神様転生したけど、冷静に考えたら幽霊とかお化けが怖いので超絶除霊チート能力をもらった。 作:尋常時代
次の話では実験的に注釈なしで書いてみました。
皆様がみてくださるのがとてもうれしいです。ありがとうございます
いや俺はやっぱり納得いってないけどね。何あの美少女無罪?
俺だって「幽霊見えるよ!」って言ったら「すごーい」とか言ってほしいに決まってんだろ! どう考えても俺よりも自己紹介事故ってるだろっていうか何あの属性過多!? デザインは引き算って聞いたことあるけど何を引き算したの? うちの元担任?
というかうちの元担任はどこに行ったの? なんで俺だけボッチなの?
「ああもう意味わかんねえよおおおおおおお!!」
「うるさいですわよ、ワタクシがせっかく説明して差し上げているというのに!」
「お前の説明がわかんねぇんだよ!」
「ぐっ……!」
逆切れしてやるとお嬢様っぽい女*1は悔しそうに歯噛みする。どう考えても聞いてない俺が悪いのだが。
というかなんでお前までここにいるんだ。
俺が今居る場所はなんと中学校である。なぜ俺が自分の学校でもない別の学校、それも中学校にいるのかと言えば、あの転入生、巫女服ちゃんの依頼を受けたからだ。
なんでも「気持ち悪くてこの世と思えない醜い体をした男」が夕方、この校舎に現れるという。
その男は黄昏時にいきなり現れ、廊下を歩いている「男の先生」を見付けてはその手を握るのだそうだ。最初は握手をされた先生は嫌そうな顔をしていたものの次第に顔色が青くなり意識を失うのだという。その後男は消えてしまうため犯人は不明だったのだが今回初めて犯行現場に居合わせた者がいたらしい。それがあの転校生の巫女服少女だと言う訳だが……。
しかしいくら巫女服の少女が属性過多のミステリアス少女だったとしてもなんで小学生が中学校にいるの? いやそんな話知り合いの中学生*2から聞いたことないけど? と俺が言えば巫女服少女はむすっとしながらこう答えた。
──証拠を見せましょう、あなたが信じるか否かに関わらずね。……という流れで現在に至り、目撃情報があったという中学校の二年B組にいるわけだ。因みにこのお嬢様もなぜか一緒に二年B組にいる。ちなみに名前は確か……。忘れた……。なんかきれいな西洋人形*3を拾ってあげた時から懐いてきたのだ。
俺は自分の隣の席に座っているお嬢様に目を向けた。
「で、ほんとにこの中学校でそんな事件は起こってないんだよな」
「あ、当り前ですわ。というかそんな不審人物、普通は警察沙汰ですわよ」
「だよなぁ……」
「ただ……」と彼女は言葉を続ける。「最近学校の様子がおかしいのは確かですわね。人がいなくなるとか、突然物がなくなったりだとか……」
そうなのか? そんな話があればもっと話題になってもおかしくないだろうに。
「ワタクシの中学校でも教員も突然学校に来なくなったというお話もありまして……」
「うげっ! マジで?!」
まあお辞めになったのかもしれませんが、と彼女は言うけれどそんな話ならもっと話題になってもよさそうだが……うちの担任も何か巻き込まれているのか?
「まぁ、先生方も人間ですから色々と事情があるんでしょうけど……ただ……ワタクシの中学では結構な人数の教師がいなくなったと聞いてますわ」
……これは少し調べてみる必要がありそうだな。はぁ~、とため息をつく。
というかなんで小学生である巫女服の少女がその事件に関わってるんだよ、もっと警察とか大人に頼れよ、と思ったがそう言えば彼女は霊感が強らしく、それで色々相談を受けてたりするんだっけか? でもそれなら尚更大人に助けを求めるべき*4なのでは? 俺は求められないけど?
「……ん?」
俺は何か違和感を感じて視線を動かした。教室内の空気がどこかおかしい気がする。
まるで何かを警戒しているかのような張り詰めた緊張感のようなものがある。なんだこれは。
「どうしましたの?」
「なんか変じゃないか」
「何がですの?」
「え、だってほら……」
俺は廊下を見て固まってしまった。そして思わず呟く。
「なんだよあれ……」
そこにはあり得ない光景が広がっていた。
「ちょ、ちょっと! あれ!」
「え? ……きゃああっ!?」
お嬢様も気付いたようだ。悲鳴を上げて身を縮める。
中肉中背、どちらかと言えば太ってきたかな? って感じの体格をしているおっさんだ。その男がゆっくりと歩きながらこちらに向かってくるではないか。ちがう、それだけじゃない、そいつの周りには何人ものおじさんが倒れていた。しかも全員コート姿のおじさんばかりだ。
まさかこいつが例の男なのか? いやそうじゃなかったら逆に怖いけど!
「ど、どうしてこんなところに、いえ、こんなにおじさんがいるんですの!」
「わからないけど、とにかく逃げよう!」
「で、ですわね!」
俺たちは急いでその場を離れようとした。するとその時、後ろから肩に手が置かれた。
「「うわああああああああああああ」」
「お、落ち着き給え、私だ。君の担任だった男だよ」
振り返ると確かにそれはうちのクラスの元担任だった。しかし、その服装が問題だった。
「せ、先生? いつからそこに? なんですかその恰好は?」
「ああ、これか。似合っている*5だろう?
ちなみに着たのはついさっきだよと、そう言ってにこやかに笑う元担任は、しかし目が笑っていなかった。……この人もしかしなくても危ない人なんじゃなかろうか。いなくなって正解だった?
いやまあそれは今はいいとして。よくないけど。もしかしたら会話ができるということはこの男は正気なのかもしれない*6。
「せ、先生。あの男の人達*7は、一体なんなんですか?」
「さあ、知らないね。あんなの初めて見たよ。きっと変質者なんじゃないかい?」
即答だった。その目はいかれていた。
くそっ! なんでこの学校にはこんな奴らが居るんだ!
巫女服ちゃんの依頼だから仕方がないとはいえ、もう帰りたい! ていうか今すぐここから逃げ出したい!! だけど逃げるにおっさんの群れ。今俺達が来た道はあのおっさんの群れによって塞がれてしまっているのだ。つまり俺達はここで捕まるのを待つしかできないということなのだ。というかこの元担任からも一刻も早く離れたい。
──くっ、万事休すか……。
あのおっさんどもが幽霊の類ならパパっと除霊してお終いなのだが、そうでなかった時、というか先生がいることであいつらが生身の人間という可能性が出てきたのダメージがでかすぎる。
何よりあのおっさんどもの霊気に触りたくない!
俺がそうして絶望していると怖いのかい? と担任が話しかけてきた。
「心配はいらないよ。君は私が守ってあげるから」
そう言って担任はにっこり*8と笑いかけてくる。
──……は? 何言ってんだこの変態教師は。どう考えてもお前のお仲間だろうが。
ナチュラルにお嬢様を守護対象から外したこの変態男の熱視線を受けながら俺は泣いた。というかこんな状況で笑えるなんて、この人はやっぱり見た目通りまともではないらしい。お嬢様はお嬢様でこの変態に関わる気はないらしく、なにやら電話をしていた。「御婆様! ターボで来てくださいまし! ターボで!」とかいってる。ご老人に無茶さすな。
「それより早く逃げよう。ここは危険だ」
危険なのはお前じゃ。
手を取ろうとする変態教師を振り払うと、悲しそうな顔*9をした元担任は扉まで向かうとドアを開けた。担任は教室の外に出て、そこで倒れた。
は? 何しに来たの?
もうわけがわからん。俺はお嬢様の手を引いて走り出した。
途中廊下に所狭しと並べられたおじさんを踏みつけ、乗り越えながら進む。
そのまま階段を駆け上がり、屋上へと向かう。もうこの階より下はおじさんに埋め尽くされていた。
「ありがとうございます!」「生きててよかった!」「おじさんの金のコートをあげよう!」
踏みつけるたびに倒れたままのおじさんから声を掛けられたが無視した。くたばれ。
そしてなんとか屋上へと辿り着く。するとそこには先客が居た。
巫女服姿の少女だ。彼女はフェンスの向こう側に立っていた。
──どう? 私のこと信じられたかしら?
彼女が言った言葉を思い出す。どうやら彼女の言っていたことは本当だったようだ。というか嘘であってほしかった。
グラウンドを埋め尽くすのは多種多様な、倒れ伏したトレンチコートのおっさん。
空にはなにか半透明な膜*10なようなものが空を覆っている。
それは世界の終りのようであった。
注釈いりますか?
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いる
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あってもいい
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なくてもいい
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完全に要らない