神様転生したけど、冷静に考えたら幽霊とかお化けが怖いので超絶除霊チート能力をもらった。 作:尋常時代
アタシの幼馴染は変わり者だ。小さなころから周りに「悪いことをするな。地獄に落ちるぞ!」とか「一日一善が人生を救います。レッツ人助け!」とかなんとかいってたのを覚えている。
そんな変な幼馴染なんて、普通は関わりたくなんてないし嫌いになってしまうものだと思う。
だって普通じゃないなんて、変でしょ? おかしなことは、変なのだ。
アタシも普通だったら距離をとってしまったと思う。
でも、そんな変な幼馴染だけど、変なだけではないのだ。
これは変わり者の幼馴染とアタシの、初めてあった日の話。
「なあ、なんか困ってることはないか? 格安で解決してやるぞ」
その日も、彼は、同じことを言っていた気がする。
雨の日で、公園の隅で泣いていたアタシを見つけて彼は明るく*1聞いてきたのだ。
「誰あんた……放っておいてよ」
泣きすぎて声がガラガラになりながら、アタシは目の前の子供を睨み付けて言った。知らない子供だった。
その子は少し困った表情で、雨に体を濡らしながら、風邪を引くから家に帰ろうと言ってきた。
アタシはその言葉を無視して、また膝を抱えて顔を伏せる。するとその子は、何を思ったのかアタシの隣に座ってきたのだ。
なんなのこの子……。
アタシはもう放っといてほしくて、でも何も言わずにただ隣にいるその子にイラついて、顔を上げてその横顔を見た。
そこには、さっきまでとは打って変わって真剣な眼差し*2をした男の子の顔があった。
アタシは思わず息を呑む。
だけどアタシはその表情が無性に腹が立ちそっぽをむいた。
誰とも会いたくない、一人になりたいからこの公園で、一人ぼっちでいるのだ。
何も知らないくせに、と思った。誰なんだお前は、と思った。だけどその気持ちを言葉にはしなかった。
そのままどれだけ時間がたったのか、困った表情の彼は*3ずっと傍にいた。
だから、このままずっと居られるのも嫌だから、仕方がなかったから、ちょっとだけ理由を話した。
「ヒーちゃんがシんじゃったの」
話したくなかったけど、はやく一人になりたかったから、話した。
「アタシの代わりになったんだって、みんなが言ってた」
お父さんも、お母さんも言ってた。ヒーちゃんが守ってくれたんだって。そう言ってた。
「ヒーちゃんが代わってくれたから、ヒーちゃんがいなくなっちゃった」
仕方がなかったはずなのに、どんどん言葉が出てくる。
「ヒーちゃんがいなくなっちゃったのは、アタシが悪いの」
ヒーちゃんは、いつも傍にいたから、一人でいると迎えに来てくれたから、余計に悲しくなった。悲しくなってどうしようもなくなって。
「だから一人ぼっちにならないといけないの」
「だから、どっかにいって」
そんな矛盾したことを思いながら、意味の分からないことを思いながら、アタシを心配してくれているその子を拒絶した。きっと、意味が分からないでしょ、と思った。関係のないあんたには関係がないでしょ、と。
わかんないでしょ? だから、どこかに行ってと思った。
「そうか*4……」
だけど、拒絶してもその子はどこにも行かなかった。アタシの隣でずっと黙って座っていた
ヒーちゃんが迎えに来てくれなくなるから、一人ぼっちにならなくちゃだめだから、今度はその子の顔を見て、どこかに行ってと、伝えようと思った。
「よくわからんが、こんなところにいてもヒーちゃん? はいないぞ*5」
だから、その言葉を真正面から受けてしまった。
もう会えない、みんなに言われた言葉が耳から頭に突き刺さる。今まで必死になって目を逸らしていたのに。
悲しくなって、苦しくなって、怒鳴りたくなって、でも何の言葉も出てこなくて。
だから、何もかも信じられなくなって、心が壊れそうになった。
「だからさ、探しに行こうぜ」
そう言ってアタシの手を握って、一緒に雨の中を探し回った。
みんな、幽霊なんていないという。だから、探しても見つからないのだという。
みんな、天国で見守ってくれているという。だから、もう会うことはできないのだという。
だけど、アタシは信じたくない。あの子は絶対にどこかにいると。
だって、アタシがあの子を見つけてあげられなかったら……あの子がかわいそうだから。
あの子ともう一度会いたい。ただそれだけを思った。
──それが無性に悲しくて、苦しくて。
だからさ、見つけられる*7という彼はきっとおかしくて。
だからさ、きっと会える*8という彼は変なのだ。
そうして、雨の中を、二人でずっと歩き回った。
子供二人で雨の中をテクテクと、知ってる場所も知らない場所も。
そんな風に歩いていたら、いつの間にか日が暮れていた。
お腹が減って来て、そして寒くなって来た。
ずっと探して、それでも見つからなくて、でも、一人じゃないから少しだけ心が軽くなった。
だから、このまま見つからなくても、大丈夫だ。
ヒーちゃんが守ってくれたから、一人ぼっちになったんじゃない。
ヒーちゃんが守ってくれたから、一人ぼっちにならなくなった。
だから、もういいよ。と彼に伝えようとした。
「ごめんな、全然見つからないわ」
だから、彼の表情を見て、驚いた。
見つからなかったことを、ほんとに悔しそうにいった。
「また明日、探そう*9」
なんだか、その顔を見ていると、また少しだけ心が軽くなる。
「もういいよ、ありがとう」
今度こそ、きちんと言えた。
一緒に探してくれてありがとう。
一人ぼっちじゃないから、もう大丈夫なのだ。
見つからなくてガックシと肩を落とす彼の手を取り、家路につく。
きっと、お母さんもお父さんも、心配しているだろう。
その後、アタシとその子は滅茶苦茶怒られた。止まった涙がまた出てきた。
だけど、アタシよりお父さんも、お母さんも泣いていた。アタシよりボロボロになった靴を履いて、アタシよりビシャビシャの服を着ていた。
いっぱい泣いて、いっぱい怒られて、いっぱい抱きしめられた。不安はなかった。
朝が来て、日差しの温かさを感じられるまでお父さんも、お母さんも一緒にいてくれた。一人じゃなかった。
だから、ヒーちゃんがいないままの朝が来ても、きっと大丈夫。
だけど、ごめんね、一人ぼっちにして。いつかまた会おうね。
「ヒーちゃん、またね。バイバイ」
翌日、あたしの前に再び現れた彼は笑いながら言った。
「もう一回探そう! 格安で解決してやるぞ!」
なんだこいつ、と思った。だから笑って言った。
「ばーか」
そういえば、彼はどうしてアタシのところに来たのだろう。
誰にも行先なんて伝えていないのに、アタシの秘密の場所なのに。
不思議に思って彼に聞いてみる。
彼は不思議そうな顔をして答えた。あんなに五月蠅かったのにと彼は言った。
ずっと公園で、犬が吠えてたんだよ、だから、何かあったのかなって来た。
そしたら、泣いてる子供がいたんだと、子供が言って笑った。あぁ、それでか。
小学生になっても彼は変わらない。変わらない、けど、変わり者
おかしくて、でも困っている人を放っておけない人。
変わり者で、泣いている子を放っておかない人。
そんな、変だけど、変なだけじゃない幼馴染のことを、アタシは放って置けないのだ。
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