神様転生したけど、冷静に考えたら幽霊とかお化けが怖いので超絶除霊チート能力をもらった。 作:尋常時代
その出会いは必然だったのか。それとも偶然か。だが、それがどちらであろうと関係ない。
だってもう決まっていることだから。
そして──
そして、物語は始まる。
「なぜ君が、ここにいる……?」
「そりゃあ、こっちのセリフだぜ、神主さんよお」
──────────―
あの式畜生の抗議のお手紙を破り捨てて、寝ようかと思い布団にはいったところまでの記憶はあるのだが、ならば次に目にはいるべきものはすっかり慣れた我が部屋の天井であるはずだ。だがしかし、俺の目に入ってきたのはやけに解放感に満ち溢れた、というか溢れすぎて天井が壊れたのか、そこにはあるべき暖かな天井ではなく、あまりの寒すぎる満点の夜空が広がっていた。
俺が当然ながら疑問をもった。ここは何処? まるで記憶喪失か、酔いどれて前後不覚になった大学生のような、まるで面白さのない感想が頭のなかを占拠した。
はてさて、俺をここにつれてきたのはいったいなにの仕業なのか。神隠しなのか妖怪の仕業なのか、それとも狐に化かされたのか。なんともまあバラエティーにとんだ容疑者の数々である。これが前世ではあればもっと数を減らしたに違いない。
「体がいてえ……」
寝床とするにはあまりにも固すぎる地面から身を起こす。
体についた汚れを落としながら首を回して見る。どうやらここは、公園らしい。見覚えのある遊具があるので、どうやら家の近くらしいことがわかった。だが、ここにいる理由だけが全然わからない。
くしゃりくしゃりと、身動きと共に、ポケットの中から紙が擦れるような音が聞こえてくることに気づいた。おいおい、やるじゃないか。俺は過去の自分を誉めた。今の状況からして、さしずめこれは過去の自分からのメッセージに違いない。
これを見れば、聡明な過去の自分によって犯人が明かされるに違いない。そう思ってポケットの中にあるくしゃくしゃの紙を取り出して読む。
「お前も外で寝て体を痛めろ シロより」
因果応報。そこに書いたあったのは、呪詛の言葉だった。というか、昨日掃除したときの紙と同じ筆跡だった。というか、隠す気など毛頭ない犯行予告状ならぬ犯行遂行状だった。よく見れば、犯人の名前も添えてあった。犯人は明白だった。
俺はキレた。居候の癖にこのような暴挙に出るとは。家の中にすら入れてはいないのだが、俺の現状をどこかでほくそ笑みを浮かべ、受かれているであろう少女を思い浮かべると、怒りがあふれてきた。
俺は自分のことは棚にあげ、少女を探すのだが何処にも見当たらない。上手く隠れやがって。どうやら茂みに隠れるのは相手が一枚上手らしい。一日の長があるのだ。
しかし、ここで怒りをぶつけていても仕方がない。相手がいないのであればとんだ一人相撲である。見物人もいないのであれば滑稽この上ないだろう。次に見かけたなら絶対にクーリングオフしてやるぞと、改めて心に刻み、現状を把握するために考え始める。
時刻は午前二時。場所は公園。自分以外に人間の姿はない。
この状況、普通なら家に帰ってもう一度寝れば良いと思うのだが、時間的に家に帰りインターホンを押すのも憚れる。というかどうやって説明すれば良いのか全然わからない。だが、幸いというべきか、うちの親は二人とも朝早くからの出勤なので、俺を起こすことなく家を出ていくのだ。俺の不在はバレないだろう。
つまり、俺はこの公園で時間を潰し、なんとかして朝早くから家を出る親の隙をついて家に戻らなければならない。いや、普通に考えて無理じゃない? 普通に帰れば? とかなんとか外野の皆様方はお思いになっているのだろうが、よく考えてほしい。一月のこの時間は普通に人が死ぬ気温である。つまり寒すぎて頭が回っていなかった。
あまりに寒すぎたのか、それとも余りの怒りに気がくるってしまったのか。いつの間にかこの無人の公園にいた子供のような人影がいた。あまりの寂しさに生み出した幻覚なのかもしれない。
「ねえ、君誰なの?」
「……」
無視されてしまった。
「ねえってば」
「……」
やはり無言のままだ。一体全体どうしたものなのか。とりあえず、この子も寒さに震えているようだ。このまま放っておくのは忍びない。しかし俺も凍えるのはごめんなので、何とかならないものかと考え、ふとあることを思い出す。そうだ、あれがあったではないか。俺はポケットから先ほどの紙を取り出して彼に見せる。そして紙飛行機を作って彼に飛ばして見せた。子供は紙飛行機が好きなのだ。
彼はやはり無反応だった。
もはや俺に打つ手はなかった。友達が少ない俺は、遊びのレパートリーがあまりに少ないのである。伊達に生まれてこの方友達というものを作れたためしがないのだ。俺は悲しくなった。自分が生み出した幻覚にまで無視されてしまうとはどれだけ自分はつまらない人間なのだろうか。
その時だった。
「下がっていなさい」
公園の外から、渋く低い声が聞こえてきた。俺が突然のことにびっくりしていると、その言葉が発せられた瞬間、まるで時間が止まったかのように、その少年は動きを止め、声を発した人物へと向き直った。
そこにいたのは、闇夜に溶けているかのような、黒く艶やかな髪をたなびかせ、きらきら光る魔法のステッキを携えた、全身ピンクのフリフリ魔法少女物の巫女服を着た壮年の男性だった。というかあの神社の神主だった。
何してんのこの人? この町には成人の儀式のために自分の変態性をアピールするイベントでもあるのだろうか。自分の中の変態を見据えて、受け入れることが大人になるということなのだろうか。
そんなことを考えていると、神主さんは、手に持っていたステッキをクルリと一回転させると、地面に突き刺しこう言った。
「へんし~ん! 魔法神主マジカル☆ブラックスター参上! 神に代わってお仕置きじゃ!」
どうやら俺の知り合いでは無いらしい。よかった。どうやら俺は幻覚を見ていたらしい。いや、夢だと考えたほうがいいのかもしれない。でなければどうしてこんな時間にこの人は外にいるのだろうか。ああよかった、これは夢なんだな。
俺は現実逃避をした。自分のほっぺたをつねりにつねって夢から覚めようとした。痛かった。そして夢から覚める気配もなかった。というか現実だった。俺は泣いた。何もかもが嫌になって泣いた。というよりなんで神社で働いているはずのこの人が深夜に魔法少女のコスプレをしているんだろう。というかもう変身しているのに魔法少女の変身バンクを俺に見せようとしていたように思えるのだが、俺は幻覚を見ているだけであって、もしかして俺は自分でも知らないうちにストレスを溜め込んでいて、心の中で魔法少女に憧れていたりするのだろうか。
魔法少女はいるんだよ! とでも言いたいのだろうか。そう考えるとこっちまで恥ずかしくて死にたくなるので止めて欲しい。
「大丈夫だったかのう? もう大丈夫じゃ! 魔法神主マジカル☆ブラックスターが来たからにはもう安心なのじゃ!」
そう言って目の前の神主はこっちを見た。そして言った。
「なぜ君が、ここにいる……?」
「そりゃあ、こっちのセリフだぜ、神主さんよお」
それは、考えられる限り最悪の再開だった。
神主さんの衝撃的な登場により、凍えることも忘れて立ち尽くしていた俺だったが、少し落ち着いてきたところで、ようやくまともに観察できるようになってきた。
──どうしてこんなことになったんだろう。
俺は、目の前にいる男の顔をまじまじと見つめる。男は俺よりもずいぶんと高い背丈をしていた。黒く艶やかな髪は腰まで届くほど長く、毛先まで整えられている。体格もよく、顔立ちも整っている。きっと女性にはモテるタイプなんじゃないだろうか。俺も別に自分の容姿が悪いとは思っていない。むしろ、良い方だと自負している。しかし、この男に勝てる気はまったくしなかった。まるで、大人と子供だ。まあ、その通りなのだが。
というよりもその恰好が問題だった。なんなら社会に問題提起した方がいいんじゃないかと思うぐらいに問題があった。
神主さんは、その格好にまったく違和感がなく、それが当たり前のように、そのコスチュームに身を包んでいた。その姿に俺は呆れ返った。確かに、その服は素晴らしいものだ。どこから見ても完璧に仕上げられている。
だがしかし、それは、あくまで普通の女の子が着ていた場合の話だ。この男は違う。それこそ、どこからどう見てもコスプレにしか見えないのだ。そんな男が深夜に歩いていたらどうなるだろうか。答えは簡単だ。警察に通報される。それだけでは済まない。間違いなく逮捕されるだろう。それに、神主さんは今、魔法神主と名乗っている。そんなものを信じるのは余程の馬鹿か、頭がおかしい奴だけだ。
俺も初めは幻覚だと思い、無視しようとした。しかし、幻覚は俺に話しかけてきたのだ。その時点で、すでにこの世界は非現実的なものだったが、これ以上非現実的になってもらっては困る。というか俺の常識が壊れてしまう。なので、この男の存在自体を否定しようと思ったのだ。しかし、その行動を起こす前に、俺が声を発するよりも先に、神主さんはこう言った。
「魔法神主マジカル☆ブラックスター参上! さぁ! 覚悟しろ! 悪霊ども!」
なんで同じ口上を繰り返したの? 何か反応したらよかったの? 俺はもう何も言わなかった。俺は何も見ていないし聞いていない。そうやって現実逃避をしてやり過ごそうとした。だって無理でしょ。こんなのどうしようもないじゃん。
そもそもこの人なんなの? なんで神主が魔法少女のコスプレしてるの? しかも何気に完成度が高いし、動きにも隙がない。無駄なこだわりを感じる。というかどうしてそこまでするの? 本当に意味がわかんないんだけど。というか何しに来たの? 俺の疑問は尽きないが、神主さんは話を続ける。
「お前たちの思い通りにはさせないのじゃ! さあ! 大人しく成仏するがいい! うぉーりゃああああああああ!!!」
なんか、よくわからないけど必殺技っぽい掛け声を発しながらステッキをクルクルと回し始めた。ステッキを回すたびに辺りに星が飛び散り、ステッキの先で火花が散る。俺は、その様子をただじっと眺めているしかなかった。
そして、ついにクライマックスの時が来たようだ。
「悪を滅せ、聖なる雷よ、今ここに集え、悪しきものに裁きの鉄槌を、悪を滅ぼす光となりて、我が敵を撃て! マジカル☆ブラックサンダー!!!」
そして、杖から放たれた雷撃が悪霊を直撃した。悪霊は一瞬にして消え去ったように見えた。というか俺は、神主さんが何をしたのかまったくわからなかった。何もかもが突然過ぎて理解が追い付かなかった。俺はもう考えることを放棄した。というか考えたくない。もう全部夢であって欲しい。お願いだから。俺は祈った。俺は願った。俺は必死に目を閉じて現実逃避をしたのだった。
だが、この悪辣なる現実がそのような生ぬるい考えを許すはずもなく、悪夢のような時間が過ぎ去るのを待つ俺に対して、神主さんはとどめの言葉を放った。
「さて、次は君だね」
ふざけろ! 俺は心の中で叫ぶ。そして、全力で拒否した。嫌だ! 絶対に嫌だ! 俺はこのまま平穏無事に暮らしたいんだ! 俺は叫びたかった。だが、叫べなかった。声が出せなかった。恐怖のあまり体が震えている。足がすくんで動けない。呼吸が乱れ、動機が激しい。目の前には得体の知れない男がいる。幽霊や妖怪ならばともかく、このような人間の変質者に対して俺には戦う力はない。俺には対抗する手段がない。俺は、無力でちっぽけな存在だ。
神主さんは俺に近づいてくる。その手にはいつの間にか棒のようなものが握られていた。淡い光が溢れている。俺は思わず後ずさりする。神主さんはそんな俺を見て微笑む。とても穏やかな笑みだった。
「大丈夫だよ。怖くないから。痛いのは最初だけさ。すぐに気持ち良くなるから」
神主さんは俺にゆっくりと近づき、そして……俺はその光景を見続けることしかできなかった。
「あれ? なんともない」
おかしい。体が暖かい。先ほどまで寒くて死にそうだったのだが、何か棒のようなものを押し込まれたかと思うと体の中からじんわりと暖かさが伝わってきた。気がつくと寒さもなくなり気分爽快になった。
俺が戸惑っていると神主さんは説明を始めた。
「それは私が作った魔法のステッキだよ。私の力を込めたね。名前はマジカルステッキ。 誰かを助けるための道具なのさ」
神主さんは得意げに語る。
「私のエネルギーを君に注いだのさ。どうだい? 少しは楽になったかい?」
神主さんの言う通り、身体は軽くなった気がする。確かに体は軽いし、なんだか力が湧いてきそうな感じがする。気分は最悪だが。
何で魔法少女のコスプレをしている奴に霊的な力を注入されないといけないのだ。意味不明すぎるだろう。そもそも俺はこんなの望んでいない。というか何で神主さんはこんなことをしているんだ? 謎だらけだ。俺が考えていると神主さんは質問してきた。
「ところで、君はどうしてこの公園にいるのかな?」
何でって言われても説明に困るんだけど。まさか家を追い出されたとも言いづらい。だから俺は黙った。だって、黙ってたほうがカッコいいのだ。この状況で何もわかってませんなんて言いづらくて仕方がない。なので、ここはあえて、自信満々な態度でいこうと思う。
神主の、その視線はまっすぐにこちらに向けられている。俺がどう答えるのか、期待しているのかもしれない。
だが、その気持ちに応えることはできない。
俺が黙ったままでいると、神主が先に言葉を発した。
「できれば、今後、このようなことには、君は、手を出さないでほしい」
真剣な眼差しである。俺のことを心から心配してくれているのだろうか。そうだとしたら、ちょっと嬉しいかもしれない。
「君のような子供が、関わってはいけないことなのだ」
俺が、子供だから手を出すなってこと!?
俺は怒らなかった。いや、確かにその通りでは? 俺だって小さな子供に命の危険があることを頼まないしな。俺は目の前の男を少し見直した。変な格好をするだけの変態ではないのだ。いや、その恰好は変態だろ!
とも思ったが、とりあえず今は置いておこう。
できるだけ偉そうな感じの声を意識して出した。
「ふん、お前の指図を受けるつもりはない」
決まった! 俺は心の中でガッツポーズをした。しかし、神主さんは厳しい表情のままだ。
「君には、力があるのはわかる。でも、それは、使い方によっては、大変なことになる」
まあ、そりゃそうだよな。そんなこと言われなくてもわかっているけどさ。
「それに、そういうことは、大人に任せるべきだと思う」
ごもっともです。俺は思わずうなずいた。だが、ここで引き下がるわけにもいかない。
「だけど、それじゃ神主さんが危ないときに、助けられないだろ?」
神主さんは驚いたような顔をした。そしてしばらく考え込んだあと口を開いた。
「私が、危なくなったときか……。それはいつのことかな?」
えっ、それはわからないけれど、警察に捕まりそうになったときとか? 俺を助けてくれた人が逮捕されてしまうというのは避けたいところだ。神主さんは何か考え込んでいる様子だ。そして、ふと顔を上げた。
「君が、どれだけ、すごい力を持っていたとしても。どれほど簡単にことを済ませることが、できるのだとしても。それでも、私は、君に頼みたくはない。これは私の問題だ。私がなんとかしなければならない。だから、お願いだ。君だけは、何もしないでくれ」
──
俺は、もう何も言わなかった。神主さんは俺のために、俺を巻き込まないために言っているのだ。俺もそこまで言われたらこれ以上は何も言えない。
俺はおとなしく神主さんの言う事を聞くことにした。
神主さんはほっとしたような、どこか残念そうな、複雑な表情をしていた。
「だけど、俺は助けられるなら、助けます」
俺はそう言った。別に神主さんのためじゃないし、自分本位なだけだ。
俺の言葉を聞いた神主さんはため息をついた。それから少し笑った。
俺もつられて笑ってしまった。
俺と神主さんはお互いの顔を見て笑い合った。
何となくいい雰囲気だったから、気になっていたことを聞いた。
「その恰好は、何か意味があるの?」
「いや、趣味のようなものさ」
け、警察!!!!!!!!
あの恐ろしい変態との出会いによって、俺が警察に駆け込んだのかといえば、そうではなかった。仮にも俺を助けようとしてくれたのだし、通報するのは可哀想に思ってしまったのだ。まあ人様の趣味にとやかく言うのは今の世の中では難しい。人に迷惑をかけない趣味なら許されるべきなのだ。
結局、夜が明けるまで神主と一緒だった。俺が通報しなくても、見てしまった勇気ある一般市民の人によって逮捕されるのは時間の問題だと思ったので、事情を説明するために残ったのだ。
捕まってほしいのか捕まってほしくないのか。俺だってこの平和な日常生活を脅かすものはいなくなって欲しいのだが、人の性癖を貶めるのは良くないと思う。ただ、俺は怖いもの苦手なので、できればやめてほしい。
夜明けとともに神主さんは立ち去った。何やら用事があるらしい。ちなみに親には勝手に家の外にいたのがばれて滅茶苦茶怒られた。
その日の夜に、テレビを見ていると、何でも変態が逮捕されたそうだ。まあ、時間の問題だったしな。目の前にいないと助けられないし、これは、避けられないことだったのだろう。やはり俺が通報しなくて正解だった。
「怖いわね~ 変態戦隊モロダシなんていたのね~」
いや、別口なのかよ!
注釈ありとなしを書いてみましたが、改めてどちらがいいか聞いてみたいです。
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注釈いる
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あってもいい
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なくてもいい
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完全に要らない