たきなの為に全力でお兄ちゃんを遂行するお兄ちゃん(ガチ)   作:ゴマだれ

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今回は第6話まるっとです
その為文章量が多いです、また独自解釈があります
冷静に考えて超強いお兄ちゃんいるのにたきなちゃんがそんなに強くないなんてことは無いので強化回です


兄として全力で導く

 

とある日の昼下がり、本日は喫茶『リコリコ』の定休日なのだが神一は朝早くから来た妹ことたきなの着信に飛び起きた

 

「―――リコリスが襲撃されてるだと?」

 

『はい、既に4名が死亡しており複数犯の計画的な犯行の線が濃厚とのことです』

 

「襲撃されたリコリスに関連性は?」

 

『…今のところ、手掛かりはありません。

そこでリコリスが狙われている現状出来るだけ単独行動を避けるべく、千束のセーフハウスで暫く共同生活をしようかと思いまして』

 

「なるほど、単純だが複数人でいるリコリスを狙うような奴らではないだろうな」

 

これなら少なくとも堂々と家ごと爆破するような荒業でもしない限りは虚をつくことは難しいだろう

 

『あの…良ければ神一も来ますか?人が多いに越したことはありませんから』

 

「―――」

 

兄妹の同居生活、それはすなわち神一の目指す最終的なお兄ちゃんの遂行としてはかなりのものであり、紛うことなき本来あるべき家族の姿へと形を取り戻す第一歩でもあった

 

『…嫌なら無理強いは「行くに決まってるだろ!?」わ、わかりました』

 

早速、引越し業者もビックリな速度で支度する神一

着替えと必要なもの、そして『特注の武器』をバックやリュックサックに入れて準備を整える

 

「よし、行くか」

 

ボストンバッグ4つとリュックサック、そして()()()()()()()()()()()を持って拠点とした使っていたマンションを後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらしっしゃーい!千束さんのお家にようこそ!」

 

「世話になるな、たきなは?」

 

「中にいるよ〜というか凄い荷物だね…」

 

とんでもない荷物の量だがこれでも減らした方であり、しっかりと取捨選択をした結果なのである

 

「こっちだよー」

 

「なるほど、侵入者対策にも余念が無いということか」

 

「その通り!たきな、来たよ!」

 

「早すぎませんか?まだ連絡から一時間経ってませんよ?」

 

「早いに越したことはない、それに2人に何かあってからじゃ遅い」

 

相変わらずのお兄ちゃんムーブをかまして行くが、さらっと千束にも心配しているあたりこの3人の信頼関係はかなりのものに育っていると感じられる

 

「何それ、三節棍?」

 

「『游雲』、俺専用の武器だな」

 

「え?武器なんて使うんですか?」

 

「無論、今は殺しは控えてるが元々はこれで暴れ回ったからな」

 

「ねぇねぇ!それ持たせてよ!」

 

「まぁ…いいが」

 

そう言うと遊雲を手渡しで千束の手に渡す

 

「離すぞ、しっかり持てよ?

 

「え?」

 

ズン!

 

神一が手を離すと千束の手に信じ難い力がかかる

無論、神一の仕業ではなく遊雲そのものが持つ純粋な質量である

 

「おっも!?何これ、何キロあんの?!」

 

「ざっと60キロだな」

 

「そんな物を武器として使えるんですか…?」

 

「むしろそうじゃないと使えないんだよ」

 

「いや、でもナイフとか…」

 

「俺の戦い方は基本的に粗い、故に武器の耐久値すら考慮しないんだ。その上普通の武器は人間が使うことを前提に作られたもの、俺の身体能力じゃ人間が戦車砲を、戦車が9mmの主砲を持つようなものだ」

 

「だから、このような武器を…」

 

「企業秘密のテクノロジーで作られた言わば『化け物専用装備』、それなら壊れる心配もない。まあ、こっちはお人好しの武器商人のおかげで半額とはいえ億出してるからそれくらいはしてもらわないと困る」

 

「「億!?」」

 

神一はその身体能力による規格外のスケールを有している、故に彼の武器は神一のスケールにあったものとなっているのだ。そしてその開発費には莫大な資金が注ぎ込まれている、本来なら彼の持つ全ての武器はとても高価なものだがそれを売りさばく商人はかつて神一に命を助けられたが故に贔屓していた為、彼でも手の届く値段で取引していた

 

「ところで家事分担とかはどうするつもりだ?」

 

「それについては問題ありません」

 

そう言うとたきなは壁に一枚の画用紙を張り付ける。そこには家事分担スケジュールと書かれた1週間の予定が書かれている紙に千束とたきなそして神一の名前が書かれていた

 

「共同生活を送る上で公平な家事分担です、ただ神一は洗濯関係の代わりに料理をやってもらいます」

 

「わかった」

 

「えぇ〜つまんな~い」

 

「つ、つまらない?ではジャンケン…とかがいいですか?」

 

「いいね、それいいね!ジャンケン!!」

 

その言葉を聞いた千束の顔がイタズラを思い浮かんだ子どものような表情を見て神一は裏があるように感じ、心の中で合掌した

 

「な…」

 

結果はたきなの惨敗であり、たきなは信じられないという表情をし、千束は何事もなかったかのようにストローでアイスコーヒーを飲んでいた

 

「千束、流石にあれはダメだろ」

 

「いいもーん!何なら神一がやる?」

 

「…わかった」

 

神一は千束が勝てる理由を知っているがあえて千束の土俵で戦うことにした

 

「「最初はグー、ジャンケンポン!」」

 

結果は千束はパー、神一はチョキを出して勝利を掴み取った

 

「うっそ〜ん…なんでぇ?」

 

「ジャンケンは所詮動体視力ゲーだ、要は相手の出す手をギリギリで見切ればなんて事ない」

 

「何それずっる!」

 

弾丸すら見切れる神一の身体能力に比べれば千束のそれはもはや赤子同然である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、神一は万が一の侵入者に備えて起きていた。しかし、その背後から忍び寄る影が…

 

「まだ起きてたのかたきな、夜更かしは女の天敵だぞ」

 

「お構いなく…わかるんですね」

 

「…なにか悩み事でもあるのか?」

 

顔も見ずに自身の妹を判別する神一

しかし、そんなたきなの表情はどこか思い詰めたような表情をしていた

 

「…最近、神一は私たちの仕事に同行することが増えました」

 

「ああ、リコリコとの掛け持ちも慣れてきたからな」

 

「その仕事ぶり見て最近…自分が居なくてもいいんじゃないかと思いまして…」

 

「なるほど…」

 

神一と千束の間には大きな実力の差があるが普通のリコリスからみれば努力だけでは到達できない領域にいる。つまり、自身と2人の実力の隔絶に悩まされていたのである

 

(…ここがたきなにとっての転換点、言葉は慎重に…いや、むしろダイレクトに行くか)

 

「私は…どうすれば」

 

「俺はさ…たきな」

「?」

 

気遣いは無用、今やるべき事はたきなに()()()()()こと

 

「たきなの持つ潜在能力(ポテンシャル)は千束のそれと

遜色ないと思ってるんだよね」

「なら私には何が足りないんですか!」

 

「じゃあ、強くなるのに自分に足りないと思うものを言ってみろ」

 

「…才能」

 

「たしかに千束にはあるけど、それが千束に並ぶことには絶対必要とは言えない」

 

「訓練量」

 

「別に訓練したって強くなるとは限らない、それで強くなれるなら千束クラスのリコリスは何人も出てくる」

 

「心構え」

 

「向上心はある、無かったらこの話は出てこない」

 

思い当たるものを片っ端から出していくが悉く返されていき、それに苛立ちを隠せなくなったたきなは声を荒らげる

 

「いい加減にしてください!おちょくってるんですか!?」

 

「まぁ、これで出たら今頃強くなってるだろうからな…答え合わせだ」

 

「!」

 

「たきなに足りな物は一つだけ、たった一つのことだ」

 

「たった…一つ?」

 

「そう、裏を返せばたきなには経験もスキルも能力も足りているという事だ」

 

しかし、その1つは基本も基本

誰もが何かを成す時にはやる事に違いない

 

「たきなに足りないもの、それはイメージだ」

 

「イメージ…?」

 

「正確には『強くなった未来の自分』だ」

 

「たったそれだけ…?」

 

「でもたきなにはそれが出来ない、それはたきなの分析が原因なんだ」

 

自身を見るという行為に、誰しもがフィルターを入れるがそれがたきなの成長を妨げている

 

「俺や千束といった人外を身近に見て、たきなは自分の力を過小評価した判断材料でしか見られなくなってる、故に自分が強いという可能性を自分でねじ伏せてるんだ」

 

「…」

 

「だからこそ少し未来に居るはずの強くなった自分が見えない、そうなれば例え強くなろうとしてもどう強くなればいいのか分からずにずっとそのままが続く」

 

(強くなった自分…千束とも神一とも違う未来の自分…)

 

今まで2人の面影越しにみていた自身の未来像を自分のみで見ようと試行錯誤するうちにたきなの中で何かが変わりつつあった

 

「こんな所か…最後に俺から1つ」

 

「?」

 

しかし、些細にも見えるたきなの変化は本来、怪物を兄に持つ彼女にもあるであろう彼女の怪物としての《片鱗》を顕そうとしていた

 

「特定のことに限らず、人間の成長線は必ずしも緩やかとは限らない。ある日を境にまるで別人のようになる事すらある」

 

「…!」

 

「強欲に思い描け(イメージしろ)、もっと強さに欲張れ」

 

この日、たきなは千束や神一のいる向こう側へ片足を踏み入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、3人でリコリコに向かう

 

「おっはよう!労働者諸君!」

 

「おはようございます」

 

「おはよう」

 

各々が今日のメニューで使うであろうスイカをカウンターで切るミズキに挨拶をする

 

「聞いたわよ、えらいことになってるわねぇ」

 

「あぁ~、私らDAじゃないから大丈夫だよ~」

 

「可能性はゼロじゃありません」

 

「たきなの言うとおりだ、俺も狙われるかもしれんな」

 

「アンタ殺そうとするとかどんだけの命知らずよ…」

 

仮に神一を正面から殺そうと思うなら文字通り陸軍レベルの練度と装備を持つ人間がある程度の距離を取りながら、自爆も辞さない覚悟で臨んでようやく勝算が生まれるというほぼ無理ゲーである

 

「次の被害を防ぐためにもなると思うが…あぁそうか、分かった」

 

「楠木さん?」

 

「指令は情報くれそうですか?」

 

「極秘だとさ」

 

「組織の頭が報連相すら出来ないのは終わってるな」

 

「ガッツリ言うなぁ…」

 

「なら言われないように努力して欲しいものだな」

 

肝心な情報をなにも公開しないのは笑うしかない、仮にもここは支部であり、リコリスは2人しか居ないがその実力はDAの中でもトップクラスの人材でもある。もはや、2人の安否はどうでもいいと言ってるも同義である

 

「…ねえ、神一」

 

「どうした?」

 

「朝から気になってたけど…たきな何かあったの?」

 

「わかるのか?」

 

「あったりまえよ!大事な相方だからね!」

 

「昨晩少し…な?だが、俺達がこれ以上口を出していい事じゃない」

 

「まさか…好きな人が!」

 

「安心しろ、出来たら俺が許さん」

 

「えぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ昼は忙しいな…ピークで稼ぎ時なのはありがたい限りだが…」

 

慣れてきたとはいえ昼のピークは大忙し、特に厨房にはミカもいたがそれでも休まる理由にはならない

 

「…千束、サボってるな…少し離れる」

 

「あぁ、早めに戻ってくれよ」

 

文字通りの地獄耳で店の奥にいる千束の声を聞きとる、くるみと一緒にボードゲームをやっているようだ

 

「コレ、も〜らい」

 

「あぁ~そのタイル持ってくなよ!」

 

「アンタ今回の事件の調査を調べるんじゃないの?」

 

勿論、神一は近くにいるのだが『気配が全く読めない』という体質故に誰も接近に気づかない

 

「情報をダウンロードして、後でゆっくり調べるんだよ。」

 

「あんた!DAをハッキングしてんの?!」

 

「流石はクルミさん、ヤバイね」

 

「ちょろいね」

 

「おい千束」

 

「うおっ!何時からそこにいたの!?」

 

「…今すぐ店の手伝いに戻るか今日の晩御飯が激辛麻婆豆腐になるか、選ばせてやる」

 

「すぐ戻らせていただきます!」

 

既に胃袋を掴まれてしまっている千束は任務でも見せない速さでホールに戻る

 

「それとくるみ」

 

「…なんだ?」

 

「何を俺の前でビビってるんだ?」

 

「え?そ、ソンナコトナイヨー?」

 

「…何を隠してるのかは知らんがいつか話せよ?」

 

神一の前では何かやましいことでもあるのか、心拍が乱れたり落ち着きがなくなる等、その様子は顕著に現れている

 

「…怒らないのか?」

 

「隠している内容によるから今はなんとも言えんな」

 

一見優しいように感じるがこの男の場合、裏を返せば内容によっては万死に値するという事なのはくるみは分かっていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同居生活2日の夜

依然としてリコリスの襲撃者の足取りすらつかめず、千束たちの身にもなにもなかった

 

「…そう言えば、神一は銃を使わないんですか?」

 

「あ!それ私も気になってたんだよね」

 

その言葉に神一は苦虫を噛み潰したような表情をする

 

「あー…俺の射撃能力がクソでな」

 

「そ、そんなに…?」

 

「5m離れたらもう当たらん」

 

「うん…それは…」

 

「辞めろ、何も言うな」

 

「…それだったら殴りの方がいいですね」

 

(剛の神一に射撃のたきな…こういう所は兄妹っぽいんだよなぁ)

 

もし射撃能力が伴っていれば反動を無視した威力重視の銃を使えたかもしれないが無いものをねだっても仕方ない

 

「…面倒なのが来たぞ」

 

「ま〜たチンピラ?仕方ないなぁ」

 

そう言うとゴム弾の入った銃を片手に梯子を上る、しばらくするとチンピラの叫び声と発砲音が響く

 

「…少し様子を見に行くか」

 

「私も行きます」

 

エプロンをつけたまま上の階を見に行くと、窓が割れてえらく開放的になった空間があった

 

「このためのセーフハウスだったんですね」

 

 

「今回は、ただのチンピラだったから手早く終わって良かったよ。昔はリリベルも来てたしねぇ」

 

「それって神一が昔居た…」

 

「俺が来なくてよかったな」

 

「リリベルって人たちは普段、何してるんですか?」

 

「…知らぬが仏だ」

 

「たきなー、もしかして男の子に興味あるの?」

 

「そういう意味ではありません」

 

たきなと千束が下に戻る中、神一は懐からスローイングナイフを取り出す

 

(銃は無理だが、投擲(こっち)は出来るんだよな)

 

ビュンッ!

 

その手から放たれたナイフはまさしく弾丸となり、外のドローンを撃ち落とした

 

「神一?はやく来なよー」

 

「悪い、すぐ行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、特に何事もなくリコリコの営業が終わり神一も明日の仕込みを終わらせてホールで寛いでいた、しかしたきなはどこか難しい顔をしていた

 

「どったの?あんた?」

 

「勝てないんですよ」

 

「え?」

 

たきなはミズキにジャンケンのことについて話す

それに対して種明かしをしていくとたきなの表情は絶望的なものへと変わっていく

 

「と、こんな所ね。神一は気づいてたんじゃない?」

 

「え」

 

「…すまん、その…言うに言えなくてな」

 

実際、気付いた時には既にヒートアップしており終わったあとも話すタイミングがなかった

 

「…」

 

「た、たきな」

 

「…もう知りません」

 

「ゴフッ!」

 

あからさまに嫌われたことにショックを受ける神一、たきな第一主義の彼にとっては何事にも耐えがたい苦痛だろう

 

「組長さんとこに配達に行くわ…何があったし」

 

「―――」

 

「何か燃え尽きてますけど」

 

「いいから、早く配達いってきな」

 

「すぐ支度します」

 

「大丈夫、制服がバレてんるだろうってクルミが」

 

「リコリス制服ですか?」

 

「だからポンチョを」

 

「そそ、これなら~ぜった~い、わかんな~い」

 

「私服じゃ銃は使えないんだぞ」

 

「んなこと分かってるよ。下に着てます~、ほら」

 

「じゃあ、わたしもそれで」

 

「大丈夫だって、神一〜晩御飯楽しみに…って聞こえてないなコレ」

 

意気消沈する神一を尻目に千束は1人で配達に向かった、なおこの間も神一の表情は沈んだままである

 

「…ああもう、分かりましたから許しますから!」

 

「本当か!?」

 

「は、はい」

 

神一の様子に見かねたたきなからお許し出たことによって平常運転(シスコン)に戻った、そんな神一の頭を過ったのは昨晩のドローンの事

 

(昨晩のあのドローン…何のつもりだったんだ?あの住所がバレてたって事はたきな達の存在は把握済み、なら何の為に…)

 

可能な限り思考を巡らせるが意図の全くわからない故に思考が空回りを続ける

 

うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

そんな中、聞きなれない慌ただしいくるみの叫び声が店内に響き渡る。全員何事かと思うと2階から降りてきたくるみがタブレットを見せる

 

「見てくれ!!これは銃取引の時のDAのドローン映像!殺されたのはこの4人だ。これが犯人に流出して顔がバレてたんだ!」

 

「なんでそんなもんが流出するのよ」

 

「あの時のハッキングか」

 

「あの時…?」

 

「たきなが左遷された一件でジャミングをしたハッカーだ」

 

「DAもそのハッカー見つけられていないようです」

 

「…あの時のは、ボクだ」

 

「あ”あ”ん!?」

 

「はぁ~!!!」

 

「どういうことだ?!」

 

「依頼を受けてDAをハッキングした。そのクライアントに近づくためには仕方なかったんだ」

 

「ちょっと、あんたが武器をテロリストに流した張本人って訳?!」

 

「そうですか、おかげでぇ正体不明のテロリストがぁ山ほど銃を抱き締めてぇたきなはクビになりましたぁ!」

 

「もういい!!止めろ、ミズキ!」

 

ミカがミズキを諌めるが神一に至ってはこれでもかと言うほどブチ切れており、かろうじてたきなの前だったので己を抑えていた

 

「おい、千束はどこだ?」

 

「配達に行きました」

 

「まだ何かあるのか?」

 

クルミはタブレットを操作し、別の画像を出す。そこには神一が来る前に撮られたと思われる千束の姿

 

「おいまさか…!」

 

「いかんな、これは…!」

 

「たきな!いつでも出れるように支度しろ!」

 

「はい!」

 

リコリコの仕事服でもある袴から動きやすい服へと着替えて念の為持ってきた武器を巻き付けるかのように肩から下げてホールへと戻る

 

「千束!!千束!!!聞こえるか、おい!」

 

「行くぞたきな!くるみは千束のスマホから場所を特定しろ!」

 

「わかった!」

 

リコリコを飛び出し、組事務所へと向かう。

 

「もう少し早く走れるか?」

 

「すいません…これ以上は!」

 

「なら」

 

ガシッ!

 

「へ?!」

 

「舌噛むなよ…!」

 

ドゴン!

 

たきなを抱えてコンクリートを蹴り壊すほどの万力で街を駆け抜けていく、その速度は一般道で車が出せる速度を優に超えている

 

「くるみから千束のスマホのGPSを捉えたのか位置情報が…この近くです!」

 

「わかった!」

 

たきなはミカ達に連絡を取る、神一が周囲を調べると千束のスマホとポンチョを見つけた

 

「あったぞ、千束のだ!まだ近くにいるはずだ!」

 

「追跡できますか!?」

 

「問題ない」

 

ポンチョに残る千束の匂いから僅かな臭跡を辿り追跡する神一の目が捉えたのは数台の車と複数人の男達が千束と緑色の髪の男を取り囲んでいる光景であり、緑髪の男が千束を殴り付けてから千束に銃を向けている

 

「やれるかたきな?」

 

「問題ありません」

 

肩から下げていた得物を手に取り戦闘態勢に入る神一と鞄から銃を取り出すたきな、この2人を相手にする命知らずはいないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の使命はなんだ?アランのリコリス」

 

「…?」

 

首から下げるフクロウの首飾りを指しながら目の前の男は問いかける、しかし有無を言う前に事態は動いた

 

 

バゴォン!

 

「「「!?」」」

 

2人の周りを囲むバンの1台が宙を舞う

 

カァン!

 

「なっ!?」

 

それによって生まれる射線を通して男の銃を撃ち落とす、さらに臨戦態勢を取られる前に2人は仲間の排除にかかる

 

「コイツ!」

 

「邪魔だ」

 

ズゴォン!

 

神一の持つ三節棍『游雲』

特殊合金によって作られたその威力は使用者の力量に左右されるが神一の力から放たれる一撃は車をも飛ばし、手下すらも吹き飛ばされる。しかし、千束が見ていたのはたきなのほうであった

 

「遅いです」

 

パシュッ!

 

「う…!」

 

目にも止まらぬ速さで足や肩などを撃ち抜いていく、それだけでなく千束のように弾を避けていた

 

(これなら見える…!)

 

数日前の神一の言葉、それによってたきなは自身を見つめ直していた。そして見つけた自分だけにあるもの、それは死を間近に捉えることであった。神一とジン、短期間に二度も死を前にしたことによって時間が何倍にも伸びる走馬灯の感覚と死に際の集中力、それを意図的に発動できるようになった。そこに正確無比な射撃が組み合わさる事で千束にも引けを取らない強さを得ていた

 

「たきな!千束を連れて離脱しろ!」

 

「はい!」

 

その言葉に千束も我を取り戻し、銃を手に取り真島を狙うが物陰に隠れられる。たきなも千束と共にその場を離れようとする

 

「ば、化け物が!!」

 

「違うな、俺はお兄ちゃんだ」

 

ゴギャァン!

 

そして神一は2人の追跡をさせないように車を破壊していく、勿論殺さないように加減はしているが後遺症には全く考慮していない。すると、見覚えのある車が千束達の方に向かう

 

「千束!乗れ!!」

 

「とりゃぁぁぁ!」

 

「ミズキ!車出せ!」

 

「死なないでよ!」

 

ミカたちが千束とたきなを回収するのを確認すると神一はミズキに車を出すように告げ、自分は殿として残ることになった

 

「ざっと30か?このまま都合よく逃げてやるわけねえだろ、覚悟しとけよ

 

「く、クソオォォ!」

 

バキッ!

 

まるで止まらない動きに次々とやられていき、もはや戦いではなく一方的なものとなっていた。そんな神一を討つのにロケランまで取り出し、狙いをつけるがしかし

 

「ブホッ!?」

 

ズガァン!

 

くるみのドローンによる突撃でロケランは明後日の方向にあった車に直撃した

 

(もう両手で数えられるやつしかいない、ここまで人員と足を潰せれば追跡は不可能…ここが引き際か)

 

もう無力化したに等しいと感じた神一はこの場から去る、残りの人間も神一の暴れぶりを見て勝てないと思ったのか誰も彼の背中を撃つことはしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おーおかえり!アイツらは?」

 

「削れるだけ削った、しばらくは大人しくしてるはずだ…それでこの状況は?」

 

「くるみの裁定中、神一も何か言ってやんなよ」

 

「…いや、俺はたきなの判断に一任する。

今回の一番の被害者はたきなだ、俺がとやかく言うことじゃない」

 

暴れたおかげか冷静になり、自身に口を出す権利はないと話す神一にその場の全員が驚く、実際少し前なら問答無用で殴っていただろう

 

「…ごめん、たきな」

 

「あれはわたしの行動の結果でクルミのせいじゃありません…でも、あいつは捕まえる。最後まで協力してもらいますよ」

 

「もちろんだ!早速だが奴の名前が分かったぞ」

 

たきなの裁定は無罪、その言葉に千束と神一の口角が上がる。クルミも顔を上げてタブレットを触りあるものを見せる

 

「まぁじまさぁ~ん」

 

「…真島?」

 

「え、知ってんの!?」

 

「悪い、多分気のせいだ」

 

真島というどこかで聞いたことのある名前に首を傾げるが何も出てこない、思い過ごしだと考え直し今日は体を休めることにした

 

後日、たきなの口から同居生活解消の話が出た際にはこの世の終わりのような顔をするのはまた別の話





■たきなの強化要素

死に際の集中力と走馬灯の感覚を意図的に発動可能になり、千束と遜色のほとんどない動きができるようになった。しかし、体力の消耗が激しく持続力はあまりない

■神一の武器

『游雲』
原作にもあった三節棍、呪力は無いので本家と比べると劣るが謎の特殊合金によって強度がかなりのものとなっているので威力は十分。しかし、重さ的に神一以外は使えない。なお60キロという数字はあくまで神一の体内計測なので実際はもっと重い

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羂索もどきがキヴォトスを謳歌するお話。ガワは夏油です。▼タイトルはゲヘナシロモップ的なアレです▼呪術は最終巻まで読了している前提です。アニメ勢ネタバレ注意▼ブルアカは最終編まで読んでいてくれると読みやすいかと▼この作品は、「キヴォトスinドブカス成り代わり」や「透き通る世界に響く雷鳴」等に感銘を受けて書いています。もしよければこちらも読んでみてください。▼h…


総合評価:932/評価:6.8/連載:61話/更新日時:2026年04月30日(木) 08:38 小説情報


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