後輩は心の怪盗団 作:どうまん
後悔はなかった。
だって人として当たり前のことをしただけだから。
人助けをしただけに過ぎない。
世の中は理不尽だ。
一つ一つの行動で運命が決まる。
弱い者は悪意に覆い尽くされてしまう。
友達を失い、先生には見放される。
……ひとりぼっち。
だけど……だけど…。
先輩だけは私を信じてくれた。
頑張ったなって褒めてくれた。
それだけで……救われた。
そのせいで……先輩までも…悪意に飲み込まれちゃった。
それだけは許せなかった。
その悪意に……なにも出来なかった私にも。
先輩は後悔してないと笑いながらいった。
……私は後悔してる。
なにもできない私に先輩は寄り添ってくれた。支えてくれた。
私は先輩になにもしてあげられなくて……。
……守られているだけだった。
そのせいで先輩の人生を壊してしまった。
納得……できるわけない!!
私は日陰者。
先輩は人気者。
……見捨てて良かった。
先輩には沢山の友達がいたんだから。
文武両道、品行方正。
大学だって推薦で……決まっていた。
落ちこぼれの私とは正反対。
住んでる世界が違ったのに……。
気を使わなくてよかった。
守らなくてよかった。
なのに……傍にいてくれた。
全てを捨ててまで……私を選んでくれた。
……先輩がいなかったら壊れてた。
感情に押し潰されていた。
先輩……。
無理も承知に思い出が作りたいと言った時も笑顔で頷いてくれた。
都内に行く時も両親以外に先輩だけは見送ってくれた。
……感謝なんて言葉では言い表せない。
……恩人でも足りない。
私が私である為に必要不可欠。
世界で一番大切な人。
……大好きな人。
先輩がいないだけで不安でいっぱいだった。だから精一杯の
友達ができても物足りなかった。
ぽっかりと心に穴が空いている。
反逆の心を手に入れても……。
傍に先輩がいない。その現実が苦しい。
楽しい日常。
だけど……それ以上には感じられない。
足りない……もっと欲しい。
触れて欲しい。
撫でて欲しい。
抱き締めて欲しい。
そう考えれば考えるほど──
キュゥゥと胸が締め付けられる。
先輩が……欲しい。
……私だけの、先輩にしたい。
「どうしたんだ? ブツブツと」
鞄から頭だけ出した黒猫が喋る。
「…………なんでもない」
……あれから先輩と会うこともできず声すら聞いてない。
……電話は迷惑、だし…。
バイトを探さなきゃって言っていた。
通信高校でもいいから卒業しないとって…。
先輩の邪魔だけはしたくない。
だから我慢……しないと、いけない。
1年だけ…そう、1年だけ。
そう言い聞かせても……。
納得できない私がいる。
この1年間……。
先輩になにかあったらどうしよう。
不安が募っていく。
先輩に彼女ができたらどうしよう。
紹介されたら……。
どうにかなってしまいそう。
ううん、どうにかなってしまう。
そう考えただけで手に力が入る。
奥歯を擦り上げ軋み鳴らす。
「…レン? どうし」
「なんでもない」
「そ、そうか」
……考えないようにしよう。
怯えた黒猫をひとなで。
ん、正門が見えてきた。
鴨志田先生からオタカラを奪い平和になった学園が見え━━
…………え?
正門に立つ人に釘付けになる。
思わず足を止めてしまう。
「レン? どうしたんだ?」
う、嘘……。
…あ、え…?
見間違えるはずない。
ずっと一緒にいたからこそ分かる。
その後ろ姿は……。
……せん……ぱ…い……?
な、な……ん…で……?
「レン…? ……おいレン!?」
疑問は直ぐに破棄された。
頭よりも先に体が惹き付けられる。
無我夢中に走って━━
「先輩ー!」
「レン!?」
飛びついた。
私の猫なで声を聞き驚く黒猫。
気を張りクールな印象を被っていた反動が爆発した。だって…先輩がいる。
張り付けた仮面は簡単に引き剥がされる。
……こっちが素だと言えばもっと驚くのかもしれない。
「ん?」
振り返った先輩の胸に顔が押し込まれる。
好きなこの匂い…落ち着く、匂い。
勢いは止められない。
押し倒す形で馬乗りになった。
「お久しぶりです! 先輩!」
「久しぶり……蓮」
先輩に名前を呼んで貰えた。
それだけで言い表せない快感を全身に感じる。
先輩だ……先輩…先輩が……どうして先輩が……どうでもいい。先輩が目の前にいる。
その現実だけ全てがどうでも良くなる。
先輩の胸……耳を当てれば心臓の鼓動。
先輩の音。
私だけが知っている、私だけの音。
安らぎをこれでもかと感じる。
このまま眠ってしまいたい。
きっと……絶対にいい夢を見れるから。
………?
「先輩?」
先輩が動かない。
揺すってもほっぺを突っついてもうんともすんとも言わない。
……柔らかい。髭もなくツルツルでお餅みたいにモチモチ。
えへへ……ずっと触っていられる。
ほっぺ摘んだり撫でたり……。
……頬ずりしたり…うぇへへ…。
…なんか沢山の視線を感じる。
「…………なにやってるの?」
視線の一人が前に出る。
私の友達で……仲間の━━
「……おはよう」
「…お、おはよう」
私と先輩を交互に見ていた。
ほんのりと頬が赤らんでいる。
……!?
「……襲うなんて考えてない」
嘘……思ってたかも。
ほ、ほんの少し……だけ?
「……襲う…っ?」
墓穴掘った……!
「なんでこんなに人が多いんだよ。…蓮と高巻じゃねえか! おは……」
……あっ。
「…………おはよう」
先輩と会えたのが嬉しくて……。
その……つい……抑えきれなくて。
……頭で考えても言葉にできなかった。
精一杯の挨拶で濁した。
「お、お…おう…! 先…行ってるわ」
行っちゃった。
せ、せめて……。
「……私も行くね」
……あ…。
…誤解、解けるかな。
……先輩を起こさないと。
「せんぱ……」
「正門で集まって何をしているの? もう授業が始まるわ…よ……」
……今度は生徒会長。
耳まで真っ赤にしている。
前歴以外にも付きそう……。
……まぁいっか。
その時は先輩も……一緒。
一緒なんだ。
ふふっ…。
お揃いですね、先輩。
最速コープMAXです。
未来永劫先輩に対する愛は変わらないってことですね()
コープがバグってます。
後ほどアンケート置いときます。
次回の次回
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パレス編
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コミュ編