俺は正体不明の救難信号を探るために、遭難とはいえ別世界にやってきた。別世界というのは、俺たちテンノが活動するオリジン太陽系とは全く別の世界のことで、それはテンノが生まれる前の地球の歴史とも全く異なる世界だった。
最早異世界と言うに相応しく、現宇宙の並行世界でも、別世界線でもない。完全に全て理さえも異なった世界。
俺はそんな世界に迷い込んだ。
最初に人間を見つけ、次に別の人型種族を見つけ、次に敵対原生動物、自然生物という生物学からかけ離れた存在等々。
全く以ってどれも聞いたことも見たことも無い物ばかりだった。
そうする俺は、道中でドゥームス王国という。もっとも救難信号を強く発信している都市を発見し、またその発信源であろう国王の元を訪ねることに成功した。
黄金と黄金で飾られた絢爛の建物に住まう王。ドゥームス王国の現国王、
俺が建物の中へ入り、王のもとにこればその人間は疑いの目でこちらを凝視していた。
「そなたが、我々が助けを必要としているのを"知っていた"者か?」
「あぁ、そうだ。お前たちが想像もし得ない遥か遠い場所から来た。どうやらお前らはその助けとやらは外部に公開していないようだが……俺はそれを受け取ってしまった。それだけだ」
「受け取ってしまった……か。戯けが。そんな話信じられる訳が無いだろう。どうせどこからか漏れた噂を聞きつけてやって来たのだろう。我々の助けは、低俗の盗賊には任せられない。
我々は、勇ましき勇者を呼んだつもりなのだ。異界からな。
どこぞの馬の骨かも知らない者が異界と聞いて理解出来るかのぉ?」
「あぁ、俺はその異界から来たからな」
まさか。この世界は外側に別世界があることを認識しているとでも言うのだろうか。俺たちテンノは異次元テレポートや、過去と繋がるゲートを潜ったりと、この者たちから考えればあり得ないことばかりやっているが、その先に通じる別世界は俺たちが想像し得る場所であって、想像し得ない世界があると言う認識はない。
だからそれと同じく、本来なら異界と聞いても理解できるはずも無いが、"異界から来た"という文言だけ聞けば、俺は理解出来る。
「ならば証拠を示せ。残念だが、我々の勇者召喚の儀において全く別の位置に召喚されるなど有り得んのだ。
つまりお前は予想外の存在。お前が本当に勇者というのならば、そうだな。我が部下である兵士に勝つなど、朝飯前というやつよ。自慢のスキルとやらものを使ってな」
国王は俺を睨み、ほくそ笑む。その表情からは、もう疑いは消えていた。完全に俺を殺すつもりのようだ。
スキル。という言葉は聞き慣れないが、要はアビリティのことを言っているのだろう。
さて、力を示せと言うならば、こちらとしては望み通りだ。相手に信じてもらうにはまず力。それが必要なのは、オリジン太陽系の秩序を守る上で飽きるほどに経験している。
「……殺さないように手加減出来るがどうする?」
「ほう。そこまで自信があるのならば、やって見せよ。
我が部下、兵士たちよ。かの者に我々の力を思い知らせてやれ!」
国王は片手を玉座に座ったまま伸ばして、周りの兵士たちを鼓舞する。そして俺の相手となる兵士は周囲を囲むようにして立ち、槍や剣を構える。
人数は全部で6人。少なすぎるほどだ。
「一瞬で終わらせてやる。瞬きするなよ?」
「やれ!!」
国王の戦闘始めの合図によって、銀色の鎧を全身に纏った重装鎧の兵士が一斉に俺に向かって、槍や剣で攻撃してくる。
この瞬間、俺は現在纏っているwarframe。Excaliburの1番アビリティ。『
兵士達の武器が当たる直前に両手から青白く輝くエネルギーの剣を召喚すると、即座に真正面の兵士鎧を一撃真っ二つに切り裂く。
次に剣を逆手持ちに切り替えると、その隣の兵士の鎧を横腹から斜め上に切り裂く。
次にまた剣を持ち替え、隣の兵士の鎧を首から横腹目掛けて斜めに切り裂く。
その動きを続けて、僅か数秒で全ての兵士の鎧を素早く全て真っ二つに切り裂いた。
兵士の体ごと鎧を切り裂いたその断面は綺麗に平で、床に身体が転がってから、ゆっくりと鮮血が溢れ出す。
「これで終わりでいいか?」
「そ、そんな馬鹿な……。なんだ今のは……何が起きた? そこらの兵士は特殊な訓練を受けた熟練の兵士なのだぞ……」
「手加減は出来ると言った筈だ」
「ぐ……お前が。我々の呼んだ。勇者だと言うのか……。ここまで呆気なく我々の兵士がやられては認めざるを得ないな……。
他の者は兵士の遺体を片付けよ。我はこの者と話す。我々の助けを教えよう」
「分かった」
今回切り裂いた兵士はみんな全てごく普通の人間になるが、俺が普段相手にしているグリニアの兵士やコーパスのクルーマンと言った者たちもみんな元人間。
正確に言えばウィルスに感染した機械人間だ。身体を切れば赤い血が吹き出し、身体構造は人間そのもの。
今さら罪悪感なんてものは感じない。
そうすると俺は1人の王と1人の兵士に別の部屋へ案内される。
確か地球の歴史には、木造や石造りの建物があちらこちらに乱立していたらしく、案内された部屋は木造。
部屋に入る前の文字は、Ordisの自動翻訳で『私室』と書いてあった。王の私室だ。
ここまで俺を案内してくれた兵士は、部屋には入らずに扉だけを開けて王と俺を中に入れた。
「さて、そろそろ本題へと移ろうか……。我々が助けを求めている理由を話そう────」
そう国王は大きめの真紅の革と金の装飾が施されたソファーに座ると、俺も対面のソファーに座り、本題の話をし始めた。
王の話によれば、このドゥームス王国に限らず世界全体がとある問題に揺らされており、その問題とは、『魔王軍の襲来と占領』が問題となっているらしい。
今までこの世界はすでに魔王軍の侵攻を何度も受け、それら全てを押し返しているようだが、今回ばかりは抑えきれず。寧ろだんだんと他の国の領地も奪われているという問題だった。
このまま魔王軍の侵攻が続けば、世界は魔王の物となり滅亡してしまうだろうと考えているようだ。
それを抑えるべく、異界から勇者を召喚した訳だが、それでも尚心配があると言う。
それは魔王軍の侵攻の速さだった。
魔王軍を何度も退かせているからこそ、魔王軍も力を付けていくわけだが、今では空飛ぶ竜までも仕えさせ、小さな集落や村は一瞬にして焼き尽くしてしまうのだそう。
しかもその竜は1匹だけではなく、とある国では100匹の竜によって完膚なきまで壊滅させられたとか。
「という訳だ……あぁ、あの報告を思い出しただけでも恐ろしい……いつ我々の国を襲撃してくるか、実は最近眠れていないのだ」
「なるほどな。その竜以外にも脅威はいるのか?」
「む……? それは……分からん。何せ我らはまだ魔王のすら拝んだことが無いからな」
なんてこった。俺はなんて世界に迷い込んでしまったんだ。流石にレールジャックの大戦よりは規模が小さいが……要は圧倒的な戦力で魔王とやら存在に押されつつあるのが現状か。
とりあえず空飛ぶ竜はアークウィングでなんとかなるとして、更なる脅威に備えないとな。
「話は分かった。引き受けること自体は構わないが……報酬はあるか?」
「報酬……? ははは、まさか今の話を聞いて全く動じないどころか、報酬の話をするとは恐れ入った。
あぁ、勿論だ。今回の魔王軍の侵攻を退けることが出来たならば、お前は間違いなく、この世界の英雄となる。勿論、莫大な報酬が与えられるだろう」
「そうか。なら分かった。じゃあ交渉成立だ。俺が全部片付けて、魔王とやらも撃墜してやる」
「魔王を撃墜。ははは、冗談は程々にしておけ。それではよろしく頼んだぞ。そうだ。名前は?」
俺はここで自身の名前であるArthurを名乗ろうとしたが、あえてwarframeの名称を答えた。
テンノは俺たちのことを言うが、オリジン太陽系の秩序を保っているのは、warframeそのものだからな。
「俺は、Excaliburだ」