後輩は心の怪盗団 作:どうまん
……出ない。
出ない……なんで出ないの?
出れないから? 出たくないから?
その不安はずっと続いていく。
パレスから出てみんなと別れてからも。
モルガナは用があって別れた。
先輩の家の場所を聞いてきた時は少し驚いた。
少し興味があるっていってた。
……先輩は渡さないから。
ん…。
近くの銭湯で汗を流して……。
ルブランに帰り先輩に電話をする。
……切られた。
先輩から電話を切られた。
……拒否された。拒絶された。
確信した。……出たくないんだ。
「な……なん…で…」
「どうした? ひでぇ面してるぞ」
「なんでもない」
「……そうかい」
私が悪い?
先輩になにかしちゃったの?
分からない。理由も……先輩にしてしまった粗相も……。
分からない。…何も分からない。
分からない分からない分からない。
過ちに気づけない。
考えろ。
先輩に何をしてしまったのかを。
落ち着いて……落ち着いて考えないと。
嫌われちゃう。
先輩に嫌われる。
考えただけで……冷たくなる。
例え冤罪を被ろうと……裏切られようと……虐められようと……。
腫れ物のように扱われようと……。
……どうでもいい。
だけど……。
先輩から見放される。
先輩から否定される。
先輩から拒絶される。
それだけは……だめ…です。
「顔色悪いぞ」
「……大丈夫」
「……店閉めるからな」
惣治郎さんが帰る。
ひとりぼっちの空間。
もっと孤独を強く感じる。
ごめんなさい先輩。
先輩の為ならなんでもします。
どんなことでも……私はします。
だから━━
「……許して…くださ」
嘆きは着信に掻き消された。
……誰………あっ…!
「……よかった」
「先…輩……?」
「ごめん。寝惚けて切っちゃったんだ」
……寝惚けて……もしかしてずっと寝ていた?
だから出なかったんだ。
そうなんだ。
……よかった…よかった。
安心する。
同時に自分に嫌気がさす。
先輩を信じられなかった。
……そんなことするはずがないのに。
…最低だ。
信じてくれた人を信じられない。
先輩を信じられなかった事実。
……私は弱いままなんだ。
「…あ、の……ごめんなさい」
「え?」
「お休みの邪魔をして……ごめんなさい…」
……だめだなぁ。
こんなんじゃ本当に捨てられ━━
「……蓮は気遣いができる良い子だね」
「! …いや……そんな…」
「蓮のそういうところ。好きだよ」
「…ふぇ?」
す、すすすす……す…すっ!?
思わぬ不意打ち。
喉奥から込み上げる感覚。
グッと押さえ込んで……。
不味い…心臓が痛い。
さっきまでの不安が全て吹き飛んだ。
……あたたかい。嘘…熱い。
電話越しなのに……この破壊力…。
……直なら沈んでる。
そ、それよりも…!
「蓮?」
「あ、はい! あの…!」
「?」
「……お、おやすみなさい!」
「あ、うん。おやすみ蓮」
電話が切れる。
すぅ……はぁ……。
気遣い……先輩……好き……。
気遣いができる子が……先輩は好き…。
ってことは先輩は私に……。
……よし。
△
▽
「悪いことしちゃったな」
疲れていたのかな…と心配する素振り。
レンの惚けた声がスマホ越しから聞こえてきた。
……実はレンよりウイの方がヤバい?
息をするように好きとかいってたぞ?
「…………」
「……モルガナ?」
「ん! あーどうしたんだ?」
「蓮をなんとか……」
「解決した」
「……はい?」
「ワガハイは帰る。あ、そうだ! 今度ウイのこと聞かせてくれよ!」
「うん、わかった。次会う時に教えるね」
これで大丈夫だろ。
……と思ってたんだけどなぁ。
寿司を持ったレンが笑顔で詰め寄ってくるのを見て死ぬんじゃないかと思ったワガハイは悪くない。
有言実行特化後輩。
ただ気遣いの範囲が尖りすぎている()
もう4週はしてるのに……合間合間に書いていきたいなぁ。