ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー 作:ミュー(なきごえ)
多分この世界にシリアスはありません。
春が訪れ、桜の花が咲き誇るころ。とある桜が咲き乱れる土地の一画が政府によって貸し切られ、世界各地から規格外の力を感じさせるポケモンたちが集まった。
集まりを主催するミュウツーを首座として、この世界に現れたポケモンの中でも尋常ではない実力者たちが集結し……
『それでは、今年の伝説ポケモン花見会を始める!』
……花見をしていた。
いやー、初めて伝説ポケモンと対面したのはレックウザだったけど、私と同じような境遇と知って驚いたものだ。
いきなりレックウザになってしまって大変だったのではないかと思ったが、本人はとてもまじめで『隕石が来たら任せろー!』と普段はオゾン層を回遊しながら地表の風景を眺めて過ごしている。
この出会いから分かったのだけれど、この世界にいる伝説ポケモンのほとんどは私と同じ境遇で、人間とコミュニケーションが取りづらいので悪影響を与えないようひっそりと暮らしていたらしい。
エスパータイプでテレパシーに自信がある私を間に挟むことで人間社会と関わりを持つこともできるようになり、年に一度、桜の花見の席で一堂に顔を合わせる気の良い者たちだ。
『む、この会社の炎タイプ用ポケモンフーズはまた美味しくなったな。リピしよ』
『あ"あ"あ"ー、久しぶりに吸収する天然ものじゃない電気キクわー』
ポケモンフーズと電気をバカバカ食ってるのはフリーザー以外のカントー三鳥組。フリーザーはキュレムと一緒に世界の海水温低下活動で予定が合わなかったので今年は欠席だ。
ファイヤーはやたら目つきが鋭くて怖く見えるけど、わりとおっとりした常識人……常識ポケモン? うっかりやで発電所から出禁を食らっているサンダーとは大違いである。
『また今年も桜が綺麗に咲いてよかったですねぇ』
『ええ、今日を晴れにして正解でした』
のんびり話をしているのはルギアとホウオウのジョウト伝説組。この2匹は元だった人格が高齢だったせいか、ひかえめ・おだやかなみんなのおじいちゃんおばあちゃんみたいなポジションだ。
ルギアは普段は深海調査の協力を、ホウオウは宮内庁でお世話になっている。
『お、晴れにするの? 任せときな!』
『いや濡れ桜もいいでしょ! 雨にしよ!』
『やめんか!』
気軽に天変地異級の天候変化をかまそうとするグラードンとカイオーガにツッコミを入れるレックウザ。豪雨や台風の強制中和に出張るグラードンと乾燥地帯に雨を降らせるカイオーガは普段滅多に顔を合わせないので、ここぞとばかりに絡んでいる。2匹の性格もやんちゃでわんぱく、まじめなレックウザの苦労が偲ばれる。
『この世界の時間・空間は私たち無しでもなんとかなるんだからさあ、私たち仕事しなくてよくない?』
『分かる』
不穏な話をするのはシンオウ伝説組。普段はそれぞれの場所で時間と空間が正常になっているのを見守っているが、性格がせっかちときまぐれという致命的に役割と嚙み合ってないので頻繁にサボろうとする問題児たちだ。
なお、誘ってはいるがギラティナはおくびょうなので一度もやぶれたせかいから出てこないひきこもりである。
『やはり理想の未来を目指すには、これからの我々の動きが重要となるのではないか?』
『しかし本質的な部分、真実の未来をないがしろにすることはできないだろう』
なんか意識高い話をしているのはイッシュ伝説組。れいせいなレシラムとゆうかんなゼクロムはいつもなんか難しい話をしているが、具体的な行動に移しているところは見たことないな。
その点でいえば世界中で活動しているすなおなキュレムの方が活動的かもしれない。
『乗り心地わっる。もうちょっとなんとかならん?』
『いや、お前俺から降りたら接地面から生命エネルギー吸い上げるだろ。我慢しろ』
『…………桜枯らしたらブッ飛ばすぞ』
ノリは軽いが一番危険なのがカロス伝説組……というかイベルタル。ゼルネアスの背に留まってない限り、接触部から生命エネルギーを無意識に吸収しだすので常にセットで行動している。あれで意外にさみしがりだから、がんばりやなゼルネアスと一緒でも苦じゃないようだけど。
まあ何かあっても、しんちょうなジガルデ(パーフェクトフォルム)が傍で見ているので安心だが。
『Zzz……』
寝ているのはほしぐもちゃん……ではなくコスモウム。パルキアが頑張ってウルトラホールが開くのを防いでいるのでエネルギー不足でもっぱら寝ている。まあ起きてもなまいきな煽り発言を連発して周りを挑発するので寝かせておいた方がいいだろう。
『あー早く家に帰ってあの子に会いてぇ~。なあ弟?』
『同意だ姉者、なんなら一緒に来たかったぜ』
『もうやだこの姉弟……ヨ、もう知らん。飲むぞ!』
こいつらはガラル伝説組。ザシアンとザマゼンタの姉弟は同じ牧場で暮らしていて、牧場の一人娘である女の子にメロメロである。このずぶといロリコンどもめ……。
一応お目付け役をおとなしいバドレックスが務めてくれているが……乗騎であるブリザポスとレイスポスは牧場でお留守番なので手綱が緩んでいるようだ。
あときのみジュースは飲んでもいいが、貴重なエスパー枠なんだからテレパシー中継とかの仕事はしてほしい。
結構な数の伝説ポケモンがこの集まりに参加してきているが、まだまだ会っていない伝説ポケモンもいる。
彼らも気の良い奴らだと良いのだが……。
そんなことを考えながら咲き誇る桜を見つつきのみをかじると、その空間が裂けてどこかで見た顔がにょっきり。
『ジャッキー! この地球産の道具はどうだ? 高く売れそうだr……』
裂けた空間から顔をのぞかせる、やたらノリの軽い
『『『…………』』』
『…………すみません、間違いました』
しゅぽんっと
どうやら、のうてんきなアルセウスのいる次元もあるらしい。
・のうてんきミュウツー
花見主催者。同じ境遇のポケモンたちの交流の場として気楽に催しているが、開催のために毎回政府の偉い人が死にそうなくらい頑張っていることを知らない。
・カント―三鳥
わりと気ままに暮らしている。ファイヤーとフリーザーは火力発電や海水温低下活動など大きなプロジェクトに招かれることもあるが、サンダーは過去の実績から呼ばれないので、もっぱら天候の悪いところをフラフラして地表に落ちそうな雷をつまみ食いしている。
・ジョウト伝説組
優しい祖父母枠。ルギアはその潜水適性と研究者と意思疎通できるエスパー複合なため、各国合同の深海調査に協力。ホウオウはめでたげな見た目から様々な式典に出席している。三犬は生み出せるが特にその気はない。
・ホウエン伝説組
グラードンとカイオーガは精神年齢最年少組。ふざけがちでレックウザによくシメられている。ゲンシカイキ可能だが、すると普段優しいホウオウがわりとガチで怒るのでやらない。
・シンオウ伝説組
せっかちなディアルガときまぐれなパルキアという役割が破綻したコンビだが、一応最低限の仕事はする。おくびょうなギラティナはポケモン溢れる通常世界に出てこないが、2匹とは仲良し。
・イッシュ伝説組
意識が高く思考を巡らすがなかなか行動に移さない2匹。キュレムは考えるよりまず動いてみるタイプ。合体可能だが、主導権がキュレム側にあるのでめったにしない。
・カロス伝説組
傍迷惑な能力を持つイベルタルは相方とニコイチ。万一のためにジガルデが常にスタンバっているが、パーフェクトフォルムである必要は多分ない。
・アローラ伝説枠
エネルギーが足りないのでほとんど寝ている。起きると『こんにちは、にらみつけるさん^^』『デカくて赤いサンドさんチーッス^^』『パルキアのバカヤロー^^』とちょうはつを連打するので寝かせておくのが正解である。
・ガラル伝説組
全員同じ牧場で世話になっている珍しいやつら。見た目のせいでどんなにスキンシップをしても許されると思っているのでバドレックスは非常に苦労している。
たびたび度が過ぎて愛馬と合体した豊穣の王に轢きつぶされる。
・のうてんきアルセウス
日常的に世界の壁を壊してるせいで出る場所を間違えたやつ。
この後、自分の世界のパルキアとギラティナにこってり絞られた。