エレベーターの扉が開かれRが招かれた次の部屋は、さっきまでいたところから全く想像出来ないものだった。
奥に長くコンクリートの壁と床が続いており、部屋の温度が高く、壁と天井には多くのパイプが這いずり回る。カビか鉄に似た臭いがやっぱり慣れない。ここは早く立ち去るためにも、Rは早足で前に進む。
金属・鉄製で出来た棚があちこちにあり、換気ダクトが数メートルの距離とって置かれている。棚には大抵何も乗っていない。
パイプの中から微かにシュウウゥ…と音がする。こんなにも暑い部屋を作るためだ、このパイプの中には高熱の蒸気でも詰まっているかと考えると恐ろしくなった。
……それにしても暑い。この暑さがずっと続くのか?
Rは暑いのが好きじゃない。だからなのか、他の人から見ても分かるぐらいの早足で歩いている。余程抜け出したいのだろう。かと言って、むやみに歩き回るのも非効率的だと感じていた。しかし良い方法は浮かばない。
Rが暑さと疲れでうんざりして少し休憩するかと思い、部屋を見渡すと。
…?何かおかしなところはあるが、それが何を意味するかまでは導き出せない。これも暑さのせいなのか?
立ち止まると厄介な感じをしたRは、嫌々ながらも前に進んだ。
後ろの壁や天井のパイプが増加しているのにも気づかないで。
あれから何分…何十分経ったか分からない。むしろもっとか?
時間経過が分からない中で、Rは少し精神が揺らいでいた。
人1人会ったとはいえ安らぎにはならず、知っている人にも出会わないこの世界では、実質独りで立ち向かっている現状。そんな非現実な事が休みなく降ると、人は誰でも時間に違いはあれど、正気を保ってはいられなくなる。気を失う事はあっても安心して睡眠をとる事が出来ていない。早く帰りたい気持ちと疲れが混ざり合い、Rの心を少しずつ蝕んでいく。
暑さや臭いも手伝い、さらに深刻度は増していく。
フラフラのRがふと横にある壁にくっつくパイプを見ると、数が増えている事に気づいた。何気なく天井を見ると、最初は天井にくっついていたパイプが、数を増やして天井が見えなくなるぐらいに覆い尽くしている。
これは、かなりまずいのでは?
今まで幸運だけはあるRはこの事態に気づく。
脳と身体に一刻も早く脱出する為に…生きる為に動かせ!
そう言い聞かせて新たな出口がないかを探しながら走る。
走っている途中にパイプが音を出さずして増えていくのを目の当たりにした。それどころかさっきより気温が高くなっている…ような?
ともかく早く出口を探さねば!苦しいまま死ぬのは御免だ!
しかし、Rが走っても走っても出口が見つからない。ドアはあったが全てがダミーだった。その度Rの心はヒビが入る。歯を食いしばってうっすら涙を浮かべながら長い道を走る。家族、友人の顔が走馬灯のように浮かんでは消え去る。それを笑うかのようにパイプは増え続ける。刻一刻と迫る運命の掌の上で踊らせられているこの気持ちを、何と例えたら良いものか。Rは前に走った。立ち止まらずに走った。
いよいよ通るのにも邪魔になるくらいまでパイプが増えた。1度パイプに八つ当たりしたが、すごく硬くて熱さを感じ泣きながら走った。
初めて死という概念と隣り合わせになっているぞと、嫌でも身体と心に味わせてくる現状に抵抗するかのように
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!
と声を荒らげて走っていく。
人1人通るのがやっとな程にパイプが増えた直後、300m程先にエレベーターらしきものと、ドアが開いているマークが光っている扉が見えた。
あそこに行けば助かる!最後の力を振り絞り、パイプとパイプの隙間から抜けたRはエレベーターとドアの近くまで走る。ゼェゼェと苦しそうにしながら涙を流し前に駆けだす。
Rに悩む時間は残されていない。どちらかに行かなければ、Rはパイプに挟まれたまま蒸し焼きにされる事になるだろう。
Rはエレベーターと光るマークの扉のすぐそばまで全速力で走る。どちらも飛び込んで入れば間に合う。エレベーターは開いたままで、扉はマークの光が強く放っている。この際どちらでも良い。この部屋を抜け出したいとただただ願うだけだ。
Rは勢いよく
〇扉を勢いよく開け、中に突撃して行った。
〇エレベーターに飛び乗りこんだ。