そんなこんなで、楽しく悩む日々。
続いてほしいような、決着をつけたいような。
青春はまだまだ、終わらない。
好きだとはまだ言えないけど、でももう「気になるだけ」なんて段階じゃない。なのにそう思いたいのは、私が臆病だからだ。
誰かを好きになるなんて、考えたことさえ無かった。
そういうのは遠い世界の話で、私にとってはまだまだ先の事。いつかはするだろうけど、今じゃない。その筈だった、のに。
借り物の部屋で一人、サボテンを眺めながら私は溜め息を一つ。
ああ、どうしたものか。らしくないな、こんなのは。
恋愛の速度はそれぞれ違う、気が付いたときには他の人にとられていたりする。だから好きだと感じる瞬間があったら、ちゃんと自分の気持ちを認めてあげてほしい。
花恋はそう言ってくれたし、その意味も分かっている。分かっているからこそ、どうしていいか分からない。
大喜くんは、良い子だ。こんな中途半端な私を支え、前へ進む勇気をくれる。誕生日の夜以来、かけがえのない大切な存在になりつつある。
――でもそれは、果たして恋なのだろうか。
大喜くんと蝶野さんが付き合っていたとして、それでも私は大喜くんを頼っていただろう。最近菖蒲ちゃんが大喜くんに迫ろうとしているのも、私は止めようとしていない。それはそれで構わない、とさえ思う。大喜くんが幸せであれば、笑顔でいてくれるなら、隣にいるのが私でなくたって問題はない。
ここで誰かを押し退けてでも寄り添いたいとか思わない辺りが、恋愛とかそういう感じにならないんだろうか。
なんにせよ私はどうもこういうのが不得手で、悩み方すら知らない。
スキーでもなんでも最初は受け身と言うか転び方から覚えるらしいけど、私は何もしないまま17歳になって最初の恋をしている。周囲は幼い頃から恋をしているのに、私はバスケ以外なにも考えてこなかった。この体たらくで今転んだら、うっかり大ケガしそうで怖いな。というかなんだ、いつのまにかもう恋をしている前提になってるじゃないか。油断も隙もないな、私。
閑話休題。
正直を言えば私は、どうするべきか見当もついていない。この気持ちが「好き」であったとしても、それをどう扱えば良いのか。まずはそこから考えないといけないのに、延々と堂々巡りするばかり。
私としては恋より特別な、今の関係でいたい。これからもずっと、この心地良い停滞の中にいたい。でももしも大喜くんが私を――好き、だったなら。大喜くんが「そういう」関係を望んだとしたら。私は、どうするんだろう。
――うー……ん、それは……本当にどうしたものか。大喜くんもオトコノコなわけだし、そういう気持ちになったりもするんだろうな。いやもしかしたら、隣室で「そういう」事をしていたりするかも。オトコノコだもん仕方ないんだろうけどさ、もし目撃したりしたらどうしようかな。
いや仮定の話を拡げたって仕方ないんだけど、でもこれはこれで楽しいから参る。悩むことさえ楽しいんだから、人を好きになるって大変な事だな。結婚なんて沙汰の限りだ、好きな人と24時間一緒とか一大事過ぎるでしょうよ。
いやいや、そうでなく。いずれは結論を出さないといけないのに、そうやって楽しく悩んでいてどうする私。
結局私は不器用過ぎるな、どうにもならない。
あの日私は、どうして大喜くんに触れようとしたのか。そしてなぜ反射的に手を引っ込めてしまったのか。家族のような距離感だった筈の私たちなのに、なんだか夏休みの前に戻ってしまったように遠く感じてしまう。あの時と違うのは、確固たる線があるわけではないという事。何となく照れが出てしまう感じで、素直に前へ出ていけない。その理由は私の中にあるのか、それとも大喜くんのせいなのか。
季節はもうすぐ冬へ向かいだす、雪の気配を感じる頃までには気持ちにケリを付けられるかな。それが無理でもせめて、このサボテンが花を付ける前に自分の想いを整理しておきたい。
ゆっくりと少しずつ、私は歩んでいく。その先は荒野かもしれないけど。
ま、良いさ。私は私の速度で進むだけだ、それで良い。