしてるけど、本当は誰よりも頼りになることを、私達は知ってるのよ!!』

 

「いや、櫻は結構ぽわぽわしてるよ? 多分戦闘中もそんなピリピリしてないよ? 結構ふわってしてる時あるからね。滅茶苦茶純粋だし、実際頭お花畑で平和ボケしてるところあるからね櫻って」

『ちょ、ちょっと待って? 2人とも私のことそんな風に思ってたの!? 私そんなにぽわぽわしてないし、頭の中お花畑なんかじゃないよ!?』

 

この無自覚天然人たらしが……。櫻は思ってるよりぽわぽわしてるし、ふわふわしてるし、頭の中お花畑で、救いようがないくらい純粋で、だから皆惹かれるんだよ。この鈍感系愛され主人公め。皆お前のこと大好きなんだからな!

 

『冗談じゃないわ。もう、私と真白の………千鶴の元には来ないで!! これ以上はもうごめんなのよ……だから……だから……!』

 

「あーもう面倒くさい! こうなったら実力行使だ! 訴えられたら負けるけど、不法侵入大作戦を決行!」

『えーちょ、ちょっと待ってよクロちゃん! 一応、不法侵入して犯罪になるの私なんだからね!?』

 

知らないやい! このまま行ったら、絶対八重は扉を開けてはくれないだろう。だったら、無理矢理にでも入ってやる。ちょうど不法侵入に打ってつけの魔法があることだしな。

 

「“ブラックホール”」

 

“ブラックホール”。こいつを経由して、双山家の家の中まで不法侵入する。こうでもしないと、八重もシロも、ずっと自分の中で閉じこもってるままだ。無理矢理にでも、その扉、開けさせないと。

 

シロの、姉として。

 

「って、あ、やべ……」

 

忘れてた。そういえばさっき……。

 

「ま、待ってこれは……」

 

ミルキーと戦闘した時に、“ブラックホール”に彼女の魔力弾を吸収してたの、忘れてた〜!

 

『自業自得、因果応報ってやつなのかな』

 

初めてかもしれない。自分自身の魔法で自滅してしまうのは。

 

今までなら絶対にこんなヘマしなかったんだけどなぁ……。

 

ま、俺も、櫻の平和ボケに当てられたってことなのかな。

 

 

 

★☆ ★☆ ★☆ ★☆ ★☆

 

 

 

「うそ……それじゃあ本当に……」

 

「本当の本当に、正真正銘クロです。煮るなり焼くなり、好きにしてください」

 

俺が”ホワイトホール“から傷だらけでやってきたのを見て、八重は本当に俺が生きていたのかもしれないと、そう思ってくれたらしい。尤も、まだ半信半疑みたいだが。

 

「ま、まだ分からないわ。ガンマに協力してもらっている可能性も否定できないでしょ?」

 

「あーそっか。ガンマも“ブラックホール”使えるんだっけ? それじゃあ」

 

ひょいっと、俺は大鎌を出現させる。

 

「それは……」

 

「死神特製、『還元の大鎌』。私の愛用武器。見たことくらいはあるんじゃない?」

 

「でも、ガンマだって大鎌を使ってたわ。こっそりどこかに潜んで、演技の手助けをしている可能性だって……」

 

「あーもうじゃあ! 髪を見て! 櫻は融合してる時に、融合してる相手の特徴を一部だけ取り入れる。それで、私の髪の毛、黒色が入ってるでしょ? これは櫻が私、クロと融合している証。どう?」

 

「染めてるだけでしょ……」

 

「えーと……それなら……」

『それじゃあ、融合して、試してみる?』

「へ?」

『私と融合すれば、私の中にいる魂とも話すことができるはずだから』

 

本来であれば、融合せずとも魂の声を届かせることは可能なのだが、俺と櫻の魂は完全に溶け合っており、もう切っても切れないものとなっているため、櫻の体内にいる魂の声は、外界に送ることができない。だが、融合すれば……。

 

「そうだね、そうしよう」

 

俺は櫻と交代する。俺よりも、櫻の方が融合するのはうまくいきそうだからだ。

 

「いくよ、八重ちゃん」

 

櫻は八重の手を握り、彼女の魂を自身の中に取り込む。

 

『う………そ……』

『だから言ったでしょ。私は、櫻の中で生きてるって』

 

今度こそ、確実に、八重はクロの魂を知覚した。

 

『本当に……ここ……に……』

『うん。いるよ。体はもうないけど、それでも、ここに』

 

『はは……あはは……夢じゃ、ないのよね……』

 

八重は、俺の魂が生きていることを、確信したらしい。だって、さっきまで荒んでいたのに、こんなにも穏やかに……。

 

「これで、分かったかな?」

『ええ。確かに。これははやく、真白にも伝えてあげないと……』

 

「了解。それじゃあ」

 

櫻は八重との魂融合を解除する。すると、櫻の中から八重の魂は抜け、本来あるべき彼女の体の元へと戻っていった。

 

「それじゃあ、行くよ。真白ちゃんのところへ」

 

 

 

 

★☆ ★☆ ★☆ ★☆ ★☆

 

 

 

 

全て、終わった、組織との因縁も、ルサールカの野望も、そして………私とクロの、繋がりも。

 

全部全部、終わった。

もう、何もかも。

 

どうして、こうなってしまったんだろう。

どこで、間違ったんだろう。

 

私が、1人で組織を逃げ出してしまったから?

最初に、クロを皆で捕まえようとした時、あの時に無理矢理にでも捕まえていれば、もしかしたら……。いや、それをしても、クロの中にあった爆弾で、クロは死ぬ。それじゃダメだった。

 

クロが辰樹に惚れるように誘導する? そうすれば、なんて、思ってた時期もあったけど、考えてみれば、クロはきっと、私のことをずっと大切に思ってた。けど、それでも組織を裏切らなかったんだ。たとえ恋に落ちたとしても、組織を逆らうことはなかったんだろう。

 

なら、どうすればよかった?

爆弾を取り除いて、組織を壊滅させて、リリスを殺して、アストリッドも殺して……。

クロの死に決定的だったのは、怪人強化剤(ファントムグレーダー)だ。なら、それを全て破壊して………。

ダメだ。怪人強化剤(ファントムグレーダー)のおかげで、助けられたことも多くあった。

 

なら、殺し尽くすしか……。

 

無理だ……。リリスの存在も、アストリッドの存在も、私には予測できなかった。

辰樹の中に魔王なんて存在が潜んでいたのだって、知らなかった。

 

私には、何も……。

 

じゃあ、どうすればよかったんだ。

もっとクロと話し合っておけばよかったのか。

 

私にできることなんて、何にも………。

 

「シロ」

 

思い悩んでいた私の頭上から、声が聞こえる。

声の主は知っている。櫻のものだ。

私の大切な家族を殺した、私の大切な、友達。

 

その声は、確かに櫻のものだった。でも、それなのに、私には、別のものに聞こえて仕方がない。

あり得るはずがない。そんなこと、起こり得るはずがない。そう、分かってる。けど、でも、私の魂は誤魔化されない。

 

どれだけ一緒にいたと思ってる。

どれだけ、ずっと頼りにしてきた。

どれだけ、想ってきた。

 

だから、私には分かる。

この声は……。櫻のものにしか聞こえない、この声は……。

 

「クロ……」

 

私の大切な大切な家族のものだ。

 

 

 

★☆ ★☆ ★☆ ★☆ ★☆

 

 

 

シロに声をかける。また、八重の時みたくややこしい照明フェーズを挟まなきゃいけないのかと思うと、憂鬱ではあるが、それでも、シロのメンタルケアには敵わない。

俺は決めた。シロと向き合うって。そのために、俺は櫻の体で、声で、彼女に声をかける。

 

すると……。

 

「クロ………」

 

シロは確かに、俺のことをそう言った。どこからどう見ても、櫻の体で、どこからどう聞いても、櫻の声なのに。にも関わらず、確かにシロは、俺のことをクロと、そう見抜いていた。

 

シロってエスパータイプだったっけ?

なんて、一瞬そんな疑問が湧いて出てくる。だって、八重の時はどれだけ……。

 

「クロ……クロ……クロ!」

 

シロは、俺に抱きついてくる。

悲しい思いをさせて、姉失格かもしれない。

 

でも、もう、シロを悲しませるようなことはしたくない。だから。

 

「シロ、約束通り、全部話に来た。今まで隠してきたこと、全部」

 

俺はシロを宥めながら、落ち着くまで待つ。

やがてすっかり落ち着ききったシロを見て、少しずつ、話し始めた。

 

「シロのこと、妹だと思ってて、守らなきゃって思ってたんだ。だから……」

 

俺は前世のこと、組織にいた時に考えていたこと、それら全てを話した。

 

組織にいた時、確かにシロのことを守りたいと考えていたが、いざ自分の命が危機にさらされると、怖くなってみっともなく命乞いしてしまったこと。

 

シロのことが大事だと言いながら、自分の命を捨てきれなかったこと。

 

それを伝えたら、シロはそれは私も同じだって、だから、気にしないでって、そう言ってくれた。

 

前世の話をした時、シロは驚いた顔をしていたけど、酷く納得したような顔をしていた。

 

「最初は、ただ隠してただけだった。ただ次第に、このことを言ったら、シロに嫌われちゃうんじゃないかって……そう思って、バレないようにって……そう、隠してたんだ」

 

「そんなことで………クロのこと、嫌いになったりなんて、しないのに……」

 

分かってた。分かってたけど、信用しきれてなかった。俺はどこまでも自分第一のクズで、みっともない馬鹿だから。シロの気持ちなんて、考えてこれなかった。だから、これだけすれ違いを起こしてしまったんだろう。

 

「雪は前世の妹。愛は前世で親友だった子。だから、言えない関係性だった。ごめん」

 

「……そっか。それは、私より大切な人達だったの?」

 

「それは違う……。皆シロと同じぐらい大切だったよ。けど、今私にとって1番大事なのは……シロだから」

 

前世はもう割り切った。愛は安らかに眠った。雪は良い配偶者を見つけて、独り立ちしている。俺にとっての妹は、シロだけだ。

 

俺はもう、クロなのだから。

黒沢始は、死んだのだ。

 

「魔王は?」

 

「あーあれは、あいつ私のこと好きだったらしくて。んで、精神的に参ってたところを助けられて……まあ、多分あの時はちょっと依存しちゃってたのかも。まあ、別に悪いやつではなかったよ。でも、魔王には悪いけど、シロより大切な存在ってわけじゃない。感謝こそしてるけどって感じの関係」

 

「そっか」

 

シロの疑問には、全部答える。全部話すって、そう約束したから。

もう、シロとすれ違いなんて起こしたくはない。

俺の、私の……大事な大事な、たった1人の、家族なんだから。

 

「でも……櫻には私より先に話してた。ユカリは? ミリューは? 私以外の子、まだいる」

 

大概この子も依存体質なんだろうか。可愛いけど、でもちょっと重いかもしれない。まあ、別に良いんだけどね。

 

「ユカリも大切な妹だよ。けど、ミリューが見てくれるし……。ああ、ミリューは恩人だから親しくしていただけで、別に特別な関係とか、そういうわけじゃないから。櫻はもう、そういう感じじゃん? もう、誰彼構わずっていうか」

 

「そうだね。櫻はやばい。誰彼構わず口説き落として、無自覚に人をたらし込んでる。あれはひどい。私もあれにやられた。なんか、纏ってる雰囲気が違う」

 

『私って皆からどんな目で見られてるの…?』

 

「言わなきゃいけないことは、これで全部かな」

 

「そう、かも。クロから聞きたいことは、全部聴き終わった、と思う。正直、櫻にクロを取られた感じはするけど」

 

『ご、ごめんね真白ちゃん! 別にクロちゃんを独り占めしようとかそういうわけじゃなくて、本当にあの時はこれしか思いつかなくて…!』

 

残念ながら、櫻の声は今のシロには届かない。多分このまま、シロは櫻のことをクロを取った間女として認識していくことだろう。

 

「まあ、安心してよ、シロ。櫻には、ちょくちょく体を貸してもらう約束取り付けさせたからさ。だから、定期的にシロには会いにくるよ。それに、もう私達を引き裂くものは、何もないから」

『おあついですね〜!』

 

櫻さん貴方普段からこんな感じのセリフ皆に吐いてるんですよ? 自覚あります?

 

「そうだ、クロ……。おかえり」

 

「ん。シロ、ただいま」

 

俺はシロと抱擁を交わす。

ここにいるのはもう、ただの仲睦まじい姉妹(with天然人たらし)だ。

 

魔法少女だとか、悪の組織だとか、そんなのもう、関係ない。

 

悪の組織所属のTS魔法少女はもう、おしまいだ。




はい。ということで、これにて本作は完結となります。色々好き勝手書いてきた本作ですが、ここまで付き合ってくださった方々には、感謝の意を!
番外編とか、そういうのも書こうかなとか考えてたんですけど、なんかもう満足しちゃったんで、これにてクロの物語は終了です。割と主人公してたか怪しい子でしたが、無事、シロと仲良くHAPPYENDを迎えられたのでよしとしましょう。

反省点もあったりなかったりしますが、とにかく完結まで持っていけたのでそれはOKって感じです。

では、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!!
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