神様転生したけど、冷静に考えたら幽霊とかお化けが怖いので超絶除霊チート能力をもらった。 作:尋常時代
俺がこの町に来て、初めての正月だった。
夏休みにこの町に引っ越してきてからずっと悪い幽霊に出会ってない*1。
小さなころからコツコツと少しずつ悪霊を退治して除霊師としての経験と信頼を稼ごうともくろんでいたのだが、大誤算である。こんなことならもっと早く悪霊退治を始めていればよかったと思うくらいだ。
そうすればこの一年で悪霊退治の依頼が百件以上も来ていたかもしれないのに! まあそんなことを言っても仕方がない。
このままではいけないと思ってそこらじゅうを探し回ったりするのだが、なかなか見つからないものだ。
困っている爺さん*2や婆さん*3や、迷子の子供*4だったり、落し物*5を拾ったりするくらいで除霊師としての経験は零なのだ。
おかしいね?
ということで、困った時の神頼み。近くの神社まで来たのであった。
頼む神様仏様! 人助けさせておくれ~!
「宗教上の理由で、君の参拝は禁止です」
「そんな理由ありゅ???」
神社に入る前に神主さん、巫女さん総出でお断りされました。なんで? いじめか?
宗教上の理由なら仕方がないのか? というか神社出禁なんてどういうこと?
この近くで一番大きな神社に来たのだが、さすがにこの扱いには涙が出ますよ。
でも、巫女さんは全く動じることなく無表情だ。機械のように淡々と説明を続ける。
「現在、当神社では神様たちがお怒りになっております。そのため、参拝客の方々にも被害が出る恐れがあり、大変危険です。安全のため、申し訳ありませんが、参拝は控えていただきたいのです」
嘘つけぇっ! 絶対嘘だろ! そんなことで個人を出禁にするわけないだろうが! 絶対に何か裏があるぞ。
「本当に申し訳ないのですが、宗教上の理由で今後一切の参拝は禁止されています」
「今後一切の参拝が???」
隣にいる幼馴染ちゃんがとんでもなく冷たい目*6でこちらを見てくる。
そんな目で見るな……! 冤罪だ……!
「あの……確かにこの子は少し変ですが、そこまで言われる謂れはないと思うのですが」
「宗教上の理由です!」
無敵の呪文か?
だが、どうやら本気で言っているらしい。嘘偽りなく本当のことを言っているようだ。
巫女さんの瞳からは感情が全く感じられない。人形のような無機質な目だった。
だからといって引き下がるわけにはいかない。せっかくここまで来たんだからな。
とは思うが、流石に壊れた機械のように呪文を繰り返すのをみていると、流石に自分の中の良心が傷んでくる。
いや、俺なにも悪いことしてないけど? 心当たりなんもないけど?
まあ俺は大人なので*9寛大な心*10で許してやるかと思っていると
「もういいよ、行こう?」
そういって幼馴染ちゃんが手を引いてくる。
壊れた機械には付き合いきれないと思ったのか、それとも飽きたのか。
その様子を見て神主は酷く疲れた顔をして、そして安心した表情を浮かべる。
「君は今後永遠に参拝は禁止ですが、何か困ったことがあったら是非ご相談ください。絶対に参拝は禁止ですが」
俺は泣いた。心の中で。
だが目の前の神主の顔は、危機を乗り切ったような、やりきったような。達成感を感じさせるものだった。
近くの公園で遊んでくると両親に伝えて、幼馴染ちゃんと一緒に近くの困っている人探し*11をしていると、一匹の狐を見つけた。
おや、こんな人里に狐なんて珍しいと思っていると、動物好きな幼馴染ちゃんが袖を引っ張ってくる。
「あのキツネさん、怪我をしているみたい」
手負いの獣は危ないですよ! とは思うものの、幼馴染ちゃんの何かを期待するかのような視線に負け、近づいてみる。
確かに、よく見ると右足を庇うように歩いているように見える。
真っ白な毛並みを血で汚し、ふらふらと歩いている*12狐に追いつくと、もう体力の限界だったのか、倒れてしまった。
俺は少し考えてから、ポケットからハンカチを取り出した。
そしてそれを細長く裂いて、包帯代わりにしてあげることにしたのだ。
俺ってば優しすぎるぜ! すると、その行動を見た幼馴染ちゃんも、同じように自分のハンカチを破って応急処置を施し始めた。
え? なにこの子優しい……。
こんな正月に狐なんてまさか神様の使い*13か? とは思うが、幼馴染ちゃんが見えている*14ということは超常現象ではなさそう*15だ。
傷口を洗って、ハンカチで縛った。幼馴染が家から持ってきたドッグフードを食べさせ安静にさせた。
とりあえず、できることはこれくらいだなというと、幼馴染ちゃんが大丈夫かな*16という。
まあ大丈夫だろ。たぶん。
「孤太郎……大丈夫かな?」
名前つけたの? と聞くとだって可愛いじゃないと帰ってくる。いや、うんまぁいいんだけどさ……。
「またね孤太郎」
名付けられた狐は、コンと鳴いた。
「うむむ、今日は大変だった……まさかあの【神亡】がこの町に来るとは」
あの【神亡】が来てからこの地域は大変だった。あの災害のような子供が来るというので神から妖怪まで底からひっくり返したような騒ぎが起こったのだ。
「しかし、話に聞いていたよりもずっと大人しい子供だった」
それこそ嵐の前触れかと思わせるほどには恐ろしい存在だと聞いていたのだが、実際に会ったらとてもそうは見えない普通の少年にしか見えなかった。
そうだとしても絶対に神社の、神域に入れるわけにはいかないのだが。
「そういえば、あの妖怪狐はどうなったのか。かなりの深手を負わせたから、もう生きてはいないだろうが。もしかしたら【神亡】に滅ぼされているのかもしれんな」
そう思った。そして思い至る。
「【神亡】は生まれ故郷の神や妖怪を滅ぼしたという。その力は木っ端妖怪を吹き飛ばしただけで終わるのか?」
もしかしたらこの神域にまで余波が届くのかもしれない。信託にはなかったが想像するだけで背筋が凍る。
ゆえに、屋敷内にいた式神の一体を案内役にして、神主、≪土御門 忠輝≫は山へと足を運んだ。
ちなみに、忠輝が使役している式神には二種類ある。ひとつは、小鬼たちのような低級の雑魚妖怪だが、もうひとつは鳥や獣といった比較的大型の生物だ。
後者は、霊的な力も強く知能も高いが、代わりに術者の命令に縛られることになる。
今回は後者だった。つまり、忠輝の言に従い、その背についてきているわけである。
「……で? こっちか?」
『はい』
先導する鳥の式神に尋ねると、すぐに返事があった。
忠輝とは長い付き合いになるこの鳥は、忠輝の言葉を正確に理解し、忠輝の望む場所へ導いてくれるのだ。
そこは、鎮守の森の中でも奥まった場所にある、小さな社だった
そして古びた祠を視界に収めたとき、忠輝は思わず足を止めていた。
「……まさか」
それは、いつも忠輝たちが見ている祠だった。ただし──
「開いている……」
「わが娘よ、お前に重大な任務を与える」
有無も言わさぬ口調で告げる父親に対して、少女は眉一つ動かさずにうなずいた。
幸か不幸か、自分の最愛の娘のうち一人があの【神亡】と同じ年齢である。
自分の娘に危険な役割を与えるとともに、神主の心に休まる日は長い間訪れないのであった。
注釈いりますか?
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いる
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完全に要らない