後輩は心の怪盗団   作:モカチップ

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結成?

「……行かなくて良かったのか?」

 

 腕の中のモルガナが喋る。

 不安げな上目遣い。

 

「マコトに聞いたぜ。ウイも修学旅行の引率を頼まれたって……レンも楽しみにしてた。ワガハイなんかといていいのか…?」

 

「修学旅行は去年行ったし今年も行くほどの気力は残ってないよ……こうしてモルガナとまったりしてる方が何倍も楽しいし」

 

 嘘偽りない本音。

 ……修学旅行、ね。

 

 今頃ハワイを楽しんでるのかな。

 お土産は期待しよう。

 

 モルガナを見つめる。

 

 あ、そっぽむいた。

 

「……変わってんだな。オマエ…」

 

「あはは…よく言われる」

 

「……なぁ」

 

 か細い声。

 薄暗い自室に響く。

 

 沈黙が続いていく。

 

「モルガナ……?」

 

 どうし━━

 

「……ワガハイは役に立ってるのかな」

 

 モルガナ……。

 最近よく家に来るとは思ったけど。

 

 怪盗団の中でなにかあったみたいだね。

 ……迂闊なことをいえば刺激しちゃうかもしれない。

 

 けど……。

 

「もちろん」

 

「……本当にそう思うか?同情なんていらな」

 

 弱気な姿勢。

 思った以上に追い詰められている。

 

 ……弱味を見せている。

 それを嬉しいと、思うのは……ダメな奴だよなぁ。

 

「大丈夫、保証する。なんなら俺はモルガナにお世話になりっぱしだよ」

 

 ズルい言い方。

 でも本当に助けられているんだ。

 

 モルガナが何を言おうと……俺は、ね。

 それは蓮達も一緒だと思う。

 

 恩を仇で返す…なんてことはないよね?

 モルガナとの出会いがあって怪盗団が生まれたこと。

 

 忘れちゃいけないよ。……みんな。

 

「……ウイ」

 

「くよくよしてちゃみんなに笑われるよ?人間に戻るために頑張るんでしょ?」

 

 モルガナを撫で回す。

 

「あ、ちょ!どこ撫でて…にゃふ!?」

 

 じたばたと藻掻く。

 決して離さない。

 

「あはは……ルブランに行こうか」

 

 ギュッと抱きしめた。

 相変わらずもふもふだぁ。

 

 ……モルガナ?

 

「……ありがとな」

 

「……どういたしまして」

 

我は汝…は我…
汝、ここにたる絆を刻み記したり

芽吹きは灯を輝かせし

魂の息吹を解きたん

今こそ汝、「魔術師」の最奥たる豊穣をみとらん
悠久の恵をに授けん…

 

「……堕ちるのもわかる気がするな」

 

「ん?」

 

「な、なんでもない!ほら!ルブランに行くんだろ?フタバが待ってるぜ!」

 

 腕の中から抜け出す。

 元気…には、なったかな。

 

 最近の怪盗団ブームは凄い。

 非公式でグッズが作られるくらいだ。

 

 みんながいっぱいいっぱい。

 まあ……竜司くん辺りは調子に乗っちゃうかもね。

 

 不安はあるけど蓮や真がいるから……大丈夫だろう。

 

 なにかあればモルガナから教えて貰える。

 メメントスでリハビリをしてなんとか力を取り戻しつつある。

 

 合体やアイテム化はできないけどシャドウと交渉してペルソナを手に入れる術はある。

 

 ベルベットルーム……どこにあるんだろう。

 ……蓮に聞ければなぁ。

 

 △

 ▽

 

 ワガハイは考える。

 

 今のままじゃダメだと。

 有名になってテングになるのは分かる。

 

 今じゃ時の人だ。

 

 図に乗りたくなる。

 大衆が改心を求めている。

 

 その声に…承認欲求が満たされる。

 気持ちは分からなくもない。

 

 ……ワガハイたちは怪盗だ。

 

 どんな時も冷静さを欠かさない。

 知的でありスマートじゃなきゃいけない。

 

 息抜き程度なら許す。

 ……違うんだ。

 

 ワガハイ抜きでも……。

 怪盗団は全然、問題ない。

 

「モナー?どした?」

 

「…なんでもねえよ」

 

「ふーん。あ、芋づる式…」

 

「何が出てきたんだ?」

 

「まだ途中。秘密」

 

 カタカタと軽い音。

 

 メメントスで足代わりになれるだけ…。

 

「うはぁ〜ごっそり」

 

 単なる役立たず…」

 

 テーブルに上る。

 

 カウンターを見ればウイが座っている。

 マスターと談話を楽しんでいた。

 

 ウイは……違う。

 ワガハイのことを……人間と言ってくれる。

 理解してくれる。必要としてくれる。

 

 怪盗団の誰よりも━━

 ……()()()()()

 

「ねこ!モゴモゴうっさい!用があるなら言え」

 

「べつに、ねぇよ」

 

「何、言ってんだ!?」

 

「離せっ!」

 

 無造作に撫でられる。

 

 手触りがいい。滑らかでスベスベ。

 ……それまでは良かった。

 

「人間のものとは思えない」

 

「何べんも言わせんな!ワガハイはニンゲン……」

 

 抑制できなくなる。

 声を張り上げた。

 

 談話が止まる。

 慌てて2人を見る。

 

「うるさくして悪いな」

 

「大丈夫です…けど」

 

 ………………。

 

「……それって思いこみじゃない?わたしも、お母さんのこと、ずっとまちがって思い込んでた」

 

 思いこみ……。

 夢のワガハイ、はメメントスから……っ…。

 

「……一緒にすんな。ワガハイのことはワガハイが……一番、理解……してる」

 

 当たり前だ。

 だってワガハイは……。

 

「それもそっか」

 

 ……ワガハイは…ワガハイ、は…!

 うおっ!?

 

 身体が宙を浮く。

 振り向けばウイの顔。

 

 困った顔、なのに……。

 とても…安心する。

 

「急用を思い出しました。コーヒーありがとうございます。双葉ちゃんまた来るね」

 

「!……お、おう!…待ってる」

 

 あわあわと口を震わせノートパソコンで赤い顔を隠した。

 ……みんなの時とは大違いだ。

 

「なに一丁前に照れてんだが……また来い」

 

「惣治郎うるさい!」

 

「あはは……モルガナ」

 

 耳元で囁く。

 

 んっ…少しくすぐったい。

 

「……お寿司食べにいこっか」

 

 …………ウイ。

 

「大トロがいい」

 

「うん。沢山食べよう」

 

 その笑顔が……。

 ……そうだな。

 

 この道も、いいかもしれない。

 

 △

 ▽

 

「美味しかったね」

 

「おう!腹がいっぱいだぜ!」

 

 満足そうで良かった。

 ……双葉ちゃんは悪くない。

 

 本当に思い込みをしていたんだ。

 怪盗団の活躍があってこそ…ね。

 

 遠回しだけど気を使ってくれたんだろう。

 双葉ちゃんなりの優しさ。

 

 ちょっとすれ違っちゃっただけなんだ。

 大丈夫……きっと元通り。

 

 寿司屋は少しヒヤヒヤしたなぁ。

 

 モルガナがバレないように服の中に隠して……。

 奥の席を選んで…大トロばっかり食べて……。

 

 次回からはお持ち帰りにしないとね。

 

「……ウイ」

 

 腕の中から飛び出す。

 綺麗に着地をする。

 

 目の前にはモルガナ。

 真剣な表情で見上げている。

 

 う、うん?

 

「その……ワガハイと…」

 

 モルガナ…と?

 

「……怪盗団をやらないか…っ!」

 

 怪盗団を……ん?んんんっ!?

 

「…えっと。心の怪盗団は…」

 

「……ワガハイ抜きでやっていける。それに…ワガハイの目的と怪盗団の目的は…違う」

 

 ……モルガナ…。

 

「直ぐには決められな」

 

「いいよ」

 

「いよな。いいのか……いいのか!?」

 

「でも」

 

 蓮たちと話を━━

 

「そうと決まれば明日から活動開始だ!帰るぞ!」

 

「モ、モルガナ」

 

「ウイのコードネームも考えないとな!怪盗団の名前も……」

 

 ……全く。

 といっても俺から言えないし。

 

 修学旅行明け…かなぁ。

 

 しかし、怪盗ねぇ。

 ……怪盗服用意しないといけないのかな。

 

 どんな衣装がいいんだろう。

 そもそもどこに売ってるんだろ?

 

 ……コスプレ専門店とか?

 

「ウイ!」

 

「あ、ごめんごめん」

 

 …なにもないといいんだけど…難しそうだね。




時系列は修学旅行。
先輩も引率を頼まれたけど断りモルガナとキズナを深め中。

モルガナからすれば秘密の共有者であり怪盗団でもないがペルソナ使い(で懐かしい)の先輩は拠り所で良き相談相手。軽く?依存気味。

当分先ですがオクムラパレスは一時期加入する予定。


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