風もだんだん冷たくなる時分、人肌恋しくなったりならなかったり。
そんなこんなで、楽しく悩む日々。
続いてほしいような、決着をつけたいような。
青春はまだまだ、終わらない。

1 / 1
あれこれあって短編です、良ければどうぞ。


秋風はアオく立つ

 好きだとはまだ言えないけど、でももう「気になるだけ」なんて段階じゃない。なのにそう思いたいのは、私が臆病だからだ。

 誰かを好きになるなんて、考えたことさえ無かった。

 そういうのは遠い世界の話で、私にとってはまだまだ先の事。いつかはするだろうけど、今じゃない。その筈だった、のに。

 借り物の部屋で一人、サボテンを眺めながら私は溜め息を一つ。

 ああ、どうしたものか。らしくないな、こんなのは。

 

 恋愛の速度はそれぞれ違う、気が付いたときには他の人にとられていたりする。だから好きだと感じる瞬間があったら、ちゃんと自分の気持ちを認めてあげてほしい。

 花恋はそう言ってくれたし、その意味も分かっている。分かっているからこそ、どうしていいか分からない。

 大喜くんは、良い子だ。こんな中途半端な私を支え、前へ進む勇気をくれる。誕生日の夜以来、かけがえのない大切な存在になりつつある。

 ――でもそれは、果たして恋なのだろうか。

 大喜くんと蝶野さんが付き合っていたとして、それでも私は大喜くんを頼っていただろう。最近菖蒲ちゃんが大喜くんに迫ろうとしているのも、私は止めようとしていない。それはそれで構わない、とさえ思う。大喜くんが幸せであれば、笑顔でいてくれるなら、隣にいるのが私でなくたって問題はない。

 ここで誰かを押し退けてでも寄り添いたいとか思わない辺りが、恋愛とかそういう感じにならないんだろうか。

 なんにせよ私はどうもこういうのが不得手で、悩み方すら知らない。

 スキーでもなんでも最初は受け身と言うか転び方から覚えるらしいけど、私は何もしないまま17歳になって最初の恋をしている。周囲は幼い頃から恋をしているのに、私はバスケ以外なにも考えてこなかった。この体たらくで今転んだら、うっかり大ケガしそうで怖いな。というかなんだ、いつのまにかもう恋をしている前提になってるじゃないか。油断も隙もないな、私。

 

 閑話休題。

 正直を言えば私は、どうするべきか見当もついていない。この気持ちが「好き」であったとしても、それをどう扱えば良いのか。まずはそこから考えないといけないのに、延々と堂々巡りするばかり。

 私としては恋より特別な、今の関係でいたい。これからもずっと、この心地良い停滞の中にいたい。でももしも大喜くんが私を――好き、だったなら。大喜くんが「そういう」関係を望んだとしたら。私は、どうするんだろう。

 ――うー……ん、それは……本当にどうしたものか。大喜くんもオトコノコなわけだし、そういう気持ちになったりもするんだろうな。いやもしかしたら、隣室で「そういう」事をしていたりするかも。オトコノコだもん仕方ないんだろうけどさ、もし目撃したりしたらどうしようかな。

 いや仮定の話を拡げたって仕方ないんだけど、でもこれはこれで楽しいから参る。悩むことさえ楽しいんだから、人を好きになるって大変な事だな。結婚なんて沙汰の限りだ、好きな人と24時間一緒とか一大事過ぎるでしょうよ。

 いやいや、そうでなく。いずれは結論を出さないといけないのに、そうやって楽しく悩んでいてどうする私。

 結局私は不器用過ぎるな、どうにもならない。

 

 あの日私は、どうして大喜くんに触れようとしたのか。そしてなぜ反射的に手を引っ込めてしまったのか。家族のような距離感だった筈の私たちなのに、なんだか夏休みの前に戻ってしまったように遠く感じてしまう。あの時と違うのは、確固たる線があるわけではないという事。何となく照れが出てしまう感じで、素直に前へ出ていけない。その理由は私の中にあるのか、それとも大喜くんのせいなのか。

 季節はもうすぐ冬へ向かいだす、雪の気配を感じる頃までには気持ちにケリを付けられるかな。それが無理でもせめて、このサボテンが花を付ける前に自分の想いを整理しておきたい。

 ゆっくりと少しずつ、私は歩んでいく。その先は荒野かもしれないけど。 

 ま、良いさ。私は私の速度で進むだけだ、それで良い。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。