神様転生したけど、冷静に考えたら幽霊とかお化けが怖いので超絶除霊チート能力をもらった。 作:尋常時代
ですがストックがもう少なくなってきました…
皆様、いつもありがとうございます
金髪お嬢様は言いました。
「革命ですわ~! 邪知暴虐! 悪逆非道! 下劣外道の極みであるお婆様を改革いたしますの!」
「そうですか、応援しています」
私は素っ気なく答えた。この人は何を言っているのだろうか? どうせまたアホみたいな考えをしているに違いない。
「あなたも一緒に来なさい! 巫女さん!」
私は彼女の言葉に耳を傾けなかった。別に私はお婆ちゃんに対して恨みはない。むしろ、私にとっては恩人だ。
しかし、無視し続けると、やがて諦めて、泣きながら一人でどこかへ行ってしまった。
──こ、心が弱すぎる……! あの子大丈夫かしら……。
私は心配になって後を追ったが、そこにはもう彼女の姿はなかった。
しばらく家の中を探したが見つからない。仕方なく元の部屋に引き返すことにする。
──あ、そういえば、
まぁ、いいや。また今度聞こう。その時でもいいよね。
私はお婆ちゃんの家の、居間の扉を開ける。すると、どこかで見たことがある顔がいた。
「君は、誰だい? ……ああそうか。君が源清さんの妹の、霞ちゃんだね」
初めまして。私は君のお兄さんの友人だよ。そういうと彼は手を差し出してくる。
その顔は、この前の全裸の変態の顔だった。
「け、警察!」
そしてそのまま後ろを向いて、走って逃げた。
……どうして、どうしてあいつがここにいるの! 早く警察に通報しないと! でもどうやって連絡すればいいのかな……。スマホは鞄の中だし、公衆電話は近くにない。交番まで走っていくにしても、距離がありすぎて間に合わないかもしれない。
──そうだ。お婆ちゃんに頼めばきっと何とかしてくれるはず。
そう思って振り向く。そこにあったのは、さっきまでの家ではなく、ただの壁。
あれ? おかしいなと思いつつ周りを見渡す。ここは森の中で、
よく見ると、足元に小さな穴がある。覗き込むと真っ暗でよく見えない。
これはいったい何だろうと思っているうちに、中から恐ろしいものが出てきた。
──ひっ!? 思わず悲鳴を上げそうになる。そこに現れたのは、トレンチコートの変態だったからだ。
「こらこら、マヨヒガから出てしまったらいけないよ」
男はこちらに向かって歩いてくると、優しく語り掛けてくる。恐怖を感じて逃げようとするが、体が動かない。まるで金縛りにでもあったかのように動かなかった。男が近づいてきて、目の前に来ると、ようやく体の自由が戻る。私は男から離れるように後ろに下がる。
怖い。この人すごく怖い。生理的に無理。私の怯えた様子に気づいたのか、男は慌てて両手を上げる。
「どうしたんだい? そんなに怖がらないでくれよ。ほら、私は何もしないよ」
笑顔を浮かべて話しかけてくる。とても優しい口調なのに、なぜか寒気が止まらなかった。
私が黙っていると、男は困った顔をする。
「ごめんなさい。正直言って気持ち悪いです。それに臭いです。できれば近づかないでください」
私はゆっくりと後ずさりをする。この場から離れたかった。
「なーにをやっておるんだお前らは。娘っ子、家から出るなと言っておいただろう? それと、そいつはお主の兄貴の友人じゃぞ?」
背後からお婆ちゃんの声が聞こえた。振り返ると、お婆ちゃんがいた。
ほっとしたのと同時に、お婆ちゃんの後ろに何かがいることに気づく。
それは
その存在を見た瞬間、私は全身が震え上がるのを感じた。
──こ、これが、
今までに感じたことのない感覚だった。カリカリと、何か、大切なものが崩れていくような音が、頭の中で、なった気がした。体の奥底が冷たくなっていくような気がした。何かどろどろとしたものが、体の奥から溢れ出すような気がした。吐き気がして、涙が出てくる。自分の何かが壊れていく。喉の奥で膨れ上がる恐怖が、私の口から飛び出しそうに、狂人のように叫びたくなる。私はその場に座り込んでしまう。足腰に力が入らなくなったのだ。
──ダメだ……私、もうここで死ぬかも……。
そんな私の様子に気が付いたのか、お婆ちゃんは私を見て呆れたように溜息を吐いた。
お婆ちゃんが手を振ると、黒い影が消え去る。
私はまだ体の震えを抑えられずにいた。心臓が激しく鼓動しているのを感じる。
「こんな様子じゃあ、先が思いやられるわい。まぁ、仕方がないといえばそれまでだが……」
お婆ちゃんはぶつくさ言いながら、懐からお札を取り出すと、それを地面に置いた。
すると地面に魔法陣のようなものが現れ、そこから光の柱が立ち上った。
眩しくて目を閉じていると、しばらくして光が収まる。
恐る恐る目を開けると、そこには先ほどまで居た家の姿がそこにあった。私は驚いて、家の方に駆け寄る。扉に手をかけると、普通に開いた。
「おや、マヨヒガは一度外に出ると二度と戻ってこれないはずでは?」
「ふんっ、わしの力があれば、この程度のこと造作もないわ!」
男は感心した様子で何度もうなずく。お婆ちゃんが胸を張って自慢げにしている。
私にはよくわからないけど、とにかく助かったということだけはわかった。
──よかった……! 本当に良かった! 私は安心して、その場に座り込んでしまう。
あの黒い影を見た瞬間、死を覚悟していた。もう駄目だと思った。
でも、お婆ちゃんのおかげで助かった。もし、お婆ちゃんがいなければ、私は……。
「お婆ちゃん、あの黒い影は何だったの?」
私は立ち上がりつつ、お婆ちゃんに尋ねる。するとお婆ちゃんは、不機嫌そうな顔になった。
そして私の頭を軽く小突く。痛い。結構本気で叩かれた。私は頭を押さえて、涙目になる。
どうして怒られたのかわからなかった。
すると、男が口を開いた。
「仕方ないでしょう。幽霊に出会ってしまえば。あまりの恐ろしさに私も身動き一つとれませんでした」
男はぶるりと体を震わせる。
それを聞いて、お婆ちゃんは鼻で笑った。
「当り前じゃ、この世に残るほどの無念の、怨念の塊じゃ。普通なら見るだけで呪われるわい」
人が死ぬと、特に強い想いが、この世に残ってしまうことがあるのだという。それがいわゆる、残念と呼ばれるものだそうだ。
幽霊とは、そのような残念や無念が積もりに積もったものらしい。恨みつらみである。今までたくさんの人が無念の中死んだ。
人間が憎くてたまらない、人間を殺したくてたまらない、人間の苦しむ姿を見たい、そういった感情だけが、
その人間の感情の闇が吹き溜まり、積み重なり、澱となって溜まる。底なし沼のようにすべてを埋め尽くす感情だ。
そのような感情が、山のように大きく、海のように深い怨念が、人に害するためだけに、形を持ってしまったもの。それが幽霊の正体なのだという。だから、生きている者は、見るだけでも恐ろしい。
その者が発する悪意が、言葉が、視線が、存在そのものが、どうしようもなく人を呪い、殺そうとする。
だから、そんなものに出会って、見てしまったら最後、どうしようもなく怖くなって動けなくなる。そうすれば、後はもうなす術なく殺されてしまうしかない。もしも、そういうものに出会ってしまったならば、すぐにその場から離れるべきなのだろう。そうしなければ、殺される。
私は、黒い影のことを思い出す。あれは、
なのに、まるで、こちらを睨んでいるかのような、そんな気配を感じた。
それが、幽霊というものだ。出会ってしまえば終わりの存在だ。
「……まあ、何か温かいものを飲みながら話そうか。あんたもそれでいいね?」
台所に向かうと、お湯を沸かす。その間にお茶の準備をする。
お婆ちゃんは戸棚からお菓子を取り出した。それをテーブルの上に並べると、椅子に座って足を組んだ。
私とお婆ちゃんは、向かい合って座っている。男の人は、お婆ちゃんの隣に立っていた。
──なんなんだろ、この状況……。
私は困惑しながら、お婆ちゃんを見つめる。
お婆ちゃんはお茶の入ったコップを手に取ると、それを一口飲んだ。そして、ふうっと息をつく。
──さて、どこから説明したものかな。
お婆ちゃんは腕を組んで考え込む。その間、私はずっと黙っていた。
しばらくすると、お婆ちゃんは思い出したように手を打った。
「ああ、そうか。お前さんには、まだ何も言ってなかったなぁ」
お婆ちゃんは私を見る。何を言われているのか、よくわからず、首を傾げた。
「わしの友人なんじゃよ。お前の兄、源清はな」
人間が大きくなるのは早いもので誰かわからんかったわい。とお婆ちゃんは笑った。
──え? 私は驚いて、お婆ちゃんを見る。隣に立つ男はにっこりと微笑んで、私を見ている。キモイ。
それにしても、兄というのは、私が知っている兄様のことだろうか。私は混乱して頭がぐるぐる回るような感覚を覚えた。
兄さまは優しくて、物知りで、何でもできて、いつも私のことを気にかけてくれる、大好きな人。そして……
父様のようにはなりたくないと、家を出た。
私は、自分の右手を左手でぎゅうっと握りしめた。私は、お婆ちゃんの言葉が信じられない気持ちだった。
お婆ちゃんは続ける。
「もう何年も前のことになるが、忌名深沢というところで、あ奴と出会った。今はもう滅んだ場所じゃ」
お婆ちゃんは何かを思い出しているようだった。懐かしそうな顔で遠くを見つめていた。
忌名深沢とは、どこだったか。確か、兄が最後に向かった場所だった気がする。
お婆ちゃんの話によると、そこには大きな神域があったのだという。それは人の手が及ばないほど神聖な場所で、そこでしか採れない貴重な薬草などもあったらしい。
そこには、ある風習があった。
「そこでは名前を、口に出してはいけない場所だった。だから、名前の代わりに忌名で呼び合っていたのさ」
その土地では、名は神様のもので、人間が口にするのは禁忌とされているものだったらしい。だから、その名を口に出すと呪われるという迷信があるのだという。誰に呪われるのか。否、神に祟られるのだそうだ。
そして、その土地の人間たちは、皆その迷信を知っていた、信じていた。だから、互いに名前を呼び合うときは、おいとか、おまえとか、あだ名とか、どうしても呼ばなければならない時も、忌み名でしか呼び合うことはなかったという。
名前を支配する祟り神だった。その場所では人間は神の所有物なのだ。そして、神なしでは生きられない場所だった。
忌名の深沢とは、そういうところなのだそうだ。あらゆる厄災から守られる場所。そして、あらゆる自由が剝奪された場所だったという。
忌名深沢のことは、あまり知られていないが、お婆ちゃんはよく覚えているという。
そして、兄様はそこを訪れた。
兄様は、そこで出会ったのだ。忌名深沢の神である、鬼に。
──鬼。
その言葉を聞いた瞬間、ぞわりとした寒気に襲われた。
お婆ちゃんは、そんな私の様子に気づいていないようで、話を続ける。
兄がそこにたどり着いたのは信託があったからだという。そこは、この町からは随分と離れた地にあったらしい。
忌名深沢には、何重にも結界が張られていたという。そして、その中には神がいる。そして、その場所で
お婆ちゃんは、兄様のことを思い出すように目を細める。
兄様は、そこで神に出会った。
そして……
──助けてくれ、消されてしまう。
そこを支配する神が、そう言って、助けを求めた。まるで幼子のように泣きわめきながら、そう言った。何か恐ろしいもの見たかのように、怯えて、震えながら。
その神のために建てられた社の中で、祟り神は何かに怯えて泣いていた。頭を掻きむしり、涙を流しながら。嫌じゃ、嫌じゃと喚きながら。
──消えてしまう。このままじゃ、消えるしかない。
祟り神はそう言った後、黙ってしまった。そしてそのまま、動かなくなってしまった。そして、消えてしまった。
すると、突然、社の扉が開いた。
そこから出てきたのは、小さな女の子だった。その子は白い着物を着ていて、髪が長く、おかっぱ頭をしていた。
少女は手に持っていた種のようなものを放り投げると、まだ足りないなと呟いた。
兄様は動けなかったという。先程の鬼よりも、圧倒的な力の差があることが感じられたからだ。恐ろしさや、畏怖を通り越して、ただ、目の前の少女に。
少女は社に向き直ると、両手を広げて叫ぶように言った。
──出てこい、魑魅魍魎よ。わかるな、悪鬼妖怪どもよ。それ、まだ神の力はここに残っておるぞ
神は消え去り、だが力のみが残った。それを見て、身の丈を知らぬモノドモは力に群がった。集まり奪い合い、殺しあった。
だが、それは無駄なことだった。
少女はその様子を見て満足そうに笑うと、また新しい種を投げ入れた。そして、まだ足りぬと繰り返した。
そうしていくと、ただひとつの妖怪が残った。ボロボロの体で、種を飲み干す。
そして、力に耐えきれずに、膨れて弾けた。
──ははっ、ははははは! 見よ、人間。愚かよのう、身の丈を知らぬものほど、面白いものはない! 選ばれぬものに、価値などないのだ!
そして、最後に種だけが残った。種は宙に浮かび、ふらふらと揺れている。
少女は笑い続けた。目に涙を浮かべ、腹を抱えて、心底楽しそうに。
そして、種が地面におちる。その種が落ちた先に、兄様がいた。
兄様は、何もできなかったという。だから種を手にすることはなかった。
それを見て、やはり少女は嬉しそうに笑みを浮かべたという。
そして、忌名深沢は滅んだ。神は手をだしてはいけないものに触れてしまい。妖怪は身の丈を知らず、力を欲し膨れて死んだ。名前を奪われ、持たぬ人間どもは神の支配から解かれ、そしてこの世界に止まれずに、消え去った。ただ一つ、何もかもを滅ぼした種を残して。
そして。何もかもが滅んだ場所で、あの少年は産まれたのだと、お婆ちゃんはいった。誰もいないはずの場所で。たった一人だけ、生まれたのだという。
「それが、彼だというのですか……」
「──神が宿っているんだよ」
お婆ちゃんはそういった。
「神は、己の子を欲している」
お婆ちゃんはそう言って、私を見る。形はそれぞれだけどね、と。
「神は、人を愛してる。だからこそ、人の魂を欲する。己の巫女として、自らの奴隷として、
だから、神も妖怪も、なにもかも、あの少年に手をださぬ。触らぬ神に祟りなし、恨みもツラミも、加護も縁も、何もかもを奪われて消えてしまうのだから。
そういって、お婆ちゃんはわらった。でも、私は少し考えてしまう。だから、あの少女は、少年を産み出したのだろうか。一人ぼっちは嫌だから。何もないのは、耐えられないのだ。自分一人だけ、同じものを持たないのは、悲しくて仕方なかったのだろうか。
「彼は、本当に……ならば、彼の両親は……いったい」
動揺したように言う男に、お婆ちゃんは笑う。
「神によって作られ、形整えられ、産まれた。
誰であっても、存在を奪われ、居場所を塗り潰され、全ては神の、思うがまま、じゃ。
お婆ちゃんの話が一区切りついても、誰も口を開かなかった。皆一様に俯き、黙り込んでいる。
「なるほど。いろいろとお話を聞けて、得心しました」
沈黙を破ったのは、変態さんだった。
「何故あのような、不安定な、妖怪などを使ったのだろうかと、疑問を抱いていましたが……」
自作の妖怪などという、力が弱く、不安定で、扱いづらいものであったのは、そうでなければいけなかったからだ。
神も、妖怪も、手を出さない。幽霊など、制御できるはずもない。ならば必然、自分で用意するしかない。
そうしたのではなく、そうせざるを得なかったそういうことなのだろう。
それは、つまり――――
「
その少女こそ、真に恐れるべき対象であったということなのだから。
お婆ちゃんを見上げる。お婆ちゃんはうっすらと微笑んでいた。
注釈ありとなしを書いてみましたが、改めてどちらがいいか聞いてみたいです。
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注釈いる
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あってもいい
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なくてもいい
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完全に要らない