帝国兵となってしまった。   作:連邦士官

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第42話

 航空機が爆音を奏でる。戦車の側面に付いたラックからロケットが飛び出す、砲塔が除去されて砲塔があるべき場所にハーモニカと兵士たちが呼ぶロケット装置がついたものやトラックの後方についたレールから撃ち出される火砲が作る光景、専用車両からもロケット弾が撃たれ大量の火線の後に、プレスで安く作られた金切り音をあげる機銃が薙ぎ払うようにあちこちから音を作り出す。

 

 「オーケストラだな。」

 空を飛ぶとよりはっきりと分かる春節やリオで見たような火薬のシャンデリアだ。砂漠の嵐だ。光と爆風が作る光景は一瞬の光と絶え間ない光弾が闇を切り裂いている。空が光の尾を引いている空が唸りを上げるのを早々に爆撃がまばらに始まる。火柱が止む頃にザッザッと足音が鳴り響き歩兵が前に進み出る俺は最前列でそれを見ていた。

 

 当然だがフランソワ軍が機銃を撃つ、戦車や装甲車が金属音と共に銃弾を弾く。

 

 「ここからが正念場。一般人の俺ができることは出来ることをやって積み重ねるしかないな。」

 それは簡単な予想でも想定出来るような事ばかり。仕方がない、自信もない、俺は単なる勢いでここまで来たばかりに何の役にも立たない単なる無能だ俺は……『本当にそうなのか?お前がやりたいことは…。』『十二分に頑張ったはずだ才能を搾取される悲しい存在になっても良いはずだ。お前は頑張りすぎたのだと言うことさ。』脳内に響く声が五月蝿くなる。それが来たということが精神を苛立たせて鋭敏にさせる愚鈍に行くべきだったのに、今更悩むとはおセンチが過ぎる自分に腹が立つ。人間はたった5分だけは凡夫でも勇敢になれる。それが今だ。ここまでは計画通りなのだから迷っても仕方がない。これが当たっていたら引き返す。

 

 

 「まだだまだ引き付けろ!今だ退け!」

 この司令部の近くに砲弾が飛んでくるそれもそうだろうがギリギリまで前線に囮として司令部を近づけていた。人の命を博打に賭けるなら己の命も天秤に乗せねばならない。交差する土埃、司令車が揺れる。通信兵が無言で作戦コードを打ち込むと一気に反転する。そして、数分の前進と停止の後に反転するヘビの動きに似てるのか、それとも怖気付いたネズミにフランソワに見えるのか分かりはしない。

 

 「将軍、失敗したら死にますよ。」

 泣き言を言う副官の一人は理解してるに違いがない。撤退が一番戦いで難しい……それは誰でもわかることだ。向こうは草刈り場の追撃戦。こちらは下がると塹壕に対して砂埃が舞う。

 

 「相手もこちらも国のために死にに行くのではないさ。国のために死にたい敵兵を、目の前の兵士を無慈悲にも彼らの国のために死なせてやる名誉のためにやってるだけに過ぎないさ。こちらもやってるのだから死について悲観的になる必要はない。俺は一度死んでる……さぁ、後ろと前どちらに行く?フランソワ?」

 俺が死んでると言うと司令車に居た複数の副官や通信兵が笑い出す。「将軍はジョークの腕だけは下手くそですね!なるほど完璧に見えた将軍にもそんな部分があるとは驚きです。」お前らな本当の話だぞ。

 

 「何を言ってる!?冗談ではなく…「フランソワ軍、突撃のラッパです!エラン・ヴィタールと叫んでます!仕掛けにはかかりました!」もういい!とりあえず作戦地点まで後退を急げ!」

 彼らからかわれながら攻撃がやまない中に退く、わざと司令車を撤退後尾になるように遅く走らせてないか?これ?航空魔導師が相手にとっては枯渇気味だから良いが、原作のラインだったら挽肉だぞ。

 

 ルパンじゃないんだから、砲撃をかわしながら車なんか行けるわけないだろ!仕方がないから外に飛び出し、出撃の支度をする。

 

 「武運を祈る!平和を生きるために戦争をする。そして、平和に戦争を備えて戦争を知らない政治家や民衆が戦争を始め、戦争は戦争を養い止め方を知らない人間だけを生き残らせるらしいぞ!死ぬなよ!」

 飛び上がる身体と伸びる上がる目線、何かが肩に引っかかっている気がするが気にしない。空気の粘度と大地の引力を感じるコレが飛行という人工の奇跡だ。執拗に狙ってきたフランソワ兵士たちはいきなりの事に体を強張らせていた。人間の構造上、額というより眉間から上の物事には判断を鈍らせるらしいだから上から落ちるものに反応できない人が多いのだろう。撃ち下ろすというのがなぜ太古から…高所を制するのが太古からの有利の条件かは人間の体はそんなに早く変わらないからだ。当然反応ができる人間も少なからずいて、乾いた音で反撃してくるが障壁がはじき返す。

 

 戦国自衛隊のヘリコプターによる攻撃に似ているなと少し思うが、ヘリコプターより硬いのが障壁だから、より目も当てられないのかもしれない。彼らには罪が無い誰かの家族であり、労働者であり、息子であり、国から呼ばれただけの人間にこんなことはしたくはないがするしかないのが辛すぎる。俺は単なる社会の歯車に過ぎないから止めれないが本当は彼らと分かり合えるかもしれない。話し合ってすら居ないのに話し終わったとして殴り合い、戦争は敵への憎しみを育てるが憎しみは憎しみを育ててそれを増幅させていつしか味方を憎しむ、愛は愛を育てるが育ちきった憎しみは内外を破壊しながら自らを公正として価値を押し付け、周りに憎しみの種をばら撒きより巨大に育つ化け物でしかない。

 

 無能な味方、無能な自分、無能さを他責して憎しみを育てるのが人間の弱さならば、その弱さごと愛せない存在Xは憎しみを育て上げた化け物だ。存在Xに何ができる?出来るのはポイント、ポイントによる介入だけだ。狂ったTRPGや失敗したシミュレーションゲームの指導者のように振る舞うしかない化け物に人が負けてたまるものか!お前が語る最も正しい戦争よりも、最も不正なる平和を取る。それがお前に対する答えだGM(サイコロを振らない進行役)不確定を嫌うのなら不確定だけが見せれる世界を見せてやる!

 

 まばらな射撃が続く中、急降下でフランソワ軍の真ん中に迫る。位置エネルギーと速度を使った突撃に兵士たちが弾け飛ぶ、そして俺は敵の司令部を目指し突き進む、敵に魔導師が居ないからできる匹夫の勇、蛮勇だ。勝ち戦のスイッチが入ってしまったフランソワ軍は自らを危険に晒すほどの勇士は居ない、先程の防戦だったらまだしも誰かが止めれば家族に無事で帰れると思えば躊躇もするのは当然だ。彼らにとって自暴自棄になった航空魔導師が敵陣に突っ込んできただけなのだから魔力が切れるまで大人しくしてればいいと考えるのも当然のことだ。

 

 次々に敵陣を縫い、飛び、駆け、捕まえる。新兵が作る悲壮さのない士気は勝ち戦の雰囲気で変わり、逃げ出している。島津の退き口が見せてくれたことの再現だ。速度差と高度差と装甲差を合わせた曲芸でしかないが、新兵の混乱は伝染し怖気付いてる。古今東西指揮官がやるべきは統率と士気の管理だ。そして、士気を高める手段はフランソワ軍には今はない。

 

 「どうした!エラン・ヴィタールは!」

 小突き回して投げ飛ばしながら先に進めるのは相手が新兵だからということと混乱、勝ち戦の死への怖気、圧倒的な力の差だ。制空権がフランソワになく、古参兵が少なく、主力が帝国に封鎖されてるからこそできる力技、逆にイスパニアであの槍使いの爺さんフィアルト卿に俺がやられたことの焼き直し。

 

 なんで、指揮官の俺が一番危険なことをしてるんだ?それはそうと本陣が近くに見える!

 

 「出てこい!エラン・ヴィタール!」

 叫んで天蓋を魔力を使った強化で蹴り飛ばすとヒゲのおっさんとこんにちわする。目線が合う、おっさんは腰を抜かしてる俺は立っている外野から見た構図は聖杯戦争みたいに見えるだろう。おっさんとおっさんの聖杯戦争とか実質これはZEROか?

 

 「こんな所に来るなんて笑わせてくれるな!ジシュカ!ここで討ち取ればお前は中世の騎士に過ぎない!やれ!帝国の旗を肩につけて騎士気取りか!骨董品め!戦いは数だそれは変わらん!このラトール・タルシニが許さん!騎兵を馬鹿にするなよ!小僧!」

 そんなことを言われてもどっかの暴れん坊な将軍は始まらないぞ!お前!サーベルを構えてどうするんだ?僅かだが確実に魔力を感じるそしてあの構え。お前もかよ!圧倒的にこちらに一太刀を入れるためにわざと開けている。

 

 切られてもいいから叩き切りに来てる……キマった奴しか俺の前に現れない法則でもあるのかよ!そんなシュヴァリエ見せなくていいから…。

 

 金属がぶつかり合う音で10合余り打ち合ったが俺も周りを気にしながら切り合うのはゴメンだ。

 

 「息が上がってきたんじゃないか?若者の無謀は若者の特権だが時間が経てば老獪さが勝つことが歴史で証明されている。フランスの歴史は若者の情熱と老人で紡がれてきた!帝国には分からないだろうが我々は今も生きている!この大地で!」

 何回も叩きつけられるサーベルと…片手にカトラスか二刀流は見た目だけだと言われるが心理的な威力や隠し武器としては有用だ。種が割れても警戒しなければならない。古典派の…時代が古い遺物はここにある。なぜ古典派が生き残っているのかは明白だ。こうもやるならナイフでも銃でも数百年前から人を殺してきた。人間が進化してない限りは刃物だろうがなんだろうが死ぬ。

 

 それは明らかなことで、騎馬の動体視力で鍛えたこの将軍は騎兵が20代で死ぬと言われた中で臆病で卑怯にも50以上も齢を重ねてきた歴戦の勇士だ。フランソワ帝国とフランソワ共和国の間を縫い南方大陸などの紛争を駆け抜けてきたのだろう。間合いを取ると彼の太ももや胸にリボルバーが4丁ついているのが見えた。自動拳銃よりデッドウェイトになっても良いからとっさの時に確実に動くリボルバー、保守的と言われるかもしれないがいいセンスだ。一瞬の弾詰まりが勝敗を分けるならリボルバーを持っていたほうが良いだろう。

 

 「ご教授は有り難いですが…。」

 天蓋を蹴り飛ばした時に倒れたであろうランプの残りに着火させた。天蓋の残骸に引火する。燃える、そして何より大事な通信機器が燃えている。これでよい。

 

 

 「無駄なことを…何の意味がある?いや、まさか……。」

 簡単なことだ。自分たちの後方から煙が上がり、本陣から通信封鎖、そして新兵。後ろが気になって戦えないだろう。帝国兵をいきなり強くするのは難しいがならフランソワ兵の意気込みを下げれば良い。色々な媒体でそうなように時にはバッファーよりデバッファーのほうが役に立つことだってあるのだ。

 

 「まさかだよ。」

 相手は両手に刃物を握ってしまった。例えば刃物を捨てて拳銃に握り替えるとしても数秒は掛かる。そして、数秒あれば殴り合いは終わる。彼は騎兵だから熟知しているのだろうその事を。

 

 「貴様!いや、直に兵士が来るぞ?私の首を切り落としても何の意味もなさない。逆にお前の首には価値がある。エラン・ヴィタール!」

 こいつ、兵士が来るまで切り合うつもりだ。しかし、先ほどと変わって精神的な優位はこちらにある。

 

 狩人が獲物を狙う側から狙われる側に堕ちた時に平静さを保てるのだろうか?精神の強さはタフさにつながる。彼は理解した上でまだやっている。つまり、彼は過去のものに騎兵がなっているのを理解している。ここで死ぬことで騎兵は幻ではなく確かに今を戦った存在として歴史書に残したいのだ。敗北をしようとも勝とうとも歴史書には載る。彼なりの騎兵への愛なのかも知れない。

 

 「だとしたならば、引導を渡すまでだ!」

 燃える天蓋の中、二人で切り合うだけであるが大声が響き渡っている。聞こえるのはフラー、つまりは…帝国が食い破った。

 

 「お前だけでも連れていくぞ!」

 あぁ、混乱の中で切付け合う二人と周りに集まりつつあるフランソワ軍と帝国軍、社交ダンスでもしてるかのように俺たちは切り合っているがオッサン二人の社交ダンスってどんな罰ゲームだ?何でこんなことに?教えて見せろよ誰か、存在Xお前の出番だろ?ごめん、祈る誰かが減っていたんだもんなだから、聞こえるわけもないよな。可哀相に過疎配信者みたいな存在Xにそんなことわかるわけもない。過疎配信なのにコメント拾いもできないとかやる気あるのか?

 

 「これが終わったら着いていってやる!」

 横薙ぎにこちらはあの空中で受けた最上段蜻蛉の構えをする。痛い、衝撃を受ける、最悪骨が砕けるが防殻で肋にやつの刃を貰い受け止める。

 

 死ぬほど痛いが死にはしない。そのままに俺は叫んだ。

 「チェストぉぉぉぉぉ!キェェェェェェ!」

 

 物理法則と重力と腕力と握力のままに叩き下ろす刃は相手の頭蓋を叩き割った。

 

 「痛いな…」

 

 力なく大地に胡座をかくと見上げた空は青ざめていた。鈍痛のモールス信号が伝える電撃が肋で暴れてる。マジで骨折れたかもしれない。やるんじゃなかったなとまた青ざめた空を見上げた。

 





 痛そう
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