天災幼馴染によってTSした男子高校生の動画配信者的日常   作:九十九一

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配信2 ――初配信(表)――

【(実質)初配信】杠奏【一般研究員】

 10,729人が視聴中:特科研天災ラボ チャンネル登録者数 1,095人

 

:TSドッキリ動画から

:企業でも何でもない無名のチャンネルの接続者数じゃねぇw

:ドッキリやばかったよなぁ、あれ

 

(桁、バグってない……?)

 

 配信三十秒前、杠葉要こと、杠奏は現在の登録者数と同時接続数を見て、頬を引きつらせる思いだった。

 

 あんな形で動画配信者として出演させられるなんて、今までの人生を振り返っても『絶対ない』と言い切れるほどには、内輪だけで済んでいたのだが、今回ついに、内輪だけで済まなくなったことを改めて理解し、ものすごく……魂を体から飛ばしたくなった。

 

 だがしかし、ここまで来てしまった以上、今更引き返すことなど不可能。

 腹を括った奏は、なるべく綺麗な笑顔を浮かべようと努めた。

 

 そして、遂に配信開始。

 

「え、えと……み、見えてるかな? これ」

 

 カメラを覗き込むような仕草(いわゆるガチ恋距離というもの)を見せながら、奏はそう呟く。

 

:見えてる見えてる!

:ついでに、谷間が見えそう

:よっしゃ! 遂に始まった!

:これを待ってた!

 

 配信開始前から、コメントがちらほらとあったコメント欄は、それなりに至近距離にいた奏の登場に一気に湧いた。

 

「よかった。えと、それじゃあ早速……画面の向こうのみなさん! 改めまして、特科研天災ラボ研究員、(ゆずり)(かなで)です! 今回の配信では、主に僕の自己紹介と質問コーナーをする予定ですので、最後まで見ていってくださいね!」

 

:僕っ娘キタ――(゚∀゚)――!!

:可愛い見た目して僕っ娘とか、最高かよ!

:質問は何でもいいんですか!?

 

 などなど、奏の発言に対して付いたコメントは、大体こんな感じ。

 大体が僕っ娘に食いついた。

 

 奏自身も、

 

(え、そこに食いつく!?)

 

 と内心ツッコミ(?)を入れた。

 

「と、ともあれ、まずは簡単な自己紹介をしたいと思います! 名前は杠奏です。年齢は……秘密。血液型はA型です。誕生日は、七月七日の七夕! 趣味は……料理ですね。あ、家事全般も得意です」

 

:家庭的な美少女……イイッ!

:銀髪美少女……ハァハァ

:↑通報しますた

:七夕ってことはきっと、織姫の生まれ変わりか何かかな! 可愛いし!

:お前天才か

 

 ある意味、謎の盛り上がりを見せるコメント欄。

 それを見ている奏は、ちゃんと面白いかな? と心配になっているが。

 

「好きなものは、平穏。あとは、ゲームとかマンガ、アニメなんかも好きですよ。反対に、嫌いなものは……うーん、あまりにも騒々しすぎる状況、とかかな? 僕の日常は、全体的に騒がしいので」

 

:ドタバタ系主人公か

:まあ、あんなドッキリを仕掛けられるくらいだし

:普通に楽しそうだけどなぁ

 

 などなど、奏の嫌いなもの発言に対して、このような形で

 

「簡単な自己紹介は終わりにして、次は質問コーナーに行きます!」

 

:待ってました!

:はいはい! 恋人はいるんですか!?

:馬鹿野郎! そんなことを訊くんじゃねぇ! 夢がなくなるだろうが!

 

(なんで?)

 

 いきなり質問が出てきた上に、それらが恋人に関することだった。

 もっと言えば、その質問に対し、明らかに否定的(?)なコメントも見受けられたため、奏は困惑した。

 

「え、えーっと……と、ともかく、最初は事前にSNSで募集した……って、え、いつの間にそん

なことを!?」

 

:知らなかったのかw

:あれか、編集者かマネージャー的存在が勝手にやった感じ?

:わざと知らされてなかったんだろうなぁw

 

 カメラの裏で京也が見せているカンペに、SNSで募集していた質問を返答しろ、と書かれていたのを見た奏が、思わず素でツッコんでいた。

 

「な、なんだかそういう事みたいなので……いくつか返答していきますね。まずは……こちらの質問。『動画配信者になろうと思ったきっかけを教えてください』とのことですね。あー……これに関しては、かなりアレと言いますか……ぶっちゃけてしまうと、別に僕から配信者になろうと思ったわけじゃなくて、このチャンネルを作った元凶の二人が原因と言いますか……半ば強制的にこうしているだけ、と言いますか……そんな感じです」

 

:強制的なのに、結構ノリノリで草

:つまり、嫌よ嫌よも好きの内、というあれだね!

:ある意味でドM

:銀髪家庭的僕っ娘美少女は、ドMだった……?

 

「ドMじゃないよ!?」

 

 コメントでドMと言われたが、奏は顔を赤くして全力で否定。

 

「ま、全くもう……。え、えーっと、じゃあ次です。次は……これにしますね。『ドッキリ以降からすごく気になってたんですが、奏さんは男なんですか? 女なんですか?』という質問ですね……」

 

:お! 全視聴者が気になってた質問じゃん!

:普通に考えてドッキリだから、実は兄妹説を推すね

:逆に男の娘であってほしい!

 

 三つ目に選ばれた質問は、奏の性別についてだった。

 

 まあ、この世界は別段、『TS病』とか、異世界で魔王から呪いを受けて帰ってきた某男の娘がいるような世界ではなく、比較的普通の世界だ。

 そのため、性別が変わる? ハッ! 寝言は寝て言え、みたいな感じなので、あのドッキリが本物なのか、それとも動画的演出なのか、と議論が交わされていたのだ。

 

 一応、あの配信は生放送ではあったが、あらかじめ撮影していた、もしくは卓越した加工技術を持つ者が、放送と同時に何かした、という説が有力候補だった。

 

 しかし、それでも実はあれは本当なのでは? と思う者もいるわけで。

 

 この質問を受け、奏は迷った。

 果たして、これを素直に言ってもいいのか、と。

 

 悩んだ奏は、助けを求めるようにカメラの向こう側の京也を見る。

 

 すると、

 

『まあ、うん。言ってもいいってさ。ってか、何があってもうちのグループでもみ消すから!』

 

 と書かれたカンペを見せていた。

 

 その内容に少し複雑な心境になりつつも、奏が口を開く。

 

「僕は男です!」

 

 自信満々にそう告げた。

 しかし。

 

:いやー、その胸で男はなくね?

:自分を男だと思い込んでる一般銀髪美少女

:可哀そうに……

 

「なんで!?」

 

 全員、まともに取り合わなかった。

 その原因は十中八九……奏の胸にぶら下がっているでかい二つの膨らみだ。

 

「いや、あの、僕、本当に男なんだけど……」

 

 と、視聴者にそう言うも、

 

:胸元から見える肌色の谷間が、ね

:実はあの時の男の娘の妹です! って言われた方がまだ現実的

:いやー、なかなかに面白い新人が現れたなぁw

:これで下にアレがついてたら怖い――いや、普通にありだな

 

 やっぱり、まともに取り合わなかった。

 

 奏、ちょっと泣きそうになる。

 

 尚、特殊な変態がいた気がするが、そこは全力でスルーした。

 

「……違うもん……僕、本当に男だもん……友達のせいで、こうなってるだけだもん……」

 

:あかん、泣きそうになってるのがクッソ可愛い

:ぐはぁっ

:KA☆WA☆I☆I!

 

 ちょっとだけ泣き顔になる奏を見た視聴者は、その謎の可愛さに軽く撃ち抜かれた。

 

:ところで、次の質問はー?

:おい、空気読まない奴がいるぞw

:いや、ここは逆に読んでるんじゃね?

 

「そ、そうだったね! つ、次の質問に行こ! え、えーっと、それじゃあ……」

 

 これ幸いにとばかりに、奏は次の質問を物色し始める。

 当たり障りのない質問を見つけ、それを選択。

 

「『スリーサイズはいくつですか?』……ってぇ! なんで、僕今これ選んだの!?」

 

:自分で選んでおいて、自分でツッコミは草

:待ってました!

:いくついくつ!? すでに、でかい胸部装甲が見えてるぜ☆

 

 どういうわけか、明らかあっち方面の質問を選んでしまった奏。

 口に出し終えるまで、何一つとして疑問視することをしなかったにもかかわらず、言った直後に自分でツッコミを入れた。

 

「あ、あの、無し! この質問はなーしー! 僕、絶対言いません! というか、知らないし!」

 

:ぶーぶー

:自分で言ったのに、反故にするとは……

:はっ、これが新手の焦らしプレイ!?

 

「何言ってるの!? そういうのじゃないからね!?」

 

:やべぇ、律義にツッコミを返すのがおもろいw

:なるほど、視聴者のボケをすべて拾っていくスタンス……嫌いじゃないぜ!

:いやー、ツッコミ気質っていいよなー

 

 などなど、先ほどから主にツッコミばかりの奏を面白がる視聴者たち。

 奏はすごく……複雑である。

 どうするべきか、と対策を考えていると、京也が何やらカンペを見せてきた。

 

 そこには、

 

『まあ、うん。とりあえず、お前のスリーサイズは上から90、58、84のボンキュッボンだ! とりあえず、これ言っとけ! あ、身長は154センチな』

 

 そう書かれていた。

 

 この時奏は、

 

(一体いつ、僕のスリーサイズを測ったんだろうか)

 

 と思ったそうな。

 

 だがしかし。

 いくらスリーサイズを知ったからと言って、さすがに言うわけにはいかない。

 

 そう思った直後。

 

「う、うぅ、す、スリーサイズを言うよ……?」

 

 なぜか、スリーサイズを言うと言い出した。

 

:マジっすか!?

:謎に速すぎる変わり身。俺でなきゃ見逃しちゃうね!

:情緒不安定なんか?

:自律神経、大丈夫?

 

 これには、コメント欄も大盛り上がり。

 それを見つつ、奏は顔を真っ赤にし、瞳を潤ませながら口を開く。

 

「う、上から、90、58、84、です……はぅぅ! なんでこんなこと言っちゃってるの僕ぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

:うおおおおおおおおおおおおおお!

:でけぇ! そして、すんげえボンキュッボン!

:やっば! 美少女なのに、スタイルいいとかそれなんてエ〇ゲ?

 

 祭りになった。

 

「な、なんで僕さっきから、自分の意図してないことを……ハッ! ま、まさか……!」

 

 何かに思い当たった奏は、バッ! と顔を上げてある一点を見つめた。

 そこには、ひゅ~♪ ひゅ~♪ と軽やかに口笛を吹くマッドサイエンティスト幼馴染の姿があった。

 

 しかも、その手には謎のアンテナが付いた機械があった。

 

「…………ひ~な~?」

 

:ん? ひなって誰?

:さぁ? あれじゃね? 編集者的な

:なる

 

 突然現れた謎の人物の名前に、コメント欄は少しだけ盛り上がる。

 

 だがしかし、次の奏の一言で、別の意味で盛り上がることに。

 

「……そこのアシスタントさん? ちょ~~~っと、そこの後ろのお部屋にあるニトログリセリン、持ってきてくれる~?」

 

:ちょっ、今やべぇ有機化合物の名前が聞こえたんだが!?

:それよりも、なんでそんなもんがあんの!?

:冗談だよな? さすがに冗談だよな!?

 

 にこやかな笑みを浮かべつつ、奏はカンペを見せている京也に脅迫じみた声音でニトログリセリンを持って来いと告げる。

 

 もちろん、それに反応した視聴者たちは、面白がりつつも現実で冷や汗を流していた。

 

 とはいえ、前回は性転換ドッキリなどという、面白おかしいものだったため、これもドッキリの一つだと捉えるものが多数。

 

 その結果、

 

:よっしゃ! もっとやれ!

:これは面白くなってきた!

:これは絶対に伝説の瞬間に立ち会ってる!

 

 と、さらにお祭り騒ぎに。

 

 その中には、動画を拡散しようとするものが現れ、最初の視聴者数からさらに人数を増やしていた。

 

 ちなみに、奏はそんなことに目もくれず、京也を脅していた。

 

「いつもいつも僕を操って……今日という今日は許しません! この家にある、ありとあらゆるニトログリセリンで爆破します!」

 

:なんて物騒なんだ!w

:なるほど、この人はニトログリセリンの擬人化だったか

:いやそれもう、某ブロックゲームに出てくる匠だろ

 

「あ、ちょっ、奏たんまたんま! 今回のはちょっとした悪ふざけ――」

「問答無用! ぶっ飛んじゃえ~っ!」

 

 そう言って、奏は普通に投げようと行動に移したが、なんとか京也の説得と陽菜の必死の土下座により、矛を収めることとなった。

 

 さすがにこの空気の状態で配信を続けるのはあれだし、かなりのインパクトは残せた、とのことで配信は終了させることに。

 

「――というわけですので、これからは様々な実験や雑談、ゲーム実況等を行っていくつもりですので、今後ともよろしくお願いします! 動画投稿の情報・進捗に関しては、動画説明欄にSNSのURLを張っておきますので、そちらで確認してくださいね! チャンネル登録、高評価をしてもらえると、一層実験に身が入りますので、よろしくお願いします! それでは、また次の機会に! バイバ~イ!」

 

:乙でした!

:面白かった!

:久々に爆笑したわw

:次も待ってるぜ!

 

 そんなこんなで、なんとか無事(?)に初放送を終えた奏たち『特科研天災ラボ』。

 配信中の奏の不可解な言動の原因は、陽菜が発明した『言動操作』をするという機械によるものだった。

 

 それにより、奏からの罰が落ちることとなり、おやつと好物が三日間禁止となり、陽菜は涙を流すこととなった。

 

 尚、今回の配信は終盤なかなかにぶっ飛んでいたためか、奏は『ニトログリセリンの擬人化』とか『ニトログリセリン姫』とか『カナデグリセリン』とか言われるようになり、SNSのトレンドに『ニトログリセリン』を入れる結果となった。

 

 それを知った奏は、酷く後悔したそうな。

 

 こんな感じに、かなりの反響を得られたが、奏は何かを失うこととなり、死んだ魚の目をするのだった。




 どうも、九十九一です。
 とりあえず、これにてストックが尽きました。ですので、次回以降はほぼほぼ不定期です。
 あと、この作品は私が書く中では特殊な部類になる予定です。
 最初の回で言ったかは忘れましたが、配信回の時のコメント、何か面白いコメントがあればそれを参考にしたいなー、なんて思ってます。というか、それを上手い具合に話に組み込んで作りたいなと。
 まあ、明らか無理そうなんで、スルーで大丈夫です。
 さて、次の投稿ですが……まだ一文字も書いてません。なので、いつになるかはわかりませんが、極力早めに出しますので、少々お待ちください。
 では。
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