Relief song of midnight/宵と明星   作:野良ノルス

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どうも、そろそろ週一投稿に戻そうかなと思い始めた野良ノルスです。
前回チラッと出て来た、奏真くんの寝付きが悪い設定について。
こう言うどうでも良い位小さな設定って、キャラの細部まで形作るのには必要だよねって言う物なのですが、実は物語にそれなりに絡んでくる重要な設定・・・・・・だったりするかもです。

ちょっと待って・・・・・・?わんちゃん奏バナーとバースデー被る?ソウナッタラオレハオシマイダァ・・・・・・。



3時、崩れ始めた日常。

 

この世界に来てから俺は、奏との何気ない日常を過ごしていた。

 

変わった事と言えば、前の世界での出来事が思い出せなくなった事。

 

トラックに轢かれた事や、可能性のセカイの事などは思い出せる。

 

しかし、退院してから可能性のセカイを見つけるまでの一年半がまるきり思い出せない。

 

セカイでミクに聞いてみたら、「可能性を変えるには、別の可能性を知っていてはいけないから。」と無機質な声で答えてくれた。

 

が、それ以上は聞いても答えてくれなかったので、思い出せない原因は謎のままだ。

 

そのままクリスマスを経て年を越し、二日間ある期末テストの一日目を終えた二月八日。

 

俺と奏は出された提出課題を二人で片付けていた。

 

それなりの量ある課題になんとか一区切りをつけ、晩飯の準備を始めようと俺が立ち上がった時に、奏が声をかけてきた。

 

「奏真、晩ご飯終わったらわたしの部屋に来てくれない?」

 

「え?別に良いけど、なんか用か?」

 

「うん。実は・・・・・・」

 

曰く、最近奏のお父さんの元気が無いから、昔みたく曲を作って贈ろうと思っている。でも、完成したは良いがテスト勉強の合間で作ったから上手く出来てる自信が無い。

 

「で、俺に聴いて欲しいと。」

 

「うん。奏真すごい曲作ってるから、感想欲しいなって。・・・・・・ダメかな?」

 

そう言って不安そうにこちらを見ている。

 

確かに、奏のお父さんの曲がcmで流れ始めてからは、部屋から怒鳴り声の様なものも聞こえた。

 

晩御飯の時も来ない事が増えているし、忙しいのだろう。

 

「ダメとは言わねぇけど、今更俺がアドバイスすることなんかねぇ気がするぜ?」

 

「それでも良いよ。じゃあ、晩御飯になったら呼んで。」

 

「りょーかい。」

 

 

 

 

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二人での晩飯を終えて、俺は奏の部屋に来た。

 

俺の部屋と同じく、散らかっている訳でも整ってる訳でも無い、作曲用の機材がある事を除けば至って普通の部屋だ。

 

「全部流すから、聴き終わったら感想聞かせてね。」

 

「おう。」

 

曲が流れ始めて、俺は真剣に聴き入った。

 

音の一部一部に、奏が曲に込めた想いが伝わってくる。

 

真っ直ぐな優しさが。

 

やはり、奏の曲は心に響いてくる。

 

あの日と同じ様に。

 

 

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曲を聴き終わり、ヘッドホンを外すと、奏が不安そうに聞いてきた。

 

「どうだった?」

 

少しばかり考え、俺は言葉を返した。

 

「良い曲だな。奏のお父さんも、きっと喜んでくれると思うぜ。」

 

そう言うと、奏は顔を綻ばせて、

 

「本当に!?良かった・・・・・・。じゃあ、お父さんに聴かせてくるね!」

 

と言うと、嬉しそうに部屋を出ていった。

 

「さ、俺は風呂にでも入ってくるかな。」

 

つきっぱなしのパソコンの電源を落とし、照明を消した後首を軽く鳴らして、俺も部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

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side奏

 

お父さんに曲を聴いてもらい、お風呂も済ませたわたしは、布団の中で考えていた。

 

『奏はすごい才能を持っているよ。きっと、音楽に愛されてるんだ。』

 

そう言われて、わたしは素直に嬉しかった。でも、その先の言葉を言ったお父さんの顔が、頭から離れない。

 

『奏はこれからも、奏の音楽を作り続けるんだよ。』

 

『きっと奏の音楽は、たくさんの人に受け入れられて、喜ばれて・・・・・・必要とされるはずだから。』

 

曲を聴いた後のお父さんは、褒めてくれたけど、どこか様子がおかしかった。

 

まるで全てを理解して、何かに絶望したかの様な表情をしていて。

 

そんなお父さんを見てしまった後では、手放しで喜べない。

 

もしかしたら、わたしはお父さんを苦しめてしまったんじゃ・・・・・・。

 

「ううん、大丈夫・・・・・・だよね。」

 

頭によぎった不安を振り払う様に呟いたわたしの言葉は、真っ暗な部屋へと溶けた。

 

 

 

 

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「んぅ・・・・・・ふわぁ〜。」

 

翌朝、目が覚めたわたしは軽く欠伸をした。

 

昨晩は、あまりよく眠れなかった。

 

お父さんの事で頭がいっぱいいっぱいで、眠気がいつまでも来てくれず、結局眠りに落ちたのは1時を回ってからだった。

 

今日のテストは副教科が殆どだが、休み時間は眠たくなりそうだ。

 

顔を洗い、制服に着替え、今日は珍しく早起きな奏真と朝食を済ませて部屋に戻ったわたしは手早く準備を終えるとリビングへと戻った。

 

しかし、そこにお父さんの姿は無かった。

 

「奏真、お父さんは?」

 

奏真に聞いてみると、少し真剣な表情になって答えてくれた。

 

「そう言えば・・・・・・確かに見てねぇな。部屋でまだ寝てるんじゃねぇのか?」

 

「そっか。それなら、起こしてから学校行った方が良さそうだね。」

 

「・・・・・・だな。」

 

わたしの提案に、奏真は表情を戻すと頷いた。

 

「じゃ、先に出てるぜ。」

 

「うん。」

 

立ち上がり、鞄を背負い直した奏真は、そのまま外に出た。

 

わたしもお父さんを起こしに行くべく、部屋へと向かった。

 

扉をノックするが、返事は来ない。やはりまだ寝ているのだろうか。

 

「お父さん、もう朝だよ。そろそろ起きないと・・・・・・え?」

 

そう言って扉を開けたわたしが見たのは、部屋の真ん中で倒れる、お父さんの姿だった。

 

「お父さん・・・・・・っ!」

 

 

 

 

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side奏真

 

昨日の夜に奏の曲を聴いてからずっと、嫌な予感がしている。

 

嫌な予感がする時のみではあるものの、俺の予感は結構当たる。

 

今日は二月九日。何故か、カレンダーに二重丸があった。

 

期末テストの終わりの日という事以外、なんら特別な日では無いはずだ。

 

でも、何だか嫌な予感がして、昨日はずっと寝付けなかった。

 

今日のテストはさっさと済ませて残りの時間で寝こけてやるとするか。

 

などと呑気な事を考えていた俺の耳に、奏の声が届いた。

 

 

 

─────お父さん・・・・・・っ!

 

 

その声音に明らかな動揺の響きを感じ、急いで奏の父親の部屋へと向かう。

 

開けっぱなしの扉の向こうに居たのは、部屋の真ん中で倒れている奏の父親と、必死に呼びかけている奏だった。

 

 

やっぱり俺の予感は、悪い時だけよく当たる物らしい。

 




そろそろ奏真くんが奏に救われた時のお話も書くべきだな〜と思いながら筆を進めている今日この頃。
一話でまとめようと思ったけど、なんか長くなると嫌なので二話に分けまする。
後、4時以降の話で何書いて欲しいかアンケ取ります。(一応一話は決まってる。)

次回、「4時、いつか絶望の底から。」

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