Relief song of midnight/宵と明星 作:野良ノルス
プロセカの近況報告はする気が起きないので割愛します。
第1話です、どうぞ。
プロジェクトセカイを始めた事で奏の事を思い出した俺は、ひどくプロセカにのめり込んだ。
もっと奏の事を知る、いや思い出す為に。
しかし、1年半経った今でも、俺は奏の事を少ししか思い出せない。より深く思い出そうとすると頭の中にノイズが走る。
一つだけわかるのは、俺は奏やみんなが居たあの場所とは、全く別の所に居る。と言う事。
そうでなければ、確かに存在していた皆が、奏が、ゲームのキャラであるはずが無い。
確かにこの世界に居たのだから。俺の世界に、俺の現実に。
「そう。でも、貴方はその現実を、そのセカイを拒んだの。」
俺の耳に、無機質な女性の声が響いた。
そう言えば、先程から変な感じがする。俺は部屋で寝っ転がってた筈だ。なのに、足に地面の固い感触がある。
目を開くと、そこは俺の住む世界ではなかった。
地平線まで広がる、温度の無い白。それ以外何も無い、真っ白なセカイ。
目の前には、声の主と思われる白いワンピースの少女。
ツインテールにされた髪は真っ白で、目は灰色だ。
俺はこの少女を知っている。俺の知るそれとは全く容姿が違うが、確かにそうだ。
「もしかして、ミク・・・・・なのか?」
俺の問いに対し、少女は目を伏せて答えた。
「そうであり、そうで無い存在。バーチャルシンガーの『模造品』で、貴方のセカイの"初音ミク"。その『可能性』。」
「俺の・・・・・・セカイ?」
セカイ。その単語には聞き覚えがある。プロジェクトセカイに存在する、誰かの想いから生まれた場所。存在する5つのグループの物語で、鍵となる重要な場所だ。
そして、プロジェクトセカイに登場するグループのセカイには、全てに名前と景色がある。
だが、このセカイにはどこまでも空虚な白が広がって居るのみで、とてもではないが風景と呼べるものでは無い。
「このセカイに、名前はあるのか?」
「"可能性のセカイ"。全てがあるが故に何も無い、出来損ないのセカイ。」
ミクが言った出来損ないと言う単語が引っかかるが、名前はある様だ。
セカイは、名前によって風景が変わる。そして、個人の感情から生まれたセカイはその人間の望む風景を映し出す。
俺は、このセカイの風景を知らないし、俺の心は多分ここまで殺風景では無い。
考えていると、ミクが教えてくれた。
このセカイは、俺の想いから出来た物ではあるが、ミクを含むあらゆる要素が未完成であるが故に出来損ないのセカイである事。
このセカイは、何故か俺の関わる全ての並行世界へ干渉出来る事。
本当の想いを俺が見つけた時に、このセカイは完成する事。
可能性と言う名の虚無で出来た、白紙のセカイ。それが、この場所なのだ。
「そう。そして、この白紙のセカイに景色を描くのは・・・・・・あなた。」
ミクは俺をピタリと指差すと、そう言った。
「あなたの想いで、このセカイは新たな可能性を生み出せる。その可能性から、結末を捻じ曲げる事ができる。」
俺が知っている奏は、雪を救えていなかった事を知ったあの日、自らの命を絶った。だが、プロジェクトセカイでは、消えようと誰もいないセカイへ行き、ミクの言葉で雪の為に曲を作る決心をしている。
俺があの日見たものは、"奏が自死を試み、俺がそれを止めれなかった可能性"なのだろう。
その可能性が実現した結果、奏が死ぬと言う結末が確定してしまった。
その結末を捻じ曲げる事は、この場所からは出来ない。
だが、新たな並行世界を生み出し、その並行世界でその可能性を消せば、結末は変えれる。確定した未来を捻じ曲げれる。
理屈はどうあれ、そう言う事なのであるのなら・・・・・・
「なら、作ってくれ。奏が死んでない世界を。救える可能性を。」
「わかった。貴方がどんな想いを見つけるか、ここで待ってる。」
そう言うと、ミクは右手を振った。
次の瞬間、俺は足下から迸った光に包まれた。
「いってらっしゃい。」
そうミクの言葉が聞こえ、俺は光の先にいるミクへ言葉を返した。
「あぁ。本当の想いを見つけたら、また来るよ。」
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「・・・ま・・・・・・そ・・ま・・・・・・・奏真!」
名前を呼ばれ、瞼を持ち上げた俺の眼に真っ先に映ったのは、つきっぱなしのパソコン。
そして、声の聞こえた方を向いた俺を見ていたのは・・・・・・
俺が知るより少しだけ幼さのある銀髪の少女の、明るい光を湛えた蒼い瞳だった。
「あ、やっと起きた。おはよう奏真。・・・・・・また遅くまで、作曲してたんだ。」
心配する様な声で奏にそう言われ、俺はパソコンの画面に目線を戻した。
開いていたのは、前の世界でも良く使っていた作曲アプリ。
どう見ても、作曲の途中で寝落ちしたとしか思えない光景だ。
再び奏の方を見て、俺は俺の知る奏との違いに気付いた。
奏の着ている物は、プロセカでもよく見たジャージ姿では無く、制服。
つまり、奏の中学生時代まで戻って来たらしい。
声色が明るい所を見るに、奏の父親は倒れていないのだろう。
そして、奏の幼馴染である俺も・・・・・・中学生。
道理で体に違和感があるわけだ。中学生の時の俺の体に戻っている。
「まぁそんなとこだ・・・・・・。おはよう、奏。一応聞くけど、本物・・・・・・だよな?」
「え?うん、そうだよ。・・・・・・ふふっ、もしかして、偽物のわたしが出てくる夢でも見た?」
そう言って楽しそうにしている姿を見て、俺の中の決意はより確かなものになった。
俺が、奏を救うんだ。今度こそ。
「・・・・・・その為に、俺はここに戻ってきたんだからな。」
「ん?なにか言った?」
呟きが聞こえたのか、俺にそう聞いてくる奏に微笑みかけると、俺は起き上がって答えた。
「いや、なんでもねぇよ。それより、今日学校なんだっけか?」
「あ、そうだった!奏真急いで!遅刻しちゃうよ!」
「本当だ。じゃあ急いで準備しないとだな。・・・・・・取り敢えず着替えたいから、部屋出てくれないかな。」
他愛のないやりとりを交わし、俺は学校へ行く準備を開始した。
投稿遅れて申し訳ないです。
ストーリー自体はある程度完成していたのですが、修正をしていたら遅れました。
序幕の終了と同時に設定集を投稿するので、セカイの設定が分かりにくかった方はそれを見て頂けると分かりやすいと思います。異論があれば感想欄でボコボコに書いて頂くと主の心が儚く散ります。
質問等も有れば感想欄でお聞かせ下さい。ストーリーに活かします。
次回はもう少し早くに投稿したい所。
次回「2時、束の間の"当たり前"。」