写輪眼と斬魄刀貰って白ひげの能力で現代に転生した人   作:パプリカ23

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内葉やちる 急

 電話に出ると、社長の慌てふためいた声が響いてくる。

 

「や、やちるさんっ!すみませんわた、私のせいで!」

「落ち着きなって、別に社長だけの責任じゃないだろ?」

 

 顔バレは私にも責任がある。機材調達ができなかったのはともかくとして、調子が悪いのを知っていたのだから、仮面でもなんでもしておくべきだった。

 

「でも機材は私が用意する契約で…それに顔がバレたら…やちるさん…うえぇ」

「まあまあ、過ぎたこと言ってもしょうがないでしょ?どうするか考えないと」

 

 少しの嗚咽の後、電話口からずずっと鼻をすする音が聴こえて、社長がはきはきと喋りだした。

 

「その通りですね…やちるさん。どうしますか?その、引退も考えられて良いと思いますけど…」

「ふふ、それじゃ約束破っちゃうからさ。続けたいとは思ってるよ」

 

 そう、私はここにきてもまだこの仕事を続けたいのだ。自分でも不思議だが、かなりVtuberというものに愛着があったらしい。

 

「でも、顔で稼ぎたくは…無かったんだよな」

「それは私も理解しています。やちるさんとはそれなりに付き合いがありますから」

 

 問題はこの容姿である。これは女神様からの贈り物、つまりはチートである。私はチートを乱用してお金稼ぎはしたくない。

 

「まあ、電話越しで話す内容でも無かったね。どうしようか?そっちに行こうか?」

「いえ!私が行きます。家で待っていてもらえますか?」

「了解。あんまり焦って来ないようにね。事故起こすと更に面倒になるから」

「はい!分かりました!じゃあ少々お待ちください」

 

 小学生でもしないような元気の良い返事をして電話が切れる。大丈夫かな?社長のテンションが変なほうに行ってる気がする。

 

 スマホをテーブルに置いて隣を見れば、紫苑が心配そうな顔をしてこちらを見ていた。

 

「大丈夫だって、何とかなるよ」

「やちるさん…その、私にできることがあれば言ってください。私何でもしますから!」

 

 ぐいっと身を乗り出して、顔を近づけてくる紫苑。取りあえず肩を押さえて座らせた。なおも言い募ろうとする紫苑を落ち着かせるために口に指をあてて黙らせた。

 

「ちゃんと助けが必要になったら言うから、落ち着きな」

「は、はいぃ…」

 

 紫苑の意識を紛らわすためにテレビを点ける。

 

「げ」

「あれ?この学校…」

 

 しまった、顔バレのせいで昨日のことをすっかり忘れていた。慌ててチャンネルを変えようとするが、凄い速度で紫苑の手が回ってきてリモコンを押さえ込んだ。

 

「早っ!?」

「……やちるさん…これ、もしかしてやちるさんが…?」

 

 ニュースではある学校の少女たちが、自分たちのやったいじめの内容を全てSNSにあげたと伝えられていた。あげられた内容は文字だけでなく、画像や動画も含まれており、全て被害者にモザイクが掛かるように処理されたものだった。

 

 あ、というかモザイク処理とか命令するの忘れてたな。もしかして主犯のあの娘が機転利かせたか?あぶなかったぁ…

 

 内心で自分のミスに気が付いて冷や汗を流していると、紫苑が私に向かって抱き着いてきた。

 

「もう!勝手にこんなことまで!……もう我慢できません!」

「ちょちょ、なになに!?」

「すぅー…すぅー…」

「え?何か吸ってない?」

 

 ぎゅうと私の体を絞めつけるように抱き着いていた紫苑は、そのまま動かなくなってしまった。私は何もできずに固まったまま、社長が来るのを待つことになった。

 

 インターホンが鳴って社長が部屋に入ってくる。紫苑は慌てて席に戻り、何事も無かったかのように黙っていた。社長は見知らぬ少女にちらちら視線を送りながら私に視線を合わせた。

 

「いやぁ悪いね。わざわざ来てもらって」

「いえ、それよりも…その方は?」

「この子は紫苑、あ!そうだ丁度そのことも相談しようと思ってたんだよ!」

 

 私は訝し気にしている社長に紫苑の身の上と出会いのあらましを軽く説明した。社長は話を聞くうちに頭に疑問符を浮かべていき、険しい表情になっていく。

 

「川を割って…?政治家の娘…ちょ、ちょっとよく解りませんが、それって誘拐ってことですか?」

「そうなんだよ。社長、何とかならない?」

「ええ…?何という丸投げ…」

 

 驚きすぎて半分白目になっている社長に、紫苑が声を掛けた。

 

「…あの、私はやちるさんの所で生活したくて…社長さん?どうにかならないでしょうか…」

「うーん、未成年だと保護者の同意無しは…紫苑さん今おいくつですか?」

「…17です。で、でもあと1か月で18になります!」

 

 それなら、とぶつぶつ考え出す社長。やっぱり年長者は頼りになるなぁと煎餅を食べながら思う。

 

「私たちが彼女を保護するためには、一か月の間紫苑さんのお父様を黙らせる必要があります。誘拐と騒ぎ立てられるとまずいので」

「まあ、それは解るよ」

「政治家はスキャンダルを恐れますから、娘さんのいじめ問題を無視して育児放棄した、と週刊誌にリークするとでもいえば何とかなりそうではありますけど」

「おー!じゃあそれで行こう!」

 

 正直なところ写輪眼を使えばいい話ではあるが、使わずに済むならそれに越したことはあるまい。これで問題の一つは片付いた。隣でほっとしている紫苑の頭を撫でて、一緒に笑う。

 

 私がわっはっはと笑っていると、社長はぴっと人差し指を立てて私の方を向いた。

 

「笑ってる場合じゃありませんよ!やちるさん!貴方の方が問題なんです!」

「う…いや、解ってるけどさ…」

「やちるさんニュースや掲示板見ましたか?」

「あー見てない。なに?そんなに盛り上がってるの?」

 

 社長は黙ってスマホを操作してニュースのコメント総数ランキングを私に見せた。総合カテゴリの一位に私のVtuber名が表示されている。

 

「うわぁ…まじ?」

「まじです。顔が良すぎるんですよやちるさんは」

「やっぱりそこかぁ…ねえ社長?私チートで儲けたくないんだけど…何とかならないかなぁ?」

 

 私の無理なお願いに社長は悩まし気に眉を寄せる。私だってもうどうやったってそれが不可能なことは解っているけど…それでもこの力に頼ることを、私はしたくないのだった。 

 

「難しいです…すみません。私の力不足で…」

「…いや、まあ分かってたさ……」

 

 部屋に沈黙が訪れる。二人で落ち込んでいると、我慢できなかったのか紫苑が口を開いた。

 

「わ、私は!やちるさんの力に助けてもらいました!やちるさんが居なかったら、私は今頃死んでるんです!」

「そりゃ、紫苑のときはチート使ったけどさ、それは命が掛かってたからで…」

「た、確かにそうですけど…」

 

 私が紫苑と話し込んでいると、今度は社長が何か思いついたのか紫苑に話しかける。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。その、紫苑さんは超能力?で助けられたんですよね?」

「え?あ、はい。私はやちるさんの力に助けてもらいました」

「うん、でその後やちるさんは紫苑さんの学校へ行った。その時は別に紫苑さんの命は掛かってなかった」

「あ、そうですね…確かに」

 

 くるりと社長の視線が私を向いた。じっとこっちの顔を覗き込んで真剣な眼差しで語る。

 

「やちるさん、どうして学校に乗り込んでまでして力を使ったんですか?」

「え?…そりゃあ……」

 

 言われてみれば、どうしてだろう…紫苑はもう自殺しようとしていなかった。なのに私はわざわざ乗り込んでいって力を行使したのだ。

 

「紫苑のことが…可哀想だったから、かもしれない」

 

 社長は静かに笑った。優しい顔をしてこちらを見ている。

 

「つまり、貴方は自分ではない、誰かの為なら力を使えるってことではありませんか?」

「……そうかも」

 

 思い返せば、最初にチートを行使していたのだって両親に喜んでもらいたいが為だった。使うのをやめたのは自分の為に力を使った時だった。そして、紫苑を助ける為にまた力を使った。

 

「もしかしたら…その力をくださった誰かが、そういう風にしていたのかもしれませんね」

 

 それが正解かどうかは分からない。女神様に私が会うすべは無いし、そんなことを彼女は一言も言っていなかった。でも、何となくそうなのかもしれないと、そう思った。

 

「じゃあ、なおさら配信はできないよ。自分の為に力は使えないし、使いたくないんだから」

「……やちるさん、私、アイドルに成りたかったんです」 

 

 どこか遠くの昔を思い返すように、社長は呟いた。

 

「アイドルってどんな仕事だと思いますか?」

「え?んー歌って、踊って、手を振って…」

「んふふ、違うんですよ。いいですかやちるさん、アイドルは夢を、希望を与えるお仕事なんです」

 

 彼女は私の手をつかみ取って、キラキラした目で語る。

 

「もし、貴方が宜しければ、やちるさん。本物のアイドルに成ってくれませんか?貴方なら世界中に夢と希望を届けられると思うんです!」

「い、いやぁ…できるかなぁ…」

 

 夢と希望を届ける?こんな私が?貰った力で何をするというのだろうか、こんな私の言葉に果たして説得力があるだろうか。

 

「そういうのはさ、ずっと努力し続けた人がやるから価値があるんじゃないの?」

「貴方はずっと、誰かを楽しませようと頑張っていましたよ。悪口を言われても問題が起きてもずっと。だからこそ、貴方はアイドルに相応しい。誰が何と言おうとも、私はそう思っています」

 

 

 

 外で鈴虫が鳴く、静かな夏の夜。握られた両手から、彼女の中で渦巻く熱量が伝わってくる。しらず、口角があがった。

 

 

 この道が正解なのかはわからない。もしかしたら、すごく後悔することになるかもしれない。

 

 

 でも面白そうだと思う。女神は確かに言ったのだ、「楽しんで下さい」と。

 

 

「なら楽しまないとな…」

「え?」

「いいよ。それでいこう、私はゲーム配信者じゃなくて、アイドルになる」

 

 社長は今まで見たことがないくらいのとびっきりの笑顔で私に抱き着いた。なぜか紫苑も抱き着いてくる。

 

「すごい!これは凄いことになりますよ!やちるさん!」

「ああもう、わかった、わかったから離れてよ」

 

 いつの間にか胸に顔を埋めていた社長を剥がす。彼女は興奮が収まらないようで、きゃっきゃと騒いでいる。勝手に騒がれるだけも癪だ、私は条件を出すことにした。

 

「ただし、条件がある」

「え゛!?」

「紫苑と社長、二人もアイドルになってよ」

 

 一人ではやりたくない、こいつらも道連れである。それに、そっちのほうが面白そうだ。

 

「わ、私!?私今年で32なんですが!」

「いいじゃん、おばさんアイドル」

「お、おばっ…む、無理です!肌だって荒れ放題だし…」

「あ、思い出した。社長の健康心配してたんだよ」

 

 私は肉雫唼を取り出して、社長を飲み込むように指示する。

 

「え?かた…ぎゃぁ!?何ですかそれ!化けも―――」

 

 叫びながら呑み込まれていった社長に黙とうを捧げていると、紫苑が声を掛けてきた。

 

「やちるさん!私も頑張ります!…けどアイドルって、顔が良くないと駄目なんじゃ…?」

「え?別に悪くは無いと思うけど…まあ、顔が出せないならVtuberアイドルでいいでしょ。その辺りはおいおい決めようか」

「なるほど…わかりました!」

 

 ふんすとこぶしを作ってやる気を漲らせる紫苑。その時、彼女のお腹がぐるると鳴った。顔を赤らめさせる紫苑を見て思わず笑う。

 

「ふふ、晩御飯食べようか。社長の分も作らないとね」

「あ、はい!手伝います!」

 

 肉雫唼がもぐもぐしている横を通ってキッチンへ向かう。ふと思いついて私は紫苑に声を掛ける。

 

「あ、そうだ。紫苑も後で配信に出てよ。顔は何かで隠してさ」

「え!?な、なにで隠すんですか・・・?」

 

 紫苑に訊かれて少し考える。そういえば、段ボールの中に昔の着ぐるみがあったはず。確か会社のイメージキャラクターだったかな?あれを使おう。

 

「後で渡すよ。社長にも被ってもらおうかな?」

「・・・大丈夫ですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー1年後ー

 

 わっしょい!わっしょい!

 最高だった!

 88888888

 しゃちょーサイコー!

 凛ちゃん良かった!

 888888

 さて…

 いよいよ次か?

 順番で言ったら次が姐さん

 姐さん来る?

 どきどき

 

 凄い速度で流れるコメント欄を控室で眺める。幾つもの配信サイトに分かれているにもかかわらず、私の見ているサイトの同時接続数は100万を軽く越していた。

 

 ばたばたと足音がして、二人が入ってくる。汗だくでペットボトルの水を飲んでいる二人に近づく。

 

「お疲れ」

「いやぁ…ふぅ、流石に疲れますね…ふふ」

 

 息を整えながら、社長が笑った。疲れてはいそうだが、顔にはまだまだ余裕があり何より楽しそうだった。

 

「だいぶ体力ついたんじゃない?前は一曲踊るだけでへとへとだったのに」

「あはは、運動したのもありますけど、やちるの肉雫唼が一番大きいです。あれ凄すぎますって」

 

 社長は肉雫唼のお陰でかなり肌年齢を取り戻していた。体調も健康そのものになり、20代の頃よりもパワフルに働いている。

 

「お母さんの出番、この次ですね。頑張ってください!見てますから!」

 

 私のことをお母さんと呼んだのは紫苑だ。立ち絵を描いてあげたくらいから、そう呼ぶようになった。彼女くらいの年頃の子供がいる年齢ではないので、正直不満だが、まあ本人がそう呼びたがるので許している。

 

 彼女は現在、川底凛として活動している。

 

「うん、まあぼちぼち頑張るよ」

「またそんなこと言って…お母さんのファンが一番多いんですから…」

「分かってるって」

 

 適当に返事をしていると、スタッフが私の名前を呼んだ。席を立ってステージへ向かう。

 

「やちる!頑張ってね!…いつか絶対一緒に立つから」

「ふふふ、じゃあそれまで待ってるよ。行ってきます」

 

 今のところ、ステージに直接立って顔を見せることが出来るのは私だけだ。社長や紫苑は顔出しで一緒に踊ろうとしたが、踊りのキレなどが原因でその夢はまだ果たせていない。とはいえ、彼女たちは日々頑張っているし、少しづつ動きも良くなっている。一緒のステージに立てる日もそう遠くは無いはずだ。

 

 天井付近から、キラキラの衣装を身に纏ってステージへ飛び降りる。一応ワイヤーをつけてはいるが、実際には使っていない。

 

 5万人の観客の視線が私へ刺さる。熱気が伝わってきて、歓声で空気が震えた。

 

 イントロが流れ始める。

 

「皆、よく来た!今日は目一杯歌って踊るよ!」

 

 口を大きく開いて、喉を震わせた。グラグラの実で空気を振動させて、声を遠くへ響かせる。振動は会場を飛び越えて、世界中の視聴者に届くだろう。

 

 私は今日も楽しんでいる。

 







以上で完結となります。ここまで読んでくださってありがとうございました。

今作は特殊タグと掲示板方式の練習のために考えた短編で、それほど長く書く予定はありませんでした。ちょっとさいご急ぎ過ぎたかな?とは思います。期待してくださった方々には申し訳なく思っています。幾つか至らない点も見つかって恥ずかしい限りです。

続きを期待してくださる方が多いのですが、お話をこれ以上広げられないのでこの作品では難しいです。ごめんなさい。ただ、現代×チート?(他作品の力)物で広げられそうなお話を考えたので、そっちで書く事はあるかもしれません・・・まあ、予定ですが・・・

詳しくは活動報告へ載せるのでもし興味ある方いらっしゃいましたら一読頂ければ幸いです。


因みに、主人公が女性なのはVtuberにする為と、男だった場合、ヌルヌルの粘液を出す刀を持っていて、洗脳催眠自由にできて、全身バイブの18禁になってしまうからです。おいおい、恋愛物語なんて書いてられなくなっちゃうよ


また、何処かでお会いできれば幸いです。読了頂いた皆様方、重ねてお礼申し上げます。
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