血に飢えた創作家ゆえに、野性と理性のバランスが崩壊しつつある。
それでもいいなら、引き続きよろしくお願いいたします(注意書きとは?
【前回のBullets Price】
井ノ上たきなの治療行ったフリッツの傭兵集団。そして新たにウォールナットことクルミがフレディを除く全員の本名を暴く。ざわめく傭兵の中、動じないリー(とフレディ)。喫茶リコリコに対して2人は”北押上駅爆破テロ”真相を求めていた。
【真相を求めて】
喫茶リコリコ
夕刻
「北押上駅爆破テロだ。」
リーの言葉に全員が黙った。
リーがフレディに対して、足の裏で合図を出した。
それを聞いたフレディは医療用ファイルを閉じて言う。
「丁度、3日前だな。北押上駅の地下鉄ホームで爆破テロが発生した。例の武器密輸と何らかの可能性があり、リーとアレクの協力の下、現場付近に俺がいた。」
そういってまたホログラムライトを取り出しては立ち上がり、床面を照らした。
ホログラムには、フレディが撮ったとされる一部映像と通信内容だった。
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北押上駅付近
爆破テロ推定時刻から10分前
Point1:フレディ(コールサイン:アーチャー)
Point2:アレク(コールサイン:スラヴァ)
偵察作戦指揮官:リー(コールサイン:オーバーロード)
「こちらアーチャー。現場は外野で凄いな。」
北押上駅を見下ろす形で身を隠すフレディ。
現場付近には市民と警官がごった返しになっていた。
アーチャーことフレディにアレクからの通信が入る。
<<こちらスラヴァ。アーチャーの上空に偵察ドローンが3機送ってあるが、視認出来るか?>>
アーチャーは見上げると、民間に払い下げられた無人ドローンが3つ視認できた。
「視認した。」
<<了解した。引き続き駅周辺の監視を続けろ。>>
「はいよ。」
アーチャーはついさっきまで、テログループと思われる車輌を追跡したが、車輌が行方が判らなくなった。
しかし、スラヴァのドローンやオーバーロードの予測情報で「北押上駅に向かった」との連絡を受け、急行した。
アーチャーはしばらく監視すると、あることに気づく。
「アーチャーからオーバーロードへ。DAのエージェントの他に、例の”Lima”の2人を視認。」
<<”Lima”?錦木千束と井ノ上たきなか?>>
「そうだ。だが、武装していない可能性がある。私服だ。」
<<ということは、本丸は駅構内か。まいったな・・・>>
オーバーロードが少し考え事したとき、車輌について思い出した。
<<アーチャーへ。そっちへ向かう途中、不審な車輌は目に入らなかったか?>>
「こちらアーチャー。見ていない。」
<<となると・・・スラヴァ。ドローンを散開させて車輌を見つけ出せ。>>
<<了解。>>
アーチャーの頭上を飛んでいた偵察ドローンは、散らばってテロ組織が運用しているはずの車輌を見つけ出そうとしていた。
アーチャーは再び、オーバーロードに通信した。
「オーバーロード。北押上駅構内に入れる非常口はどこにある?」
<<両側のビルの地下にあるが、そこには警官らが立ち入り禁止にしている。>>
「どっちにしろ動けないか・・・しかたがない。」
アーチャーは諦めて、しばらく監視を続けた。
すると、スラヴァから再び通信が入る。
<<2人とも悪いニュースだ。>>
<<どうしたスラヴァ。不吉な事か?>>
<<乗っ取られた。>>
「誰に?」
<<不明だ。>>
<<ってことは、テロ組織に加担してるハッカーがいるな。>>
「民間に払い下げられた奴とはいえ、元は米軍のものだ。安々ハッキング出来るといえば・・・ウォールナットか?」
<<可能性はあるが・・・奴には死亡説が多くありすぎて、確証が無い。>>
<<となると、もう1人のハッカーか?>>
「だろうな。スラヴァ、ドローンは”死んだ”のか。」
<<あぁ・・・すまない。>>
「構うものか。元といえば俺が見失ったことが原因だ。気にするな。」
一通りの会話を済ませた後、駅出入口を凝視するアーチャーと手元に広帯域周波数のセンサー。
すると、アーチャーの手に広帯域周波数のセンサーが高音の周波数が一定に示された赤点になった瞬間、アーチャーは北押上駅に向かって飛び降りた。
地面に着地した直後だった。
ドゴォン!!!
爆発と共に爆風が駅構内を出て地上に飛び出した。
市民や警官が驚き、地鳴らしのように地面が響き渡る。
オーバーロードやスラヴァの通信が飛び交う。
<<今のは!?>>
<<落ち着けスラヴァ。アーチャーからの指示を待て。>>
<<・・・了解!>>
<<こちらオーバーロード。アーチャー、応答せよ。繰り返す。アーチャー、応答せよ。>>
オーバーロードが応答してもアーチャーは応答しなかった。
オーバーロードは一瞬疑った。
(巻き込まれたのか・・・?いや、スラヴァのドローンで視認した高さからすると、その可能性は薄いーー)
そうオーバーロードが考えてると、アーチャーから通信が入った。
「こちら、アーチャー。両者とも聞こえるか?」
<<スラヴァ、聞き取れた。オーバーロードは?>>
<<こちらオーバーロード。今どこにいる?>>
「地下だ。」
アーチャーの声と共に瓦礫の音が通信越しに入る。
オーバーロードは呆れたかのようにアーチャーに聞く。
<<どうやって入ったんだ?>>
「爆弾のスイッチ音を広帯域周波数で探知した瞬間、駅が爆発して爆風が飛び出ただろ?それを利用しただけさ。」
オーバーロードは益々呆れた。
<<DAにバレたら依頼どころの話じゃないだろ?>>
「DAよりもCIAの方がアテになるだろ?」
<<アーチャーの言う通りだ。DAは情報の出所がわかってないなら、CIAの依頼を優先すべきだ。>>
<<わかったわかった。アーチャー、ジャミング等による電子妨害は確認できるか?>>
アーチャーは瓦礫を掻き分けながら、駅内部に侵入する。
「電磁波、電場、磁場・・・全ての計器に異常が無い。EMPはないと見て良い。単なる爆破テロだろう。」
全ての計器を確認し終えたアーチャーはフードを被り、万が一に備えて隠密から奇襲できるよう心拍センサーを用いて降りていく。
なんとか瓦礫の山と化した改札を飛び越えたアーチャー。
だが、ホームに向かう階段は瓦礫で埋まっていた。
「こちら、アーチャー。瓦礫でホームに向かえない。」
<<こちらスラヴァ。乗務員や検査員が使用する非常用を探してみろ。日本だったらどこにでもあるはずだ。>>
「了解。探してみる。」
辺りを見回すアーチャーに、1つの扉を見つけた。
「関係者以外立ち入り禁止」という扉だった。
「ビンゴ。見つけた。」
だが、その扉には番号のボタンを押して入るタイプだった。
それでもお構いなしに、混合爆薬を取り出して扉に貼り付け、一定距離を離れて発破した。
「さすが日本の技術だぜ。これぐらい屁でもないな。」
<<こちらオーバーロード。どうだ?>>
「現在、非常用でホームに向かってい・・・」
アーチャーの声が途絶える。
<<どうした?>>
<<オーバーロード、アーチャーに一体何が?>>
<<わからない。返答待つしかない。>>
数分後、アーチャーから通信が入る。
「こちらアーチャー。最悪だ。」
<<なにがあったんだ?>>
「カメラでそちらに送る。」
スラヴァとオーバーロードがその映像を見た途端、凄惨な一面が広がっていた。
無数の死体の中にベージュ色のまだ幼いであろうリコリス、瓦礫の山や電車の破損具合、血の海など、一気に見てしまった。
さすがに場数は踏んでいるとはいえ、映像に流れている大量虐殺テロにはスラヴァやオーバーロードですら、吐き気を覚えるだろう。
それでも現場に居るアーチャーの方が生で見ているはずだ。
傭兵の中で一番の若輩であるアーチャーの方が一番きつそうだが、アーチャーは淡々と動いていることが判った。
オーバーロードは苦渋の決断ではあるが、引き続きアーチャーに偵察を行なわせた。
アーチャーは、オーバーロードの任務続行を確認して、現場をひとつひとつ確認する。
「全員、KIAだ。まだ死体は温かいが、直撃を喰らったのだろう。数はDAが20名前後・・・いやそれ以上。テロリストらしい人物が・・・10名満たない。」
オーバーロードは、あるものを探すようにアーチャーに頼んだ。
<<アーチャー、例の物は見つかったか?>>
アーチャーは死体と瓦礫の山を掻き分けて、1つの銃火器を見つけた。
これが、CIAならびにDAが求めていた銃火器だった。
「見つけたぞ。」
<<持って帰れるか?>>
「それはできないな。俺が生きて返れる保障も無い。特にDAにはな。」
そうである。
DAから待機命令が下っている最中だったので、見つかったらどうにでも出来ない。
今回の偵察はDAではなく、最初の依頼であるCIAを元に行動していた。
<<それもそうか。>>
<<なら、リックに拾ってもらうしか無い。>>
「銃火器はDAに回収させよう。俺たちの主目標は密輸情報の出所だ。」
傭兵の主目標は銃火器の回収ではない。
密輸武器の情報の出所だ。
未然にテロを防ぐのもあるが、天下のCIAすらつかめないない情報だ。
しかも30年も前からだ。
<<こちらオーバーロード。2人ともご苦労だった。帰投しろ。>>
<<了解。>>
「わかった。リックに伝えろ。上りの2駅先で待ってろとーー」
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喫茶リコリコ
3人が調べた北押上駅の爆破テロ。
誰もが沈黙に包まれていた。
ウォールナットことクルミは知っていたかもしれないが、喫茶リコリコの面子は、こんな状況になっていたのを知らない。
フリッツやジョージを始めとする傭兵集団でさえ、3人の行動は事後報告で処理された。
その沈黙を破ったのはクルミだった。
「お前達は30年前に依頼されたCIAから動いているんだろ?」
ジョージが応えた。
「あぁ、そうだ。国際機関を巻き込んでの武器の大量密輸事件だ。非常事態かつ世界の安全保障上の問題で召集された。CIAを筆頭に組織化されたが、肝心の情報が不明確かつ、出所もわからないまま30年経っていた。」
「んで、わかっていたのはその武器は日本に送り続けていた。と考えるしかないな。」
「鋭いな。さすがは天才ハッカーだ。ただ・・・」
ジョージの戸惑う問いが生じる。
それに反応したのが店主のミカ。
「ただ?」
「俺がこの30年でひねり出した憶測だ。この密輸事件は、テロ組織やCIAがばら撒いたり、民間軍事企業ではないことだ。そして、ここ数十年・・・いや、1世紀以上世界中で活躍してる企業が密接に関係している可能性だ。」
「どこなんだ?」
ミカの問いに対して、ジョージが口を開く直前にフレディとリーが応えた。
「「アラン機関。」」
「そんなバカなっ!?」
ミカはたじろいだ。
錦木千束も2人の応えにただ漠然としていた。
そして応えるはずだったジョージさえ表情を変えた。
そんなミカと錦木千束の2人を見たクルミが答える。
「まぁありえなくない話だな。特にその2人はアラン機関との接触がありそうだが。」
クルミが指差したのは、フレディとリーの2人だった。
リーは笑顔で答え合わせをした。
「そうだ。俺とフレディは、実際にアラン機関からスカウトが有った。だが、俺たちは『神からのギフト』なんて信じちゃいねぇ。なにせ、アラン機関の存在は”前から”知っていたし、胡散臭い連中よりも自分自身との闘いに投じてる身だからな。」
「リーの言う通りだ。本当に『神』が存在するなら、この混沌とした世界を100年早めて平和にすべきだろう。神々のギフトやチルドレンを集めても、世界平和なんて訪れない。それが現実だ。」
フレディとリーの答えはキッパリしていた。
2人は『神』に抗う
すると、簡易ベッドで寝ていた井ノ上たきなが目を覚ました。
「うぅ・・・」
「たきな!?」
錦木千束が井ノ上たきなの側に居たので反応した。
「ち・・・と・・・?」
井ノ上たきなは僅かな力を声を振り絞っていた。
「そうだよ!たきな!ちさとだよ!」
錦木千束が元気に励まそうとしている。
医療責任を務めていたフリッツが錦木千束に言った。
「千束さん。たきなさんに打った麻酔はかなり効き目が薄い上、医療麻薬を使用している。たきなさんには痛みが増さない為にも、動かないように言いつけて欲しい。」
「あ、ありがとうございます。フリッツさん。」
錦木千束はフリッツにお礼したが、フリッツは険しい顔で言う。
「構わない。むしろ、俺の監視下で起きた事だから、お嬢ちゃん達のせいではない。」
ワタナベとフレディは、突然目覚めた井ノ上たきなの健康状態の検査チェックをやり始めた。
慎重に1つずつ、丁寧に丁寧に確認しては、検査キットの数値を見て、確認。
それらを繰り返しながら項目を進めていた。
最初こそ井ノ上たきなは、そんな老兵と”狼”に冷たい視線を送っていたが、2人はそんな視線に目もくれず、まるで患者のように扱いを受け、視線を送る事自体バカらしくなっていた。
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フレディが確認を全て終え、ワタナベがジョージに対して頷くと、ジョージは井ノ上たきなに確認を取った。
「たきなお嬢、よく聞いて欲しいことがある。良いかな?」
「・・・はい。」
井ノ上たきなは頷いた。
「今の状態は、本当に奇跡とも言われる状態だ。常人だったら死亡するリスクがかなり高い状態で、ここまで生きながらえるのは素晴らしい事だ。」
「ええっと?ジョージさん?」
錦木千束はジョージの言いたい事がわからなかった。
フレディが補足説明を入れた。
「要は、お嬢ちゃんの状態は安定してるものの、回復するまで俺たちが全部診察するってことだ。」
「すまんな。フレディ。」
「いっつも回りくどいんだよ。ジョージは。で、後はそちらの判断次第だ。」
そう。
井ノ上たきなの健康管理は全て傭兵に任せろ。
と申し出たのだ。
傭兵たちは喫茶リコリコの反応を待つことにした。
ミカは押し黙る。
錦木千束は心配そうに井ノ上たきなを見つめた。
クルミは用が済んだのか、店の奥に戻って行った。
そんな中、中原ミズキが言った。
「はい、そうですか・・・って言えるわけ無いじゃない。依頼主であるDAが傭兵に世話されたら溜まったもんじゃない。」
井ノ上たきなを瀕死の状態に持っていったのは間違いない。
それでもフレディは、「
「だからといって、このまま放置するつもりか?彼女の将来を蔑ろにするつもりか?」
「そもそもアンタがDAに噛み付いたのが行けないだろうが。」
「だから、
「無理よ!殺しの才能しか持たないアンタに診たらー」
「ミズキ!もうやめて!」
錦木千束は大声で全てを制した。
「お願いだから・・・もう任せようよ・・・」
「千束・・・」「ちさと・・・」
「千束?気でも狂ってんの!?こんな奴らに任せられると思ってんの?」
「それで、たきなが救えるなら・・・私はそれで良い・・・」
しおらしく泣き言を言いながら、フリッツやジョージ、口論していたフレディ、そして傭兵全員にお願いをした。
「お願いです・・・たきなを助けてください。」
錦木千束は頭を下げて言った。
フリッツが、錦木千束の肩をポンポンと叩いて優しく応えた。
「千束さん・・・顔を上げなさい。これは俺の監視下で起きた事態だ。ちゃんとたきなさんを救えるようにする。」
「安心しろ、千束お嬢。たきなお嬢を完璧な状態に戻してやる。」
ジョージは老齢とは思えないほど元気よく胸を張って言った。
錦木千束は、
「ありがとうございます。」
と涙ながらに感謝した。
次回⇒【献身とたきなの観察】
没ネタ【ジョージの疑心暗鬼】
なぜだ?
なぜ、こいつらがアラン機関を知っている?
どうやってあの2人が、例の情報をアラン機関だと突き止めたんだ?
リーは情報戦と電子戦能力はあるが、それを突き止めることは出来ないはずだ・・・
あるとしたらフレディか?
・・・アイツならありえる。
単独行動の権限を唯一持っているうえに、リーとエレメントを組んで全ての情報を握っては解読できる便利な奴だと思っていた。
確かに2人は優秀だからアラン機関に協力を仰いでいたが、こうなるとはな・・・
今回は違う。
明らかにアラン機関に対して敵意がある。
アラン機関や俺に与えた神の子の洗礼に対するRESISTANCEだ。
用心せねば・・・
~Fin~
それでは、次回までごきげんよう。