【完結】世界を救ったヒーローの二週目特典である完璧美少女ボクがライバル全員TSしてるせいで負けヒロインな件 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
ゾディアック・キング。
世界の支配を目論んだ≪ゾディアック≫、文字通りその王。
一周目の世界で、それを倒すのにシロウは多くの犠牲を支払った。
モノポリーの妹を人質にし、シロウと戦う様に仕向けた。
チェッカーに施されていた洗脳により無意識でゾディアックにシロウたちの情報を流し、土壇場で裏切らせてシロウに殺させた。
ナインモリスの復讐相手であるゾディアック・ナイトの一体と決闘を用意し、相打ちさせ、シロウに見殺しにさせた。
コネクトの研究意欲を利用し、ゾディアックの怪人とし、シロウに殺させた。
フリッツという自らの娘を失敗作と断じ、心を通じかけていたその瞬間、シロウの目の前で殺した。
最後のたった一人となり、そして戦いの果てにようやく倒した因縁の相手である。
そのキングの――――息子。
フリッツという娘を妹と呼んだ青年、そして無双プレイヤーオデッセイ。
ボードゲームを模したオセローたちとも、コンピューターチェスのソフトから取られたフリッツとも違う。
オデッセイ。
古代ギリシャの詩。或いは放浪や冒険を意味する単語。
そして――――世界初の家庭用コンピューターゲームの名だ。
それはただの皮肉か、或いは。
「―――ボードゲームの時代はもう終わりだよ」
シロウと対峙したオデッセイが指を鳴らし、
「!」
半透明のエネルギーが広がり――――ユニバーサルオセローの変身が強制的に解除された。
「これは……!?」
「オセローの最強形態。対策していないわけがない。オセローからフリッツまでのライダーシステム、それはゾディアックの技術を使ったものだからね。正確に言えば、ゲームコインを全て無効化した」
「っ……そんなことが……それに、キングに子供だと!? そんな……!」
「知らなくて当然だ。フリッツが生み出されて、僕は失敗作と捨てられたからね」
「!」
「最も、≪ゾディアック≫を君が潰してくれたおかげで僕にもチャンスが生まれた―――僕を捨てたキングを超えるチャンスが!」
怒りと興奮を滲ませながら、オデッセイが右手に光球を生み出した。
明らかな破壊力を秘めたそれが激情とも共にシロウに放たれる。
「っ……!」
変身解除され、それを避けるには今のシロウでは間に合わず、
『
飛来した真っ白の円形ディスク――オルターホワイトピース4枚が、盾となってシロウを守った。
そして現れたのはオセロー・オルターブラックモデルとは真逆の白と銀のカラーリング。肩や腕が流線形となった武装プレイヤー。
『オセロー! オルターホワイト!』
もう一つの強化形態、武装プレイヤーオセロー・オルターホワイトモデル。
「……早かったな」
「遅くなったよ」
変身解除して現れたのは純白の女―――長谷川クロエだった。
●
シャーリーたちの前に現れたクロエは、手を出すなと言った。
長谷川クロエ。
アルビノの美女。
シャーリーも風も撫子も蓮もフリッツも。
彼女のことが嫌いだった―――――というと語弊があるかもしれない。
好き嫌いで語るには彼女たちのクロエに対する感情は複雑だ。
5人はそれぞれ、ゾディアックに人生を歪められかけ、しかしてシロウに救われた。
だからこそ彼に心を奪われたし、恩返しをしたいと思っているし、彼の心を手に入れたいと思っている。
助けられたから好きになった、なんて少し陳腐かもしれないけれど。
紛れもなく、彼女たちにとってシロウは救いだった。
そしてそんなシロウの隣に、当然の様にクロエは立っていた。
シロウもまたクロエがいることを当然としていた。
恋人、とは違う。家族や親友が近いかもしれなけれど、それも当てはまらない。
白と黒、男と女。
正反対の違いはあれどよく似ていて、けれど正反対の2人。
1人であろうと、2人の在り方は揺らがない。
けれど、2人であることが最も自然であるような。
誰にも付け入る隙がない、鏡合わせのような2人。
決して間に入れないと悟るしかない。
なのに、
『皆さんには皆さんのできることがあるでしょう―――それをシロウも望んでいる』
クロエはいつも、シャーリーたちを尊重しようとする。
シロウの隣に当然のようにいるのに、彼女だって彼を想っているのに。
自らは何もしようとしないし、シャーリーたちがシロウに近づくことを止めようともしない。
日々誰かがシロウをデートに誘っても、クロエは止めない。
どれだけ関係を深めようとしても彼女は止めない。
どこに行こうと、どれだけ話そうと。
結局シロウはクロエと住む家に帰るだけだ。
だからシャーリーも風も撫子も蓮もフリッツも彼女を好きになれない。
自分を救ってくれた彼の隣にいたいのに。
どれだけ隣に立っても、立とうとしても、シロウの背中には必ずクロエがいるのだから。
そのくせ、隣に立とうとすることを尊重する。
あぁ、つまり結局の所。
彼女たちは――――長谷川クロエが羨ましいのだ。
●
「君……何故変身できた? プレイヤーの力は機能不全にしたはず」
「ふむ」
オデッセイに問われたクロエは小さく首を傾げ、
「ボクは色々特別なのと……このコインは特別製ですからね。≪ゾディアック≫の技術から生まれたものというと少し違いますし」
ゲームコインやドライバーのようなプレイヤーシステムはゾディアックの技術から作られた。
だが、≪アルターコイン≫は違う。
初めてビショップのクラスの怪人と戦った時、追い込まれたシロウが自ら生み出した、ゾディアックの技術とは似て非なるものだ。
「それで、シロウ。このプレイヤーは?」
「キングの息子らしい。オデッセイだとさ」
「……なんと。道理でちょっと時代が進んでる感あるわけですね」
「当然だろう! ボードゲームなどもう古い! 僕は! さらなる未来に進んでいる!」
「いや、オデッセイって。発売されたのもう50年くらい前ですよ。レトロ通り越して化石じゃないですか。というかボードゲームにまで劣等感が?」
「――――」
オデッセイの動きが止まった。
だがクロエは呆れつつ、
「さらなる未来とか……PS7くらいじゃないと……」
「飛びすぎだろ。次のswitchくらいでいいよ」
「それは未来というかただの次世代機では?」
「いいだろ次世代機。近未来感ある」
「えぇいうるさいよ! 進歩はしているじゃないか! 確実に!」
「存外健気ですね」
「劣等感が現れてるだけだろ」
クロエは肩を竦め、シロウは嘆息し。
黒い男と白い女が並ぶ。
「君は……なるほど、キングを長谷川シロウと共に倒しただけはある……一体何者だ?」
「シロウとキングを倒した女でしょうか」
「言葉遊びをするつもりはない!」
しびれを切らしたオデッセイが腕を振れば、それだけで豪風が巻き起こり、周囲に小さく雷撃が弾ける。
「……気を付けろ、クロエ。煽るのも良いが、中々手強い」
「そうですか? 精神は子供みたいですよ」
シロウは眉を潜め、クロエは苦笑し、
『リバースドライバー!』
彼は右手で、彼女は左手で、逆の動きでドライバーを装着する。
男はオルターブラックコインを。女はオルターホワイトコインを。
それぞれを手にし、ブラックは右側、ホワイトは左側のスロットに装填する。
『オルターブラック!』
『オルターホワイト!』
ベルトから発せられるテンションの高い機会音声。
スロットの中の黒のコインは縁に金、白のコインは縁に銀の装飾が同時に追加。
二人を中心に黒縁緑色の碁盤の目状のフィールドが展開。
それぞれの目に半透明な金縁の黒、銀縁の白のオセロの駒がずらりと並ぶ。
「なんだ……君たちは、さっきから正反対のことを言って! 君たちはキングを倒した二人で一人のプレイヤーじゃないのか!?」
「違うさ」
「違いますよ」
身体にスパークを纏いながら、二人は答え笑う。
「俺とクロエは」
シロウは手の甲を前に右手を掲げ、
「ボクとシロウは」
クロエは掌を前に左手を掲げた。
「――――ずっと、ただ1人の武装プレイヤーだ!」
「――――ずっと、ただ1人の武装プレイヤーです!」
吠え、スパークが身体から消え、足元のオセロの駒が二人の背後に集結し、システマチックな太極図を模した魔法陣に。
そして、
『――――変身ッッ!』
『
魔法陣が二人を潜り抜け、光を放ち、2人が1人になる。
黒金と白銀。アシンメトリーとのプレイヤー。
『オセロー――――オルタナティヴ・ゼロ!!』
最強にして究極。
究極形態、武装プレイヤーオセロー・オルタナティヴ・ゼロモデル。
1人の人間が2つに分かれ、もう一度一つになった真の姿。
『さぁ!』
二つの声が重なる。
けれど、意思は一つに。
表裏一体、正反対だけれどその姿こそが最も自然だから。
『――――ここからひっくり返そう/しましょう!』
●
海風が頬を撫でる。
街から自宅への帰り道にある海岸。
二人は砂浜に座りこみ、肩を並べて夕陽を眺めていた。
シロウの手にはコーラの瓶、クロエはミネラルウォーターのボトル。
道路には、普段からシロウが移動で使っているバイクが止まっていた。
クロエは沈んでいく太陽を遠い目で見つつ、
「ばっちり決めセリフ決めて逃がしましたねー」
「逃がしたなー」
つい先ほどの戦闘を振り返る。
オルタナティヴ・ゼロでオデッセイを追い詰めた。
キングを倒した必殺技を叩き込み―――しかし倒しきれず逃がしてしまった。
キングの先と豪語するだけはある。
「ほら、手強かっただろ?」
「……」
指摘に彼女は形の良い唇を尖らせる。
不満は多い。
オデッセイを倒しきれなかった。
だが、それよりも、
「……折角世界が平和になったと思ったのに。なんですかあのぽっと出は。息子って。そういうのはフリッツで一通りやったでしょう」
世界を救って。
平和な世界になってやり直したと思ったのに。
戦いの無い日々をシロウに送ってもらえると思ったのに。
誰かを救うのではない。
ただ、シロウが救われて欲しかったのに。
「いいさ」
なのに、シロウは肩を竦めて、何でもないことのように言う。
「まー、びっくりしたけど。仕方ないだろ。神様も、おまけの敵はサポート範囲外だったってわけだろ」
口調は軽い。
この場にはシロウとクロエしかいないから。
飾らずに、けれどクロエにとっては悲しいことを言う。
「一周目の……初めてドライバーとコインを手にして、変身した時から。解ってたことだ。プレイヤーになった以上、生きる限り戦い続けるしかないんだ」
だからと、彼は笑う。
「まぁいいよ。戦うさ」
「……最悪です」
「ははは」
クロエは不満を零し、シロウは笑う。
結局彼は、そもそもの精神性がヒーローなのだ。
今日だって、どんな危険があるかもわからないのに、危険が起きているだけで、誰よりも真っ先に飛び出し、逃げる人々の波に逆らい迷うことなく中心に飛び込んだ。
それは、誰にでもできることではない。
きっとシロウはプレイヤーシステムが無くても同じことを言う。
誰かのために駆けだして、怯える子供を励ますことができるのなら。
人はそれを、ヒーローと呼ぶのだろう。
「戦うのが苦しくないわけじゃないけど」
「はい?」
言葉を紡ぐ、シロウは立ち上がり、
「
クロエに手を差し伸べる。
「…………もう」
思わず、彼女は苦笑する。
ずるい男だ。
だって、そんなこと言われたらこれ以上文句が言えない。
「珍しく意見が一致しましたね」
「あぁ、そりゃそうだ」
彼は笑う。
いつだって。
どんな時でも、彼は自分を、誰かを勇気づける為に。
「俺たちは2人だけど1人なんて矛盾してる。だけど――――表裏一体だからな」
そして二人は一緒にバイクに乗り、走り出す。
海岸線は真っすぐに伸びた。
けれど、二人は、二人で突き進む。
白と黒だけで完結した遊戯のように。
沈む夕日は昼の終わりと夜の始まりを告げていく。
昼と夜の境界線の中で、黒と白は進み続けて行った。。
これにて完結です、ありがとうございました。
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