あれこれ世話を焼いてあげないと、心配で心配で。
なにせ不出来な子達だもの、手間ばかりかかる。
そうやって裏から支えるのも、悪くはないけど。
――まったく、良くやるよね。
バスに揺られて二時間、山沿いのホテル併設体育館で練習に明け暮れるバド部のみんなを見ていると素直にそう思う。顧問が引き上げてもまだ真面目に練習中、傍から見てもヘロヘロなのにまだまだ動き続ける。口では「こっそり休憩増やして」とか言うけど、そんなことしたら逆に怒るんだろうな。
でもせっかく二泊三日の旅行なのに、みんな体育館とホテルの往復で終わりそう。……いや、山道を走るってのもあったか。
菖蒲はそもそもスポーツ苦手だし汗臭いのも嫌なんだけど、ここまで真剣なのを見てると考えが変わりそう。まあマネージャーだけでも疲れるし、練習に参加するとかは絶対無いけど。無いけど、でも。ちょっとだけ、格好良いなーとか思ってみたり。汗一つかかないで黙々と闘うクール系も良いけど、ここのみんなみたいな泥臭い熱血系もアリかな。
それにひなっちが、いのたを好きになった理由も段々わかってきた。まだその根っ子は捉えきれないけど、少しずつ。
ああ、でもなあ。新体操部はちょっと離れた体育館使ってるから、いのたと上手く行くように根回しするのも難しいんだよねぇ。
あと、ちーちゃんも別の体育館にいる。あのグラデ先輩とくっつけてあげたいのに、菖蒲の手が届く範囲には来てくれない。
……せっかく同じホテルなのに練習場は別々とか、無駄だよねぇ。まあ体育館の保守点検をする為に、他所で部活やらせたいだけらしいし。
さてと、どうしようかな。
あれこれやることばかり多くて、大変だ。頑張らないと、ね。
練習練習、また練習。そのサポートで菖蒲もあっちこっち行ったり来たり、忙しく走り回っている間に日はとっぷりと落ちていた。
「あー……ご飯食べた気しなぁい……」
マネージャーとしてあれこれ気を回しながらの夕飯って、正直疲れる。なんで菖蒲がお茶汲みなんかしないといけないのさ、自分でやれば良いのに。別に頼まれればするけど、こういうのまでマネージャーの仕事ってなってるから志願者がいないんじゃないかな。
それに食べ終わったら即練習するし、良くもまあ。親が死んでも食休み、って昔の人は言ったそうだけど。
でもまあもうじき体育館の使用時間が終わるし、切り上げて片付けたらお風呂タイム、やっと一息吐けるかな。
ちーちゃんたちも戻ってくるし、そろそろエンジンかけていこうかな。さすがに場所が場所だから、あんま色っぽい話は出来ないけどね。
それにしても運動部って、つくづく菖蒲が知らない世界だ。世の中はフワフワしてキラキラしてて、なんとなく好きとか嫌いとかあって回ってるものだと思ってたのに。わざわざ苦しい思いして、その先の
もし菖蒲が健吾を好きになっていたら、もっと早くこの世界を知っていたんだろうか。知るだけでなく、飛び込んでいたかもしれない。そういう可能性も、有ったんだろう。選ばなかっただけで。
……うーん、疲れたからか柄にもない事考えちゃって良くないな。ひなっちを応援しなきゃいけないし、集中しないと。
いのたは真っ直ぐ前しか見てないから、女の子に好かれるっていうのが良く分かってない感じなんだよね。菖蒲が免疫付けてあげても良いんだけどさ、それやると
あ、それにちーちゃんの事もあるし。モテる割りに全然男っ気ないから心配だったけど、好きな人がいるんだよね。お姉が言ってた、あのイケメン帰国子女。こっちもこっちでくっ付けて、ちーちゃんにも恋愛の楽しさを教えて上げたい。バスケ一筋も良いんだけど、一生続けられる訳じゃないんだから。
人を好きになるのもなられるのも、楽しくて嬉しくて幸せなんだ。菖蒲はいつだって、そう信じてる。
さて、と。
「おーいぃ、そろそろ時間だよー。汚れ物纏めて、さっさとコートも片してー」
菖蒲の声に、ヘバりかけていたみんなもどうにか復活してノロノロと撤収作業を始める。これが終わったら一回リネン室行って、それからお風呂行こう。
自由時間使って色々と試したい事もあるし、まだまだ夜はこれから。
お楽しみも、これからだ。