抜け落ちてきたRは空から放り投げだされた。
受け身で何とかなったものの、落ちる事にはいつまでも慣れない。
次に訪れた場所は、外は暗いが月や星がない。目の前には橋がかけられており、街頭が一定間隔で置かれている。
橋は横幅はそんなに長くない。人間3.4人程並んだら前に進めない位の長さだ。
後ろは森が立ちはだかっている。敵の事もあるし、暗い方にわざわざ進むのは御免だ。
抱えていた袋を片手に持ち、橋に向かって歩いていく。
橋の材質は石の材質で出来ている。街頭の光で照らされて少し光が反射している。橋を渡って数歩先に、橋の下に河川が流れているのが分かった。だが不思議な事に、河川で聞こえてくる水の音はRの耳には届かない。水が少ないわけではない。なんなら普通の川より多く水が流れている。それでも音は聞こえてこないのだ。何か見えない力があるのだろう。
手すりがある為、余程の事をしない限りは落ちる事もない。河川の存在を知ったRはそれ以上触れる事無く、継続して橋を渡る事にした。
街頭は相変わらず一定間隔で設置されており、明るさも特に大きく変わらない。ただ、かなーり遠くに大きな都市のような明かりが見える。こんな世界にも人間は住んでいるのだろうか?
明確な行先も決まっていないRは、明かりを目指して一本道の橋の上をひたすらに歩いていく。
…
…
…
…?
少し長めに歩いていたつもりだが、都市のようなナニカの明かりまでの距離が全くもって縮まっていない。歩いたらその分少しは大きさが変わるものだが、明かりの大きさは1ミリも大きくならない。
だとしたらあれは幻なのだろうか?或いは遠近法に異常な出来事が起きているのか?どちらにせよ、あの都市のようなナニカに辿り着く事はないのかもしれない。
歩いている途中、橋の上では色んな生き物に出会った。猫や狸等の動物もいれば、ぬいぐるみをズッズッと引きずる男、赤色の服を着る女…などと言った人間らしき者と出会った。共通している事は、皆Rと歩いている反対側から来ており、存在を認識していない事。
初めこそ赤色の服を着た女と対面した時、怖くて後退りしながら女の様子を伺っていたが、無視する形でRの前を通り過ぎて行った。
ドキドキしながらその女から視線を外す事なく見ていたが、攻撃する意思を見せないまま暗闇の何処かに消えていった。
胸を撫で下ろしながら、こちらを認識しないのなら触れないようにしよう。そう知ったRは次から橋の上ですれ違ったものには触れない形で進んでいった。
橋の上をひたすら歩いていたRだが、そんなRにも橋の上の旅が終わる。
少し向こう側に橋の終わりを見つけた。そんな嬉しいものでもないが、変わらない景色をずっと見るのも嫌なRは、警戒を怠らず端まで歩を進める。
橋を渡りきったRの前には、何の建物か分からない廃墟と後ろに鬱蒼とした森が待ち構えている。
廃墟と化した建物の入口にはバリゲード等でそれ以上奥に入れないようになっている。必然的に後ろの森の方に進むしかない。
まじかよ…心の中で呟きながら、とぼとぼと森の方に向かって歩いていく。
森の中は暗いが完全に見えないわけではない。獣道らしきものはある為、それに沿って仕方なく歩いていく。時折ガサガサと何かが動く音がする為幾度目を向けるが、そこから何かが出てくる事はなかった。
身体に当たる葉の音が耳に入る。何も思わずに獣道のゴールを目指す。5分程歩いただろうか。先に光が見える。
足元を見ながら光の先に向かって歩く。何だろう?と思える余裕がない。ザッザッとRの歩く音が聞こえる。切り開かれた場所に辿り着き、Rはゆっくり顔を上げる。
辿り着いた場所は、山の頂上に似たような高い所であり、Rが橋上で見つけた都市のようなナニカの明かりらしきものを、上から見下げる形で再度目にすることになる。近くには焚き火がユラユラと揺らいで燃えている。