なぜこの大ルウタ時代にカタクリ様なのか、自分でも全く分からない。
解釈違いに注意。
pixivの方でも投稿してます。
「オフィリアさん、ビッグ・マム海賊団の船が来ました」
「そうか。わたしがいては、まとまる話も纏まるまい。これでお役御免だな」
「今まで本当にありがとうございました」
「感謝される筋合いなどない。わたしたちが負けなければ、お菓子を納めるなどということにはならなかったんだから」
「それでも、天上金よりも安く済みますので…」
村長からの感謝の言葉を受けながら、海を一望する。海賊として生きてきて、水平線は何度も見てきたが、最後の見納めにもなると、もの哀しい気持ちになってしまう。
「前もって話していた通り、わたしの懸賞金は自由に使ってくれ。」
「この国の守護者になってもらえませんか?あなたほどの人なら、どんな海賊でも蹴散らせましょう。」
「それはもう断っただろう。もう生きるのに疲れた。」
「……分かりました。」
「達者でな。」
村長に別れを告げて、島の中心部にある森へと足を進める。ビッグ・マム海賊団でも話の通じる奴が来てくれたらいいなと願いながら……
〇
生い茂る森の中で開けた場所にたどり着く。鬱蒼とした森にも関わらず、空から差し込む太陽の光を遮るものがないおかげで、光と闇のコントラストが生まれて神秘的に感じる。
戦場で護りたいものを守れず、死に損なったこの身だが、このような穏やかな場所で土に還るのも悪くない気がする。
自分自身への後悔と共に、沈むようにまぶたをとじる。
「今からわたしもそっちに行くからな。バカ弟子共。オヤジ。」
〇
「ハァハァ……! 何をやっている!? オフィリア!」
大きな声で目を覚ます。死後の世界では、大きな音で死者を起こすのが主流なのだろうか。辺りを見回してみるも、最後に見た景色と何も変わっていない。
……いや、先程まではなかった異物がある。
わたしの倍近い身長で、首に大きなストールを巻いている目付きの悪い大男が立っていた。
「どうした。そんなに慌てた様子で。」
「オフィリア、お前何をしようとしていた。」
「何って「何故だ!!」……未来を読むなよ。」
カタクリの鍛え上げられた見聞色によって会話の答えが先取りされて、奇妙な気持ちになる。そこまで慌てなくてもいいだろうに。
「そうだな。頂上戦争でオヤジやエースを守れなかったからだ。自分の身は守れても、護りたいものには手が届かなかったんだよ。」
「それでその体たらくか。失望させてくれるな!!」
カタクリは怒鳴りながら、右手に持った三叉槍『土竜』で突撃してきた。初撃は真っ直ぐ単調な刺突だったが、弐撃目、参撃目と続くほどに、未来を読まれているせいか避けれなくなり、武装色の覇気で右肩を硬化して槍が突き刺さるのは防ぐものの、吹き飛ばされてしまう。
「なんだその動きは。『柳もち』!!!」
「ウッ」
振り上げられた脚が、複数に増えて一斉に叩きつけられる。モチモチの実の力による、常人では有り得ない手数の攻撃には回避が追いつかず、武装色で硬化した腕を持ち上げて防ぐしかない。
「調子に乗るなよ、カタクリ!! 『鉄扇嵐風』!!!」
乱撃の隙をついて、腰に装備してあった鉄扇を振って、複数の斬撃を飛ばす。
しかし、見聞色によって斬撃の軌道を読まれてしまい、流動化されて避けられてしまう。
「どうして攻撃を当ててこない!」
「お前が避けてるからだろ!」
「違う!! 『角モチ』!!!」
5m近い巨体から放たれる武装色を纏った右ストレートを、同じく武装色を纏わせた鉄扇ではじき返す。よろめいたカタクリにそのまま回し蹴りを放つが、それは流動化して避けられてしまう。
「チッ」
「なぜ返事をしない。」
「なんの話だ」
「先程から訊いているだろ。なぜ見聞色の覇気を使わない!! 武装色も、覇王色も、見聞色もどれもお前の方が上だった。現に、武装色はお前が上回っているせいで、傷1つ入ってない。それなのに、何故見聞色だけは使おうとしない。俺もお前も未来を未来を見れるだろ。」
「それはぶ……」
「『武装色だけでも』なんだって?」
三叉槍による突きを防いだは良いものの、その勢いのまま接近してきて拳が放たれ、インパクトの瞬間に流動化されてら武装硬化でガードした部分をすかされてクリーンヒットしてしまい、勢いよく吹き飛ばされる。
「『無双ドーナツ』!!!」
地面から白いドーナツがカタクリの背後に2つ現れる。追撃の気配を前にして、体に染み付いた本能が危機感を訴える。戦闘が始まってから意識的に使わなかった見聞色が危険を前にして、無意識の内に発動していた。
〇
見えた景色は過去。未来を見せるはずの見聞色が見せるのは、わたしのトラウマだった。
粉塵が舞っている。
海一面に広がった氷が青く光っている。
鼻をつくのは血と硝煙の匂い。
涙ながらに船へと走る海賊とそれを追いかける海兵。
エースの救出を果たし、残された命令は新世界へ逃げ切ること。できる限り大勢を逃がすために、殿として最前線で戦っている自分。
過去の自分の身体に、今の自分の意識が入り込む。失われる命を救うために駆け出そうとしても、体は動いてくれない。ずっとその場で戦闘をしている。
続いていた戦闘の中で未来視が発動する。
10秒前。
周囲の海兵が沸き立つ。咄嗟に周囲の警戒をする。
8秒前。
何も起こらない。
7秒前。
違和感を感じ、背後を振り返る。視線の先にはエースとその弟と赤犬の3人が睨み合っている。
6秒前。
視線の先の未来が見える。
よろめいて膝をつくエースの弟。その隙を見逃さずに襲いかかる赤犬。それを防ごうと身を呈して庇うエース。そして、エースの腹部を貫通するマグマの拳。
ここからでも簡単に分かる。どんな医者でも助からないと断言するような致命傷だった。
5秒前。
全力で走り出す。
4秒前。
未来に変化は無い。まだわたしはそこに現れていない。
3秒前。
まだ距離がある。間に合わない。
2秒前。
未来が変わった。大きな叫び声が聞こえる。見える景色は変わらないが、エースを助けるきっかけに違いない。
1秒前。
エースの弟がよろめいて膝をつく。
見覚えがある。
赤犬が動き出す。
見覚えがある。
まだまだ距離がある。手を伸ばしても届かない。見える景色に変化は無い。
0秒。
赤犬の拳がエースの腹部を貫通する。溢れ落ちるマグマがジュッと地面を溶かす。
見覚えがある。
「アアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァ!!!」
伸ばした腕が力無く垂れる。膝から地面に崩れ落ち、両腕を叩き付けながら、悲しみで泣き叫ぶ。
この叫び声は2秒前に聞いた。
10秒前から変化した未来はエースの死に様を直接目にすることだった。手から命がこぼれ落ち、何も掴めない。未来を見たところで、手が届かなければ、知らないのと変わらない。
そこから先は単純だ。大将や中将達を相手にしながら暴れ回り、赤髪海賊団が戦争を止めるまで八つ当たりを繰り返し続けるだけだった。
トラウマはこんな景色を見せ続けて、わたしに忘れることを許さない。
〇
「『力餅』!!!」
意識が過去から現在に帰ってくる。トラウマを追体験した精神には、攻撃を対処する余力など残っていなかった。空中に浮かんだドーナツの輪から伸びてきた巨大な黒い腕に吹き飛ばされる。
「なぜお前が傷を負う!? お前が何をした!」
「何も出来なかったのが問題だ……」
「違う!! 悪いのは『火拳』だろ!! 赤犬に殺されたのはそいつの実力が足りなかったせい!! 自分の力を過信した雑魚だっただけの話だ!!」
「……カタクリ、言っていい事と悪い事があるのを知らないのか。」
「俺だったら負けなかった!」
「……ッ」
「『焼き餅』!!!」
力強い宣言とともに、カタクリの右腕が炎を纏って飛んでくる。その言葉と燃え盛る炎に思わずエースを重ねてしまう。
あれはいつだったろうか。エースが2番隊隊長に就任する少し前だったか。気まぐれで訓練をつけた時の記憶が蘇る。
『弱いな。強いやつだと聞いていたが、所詮は
『ふざけんな。おれはまだ負けてねぇ!』
『ボロボロで今にも死にそうなくせにか。』
『弟と約束したんだ。強くなれば仲間は誰もいなくならない。だから、おれは絶対に負けないし、死なねぇ!!! 』
『吠えたな、未熟者。反故にするのは許さんぞ。』
『当たり前だァ!!』
「カタクリ……お前も同じことを言うのか。」
「俺は『火拳』とは違う。決して死なないし、負けない。」
「そう言って、エースもわたしの手の届かない場所で死んだ。」
「それなら、お前は一生俺のそばにいろ!!お前の手が届く距離で、目をそらすことなく俺を見ていろ!!」
「……そうか。その言葉、反故にするのは許さんぞ。」
「当たり前だァ!!」
カタクリの宣言に、重苦しかった心が軽くなる。エースを守ることが出来なくて、何も成し遂げれなかった無価値な自分にもう一度チャンスをくれるというのだ。勢いだらけのセリフだが、それだけで闇の中に沈んで弱りきっていた心が救われる。
ストールで口元を隠しているせいで顔からは判断がつかないが、見聞色で必死に平静を保とうとしているのが伝わってくる。カタクリにとっても恥ずかしかったのだろう。見た目だけは取り繕おうとするその姿が愛おしくて仕方ない。
「突然の愛の告白だが、なかなかどうして嬉しいじゃないか」
「……そんなつもりは」
「顔が赤くなってるぞ」
「なッ」
「冗談だ。おっ、今度こそ赤くなったな」
「オフィリア、貴様ァ!!」
自分でもいつもの調子を取り戻しているのが実感できる。それがカタクリにも伝わっているのだろう。怒ったように見えるが、嬉しそうなのが手に取るように分かる。カタクリの告白がこんなにも心を癒してくれるなんて、思ってもみなかった。
しかし、普段の調子が戻ってくるにつれて、このまま思い通りに進ませるのは性にあわない気持ちがふつふつと湧いてくる。そもそも、先程までボコボコと殴られていたのだ。やり返さなければ気が済まない。
「カタクリ。この先お前と一緒にいるのもやぶさかではない。だが、お互いに海賊だ。欲し」
「分かった。受けて立とう。」
「お前の覚悟をわたしに見せてみろ。『黒扇神楽』!!!」
両手に扇を持って、カタクリに向かって走り出す。そのまま少し飛び上がって、上から扇を叩き付ける。鉄扇を弾かれて距離ができると思われた瞬間、即座に月歩で再びゼロ距離に戻って鉄扇を打ちつける。これを繰り返していく。地上に落とされたなら、今度は剃で下段から組み立てていく。
前後左右、それに加えて上下から、無数の攻撃を押し付けて、相手から対応する選択肢を奪っていく連続攻撃。未来を読んで相手の動きを把握することによって、常に密着して至近距離から攻め潰して相手の反撃を許さない演舞。
「おいおい、どうした!? 未来視に頼りきって反射神経が鈍ったんじゃないのか?」
「まだまだ!!」
「ハハッ!!楽しいなァ!!」
思った以上に粘るカタクリに笑みが溢れる。
お互いに未来視の使い手である。そのせいで、こちらが相手の動きが分かるように、相手もわたしの動きが分かってしまい、一見すると互角なように見える。しかし、攻撃を押し付けるこちら側に主導権があるのに加えて、見聞色でも武装色でも、こちらの方に分があるおかげでより深い精度で、より重い攻撃を繰り出すことが出来る。
だが、思った以上に差が広がらない。わたし自身に先程までのダメージが残っているのに加え、実力以上にカタクリが粘っている。
このままではこちらの体力が先に尽きると思われたところで、突然未来のカタクリの動きが鈍る。
斬撃をギリギリで避けるものの、ストールが切り裂かれてカタクリの大きく裂けた口が露出する。それによって、何を思ったのか分からないが戦闘中にも関わらず、急に動揺して見聞色を乱して攻撃をモロにくらい始める未来が見えた。
「なぜ戦闘中に気が緩む!」
「俺は油断などして……!?」
わたしが見た未来に遅ればせながら気づいたのだろう。言葉が止まる。
先程見た未来がいま訪れる。ストールが切り裂かれて、カタクリの口元が露出する。しかし、警戒していたのだろう。動揺を抑えて、先程の無様な未来を凌ぎきった。
「よく堪えた。だが緩んだな。」
「なッ!?」
「これで終いだ。」
未来の敗北を無かったことにできて、安心できたのだろう。山場を越えたと錯覚して、張り詰めていた警戒心を弛ませる。しかし、元々上回っていたのはわたしなのだ。紙一重だった差が途端に広がり、ついにはガードをはじき飛ばして、連撃を叩き込み、硬い腹筋に守られていたお腹を大きく蹴って吹き飛ばす。
ダメージが大きいのだろう。いかにも限界といった様子で、フラフラになりながら立ち上がる。そんなカタクリに悠然と近付いていく。
「早速わたしに負けたな。」
「まだ……戦える」
「そんなにボロボロだと、覇気も使えまい。」
「……覇気…がなく、とも……」
「まぁ、わたしとの闘いだけはノーカンにしといてやる。これからも訓練でボコボコにするだろうからな。」
立っているのがやっとなカタクリの上着を掴んで、足払いをかける。そのまま膝をついたカタクリの上着を引っ張って、カタクリの顔を無理やり近づけ、唇を奪い取る。
動揺するカタクリの口を無理やりこじ開けて、舌をねじ入れる。そのまま粘膜の塊に絡みついて、舌先でねっとりと舐り倒し、歯茎から口蓋まで隙間なく愛撫する。お互いの甘露が混じり合う中、血の味がアクセントとして溶け込む。赤面して狼狽えるカタクリが愛おしくて、息が続かなくなってからようやく解放する。
「……なっ、ナニを。」
「お前の誘いに乗ってやるということだ。これからはずっとそばにいるからな。吐いた言葉に責任持てよ、カタクリ。」
耳まで赤くなったカタクリを前に、いたずらごころが止まらず、次も未来視ができない時にしてやろうと心に決めた。
ブクマや評価、感想などが貰えるとモチベに繋がります。